No.1001493

真・恋姫†無双-白き旅人- 第五章

月千一夜さん

早くも五話
とりあえず、出来上がっているやつを確認次第次々載せていきます

暇つぶしてください

続きを表示

2019-08-11 02:03:40 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1573   閲覧ユーザー数:1438

「あ~・・・退屈ぅ」

 

 

サンサンと、照り付ける太陽の光

その光りが窓から差し込む中、一人の女性は大きな溜め息と共にそう吐き出す

 

目の前には、天高く積まれた書簡の山

 

 

「まっさか留守番だけじゃなく、こんなバカみたいな量の仕事任せられるなんて・・・はぁ」

 

 

“失敗したなぁ”と、また溜め息

 

彼女の名前は孫策、真名を雪蓮

“元”呉の国王だ

 

今はその家督を妹の孫権、真名を蓮華に譲っていた

それでも、そう簡単に休めるかと言えば・・・否だった

未だ人材不足の呉において、働けるのならば元国王だろうが今の王である蓮華は容赦無く働かせるのだ

ある意味、彼女を王にしたのは正解だっただろう

皆が皆、この新たな王に期待しているのだ

 

もっとも・・・これで心置きなく休めると思っていた雪蓮にとっては、大きな誤算だったのだが

 

 

 

「あ~、な~んで留守番するなんて言っちゃったのかしら」

 

 

現在呉の重臣たちは殆どが、三国会議の開催地である魏に赴いている

本当なら雪蓮も行かなければならないのだが、出発当日になって彼女は“留守番がいい!”と玉座の間でごねたのだ

 

理由はない

 

ただ何となく・・・彼女の“勘”というのが、働いたのだろうか

何故か彼女は、“此処にいたほうがいい”と思ったのだ

 

故に、彼女は留守番をすることとなったのだが・・・

 

 

 

 

「あー、もう!!

何にも起きやしないじゃない、ウガーーーーー!!!!」

 

 

この結果である

 

留守番をはじめ、幾日か経過した現在

彼女の周りでは変わった出来事が起こることもなく、いつもどおりの日々が続いていたのだ

 

 

「やっぱり・・・最近、調子悪いなぁ」

 

 

“勘”

彼女にとって、相棒のようなもの

昔は、これに従えば大抵は上手くいったのだが

最近では、まったく上手くいかなくなってしまった

 

 

「ほんと・・・どうしんだろ?」

 

 

思えば一年前、あの白い流れ星を見た時からだったろうか

彼女の勘が、ことごとく外れるようになったのは

 

 

「参ったわねぇ・・・」

 

 

呟き、苦笑する

しかしすぐに、彼女は自身の頬を叩き笑った

 

 

「あ~、もうっ!

最近、何でもかんでも上手くいかないからって暗くなり過ぎよね!!」

 

 

“よし”と、気合一喝

彼女は、先ほどまでの暗さが嘘のような笑顔を浮かべ言ったのだ

 

 

 

「ちょっと息抜きに散歩でもしましょうっ!

しばらくお城に籠りっぱなしだったし!

たまには息抜きも必要よね♪」

 

 

 

息抜きの散歩

 

そう考え付いたのは、本当に偶々だった

ここ最近の自身の不調を何とかしようと、そう思っての提案だった

 

それが、彼女にとって“大きな意味を持つ”ことになるのだが

 

 

 

そのことに彼女はまだ、気付いていなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第五章 建業到着!!まずはゆっくり羽を伸ばすぜ!?~悪いなの●太、このゲーム・・・四人用なんだ~

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「「「「建業に・・・キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」

 

 

建業の街並みに響き渡る、元気の良い掛け声

その主である四人は、周りの目など一切気にした様子もなく

ただ無我夢中に、その街並みに感動しそう叫んだのだ

 

事情を知らない人が見たのならば、“何なのコイツら?”と思うだろう

しかしまぁ、今回は許してやってほしい

彼らは再会の後、丸一日かけてようやくあの森から抜けたのだから

 

