漫画的男子しばたの生涯一読者
TINAMIX
漫画的男子しばたの生涯一読者
しばたたかひろ

■雑誌販売に新たな波はくるか?

20世紀も終わりに近づきつつある今日このごろ。皆様いかがお過ごしでしょうか。しばたは相変わらずです。というわけで変わりばえしなくて申し訳ないけれども今回も雑誌の話からスタートだ。

・定期購読がインターネットで

漫画といえば、これまで読者が自分で本屋に行ってお金を払って買うというのが主な購入形態だった。今ではインターネットのオンライン書店が充実してきつつあるのでそれも多少変わってきているが、雑誌はいまだ書店やコンビニなどで買うという形態が圧倒的に多い。

そんな中、昨年から「コミックビーム」(エンターブレイン)が定期購読を受け付けるようになった。その後、「ウルトラジャンプ」(集英社)、「サンデーGX」(小学館)も続いた。実際に筆者もこれらのサービスを利用しているが、書店での発売日前後には本が郵便で送られてくるので買い忘れることもなく、なかなか重宝している。正直なところ、これだけ継続的に購読している読者が多いのに、漫画雑誌がこれまでまったくといっていいほど出版社から定期購読できなかったほうが不思議なくらいだ。なお、インターネット書店では「まんが王倶楽部」などが雑誌の定期購読サービスを行っている。ただ、ウルトラジャンプ、サンデーGXあたりは出版社から直接買える分、送料がかからないのでオトクである。

ウルトラジャンプ
「ウルトラジャンプ」表紙
集英社

とはいえ、上記3誌にしてもこれまでは料金の支払いを現金書留や郵便振替で行う必要があり、それがちょっと面倒くさかった。郵便局は営業時間が短いし、ついつい払い込みを忘れてしまいがちだったのだ。どうせならインターネットで払い込みができればいいのに……と常々思っていたのだが、とうとうウルトラジャンプ、それから同じく集英社の「Lady's Comic YOU」がWebページからの定期購読申し込みを受け付けるようになった。これは漫画界的に見ると、秘かに画期的なんじゃないかと思う。

定期購読にしろインターネットでの販売にしろ、筆者としてはもっともっといろんな雑誌でできるようになってもらいたい。もちろんこういうやり方が向かない雑誌というのはたくさんある。週刊雑誌なんかはとくに、読みたいときにフラッと駅の売店で買うとかいうスタイルのほうが向いているだろう。でも、「ネムキ」(朝日ソノラマ)とか「アックス」(青林工藝舎)みたいな書店で見つけにくい本や、「アフタヌーン」(講談社)みたいな重 たい本、それから発売日を忘れがちな隔月誌などの雑誌については発売日に自動的に届く定期購読の効果は大きい。定期購読だけでなく、バックナンバーを1冊だけ購入するとかいろいろな買い方ができるとなおのこと。おそらく徐々ににインターネットでの通販や定期購読を受け付ける雑誌も増えてくるんじゃないかとは思うけど、こういったことが広まってくれば、本が書店に並ぶいわゆる「発売日」よりも、家に送られてくる「発送日」のほうが重要になってくるかも。

コミックビームホームページ→http://www.enterbrain.co.jp/comic/
サンデーGX定期購読について→http://websunday.net/gx/teiki.html

・オトコノコは少女漫画の夢を見るか!?〜アワーズガール

雑誌1
「アワーズガール」表紙
少年画報社

10月の創刊雑誌の中で最も気になったのは、少年画報社の「アワーズガール」だ。好調に拡大を続けるヤングキング系列のニューフェイスで、今度は「少女コミック誌」である。創刊号の執筆陣は、おがきちか、川原由美子、犬上すくね、逆柱いみり、篠原鳥童、芳崎せいむ、有元美保、佐々木久美子、今市子、波津彬子、伊藤潤二、小石川ふに、大沢美月、黒田硫黄。パッと見て気づく人も多いと思うけれど、「ネムキ」(朝日ソノラマ)とちょっと似たラインナップとなっている。

