TINAMIX REVIEW
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「第二回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」レポート

■サイドイベントの模様

横浜会議におけるワークショップ終了後、会議に参加できなかった一般の人々へ向けた連動イベント「児童虐待と表現規制に反対する集い」(会場:エルパイネ/横浜)が連絡網「AMI」の主催で行われた。

第一部のパネリストは、あざみ野圭二(マンガ家)/枝野幸男(民主党・衆議院議員)/斎藤環(精神科医)/牧田在生(マンガ家)/八的暁(マンガ家)/司会:鎌やん(マンガ家)/永山薫(評論家)(五十音順)

横浜国際会議のワークショップ終了後のリラックスしたムードのなか、政治家の枝野氏をまじえてマンガ家たちの活発な発言が行われた。ここでの話題の中心は、実際に子供をかかえている「親の感情」とか、道徳的にいかんと思ったら(行政に頼るのではなく)自ら子供に対して「ダメだっ!」という「親の義務や責任」とかいったものである。ようするに感情のレベルを無視できないという話。

サイドイベント

たとえば八的氏は、たしかに職業はエロマンガ家だが、親としては「セックスするばかりのマンガ」や「人を殺してばかりのマンガ」を子供には読ませたくないという。すなわちイイことダメなこと(道徳)は家庭で教えるべきという考え。これに対して枝野氏は「わたしも本来、親の責任が筋だと思う」……とはいっても、子供の行く先すべてに親が目を行き届かせるのは難しいことだ。したがって枝野氏によれば、規制ではないかたちで、何らかのガードを送り側がつくり「規制派の感情」に対応してあげないと、最後は感情論で負けてしまうかもしれない。

第二部のパネリストは、東浩紀(哲学者)/斎藤環(精神科医)/関根玲(東京都小平市市会議員・編集者)/蓼野絵理子(マンガ家)/宮台真司(社会学者)/山本夜羽(マンガ家)/米沢義博(マンガ評論家)/司会:砂(マンガ家)(五十音順)

第二部は、ワークショップに参加できなかった聴衆にむけて、パネリストたちによる横浜国際会議の報告会といった趣。会場を見わたすと、エロマンガのみならず美少女系コンテンツの出版編集者も姿をみせている。学生風の青年たちが真剣そうな顔をならべるなか、国際会議を乗りきった安堵感につつまれることもなく、ワークショップでコメントしきれなかった話題について東氏が切りだした。

1996年に成立したアメリカのチャイルド・ポルノグラフィ禁止法は、子供に性欲をいだくこと自体、そうした感情自体をなくすための環境を醸成しようという法律である。これが何を意味するか。近代法は外面(具体的な行為)と内面(感情や欲望)を区別し、後者を管理しない。しかしこの法律は、外面だけでなく個人の内面までも国家が管理しようというものだ。関心のある人はいちど条文に目をとおしてみるとよい、と。

宮台氏もこの発言に呼応する。日本はこれから理念がたいせつになる。なぜか。不特定の他者を信頼すること、これが成熟した近代社会の美徳だった。しかし銃犯罪、ペドファイル、そして2001年九月の同時テロ事件を経て、アメリカはいまや不特定の他者を信頼せず、リスクが少ないかわりに不自由な社会を選択している、というわけだ。

――そうなると、私たちの社会は、これからいかなる未来を選択するのだろうか。いや違う。私たちは、これから、いかなる社会を選択するのだろうか。しかも未来でなく、近い将来において。欧州連合のサイバー犯罪条約は「成人が未成年者をよそおうポルノグラフィ」を児童ポルノだとして処罰する。自分も子供もかわいい奥さんも絶対傷つかない社会のイメージはどんなものだろう。ことは児童ポルノ法だけではないのかもしれない。よしきた、ゼロからのスタートだ!◆

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