
■雑誌チェックしないと一生読めないかもよ?〜単行本未収録作品
というわけで今回も最後は単行本未収録作品。
この前うちのホームページで「単行本化してほしい未収録作品」というアンケートをやったんだけど(リンク参照)、雑誌に載った作品が全部単行本化されるわけではない。というか単行本化されない作品は相当に多いのだ。まあそんなわけで、何回もいうようだけど雑誌もぜひぜひ読みませう。出版社の方は、単行本化をぜひぜひ。
・東本昌平「SS」
ビッグコミックスペリオール連載作品で、これはたぶんそのうち単行本化されると思う。普段は自動車整備工のおっさんが主役の公道バトルものって感じで、こちらはこちらで渋く、また自動車の疾走感があって面白い。しかし、スペリオール 3/15 No.6に掲載されたお話はちょっと異色のお話ながらいつもにも増してすごく良かったのだ。主人公のおっさんが自分の少年時代を回想するというお話で、静かな描写ながら切々と主人公の想いが伝わってきてホロリとくる。「僕は頑張ったでしょうか?」というセリフがジーンと響いた。
・諸星大二郎「鳥を売る人」
モーニング 3/16 No.14(講談社)に掲載。諸星大二郎は、実はモーニング初登場であったらしい。
地下のシェルターらしき空間に住みつき、地上に出ることもなくなった人類。人々は空を忘れたまま、毎日を過ごしていた。そんななか、とある街にやってきた雑貨屋。彼は「鳥」という生き物をかごの中に連れていたが、誰も鳥という生き物がどんなものか分からない。空を忘れて人類にとって、鳥に関する知識も失われた情報の一つであった。人々はそれをどう扱っていいものやら戸惑い続けるが……。最初の2〜3ページだけで、実にうまいこと世界観を呈示し、諸星大二郎的SF世界に読者をググッと引き込んでくる。そして地に足のついた語り口で物語を進めていく。そこで語られるものは、現実離れはしていても、手触りはしっくりと肌になじむ。ラストの開放感も見事でうならされる。
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・作:中村ジン+画:笠原倫「復活」
ヤングアニマル 3/24 No.6、4/14 No.7(白泉社)に掲載。プロ野球、元大洋ホエールズ/横浜ベイスターズ、現大阪近鉄バファローズの盛田幸妃投手が、脳腫瘍から復活しマウンドに戻ってくるまでの物語。盛田の不遜なキャラクターが元々素材として良かったというのもあるが、それを美化せずに迫力をもって描き出す笠原倫の演出力が見事。最近、笠原倫はヤンマガ掲載の「ジェンマ THE PASTAMAN」など、かなり好調である。もともと過剰な描写でいい味を出せる人だっただけに、登場回数が増えてきているのはうれしい。
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・福本伸行「無頼伝 涯」
「カイジ」「金と銀」「アカギ」などでおなじみ福本伸行が、なんと少年誌に登場。週刊少年マガジン 3/29 No.16から連載スタート。犯していない罪により逮捕された少年・涯の物語。まだ始まったばかりだが、ハッタリは例のごとく強烈だし、つかみは上々。こういう意味もなく夢など見ない、現実の厳しさを教えるような物語は、子供の教育には案外いいかもしらん。
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・八神健「ななか6/17」
週刊少年チャンピオン 3/30 No.17、4/6 No.18(秋田書店)掲載作品。週刊少年ジャンプ(集英社)で「密・リターンズ!」を連載した八神健がチャンピオンに2号連続で登場。ガリ勉でカタブツだった17歳の女の子・ななかが、転んだショックで精神だけ6歳に戻ってしまう……というお話。シンプルでスッキリした気持ちのいい絵柄で後味爽やかなお話を描く。っていうかやっぱり17歳のめがねっ子がこどもことばでしゃべるってのが、なんとも萌えポインツなのだ!
