毎度やっているこの単行本未収録作品なんだけど、「すでに書店にないものを紹介するのはどうか」という反応がどうもあるようだ。
まあ書いている本人もそう思わぬでもないのだが、実は確信犯的にやってたりする。いちおう掲載誌も書いているので「こういう雑誌に面白い作品が載りがちである」ということだけでもつかんでいただけたら、というのがまず一つ。それから「雑誌を読まないと見逃しちゃう作品がけっこうある」というのを訴えたいというのがもう一つ。ここでの紹介を読んで「こりゃ雑誌もこまめに読んでいかなきゃいかんなあ」とか思う人が一人でも増えてくれればありがたい。
とはいえ、不親切であることも確かだとは思うので、ここらへんはおいおい考えていくかもしれない(考えないかもしれない)。
「アフタヌーン」9月号(講談社)に掲載された四季賞2000年夏のコンテスト大賞受賞作。
草むらで少女が拳銃を拾うところから物語は始まり、「銃を帰してくれ」とつきまとう青年と彼女を中心に物語は推移する。少女は武器を持っていて「使ったらどうなるか」という想像を弄びながら使わない優越感に酔い、青年は銃を使ってしまったことによる罪悪感に苛まれている。対照的な二人の姿を描きながら、人間の強さ弱さを浮き彫りにしていく。細やかだが説明過剰にならない情景描写、きっちりお話を進めていく展開力、整った描画など高いレベルでバランスがとれている。コマ割りは細かいものの、よく整理されてごちゃごちゃした印象は受けない。今度は超長編を構想中とのことだが、それもぜひ読んでみたいと思わせるだけの魅力を持っている。
「コミックビーム」8月号(エンターブレイン)より連載開始。
茶谷明茂は、コミックビームで1997年1月号「今日はいつもと違う帰り道……」、1997年5月号「街角パラダイス」を発表した後ずっと見なかったが、高い技量の持ち主で再登場を心待ちにしていた作家である。
「秋桜」は、人間のまわりに漂っているけど普通の人には見えない、不思議な「もやもや」したモノが見えるようになってしまった少女が、同じくそれが見える男と出会うところから始まる。まだ始まったばかりでなんともいえないが、街が舞台のゆらゆらしたファンタジーテイストな物語となりそう。筆で描かれたような、ざらざらした質感のあるタッチが特徴的。
「アスミ」は「コミックフラッパー」8月号(メディアファクトリー)、「センチメンタル」は「エクストラビージャン」8/30号(集英社)にそれぞれ掲載された読切。
まず「アスミ」はロケットの事故で母親を失った女の子が出会った、切なくて暖かい不思議な出来事を描く物語。「センチメンタル」は、何年かぶりに出くわした学生時代恋人同士だった二人が、昔の思い出にひたるといった作品。
どちらも派手さこそないが、丁寧な絵柄で爽やかな世界を構築している。垢抜けない語り口には、しみじみとした暖かみがある。きちんと自分のものを持っており、これからに期待できそうな新鋭だ。
「コミックバーズ」8月号(ソニー・マガジンズ)から始まった新連載。万能工具バルカンを使いこなす工房の少女ミロが、「エジソン・シュタイン」と名乗る謎の球体と出会い、大冒険が始まる……といった感じの出だし。1回めからかなりアクションシーンはダイナミックで、ツカミは上々。工房というところから、「天空の城ラピュタ」あたりを思い出させる雰囲気。のびのびした作画もなかなか魅力的。コミックバーズの柳田理科雄原作ものは、すでに筆吉純一郎画の「空想科学大戦!」がある。「空想科学大戦!」はギャグタッチな作品だが、「空想科学エンジン」はストレートな冒険活劇モノといった趣になりそう。
ああ、なんか考えてみたら、今回挙げた作品は「センチメンタル」以外はみんな少女が主役だなあ。狙ったわけじゃないんだけど。