しかもまったく見当違いの方向から、だ

 

おかげで最初に森を迂回して建業へと行く道のりよりも、多く時間がかかってしまったのだ

その結果・・・こうしてようやく建業に着くころには、もう太陽も寝る準備を始める時間帯だった

 

もう二度と近道などすまいと、心の中で誓ったことは言うまでもない

 

ともあれ、ようやくたどり着いた建業

ハッキリ言って、四人は・・・特に、一刀は浮かれていた

 

 

 

「やっと・・・やっとついたよ、雛りーーーーーん!!!」

 

「あ、あわわーーー!?」

 

 

ご覧のとおり

クタクタのはずの体で雛里を抱き上げ、その場でグルグルと回るほどだ

 

 

「む~・・・」

 

 

その様子を、若干面白くないといった表情で見つめる者が一名

 

前回の森で新たにこのパーティーに加わった仲間

張遼こと霞だ

 

 

「どうしたのだ、霞?」

 

「ん~にゃ、何でもない」

 

 

言いつつも、相変わらず不機嫌そうな表情だ

そのことを不思議に思いつつも、華雄は“そうか”と苦笑する

それよりもまず、早く宿に行って休みたかったからだ

流石の彼女も、道に迷った挙句の強行軍には応えたようだ

 

 

「一刀、雛里

遊んでないで、ひとまず宿を探そう」

 

「おっと・・・そうだな

久しぶりに、寝台に沈み込みたいしなっとぉ!?」

 

 

言われ、笑う一刀

だがその瞬間、グラリと危うく倒れそうになってしまう

その直後、華雄は慌ててその体を支えたのだ

 

 

「おい一刀、大丈夫か?」

 

「ああ、サンキュ華雄

何か、思ったよりも疲れてたみたい」

 

「フフ、なら尚更早く宿を見つけなければな」

 

「そうしようか」

 

 

顔を見合わせ笑う二人

 

そんな二人を見つめ・・・

 

 

「む~・・・!」

 

 

霞は、さらにその表情を険しくさせていた

もっとも・・・一刀は、そのことに未だ気づいていないのだが

 

 

「あぁもう、早う宿見つけんでっ!」

 

「あ、待てよ霞ッ!」

 

 

そのことに気付かないまま、“何故か”不機嫌な霞に手を引かれていく一刀

華雄はまたも不思議そうに首を傾げるが、ひとまずはとその後をついていく

雛里もまた、テチテチとその後についていくのだった

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「で、今後のことなんだけど・・・」

 

 

足早に見つけた宿の一室

その中で、寝台に腰かけた一刀がおもむろに口を開く

 

 

「しばらくの間、此処に留まろうかと思うんだ」

 

 

一刀の言葉

それに、雛里は“わかりました”と頷いた

華雄、霞も同様に頷く

 

 

「ま、ちょっとした休憩っていうかさ

折角の旅なんだし、街に来てすぐさよなら~って何か勿体ないしね

ちょっとの間、羽を伸ばすとしよう」

 

「賛成だな

思えば私も一刀に会うまでは、その街その街の景色を楽しむ余裕すらなかったからな

この機会に、少し観光と洒落込ませてもらおう」

 

 

華雄は、そう言ってフッと笑う

その隣で、霞は僅かに表情を歪めた

 

 

「そういや、ウチきいとらんかったな

華雄は、あれからどうしとったんか」

 

「ああ・・・なら、今晩でも一緒に酒でも飲み語らうか?

久しぶりの再会を祝して、な」

 

「あ~、そうやねぇ・・・」

 

 

言いながら彼女が見つめるのは、寝台に腰をかける一刀だった

彼女のその意味ありげな視線に、一刀はしばし考えんだあと・・・

 

 

 

「いいんじゃないかな?

