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真・恋姫†無双-白き旅人- 第四章

月千一夜さん

第四話
今回は、新たな仲間が・・・?

暇つぶしにどうぞ

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2019-08-11 01:14:28 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1771   閲覧ユーザー数:1618

「アカン・・・道に迷ってもうた」

 

 

ザァザァと揺れる木々の中

一人の女性が、立ち尽くしたまま溜め息を吐きだしていた

その表情には、若干の疲れが見えている

だがしかし、まだ苦笑を浮かべられるほどの余裕はあるようだ

 

 

「参ったなぁ・・・確かこっちに行けば、建業に着けるはずやのに」

 

 

懐から取り出した地図を見つめ、呟く彼女

だがその地図は、お世辞にも綺麗だと言えるような代物ではなかった

その為だろう

現在こうして森の中、彼女がこうして立ち尽くしてしまっているのは

 

 

「う~ん、アカン・・・お手上げや」

 

 

地図を懐に仕舞い、再び溜め息を吐きだす彼女

しかし彼女はすぐ、フッと笑みを浮かべたのだ

 

 

「ま、愚図ったってしゃぁないしな

なるようになるやろっ♪」

 

 

そして、踏み出した一歩

その一歩は先ほどまでの雰囲気が嘘のように・・・とても軽く

 

とても、楽しげなものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

第四章 道に迷った!?なら、もっと熱くなれよぉぉぉおおお!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「ん~~~~、良い天気だなぁ」

 

 

言って、思い切り伸ばした背

その口から零れ出た声色が、今の彼の気分を物語っている

見つめた青も、どこか誇らしげだ

 

 

「昨日の雨がウソのようですね♪」

 

 

そんな彼・・・一刀の隣をトコトコと歩いていた雛里は、ニコリと微笑みを浮かべる

彼の言葉に賛成ということだ

その隣、多くの荷物を軽々と運ぶ女性

華雄もまた、同意とばかりに頷いていた

 

 

「この分ならば、建業まではもちそうだな」

 

「はい、そうですね

此処からなら、建業には明日のうちには着けるでしょうし」

 

「あれ?

もうそんな近くまで来てたんだね」

 

 

雛里の言葉に驚きつつも、一刀はすぐに“まぁいい”と笑う

それから何故か、深い深い溜息を吐き出したのだ

 

 

「ホント、晴れてくれてよかったよ

もし今日も昨日くらいの大雨だったら、あの屋敷にもう一泊しなくちゃいけなかったし」

 

「あ、あはは・・・」

 

 

一刀の言葉

その言葉に、雛里は乾いた笑みを漏らした

瞬間思い浮かんだのは・・・一人の少女、改め“男の娘”

 

あの屋敷の主、馬鈞である

 

彼女(彼)はあれから、一刀にべったりであった

おまけに、いざ寝ようとすると夜這いをかけてくる始末

 

相手は男だと知っていても、あの見た目である・・・

 

 

 

 

『御遣い様、僕なんだか・・・体が、火照ってきちゃいましたぁ』

 

息子『おっほぉ、元気だ~~~(^ω^)』

 

『ええぃ、落ち着け愚息!!相手は男だぞ!!?』

 

 

 

 

まぁ、今の一言でもわかるとおりである

 

それはもう、危うく新たな一歩を踏み出してしまいそうになるくらいだったのだ

そんなこんなで、一刀の精神力はギリギリまで削られることとなった

故に今日が絶好の旅日和と知った時の一刀の顔といったら、容易に想像がつくであろう

 

ともあれ、善は急げ

彼らは残念がる馬鈞もよそに、屋敷を飛び出したのだった

 

 

 

 

 

『絶対・・・絶対、また会いに行きますからっ!!!!』

 

 

 

 

 

 

涙ぐみながら放った、馬鈞の言葉を背に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さって、建業までもうひと踏ん張り

いっちょ、頑張りますかっ!!」

 

「はいっ!」

 

「うむ」

 

 

晴れ渡る空の下

その視線の先・・・まだ見ぬ、建業の地を見据えながら歩く三人

その足取りは、とても軽い

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「んで、道に迷っちゃいました・・・と」

 

 

“チャンチャン♪”と、随分と古典的な音楽をつけてしまいそうになるほど

彼らは、見事に道に迷っていた

 