少女漫画誌としては珍しい、そして青年漫画雑誌によくあるB5中とじという判型からも想像できるとおり、このアワーズガール、わりとオトコノコでもオッケーな作りになっている。オトコノコでも読めるというのをウリにした少女漫画雑誌としては、エニックスの「ステンシル」があるが、アワーズガールはそれよりもさらに性別を問わない感じがする。むしろ問うのは年齢層だろうか。少年少女がその年代の生の気持ちでドキドキするっていうよりは、それよりも大人が昔の気持ちを思い出しつつ読むといった趣。

ネムキ
「ネムキ」表紙
朝日ソノラマ

創刊号ではまず巻頭カラーのおがきちかがおかっぱ頭の眼鏡っ娘がかわいい青春ほのかにラブ漫画でみずみずしい感性を見せつけ、黒田硫黄が何気ない描写でも独自の味わいを出す高い表現力できれいに締めくくった。川原由美子の繊細で可憐な美しさ、犬上すくねの柔らかく甘い味わい、のたりとした雰囲気の逆柱いみり、奇矯な設定が光る伊藤潤二、絵的にも話的にも端整に完成された今市子などなど、個性あふれるメンツが具合良く収まってこの雑誌独自のカラーを出していた。創刊号であるわりに、全体のまとまりが非常に良く、とんがり過ぎず丸まりすぎず、絶妙なバランスを作り上げていた。次号は来年の1月下旬になるとのことだが、創刊号がよくできていただけに2号も期待しちゃいますぜよ。

・三和出版から新雑誌2冊!

本連載の7回めで触れたとおり、8月に「コミックフラミンゴ」が休刊した三和出版だが、10月になって新雑誌を二つ投入してきた。

ヤングマン
「ヤングマン」表紙
三和出版

まずはいきなり登場した感のある「ヤングマン」。B5中とじの月刊青年誌である。表紙を見ると、なんか「ヤングマガジン」(講談社)のような「ヤングチャンピオン」(秋田書店)のような……という感じで、絶妙なパチモン感にあふれている。執筆陣は夢枕獏+松久由宇、かどたひろし、原麻紀夫+唯上拓、南方ゴング+井上いちろう、石川賢、古沢優、スズキサトル、岡崎つぐお、市川智茂、工藤かずや+吉迫哲彦。なんか全体にB級感が色濃く漂っていて、これはこれで誌面の統一感はあるかもとか思った。この中ではラブコメ漫画の歴史的傑作(と個人的には思う)「ただいま授業中!」の岡崎つぐおが描いているのがわりとうれしかった。そういえば、11月発売の最新号では永井豪の「どろろん艶靡ちゃん」も始まっちゃってます。

アイラ
「アイラ」表紙
三和出版

それからSM系エロ漫画雑誌であったコミックフラミンゴの流れを汲む「アイラ」も創刊された。フラミンゴはともするとSMという領域を逸脱して異世界へと突っ走ってしまうような作品が多かったが(そこが好きでもあったのだが)、今回はスカトロを中心としてちゃんとSMでエロをやろうという雰囲気が感じられた。判型もフラミンゴはA5平とじだったが、アイラではB5平とじと大きくなって、けっこうイメージは変えてきている。第1号の執筆陣はこのどんと、船堀斉晃、しのざき嶺、果愁麻沙美、拝狼、TRUMP、万利休、そうま達也、目白次美、古賀燕、将門つかさ、海野やよい。このどんとは大河冒険エロ漫画であった「奴隷戦士マヤ」を復活させており、この雑誌の目玉的存在。筆者としては、可憐な美少女のガニ股などみっともないポーズが印象的な果愁麻沙美が、この中ではとくに気になった存在。ノリが不思議ですごく個性的である。とりあえず濃厚な誌面であることは確かなので、それをどの程度まで突き詰めていくのか、楽しみなところである。>>次頁

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