一緒に行ってきなよ

久しぶりの再開だし、積もる話もあるだろうしね」

 

 

 

笑顔を浮かべ、こう言ったのだ

ただその笑顔に反し、霞はというと・・・恐ろしい“怒気”を孕んだ表情を浮かべていたのだが

その迫力に、“あわわ”という悲鳴が聞こえていた

 

 

 

「あ~、もう!!

わかった、そうするわ!!

ホラ、華雄いくでっ!!!!」

 

「あ、コラ!?

ひ、引っ張るんじゃない!!」

 

 

 

そして、大声でそう言いながら部屋を出ていく霞

部屋を出る間際、小さく“何年経ってもかわらんのか、あの鈍感一刀は!!”と吐き捨てていきながら

 

そうして、残されたのは一刀と雛里

2人はしばらくの間ポカンと呆気にとられていたが、やがて我に帰った一刀が小さく呟く

 

 

 

「俺・・・なんかしたかな?」

 

「一刀さん・・・今のは流石に、一刀さんが悪いですよ」

 

 

“俺?”と、自分を指さし呟く一刀

そんな彼の姿に、雛里は大きな溜め息を吐きだしていたそうな

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「ああ、もう!!

本っ当に信じられへん!!

三年やで!?

三年ぶりに会ったちゅうんに、なんやあの態度!!!」

 

 

“ダンッ!”と、勢いの良い音が響く

それが机に思い切り叩きつけられた杯による音だと気付く者達は皆、その音の発信源にはなるべく近づくまいと心の中思ったことだろう

それほどまでに、“彼女”は荒れていた

無論、霞のことである

もっとも・・・そんな彼女と席を共にする彼女には、そんな選択肢はないのだが

故に彼女、華雄は先ほどからそんな彼女の話を聞き苦笑を浮かべていたのだ

 

 

 

「普通、ちゃうやろ!!?

三年ぶりに愛する男女が再会したんやったら、やることなんて唯一つやん!!!??

何をするかって!!?

ナニに決まっとるやん!!

ヤルしかないやろ!!!???なぁ!!!??」

 

「ブハっ!!?

おま、少し声を下げろ!!!

そして落ち着いてくれ、頼むから!!!!!」

 

 

顔を真っ赤にし、勢いよく席から立ち上がる華雄

そんな彼女の姿に、霞は先ほどまでの不機嫌はどこへやら

大声をあげ、笑いだしたのだ

 

 

「あっはははははは!!!

なんや華雄、意外やなぁ!!

てっきりそういう知識とかには疎いかと思うてたんに、案外知っとるやんか!!!!」

 

 

“あはははは”と、愉快そうに笑う霞

一方華雄はというと、“しまった”とばかりにさらに顔を真っ赤にさせている

 

 

「あ~、おもろい

ホンマ、笑わせてもらったわ」

 

「ああ、それはよかったよ」

 

 

言って、勢いよく酒を飲み干す華雄

今度は、華雄の機嫌が悪くなる

その様子に、霞はクッと小さく笑いを零していた

 

 

 

「なんや・・・元気そうで、よかったわ

ずっと、心配やったからな」

 

「そうか・・・お前も、元気そうで何よりだ」

 

 

“もっとも”と、華雄は杯に酒を注ぎながら呟く

 

 

「お前の場合、魏の将軍として名を馳せていたからな

そこまで心配はしていなかったが」

 

「しっしっし、まぁな」

 

 

“流石はウチやろ?”と、笑う霞

それに対し、華雄は“ああ”と笑った

 

しかし、その表情はすぐに崩れさったのだ

 

 

 

 

「すまなかった・・・霞

あのとき、私が愚かな行動をとったせいで

董卓様は・・・」

 

 

 

ふいに、出た言葉

かすれ、震える声

その瞳から、大粒の涙を流し

 

彼女・・・華雄は、泣いていた

 

 

「本当に、すまなかった・・・」

 

「華雄・・・」

 

 

泣きながら、頭を下げる彼女の姿に

霞は、微かに表情を歪めた後・・・

 

 

 

 

 

「く・・・あっはははははははは!!!!」

 

 

“笑ったのだ”

先ほどよりも、大きな声で

彼女は、笑っていたのだ

それに対し、華雄は涙で腫らした目もそのままに彼女を睨み付ける

 

 

「な、なにがおかしいというのだ!?