 

 

「困りましたね・・・」

 

 

言いながら、地図と睨めっこをする雛里

その隣で華雄は、“ふむ”と腕を組んだまま声を漏らす

 

 

「恐らく、地図もあてにはならんだろう

何せ、我らは今森の中にいるのだから」

 

 

そう言って、深く息を吐き出す華雄

一刀と雛里もそれに続き、深い溜息を吐いたのだった

 

現在、三人は迷子だ

それも・・・建業と一刀達との間にあった“森”の中である

当初は小さな森だし、この森を抜ければ建業まではもう目と鼻の先だと意気込んでいたのだが

結果は、ご覧のとおりだった

 

見事な迷子の出来上がり、だ

 

 

 

「油断したなぁ、もう

しかも、もうすぐ日が落ちちゃいそうだしなぁ」

 

「仕方ありませんね

今日は、この森で野宿をしましょう」

 

「それがいい

夕闇の中動き回るのは、自殺行為もいいところだからな」

 

 

“そうと決まれば”と、三人はさっそく休むのにちょうどいい場所を見つけ野宿の準備をしていく

一番の問題である“火”に関しては、まったく問題はない

適当に集めた木の枝に、一刀が自身の持つ杖で火をつければいいのだ

 

次に、食料であるが

こちらも、今のところ問題はなかった

以前に華雄と出会った村で貰ったものも残っていたし、新たに僅かだが馬鈞からも貰っていたからだ

 

勿論、飲料水も確保してあった

それらを使い、雛里が簡単な料理を作っていく

その間、華雄と一刀は辺りに注意を払っていた

 

それからしばらくして・・・

 

 

 

「いっただっきま~~~す♪」

 

 

彼らの前には、簡素ながらもひどく食欲をそそる料理が並んでいたのだった

その料理を前に、一刀はニコニコと笑顔を浮かべたまま口に運んでいく

 

 

「美味い!

美味いよ、さっすが雛里ちゃんっ!」

 

「あ、ありがとうございましゅ」

 

「うむ、確かに美味いな」

 

 

一刀に続き、華雄もそれらの料理を口に運んでいく

そんな隣で、雛里は若干頬を赤く染めながらチビチビと食べていた

 

 

「うん、本当に美味しいよ

雛里ちゃんはきっと、良いお嫁さんになれるよ」

 

「あ、あわわ!!?

おおおお嫁さんでしゅかっ!!!??」

 

「・・・?

どうしたの、そんな慌てて?」

 

 

彼にとっては、本当に何気ない一言だったのだろう

しかし、初心な彼女を動揺させるのには十分だったのだ

そんなこと知らない彼は、不思議そうに首を傾げるばかり

華雄は、そんな彼の様子にクッと笑みを漏らし

雛里は、“にゃ、にゃんでもありましぇん!!!!”と首をブンブンと横に振る

 

そんな中・・・

 

 

 

(不思議だなぁ・・・)

 

(まったく、何といえばいいのか・・・)

 

 

 

出会ってから今までの時間は、まだ短いはずなのだが

それでも、まるで長い間共に過ごしてきたかのような心地だと

2人は・・・華雄と雛里は、そう思っていたのだった

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

翌朝、木々の間から太陽の光が差し込む中

三人はそれぞれ準備を済ませ、前を見据えていた

 

 

「さって、そんじゃ行きますか」

 

「はいっ!」

 

「ああ」

 

 

一刀の声に続き、三人は歩き出した

目指すは、地図上では目前にまで迫っているはずの建業

 

しかし、やはり現実は厳しい・・・!

 

 

 

 

 

「くっそ・・・なんか、方向を間違えてるような気がするな」

 

 

そう声を漏らしたのは、一刀だった

一刀の言うとおりだと、華雄と雛里は頷く

もう昼も中ごろだというのに、いっこうに出口が見えてこないのだ

そこまで大きくない森のはずなのだが、三人は未だに抜け出せずにいた

 

 

「なんか、デジャブだな・・・」

 

 

思えば、一刀と雛里も出会った当初は迷子だったのだ

“どうやら俺は、森とは相性があまり良くないらしい”

そう思い、一刀は苦笑を浮かべたまま溜め息を吐きだす

 

 

「しかし、進めば進むほど深くなっていくな」

 