・aloha「TT」
ウルトラジャンプ4月号(集英社)から連載開始。絵柄から見るに、快楽天の看板作家のOKAMAと同一人物であろうと思われるが……。
このお話の主人公は数学者のアラン・M・チューリング。 実際のチューリングは男性だが、ここでは女性として描かれている。今回のメインは、チューリングと同じ大学に入学してきた貧乏な家出身の女性。彼女はいつも援助してくれ、手紙を送ってくれたあしながおじさんに一目会いたいという念願を持っていたが、その前に突きつけられたのは無味乾燥な現実であり……といった感じのお話。数学的方面への憧れごころを刺激するアイテムが端々にちりばめられ、格調高き物語を作り上げている。なかなか高品質で楽しみだ。
・熊谷カズヒロ「ドカントラベラー」
ヤンジャン増刊枠で「サムライガン」を連載中の熊谷カズヒロが少年エース5月号(角川書店)に登場。昭和が71年まで続いてしまった別の日本が舞台。男女交際や暴力などが厳重に取り締まられている社会で窮屈に暮らしていた少年の目の前に突然不思議な女の子が現れる。「サムライガン」でも女の子を描かせるとたいへんいい感じの人だが、少年モノでもなかなかいける。みずみずしい描写がいい。このお話はまだいろいろと広げられそうなんで、連載にしちゃってもいいかも。
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・須田信太郎「未来の住人」
コミックビームで「やさしい女は何処にいる」を連載中の須田真太郎が、エクストラビージャン 4/30(集英社)で描いた読切。とくに強くもない学校のかっこよくないエース投手男子が気になっていた女の子。彼女は、これから起こることが全部予想できるようになってしまい、すっと退屈しているのだと語る。そんな彼女に、彼は次の試合でのノーヒットノーランを約束する。青臭くてガムシャラな青春模様をさわやかに描く。ラストのひねりもうまくて感動的。「やさしい女は何処にいる」も好調だが、この人は最近かなりいいお話を描いている。目立つタイプではないが注目してもらいたい。
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・小沢真理「ニコニコ日記」
コーラス 5月号(集英社)掲載の60P読切。
一人暮らしの独身女性・ケイの元に、ある日突然小学生の女の子がやってくる。この娘は、ケイが昔マネージャーをやっていた女優の隠し子で、その女優はケイに娘を押しつけ海外に行ってしまう。この二人が最初はぎこちなかったが、一緒に暮らすうちに、実際の母娘以上に仲良くなっていく過程を描く。女の子の姿がコロコロ可愛らしくて描写も優しく、読んでて幸せな気持ちになれる一作。
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・岩明均「剣の舞」
ヤングチャンピオン 4/11 No.8(秋田書店)から始まった新連載。「寄生獣」の岩明均である。肉親たちを侍に殺され、自分は凌辱された娘が、復讐を目指して上泉伊勢守の高弟・疋田文五郎に弟子入りする……というところから始まる物語。手堅い人だけにこれからが楽しみ。
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・幸村誠「プラネテス」
このコーナーの第1回めで触れた作品だが、モーニング 4/13 No.18、4/20 No.19(講談社)に3話、4話が掲載。今回はわりとドタバタとコミカルにお話が展開。第1、2話と比べるとインパクトは小さいが、その分間口は広いやもしれない。
そろそろページ数もだいぶたまったと思うので、ここらでぜひ単行本を……。
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・吉田基已「水と銀」
モーニング 5/4 No.21(講談社)に第4話が掲載。カケアミ系のトーンを使わない柔らかい絵柄で、暖かく、またほろ苦い青春モノを描く。女性にほのかな色気が漂っているのも良い。何気なく、そしてしみじみとした味わいがあるのもいい。「プラネテス」と並んで、こちらもいずれ単行本化してもらいたいところ。
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・はっとみりみつる「イヌっネコっジャンプ!」
ヤングマガジンUppers 5/3 No.9(講談社)から連載開始。走り幅跳びで高校ランキング2位だったが、跳ぶことを諦めた男子・雄皇(オズ)。東京の大学に入り軟派な生活を送ろうとしていた彼の前に不思議な女の子が現れ、そこから始まる青春物語といった雰囲気。とにかく元気が良く、ハツラツとした雰囲気が良い。ラヴ的な甘さと、疾走する青春のイキの良さが同居している。まだ始まったばかりだが期待を持たせる作品。
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・奥瀬サキ「コックリさんが通る」
ヤングサンデー 4/27 No.20(小学館)から連載再開。ものすごく久しぶりの復活。繊細で緻密、そしてダークな作画はまた一つ完成度を高めている。まだ話の全貌は見えていないけれども、短期集中連載だけにテンションの高い作品になりそう。とにかくガシガシと描き込まれた画面のクオリティに瞠目せよ!
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・阿部秀司「エリートヤンキー三郎」
兄二人が伝説的な番長であったため、自分もまつり上げられてしまったが実は気弱な「エリートヤンキー」三郎と、彼を取り巻く不良たちの物語。ヤンキーたちの頭悪げな勘違い的行動の数々を、コミカルで力づくな筆致で描写。あれよあれよと進んでいくお話が、なんだか妙に面白い。ヤンキー漫画は敬遠しがちな人でも、うまくいけばヒットする。この多少下品で、有無をいわせぬパワーは一見の価値あり。まだ新鋭なのに、どうしてここまでって感じのヤンマガ的煮詰まりぶりを発揮している。
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・いけだたかし「三月/四月」
Judy 5月号増刊 YOUNG Judy「恋愛・結婚がいっぱい!!」(小学館)に掲載。A5平とじの増刊枠なので、つい見逃しがちな作品だがクオリティは高い。いけだたかしはビッグコミック系の増刊枠などで、端整な絵柄のしみじみと読める短編をいくつか発表している新鋭作家である。「三月/四月」も、なかなかじんとするいいお話で、いけだたかし作品の中でもかなりいいほう。 高校の卒業式を終えて帰ってきた女の子。彼女の表情は何やら寂しげで割り切れなそうな風情。そして彼女は思い出す。三年前の、中学の卒業式の後のこと。そのころ、そして今までずっと好きだった彼のことを。センチメンタルで清潔感のある美しいお話が、いけだたかしの端整な絵柄によって生きている。
ってな感じで今回はおしまい。いや、それにしても2ヶ月分だけだってのに、まとめるとけっこうな量になりますな。

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