人が真剣に頭をさげているというのに!!」

 

「あっははは、いやちゃうねん!!

その、な・・・!」

 

 

笑い過ぎたせいか、微かに涙の滲む目元を拭い彼女は微笑む

それから華雄の肩を叩き、こう言ったのだ

 

 

「董卓は・・・月は、生きとるんよ」

 

「っ!!!!??」

 

 

董卓が生きている

その言葉に、華雄は信じられないといったような表情を浮かべた

そんな彼女の心中を察してか、霞は杯に残った酒を飲みほし話を続ける

 

 

「今は桃香・・・劉備のとこで、侍女として生活しとるわ

流石に、董卓っちゅう名前は捨てなアカンかったけど

勿論、詠も一緒やで」

 

 

霞の言葉

華雄はしばし呆然とした後、ゆっくりと口を開く

 

 

「董卓様が・・・生きている」

 

「ああ、生きとるよ」

 

「劉備が、助けてくれたのか?」

 

「ん~、結果的にそうなったんやけど

厳密には、ちょい違うかな」

 

 

言って、また笑う霞

彼女は杯に新たな酒を注ぐと、ニッと笑いながら彼女を見つめ言った

 

 

 

「あの混乱の最中・・・月達を見つけてくれたんは、一刀や」

 

「っ!!」

 

 

再び、驚き言葉を失う華雄

そんな彼女を面白そうに見つめ、霞は言葉を紡いでいく

 

 

「誰よりも早く、月と詠を見つけて保護してな

そんで安全なとこに連れて行こうとして、桃香達のとこに預けたんや」

 

「そう・・・だったのか」

 

 

呟き、微かに震える自身の体を抱き締める

その瞳から流れる涙は、先ほどまでとは違う

 

 

「よかった・・・董卓様」

 

 

生きていた

自身が敬愛する主君が

己の愚かな行いによって死んだと思っていた少女が生きていた

そして・・・

 

 

 

「やはり・・・私は、間違っていなかったんだな」

 

 

あの日

失意の自分が見つけた、あの白き流れ星

その光りに導かれ出会った青年に感じた、あの温かな空気

自身が敬愛する主とよく似た空気を身に纏うその青年との出会いを

彼女は、唯々・・・喜んでいたのだ

 

 

「・・・乾杯、しよか?」

 

「ああ、そうだな」

 

 

スッと、近づいていく・・・二つの杯

 

 

 

「そんじゃま、再会を祝して・・・」

 

「それから、そうだな・・・新たな旅立ちに、でいいかな?」

 

「ええな、ソレ」

 

 

“チンッ”と小気味の良い音をたて、合わさった二つの杯

2人の夜は、まだ長くなりそうだ・・・

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「あ、あわわ~・・・」

 

 

所かわって、ここは宿の一刀の部屋

その中で、雛里は驚いたように声をあげていた

 

その原因は、彼の普段着ている外衣や持っていた荷袋から出てきた荷物だった

 

 

「そんな驚くものかなぁ・・・」

 

「驚きますよ

どれも、見たことないものですし」

 

 

雛里の言うとおりだ

此処に有るモノは、どれも彼が現代から一緒に持ってきた物なのだから

その中から一個を手に取り、彼はフッと笑顔を浮かべる

 

 

「これくらいなら、真桜の工房とかで見れるんじゃないかな」

 

「私は、あまり工房には行かなかったので

あ、朱里ちゃん・・・孔明ちゃんは、よく行ってましたけど」

 

「孔明ちゃんが?」

 

「はい・・・なんでしたっけ

“お菊なんとか”っていう発明を見せてもらいに・・・って、一刀さん?

どうしたんですか?