「そうだな・・・これは本格的に、道を間違えてるっぽいな」

 

 

華雄の言うとおり

進めば進むほど、周りに生える草木は大きくなっていく

今では、その草木により前が見にくくなってしまっている

それを、一刀は杖で掻き分け進んでいたのだ

 

 

「これは気を付けないとな・・・いざ進んでみて“おっほぅ、よく見たら崖だったお(^ω^)”とかだったら、シャレにならないよな」

 

「まったくだな、ははは」

 

 

クッと、笑いあう二人

そんな二人に囲まれながら、雛里もクスクスと笑いを零していた

だがすぐに、その笑いは掻き消えてしまう

 

 

「っ・・・一刀さん、前っ!!!?」

 

「え?」

 

 

稀にみる不幸、とでもいうのだろうか

華雄と話していたせいか、後ろを向きながら歩いていた彼に振りかかった不幸だったのだろう

 

 

「あ、あれ・・・」

 

 

“フワリ”と、一瞬軽くなったかのような錯覚

次いで、空を切る自身の足

 

 

「まさか・・・」

 

 

などと、そう思った時にはすでに遅い

彼の体は、みごとに宙を浮いていたのだから

 

そう・・・もうおわかりだろう

彼は自分でおっ立てたフラグを、みごとに回収したのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“森を抜ければその先は・・・見たこともない崖でした。ブスリ♂”

by北郷一刀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ウソだっ!!

嘘だと言ってよ、バーーーーニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・」

 

「一刀さーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!???」

 

「一刀ぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!???」

 

 

 

 

 

叫び、落下していく一刀

慌てて駆け寄るが、間に合わない

顔を真っ青にしたまま、2人が見下ろす先

同じよう、広がる森が見えた

 

恐らくは、この下の木々に向い落ちていったのだろう

 

 

 

「ひ、雛里!!

急いで下に降りれる道を見つけ、あそこまで向かうぞ!!!!」

 

「ひゃいっ!!!!!」

 

 

キッと表情を強張らせ、駆け出していく2人

その胸にある想いは、ただ一つ

 

一刀の無事を祈ることのみだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「オー、マイガッド・・・」

 

 

見える景色は、全て逆だった

自分が知らないうちに、世界はきっとひっくり返ってしまったのだろう

そんなアホなことを考えられるほどには、落ち着けたらしい

そう思い一刀は、木々に引っかかり逆さまのままの自身の姿に苦笑していた

 

 

「いや~、危機一髪ってやつか?

こうして引っ掛かってなかったら、死んでたよな確実に

いや、まじでツイてるわ俺

日頃の行いが良かったからかな」

 

 

“いや、違うか”と、自分に呆れながら彼は笑った

 

 

「そもそも運が良かったら、崖から落下なんてしねーっすよね」

 

 

“あぁん? だらしねぇな”と、どこかのガチでムチなパンツ一丁の兄貴に言われたような錯覚を胸に

彼は手間取りながらも、なんとか無事に現在の状態から脱出することに成功する

 

 

「さってと・・・ここは何処だろうな」

 

 

外衣についた葉っぱを落とし、辺りを見渡してみる

多少の違いはあれど、どうやら同じような森の中

 

見上げてみると、先ほど自分が落下したであろう崖が木々の間から確認できた

 

 

「そんな、高くはなかった・・・のか?」

 

 

さっきの衝撃のせいだろうか

多少、感覚が鈍っているのかもしれない

確かに一刀自身がイメージしていた崖よりもはるかに低いが、それでも普通なら死んでいたレベルである

 

一刀は本当に、運が良かったのだ

 

 

「何とかして、さっきの場所に戻る方法を探さないとな

いやそれとも、こっから動かない方がいいのか?」

 

 

恐らく、あの2人はここに来る為の道を探しているだろう

そう思ったのだ

 

しかし・・・

 

 

 

「駄目だ・・・やっぱジッとしてるのは性に合わない」

 

 

言って、溜め息を一つ

とにかく、辺りを少し見て回ってこようと思ったのだろう

彼はその場から、ゆっくりと歩き出す

 

その背後を・・・

 

 

 

「少し見て回るくらいはしないとな・・・」

 

「ガルル・・・」

 

「お~、君もそう思うか?」

 

 

 

茶色く、巨大な影がついて歩いていることに気付かずに・・・

 