そんなに、前かがみになって」

 

「いや、気にしないで

ちょっと、息子が“サムズアップ(^ω^)b”してるだけだから

すぐに大人しくなる筈だから」

 

「は、はぁ・・・」

 

 

 

“いったい何故?”と、呟き前かがみになる一刀

彼はその後、しばらくして荷物の整理をし始めた

 

 

「色々ありますね」

 

「うん、まぁ・・・こっちに帰るって決めた日から、色々作ったからね」

 

 

“使えない物も、多いかもしれないけど”と、彼は笑う

そんな彼の笑顔に、雛里は微かな胸の高鳴りを感じていた

 

 

「そういえば、雛里ちゃん?」

 

「っ、ひゃい!」

 

「どうかしたの?

急にこの部屋に来たから、何か話があるのかと思ってたんだけど」

 

 

一刀の言葉

雛里は思い出したかのように、大きく頷いていた

それから、彼に向い聞こえる様言葉を紡いでいく

 

 

「その、明日なんですけど

ちょっと、お城の方に行ってみようと思うんです」

 

「お城に・・・?」

 

 

“はい”と、一言

 

 

「私もしばらく蜀にいなかったので、色々と情報が足りないので

その・・・旅をするうえで、やっぱり情報は大切ですから

私なら、呉の皆さまとも親交がありますし

色々、教えてもらえるはずなので」

 

「なるほどね・・・むしろ、こっちからお願いしたいくらいだよ」

 

 

“頼めるかな?”と、一刀

それに対し雛里は嬉しそうに笑い、“はい♪”と大きく頷いたのだった

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

翌日

温かな太陽の光りが、窓から差し込む中

 

 

 

 

 

 

「「頭・・・ぃたぃ」」

 

 

華雄と霞は、絶賛二日酔い中だった

 

 

「2人とも、大丈夫か?」

 

「アカン・・・今動くと、確実に吐く」

 

 

一刀の言葉

力なく返事をする霞の声が、これが“冗談ではない”ということを物語っていた

 

 

「す、すまん一刀・・・ちょっと盛り上がって、気付いた時には遅かったのだ

何とか宿には帰ってこれたのだが・・・このザマだ」

 

「ああ、いいよ無理して喋らなくて

なんか、今にも吐きそうじゃないか

今日はゆっくり休むといいよ

どうせ、数日は滞在する予定なんだし」

 

「すまない・・・うぷっ」

 

「ありがとな、一刀

お礼にキスしたるかr・・・うぷっ」

 

「・・・オチが見えたから、絶対に止めてくれよ」

 

 

“いいから、今日は寝てな”と、一刀は笑う

それから、雛里を伴って部屋から出たのだった

 

 

 

「さて、雛里ちゃんは今からお城に行くんだよね?」

 

「はい

一刀さんは?」

 

「俺は、ちょっと街を見て回ろうかなって

色々と、欲しいものもあるし」

 

 

“そうですか”と、雛里は笑う

彼女はそれから“夕方までには、戻りますから”と言って、城に向い歩き出した

残された一刀はというと、先ほど自分が言ったとおり

街を見て回ろうと、賑やかな街並みに向い足を進めたのだった

 

そして数分後・・・彼は、賑やかな街中を一人歩いていた

 

 

 

「すごい賑わってるな・・・流石は、呉の都なだけはあるよ」

 

 

賑わう人々を見つめ、彼は嬉しそうに呟く

一方で何人かの街人は、一刀の姿を見て首を傾げている

無理もない

彼はいつものように、白い外衣を着てフードで顔が見えないようにしているのだから

 

“司馬懿仲達”としてのスタイル

 

本人がどう思っているかは知らないが、周りからしたらこれ以上に怪しい人物は中々いないだろう

そんな視線に気付くことなく、彼は悠々と街を散策していく

 

そうして過ぎていく時間

やがて、太陽は彼の真上にまでやってきていた

 

 

 

「もうお昼か・・・どこかで、昼ごはんにしようかな」

 

 

そう言って、杖を肩に担ぐ一刀

彼はそれから、近くにあった飲食店に入っていく

 