 

 

 

「・・・“ガルル”?」

 

 

“ピタリ”と、彼は踏み出した足を止める

それから、ゆっくりと振り向いた先

 

彼は・・・見た

 

 

「おいおいおい・・・マジっすか?」

 

 

茶色く、巨大な影

日本に住んでいた頃は“熊”と、そう呼んでいた生き物が

 

自身の背後にいたのだ・・・

 

 

「グルル・・・」

 

「あ、あはは・・・ど~も」

 

 

言ってはみたが、伝わるはずはない

彼の視線の先、熊は一刀を睨み荒い息を吐くばかりだ

 

それはまさに・・・獲物を狙う目

 

 

 

 

「それじゃ、俺はそろそろ行くからっ・・・」

 

「ガゥッ!!!!」

 

「うっひゃぁ!!?

やっぱりか、コンチクショーーーーー!!!!???」

 

 

思い切り振るわれる腕を何とか躱し、一刀は一目散に駆け出した

“逃げるんじゃない!戦略的撤退だ!!”と、心の中叫びながら

 

無論、それを簡単に許す熊ではない

一度見つけた獲物を逃がすまいと、一刀の後ろから凄まじい速度で追ってきたのだ

 

 

「ガァァァァアアアア!!!!!」

 

「あーーーー、不幸だーーーーー!!!!

なんなの!?

前は虎で、今回は熊!!!?

俺って前世で、動物でも虐待してたの!!?

今まさに、その罰を受けてるの!!?」

 

「グルァ!!!」

 

「おっほう!!?」

 

 

風を切る音に恐怖しながら、駆けて行く一刀

逃げ足ならば自信があると思っていたのだが、熊は彼の予想以上に早かった

このままでは、先にこちらの体力が尽きてしまう

 

 

「いったい、どうしたら・・・ん?」

 

 

ふと、目に入った光景に・・・彼は、一瞬言葉を失ってしまう

彼の走っていく先に、何やらボロイ外衣を身に纏う人間の姿があったのだ

“俺たち以外にも、この森の中に人がいたのか”と思ったのは一瞬

彼はすぐさま思考を切り換え、駆けながらその人物に向い叫んだ

 

 

 

「危ないぞ、熊だあぁぁぁああああ!!!!」

 

「っ!!!!??」

 

 

 

瞬間、その視界の先の人物はハッと此方を見つめてくる

フードを被っている為顔を窺えないが、何やら背中に背負っている長い“棒のようなもの”に手をやっている

 

 

(なんか、怪しいな・・・って、俺も人のこと言えないじゃんか)

 

 

クッと笑い、彼は今一度フードを深くかぶり直す

それから杖を握り締める手に力を込め、素早く後ろへと振り返った

 

このままでは、あの人物も巻き込んでしまう

そう思ったからだ

 

故に、彼がとる行動は唯一つだ

 

 

 

 

「燃えろっ!!!!!」

 

 

 

 

振り返り、切っ先を熊へと向け叫ぶのと同時に・・・杖の先端から、勢いよく火が飛び出していく

その炎が熊に襲い掛かり、激しく燃え上がった

 

 

「グガガガガアァァァアアア!!!??」

 

 

その熱に、堪らず苦悶の声をあげる熊

それを見て、一刀はグッと拳を握り締める

 

 

「やったか?」

 

「いや、まだや・・・」

 

 

 

ふと、彼の横を風が吹き抜けていく

それが、先ほどの人物だと気付くころには・・・

 

 

 

「これで、終いや」

 

 

 

先ほどまで大声をあげていた熊が、真っ二つに切り裂かれていたのだ

目の前の人物が肩に担ぐ“刃”によって

 

 

「なっ・・・」

 

 

驚き、声をあげたのは一刀だ

 

しかし、“違う”

 

彼が驚いたのは、熊が一刀のもとに切り倒されたことではない

 

目の前の人物

その人物が肩に担ぐ“刃”を見つめ、驚いていたのだ

 

 

 

 

“飛龍偃月刀”

 

 

 

 

「ん・・・なんや?

ウチの顔に、なんかついとるか?」

 

 

言いながら、被っていたフードを脱ぐ“彼女”

そうして露わになった素顔を、やはり彼は“知っていた”

 

 

「し・・・あ?」

 

「ん・・・?」

 

 

流れる、紫色の髪

それが懐かしく・・・愛おしかった

 

 

「“霞”・・・」

 

「な・・・アンタ、なんでウチの真名を!!?」

 

 

“霞”

その名を呟き、彼は一歩前に踏み出す

それに対し、彼女は警戒したのか偃月刀を構えていた

無理もない

いきなり、真名を呼ばれたのだから

しかしその警戒も、すぐに無駄になることだろう

 

何故なら・・・

 

 

 

「霞・・・俺だよ」

 

「ぁ・・・」

 

 

 

彼女の目の前

そこに立つ男を、彼女は知っているのだから

 

 

 

「“一刀”・・・?」

 

 

 

フードをとり、露わになった素顔

その素顔を、彼女もまた知っていた

 

 

 

“張遼、真名を霞”

“北郷一刀、またの名を天の御遣い”

 

その顔を、忘れるはずがない

 

彼女は・・・“霞”は、静かに涙を流していた

 

その顔を、知らないはずがない

 

霞は、駆け出していた

 

 

 

 

「霞っ!!」

 

「一刀っ!!」

 

 

 

三年分の想いを込め、駆けて行く2人

 

“会いたかった”

 

そんな言葉など、言わなくともわかっているから

だから二人は、互いの名を叫び

唯々、がむしゃらに駆け出していたのだ

 

 

 

 

 

そして・・・その想いは、ついに“一つ”になったのだ

 

 

 

 

 

「夢や・・・ないんよね?」

 

 

愛しい人の胸の中、彼女は小さく呟いた

その彼女の呟きに、彼はニッと微笑んだ

 

 

「当たり前だろ?

俺はちゃんと・・・此処にいるよ」

 

 

その言葉に、霞は涙ぐみながら“そか”と笑う

それから、自身の顔を彼の胸に押し付ける

 

 

「そういえば、さ・・・霞は、どうしてここに?」

 

「ウチ、待ったで・・・ずっと、待っとった

けど、我慢できへんかった

せやからウチ、魏から飛出してん

一刀を、探すために」

 

「ああ、なんか・・・霞らしいよ」

 

 

言って、苦笑する

そんな彼の顔を見つめ、霞は頬を微かに膨らませる

 

 

「切欠は、一刀やで?」

 

「俺?」

 

「せや・・・一年前、ウチ見たんやから

空から、白い流星が降ってくるのを

一刀、一年前にはこっちの世界に来とったんやろ?」

 

「うっ!?」

 

 

“見られてたのか”と、一刀は表情を曇らせる

が、そんな一刀の心中に気付いたのか・・・霞は、呆れたように溜め息を吐き出した

 

 

「ま・・・安心せぇ

魏の中じゃ、見たのはたぶんウチだけやから

手紙にも、自分探しの旅って書いたしな

華琳様には、バレとらんよ」

 

「なら、いいんだけどさ」

 

 

ポリポリと頬をかき、安堵の息を吐き出す一刀

その胸の中、彼女は何やら不安げな表情を浮かべる

 

 

「なぁ、一刀

一刀は、ウチらのこと嫌いになったん?」

 

「なっ・・・そんなわけないだろ!?」

 

「だったら・・・だったら何で、早う帰ってこんかったの?

なんで一年間の間、魏の皆んとこに顔を出してやらんかったん?」

 

 

この言葉に、思わず言葉を失ってしまう一刀

そんな一刀を追い詰める様、霞は言葉を続けていく

 

 

「最初は華琳の手紙に変なこと書いてまったから、華琳が怒ってる思うて帰れんのかなって思ったけど

それは、絶対に無いはずや

一刀ならきっと、それでもウチらんとこ帰ってくるはずやって

ウチは、そうおもっとる」

 

「霞・・・」

 

「それに・・・自惚れなんかやなく、一刀だってわかっとるやろ?