しかし・・・

 

 

「うわぁ・・・」

 

 

御昼時、ということもあるのだろう

その店は、もう人がいっぱいだったのだ

“これは、無理かな”などと、彼が心配しているとき笑顔を浮かべた店員がやって来た

 

 

「申し訳ありません、お客様

相席でよろしければ、何とか座れますが?」

 

「あ、ならそれでいいです」

 

「かしこまりました

こちらへどうぞ」

 

 

“なんとか座れる”と安堵し、店員についていく一刀

やがて案内された席には、すでに一人の客が座り食事をとっていた

 

 

「此方です」

 

「はい

ありがとうございます」

 

 

“では、ご注文が決まったらお呼び下さい”と、去っていく店員

その背を見送った後、彼はその席に座り込んだ

 

 

「向い、失礼しますね」

 

「あ、いいわよ別に~~~」

 

 

一刀の言葉

向いに座る“女性”はニッコリと笑いそう言った

 

直後、一刀は言葉を失ってしまう

 

 

 

「・・・?

私の顔に、何かついてるかしら?」

 

「え、いや、その・・・」

 

 

言葉が、上手く出ない

それほどの驚き

彼は知っていた

自分の向いの席に座る女性のことを

 

彼女は・・・

 

 

 

 

 

 

(な、なんで孫策さんがここにーーーーーー!!!!??)

 

 

そう、彼女の名は孫策

彼の記憶の中では、呉の国王である孫策だったのだ

もっとも、今は王ではないのだが

 

そんな彼女が、今自分の目の前で食事をとっている

驚くなと言う方が無理である

 

 

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

 

「な、なんでもないですよ?

あはは・・・そうだ、早く注文しないとなー

お腹空いたしなー」

 

 

言いながら、彼は笑う

そんな彼のことを見つめ、彼女は苦笑を浮かべていた

 

 

「ていうか貴方、その頭に被ってるのとっちゃえば?

暑くないの?」

 

「いや、全然大丈夫っす!!!!

自分、暑いの大好きなんで!!!!

むしろ熱くなんないと、死んじゃうんで!!!!」

 

 

ブンブンと首を横に振り、彼はフードをより一層深く被った

彼女はというと、“なら、いいけど”と食事を再開していた

その様子に、彼はホッと胸を撫で下ろす

 

ともあれ、油断は出来ない

彼女が凄まじい勘の持ち主であるというのは、彼も知っていた

故にこのまま此処にいれば、自分の正体がバレてしまうかもしれない

 

しかし、いまさら何も頼まずにこの店を出ることは出来ない

彼は急ぎ昼食をとり、この場を離れたかったのだ

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

「んだてめぇ、やんのかコラァ!!!??」

 

「ああ、上等だゴラァ!!!」

 

 

 

 

神様は、なんと残酷なのだろうか

彼は“またこんなパターンですか”と、割とマジで泣きそうになった

 

 

「何でよりにもよって、こんな時にあんな“テンプレな喧嘩”始めちゃうんだよ」

 

 

もう、この時点で嫌な予感はしていた

騒然とする店内

彼はチラリと、自身の向いを見つめる

 

そして思った・・・“ああ、やっぱりな”と

 

周りの迷惑など気にせず、騒ぐ二人の男

その男たちを、“今にも殺してしまいそうなほどの殺気を込め”見つめる孫策

もう、“不機嫌です”と全身が語っている

 

冷や汗が止まらない

 

 

 

(これって、もしかして・・・かなり不味いんじゃ

いやいやいや、まだ諦めるのは早いだろjk

このまま何事もなく終わってくれれば・・・)

 

 

「アンタ達・・・さっきから、凄い目障りね」

 

「ええ、そんな気はしてましたよ・・・はは」

 

 

ガクっと、泣きそうになりながら頭を垂れる一刀

そんな彼の気持などつゆ知らず、彼女は・・・孫策は、言葉を続ける

 

 

「喧嘩なら、外でやってくれない?