華琳がそんなことで、怒るわけないやん

今帰ったらきっと、一刀に泣いて抱き着くはずやで

そんで、それからその手紙のことでちょいちょいからかってくるんちゃうかな」

 

 

“違うか?”と、霞の言葉

それに、一刀は静かに微笑んで見せた

 

 

「そうだね・・・きっと、そうだ

華琳ならきっと、そうするだろうね

そんなことで首を刎ねるなんて、絶対にしないよ」

 

「せやったら・・・」

 

「けど、ダメなんだ

まだ、俺は帰れないよ」

 

「っ!」

 

 

言葉を失う霞もよそに、彼は自分の胸に手をあてる

それから、フッと笑みを浮かべ言葉を紡いでいく

 

 

 

 

「俺は、“ならなくちゃいけないんだ”・・・だからこそ、名乗ったのだから

この、“司馬懿仲達”の名を」

 

 

 

 

 

「かず、と?」

 

 

いったい、どういうことなのか?

彼女が、そうたずねようとした直後だった

 

 

「ハァァァアアアアア!!!!!」

 

「っ、うおぅ!!!??」

 

 

彼女めがけ、刃が振るわれたのは

彼女はそれを咄嗟に、自身のもつ偃月刀で受け止めた

 

 

「な、なんやいきなり!!??」

 

「一刀、大丈夫だったか!!?」

 

「一刀さん!!」

 

 

突如、襲い掛かった刃

次いで、一刀の側に駆け寄る二つの影

その姿を見て、一刀は焦ったように声をあげる

 

 

「華雄!!雛里ちゃん!?

いったい、どうやってここに!!?」

 

「それは、その・・・あまり思い出したくないのですが、“落ちてきたんです”」

 

「・・・は?」

 

「今言ったとおりです

落ちてきたんです、あそこから」

 

 

心なしかげっそりとしたような雛里に言われるがまま見つめる先

見上げれば、自分が落ちた時と同じような景色が見える

 

 

「えっと・・・詳しく聞いてもいいかな」

 

「詳しくも何も、下に行くための道が中々見つからなくって

そしたら華雄さんがいきなり、“そうだ、落ちたらいいのか!!”とか叫びだして」

 

「あ、あの、華雄さん?

いったいどうして、そんな結論に?

俺の国だとソレ、“そうだ、落ちて楽になろう”って言ってるようなもんだよ?」

 

「いえ、この国でもそのまんまの意味ですけど」

 

 

“単純明快”にも、限度がある

道がないから、落ちればいいなど

それはもう、どうみても自殺志願者だ

 

 

 

「なに、私は武人だ

武人たる者、落下中上手く木の枝を掴むことくらい造作もないことだ

・・・結局折れて、思い切り地面に叩きつけられたがな」

 

「うおい!!?

ヤバいじゃないか!!」

 

「大丈夫だ

雛里を庇いながら、しっかりと受け身をとったからな(ドヤァ・・・)」

 

 

 

などと、素晴らしいドヤ顔で言われても信じられない

彼女の中では“受け身をとる→問題解決”となっているのだろうか?

 

 

「それよりも一刀・・・今は目の前の賊を何とかせねばなるまい」

 

「あ、華雄彼女は・・・」

 

「華雄っ、アンタ華雄か!!!?」

 

「な、貴様は・・・張遼!!?」

 

 

驚き、声をあげる2人

その光景に思わず吹き出す一刀の横で、雛里もまた驚いていた

 

 

「霞さん!?」

 

「はぁ!!?

なんで雛里までおんねん!!?」

 

 

 

ギャーギャーと、騒ぐ三人のすがたをよそに

一刀は唯一人、安堵したように溜め息を吐きだしていた・・・

 

 

 

 

 

ーーーー†ーーーー

 

 

「なるほど、なぁ・・・」

 

 

木の幹に背を預け、霞は静かに呟いた

その目の前には、一刀たち三人がそれぞれ座っていた

 

あれから、すぐさま休憩できるような場所を見つけた四人

それからすぐ、霞に色々と話したのだ

 

何故、雛里と華雄が一緒にいるのか

雛里の考えた策について

自分達が今、建業に向っていることなど

 

それらを全て、彼女に話したのだ

 

 

「なんや、あれやね・・・面白そうなこと、しとるやん」

 

「まぁね」

 

 

言って、二人は笑う

そんな中、霞は真剣な表情を浮かべ口をひらいた

 

 

「それが・・・“さっきの話”に、関係しとるんやね」

 

「・・・まあ、ね」

 

 

“そか”と、一言

そんな彼女に向い、一刀は苦笑いを浮かべ話しはじめる

 

 

「それで、霞はどうするんだ?

俺を・・・魏に、連れて帰るつもりか?」

 

「せんよ、そんなこと」

 

 

一刀の言葉に、キッパリとそう応える霞

おまけに、“何を、アホなこといっとるん?”などと言う始末だ

そのあまりのあっけなさに、華雄と雛里はポカンとしていた

 

無論、一刀もである

 

 

「いや、その・・・いいのか?」

 

「じゃあ逆に聞くけど、一刀はウチと一緒に帰ってくれるんか?」

 

「それは、その・・・」

 

「ホラ、な

そんなら、意味ないやん

それにウチ、別に一刀を魏につれて帰る為に旅をしとったわけちゃうし」

 

「む?

ならば、いったい何故・・・」

 

 

華雄の言葉

その言葉の最中、霞はニッと笑顔を浮かべ言ったのだ

 

 

 

 

「ウチは・・・誰よりも先に、一刀に会いたかっただけやもん♪」

 

 

 

 

その一言に、一瞬言葉を失う一刀

だがすぐさま、その頬を真っ赤にしたまま口をひらく

 

 

「霞、その・・・」

 

「それに、ウチもこれから一刀の旅についてくしな♪」

 

「・・・え?」

 

「「は・・・?」」

 

 

再び、言葉を失う一刀

いや今回は、雛里と華雄もセットで黙ってしまった

そんな中、唯一人明るく笑う霞

 

 

「もう二度と、ウチらの前から消えんよう見張りが必要やろ?

それに、一刀と一緒なら・・・きっと、なんだって楽しいもん♪」

 

「霞・・・」

 

 

呟き、見つめる先

華雄と雛里は、クスリと笑い頷いている

それを見て、一刀もまた笑っていた

 

 

「ああ、そうだな・・・こっちから、お願いしたいくらいだ」

 

「お、そんなら・・・?」

 

「ああ、勿論だ」

 

 

立ち上がり、一刀は彼女に歩み寄る

そして真っ直ぐに彼女を見据えると、優しげに微笑んで見せた

 

 

 

 

「もう二度と、俺が皆を泣かせてしまわない様・・・俺の傍で、見張っていてくれないか?」

 

 

 

 

霞は、気付いていない

自分が今、大粒の涙を流していることに

そのことに気付かないほどに・・・彼女は、喜んでいた

 

ずっと、求めていたのだから

その、太陽のような笑顔も

その、温かな空気も

 

どれも・・・ずっと、自分が探していたモノだったのだ

 

 

(やっぱり、かわらへん・・・なんや、色々隠しとるみたいやけど

それでも、やっぱり一刀は一刀や)

 

 

グッと、彼女は拳を握りしめる

それから、自分の体が微かに震えているのに気づいた

 

“やっぱ、変わっとらんわ”と、彼女は笑う

 

 

 

 

 

「任せとき

もし天が無理やり一刀を連れ帰ろうとしても、ウチが全力で止めたる

そんで、この旅が終わったら・・・絶対に、また華琳達に会わせたるわ」

 

「ああ、頼むよ」

 

 

 

 

 

ゆっくりと、自然と近づいていく2人

 

重なる・・・二人の唇

 

三年間の、長い別れを経て

今再び・・・繋がった絆が、確かにそこにはあった

 

 

 

「しっかし、ちょうどよかったよ」

 

「しかし、ちょうどよかったわ」

 

 

 

 

まぁ、しかし・・・

 

 

 

 

 

「実は、道に迷っちゃってさ・・・」

 

「実は、道に迷ってしもうて・・・」

 

 

 

 

 

その道のりは、まだまだ障害だらけのようだが・・・

 

 

 

 

 

 

「「・・・え?」」

 

 

 

 

 

 

 

・・・続く

 

 

あとがき

 

新たな仲間が加わった今回

 

プロットの段階で、実は仲間にするのを凪と霞とでを迷っていたのを今でも覚えています

結果、のちのち仲間になるあるお方との絡みやすさを考えて霞に決定しました

 

まぁ、既読の方はわかるかもしれないですが、結果的にはかなりテンポのいい会話ができるメンバーになったかな、と

そう思っています

 

例のごとく、この話も多少文をいじったくらいです

 

建業編からは、ちょっと大変になるかもしれませんね

 

では、またお会いしましょう

 

 

 


 
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