ハッキリ言って、迷惑だし」

 

「あぁ!!?

んだと、こらぁ!!!!」

 

 

孫策の言葉

先ほどまで喧嘩していたはずの二人は、2人して孫策のもとへ歩み寄る

つまりは、一刀の座る席にだ

 

 

「てめぇ、生意気な口ききやがって!!!」

 

 

2人のうち、一人が凄まじい剣幕で孫策に詰め寄る

しかし、すぐにその表情が不気味に歪む

 

 

「よく見たら、イイ女じゃねぇか・・・ええ?」

 

 

ジュルリと舌なめずりをし、男は嗤う

気付けば、もう一人も同じように笑っていた

そんな男たちの様子を見つめ、一刀は密かに溜め息を吐きだしていた

 

 

(おいおい、何もそんなとこまでテンプレ通りじゃなくてもいいだろうが

そもそも、孫策さんのこと知らないのかよ?

このままだと、“首と胴体がパージ”しちゃうぞあいつら)

 

 

心の中、小さくつぶやく

それから、孫策を見つめた

彼女は先ほどよりも、不機嫌そうな表情を浮かべている

 

 

(孫策さんのことだし・・・多分、いや絶対問題ないんだろうな

この程度の相手なら、一瞬だろうし

けど・・・)

 

 

笑い、彼は軽く頭を掻く

 

それから・・・

 

 

「あの・・・ちょっといいですか?」

 

 

スッと、その場から立ち上がったのだ

その口元を・・・

 

 

 

(やっぱ、見て見ぬふりっていうのは・・・情けないよな)

 

 

 

僅かに、釣り上げながら・・・

 

 

 

 

 

 

「あぁん!!?

ンだ、てめぇ!!!?」

 

 

いきなり立ち上がった一刀に、男はグッと詰め寄った

それに対し、一刀はフッと笑みを浮かべ彼に向い杖を近づける

 

 

「いや、それがさ・・・一人の美しい女性に2人がかりで詰め寄るような情けない男に名乗る名前は持ってないんだよね」

 

「「あぁ!!!?」」

 

 

“残念なことに”と笑い、一刀は言った

その言葉に、一気に顔を真っ赤にさせ怒りを露わにする男達

それでも、一刀は笑っていた

それがまた、男たちの怒りのボルテージを上げていく

 

 

「テメェ、おれ達を怒らせて・・・タダで済むと思ってんのか?」

 

「いや、むしろさ・・・その言葉を、そっくりそのまま返してやりたいよ」

 

「ああ!!?」

 

 

一刀は相変わらず笑っている

いや、正確には“顔だけが”だ

 

男たちは知らない

彼もまた、我慢の限界だったのだ

 

森に迷い、熊に追い掛け回されたり

予想外の時間をかけ、ようやくたどり着いた建業

そこで、少し羽を伸ばそうとした矢先に出会ったのが・・・孫策

胃が痛むのを堪えながら、早く食事を済ませてしまおうといった直後に起こったこの出来事

 

もう一度言おう

彼はもう、限界だったのだ

 

 

 

「なんだよ、もうっ!!

俺に恨みでもあんのか、神様チクショーーーー!!!!!」

 

 

 

彼がそう叫んでしまうのも、無理もない話であった

しかし、目の前の男二人は事情を知らない

彼の叫びに一瞬怯んだ後、彼らは一刀めがけ殴りかかろうとしたのだ

 

 

「っ、危ない!!」

 

 

それを見て、孫策は咄嗟に叫ぶ

 

瞬間・・・

 

 

 

 

「燃え燃え、キュンっ!!!!!」

 

「「あっづぅ!!!!!???」」

 

 

 

 

“ゴゥッ!!!!”と音をたて、彼の杖から炎が出てきたのだ

店内ということも考えてか、火力はいつもよりも遥かに少ない

しかし、男二人の髪をアフロに変えてしまう程の威力はあったらしい

真っ黒なアフロをおさえながら、男達は“んぎもっちぃぃぃぃいいいいいい!!!!”とのた打ち回っていたのだ

 

 

 

「あ・・・」

 

 

と、声を漏らしたのは一刀

 

彼はその時になって、ようやく自分がやったことに気付いた

肩についてしまった埃を払う勢いで、彼は杖を使っていたのだ

 

 

 

「えっと・・・」

 

 

周りの視線が、全て自分に集まっている

そのうえ、皆無言

 

 

「あははは・・・」

 

 

彼はその空気に耐え切れなくなったのか・・・

 

 

 

 

「超スピード!!!!!」

 

「あ、ちょ、待ちなさい!!!!」

 

 

 

 

等と、ワケのわからないことを叫びながら店から飛び出していったのだった

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「や、やってしまった・・・」

 

 

路地裏に座り込み、ため息と共に吐き出す一刀

“やってしまった”とは、先ほどのことである

 

よりにもよって、皆が見てる前で“杖”を使ってしまったからだ

記憶に新しいのでは、彼が初めて雛里と出会った時のこと

あの時周倉たちはこれを見て、一刀のことを“五胡の妖術使い”と言っていた

 

確かに、無理もない話だ

普通、杖から炎なんて出ない

この時代ならば、尚更のことである

 

 

「おいおいおいおい・・・いったい何時の間に、俺に“不幸属性”なんてついたんだよ」

 

 

“不幸だ”と、また溜め息

ともあれ、しばらく表通りを歩くのは止した方がいいかもしれない

そう思い、彼は重い腰をあげ三度溜め息を吐きだす

 

 

「仕方ない、か

もう今日は宿に戻って、休んでいよう」

 

「あら、もう帰っちゃうの?」

 

「ああ、もう疲れちゃった・・・し・・・・・・?」

 

 

“ギギギ”と、ゆっくりと振り返った先

 

彼女は、孫策はいた

それも、ニコニコと微笑みを浮かべながら

 

 

「やっほー、さっきはありがとね♪」

 

「ああ、はい

ドウイタシマシテ・・・」

 

「ま、あの程度なら私一人でも十分だったんだけど・・・けど、嬉しかったわ♪」

 

「は、はぁ・・・それじゃ、俺はこれで」

 

「おっとぉ、そうはいかないわよ?ww」

 

「ですよねww」

 

 

“あっはっは”と笑った後の溜め息

彼はもう諦めたような表情を浮かべ、彼女を見つめた

それに対し、彼女は“新しい玩具を見つけた時のような子供の目”をしたまま微笑む

 

 

 

「さっきの炎の出る杖とか、いろいろ聞きたいことがあるのよねぇ」

 

「はぁ、さいですか・・・」

 

 

“ああ、これは無理だ”

彼は、この女性によく似た目をする人物を知っている

少なくとも彼女なら、このような発見をしておいて・・・それをみすみす逃がすなど、絶対にはしない

 

 

 

「私の名前は孫策、字は伯符よ

貴方の名前は?」

 

 

だからこそ、もうこの状況に流されるしかないと

彼は、そのように考えていたのだ

 

 

「俺は・・・」

 

 

ここまでくると、もう笑しかでない

苦笑と共に、彼はその手をゆっくりと伸ばす

 

 

 

 

 

「司馬懿・・・字は“パプテマス・シロッコ”だ」

 

 

 

 

 

やがて、その手がゆっくりと重なった瞬間

この建業の地での物語が、始まったのだ

 

 

 

「司馬懿・・・えっと

長いから“プー太郎”でいい?」

 

「勘弁してください」

 

 

 

司馬懿、またの名を北郷一刀

孫策、真名を雪蓮

 

この二人の出会いによって

 

物語は、新たなページを刻み始めることとなるのだ

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

 

 

あとがき

 

 

五章

最初の山場が、いよいよきそうです

 

この話はよく見るとわかるのですが、後々の展開を考え改定しています

 

 

では、またお会いしましょう


 
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