青少年のための少女マンガ入門
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青少年のための少女マンガ入門

■一般雑誌と少女マンガの関係(黎明期)

さて、本題に入る前の予備知識として問題。

Q. 雑誌の殿堂、大宅荘一文庫に残る、史上最初の一般誌における少女マンガ記事は、いつ頃どの雑誌に載ったでしょうか? ヒント:まだ刊行され続けている雑誌です。

A. 週刊朝日(朝日新聞社) 昭和41年5月13日号に掲載。ちなみに記事タイトルは、「グロとピンクに塗りつぶされる少女マンガ」

内容としては、まぁいつの時代にもある「子供にこんなマンガを読ませる出版社を糾弾」的な記事。ちなみにグロマンガの例として槍玉にあげられているのは、楳図かずおの『へび女』。今では名作の誉れ高い『へび女』も、同時代的には悪書的扱いを受けていたのだ。

誌面:週刊朝日(朝日新聞社)昭和41年5月13日号
週刊朝日(朝日新聞社)昭和41年5月13日号より。有名一般誌に載った初の少女マンガ記事。

興味深いことに、この後少女マンガ関係の記事は途絶える。まぁ、本宮ひろ志ともりたじゅんの結婚が女性誌でおもしろおかしく書かれたりなんて程度のはあった。だが、マンガ家の私生活ではなく、作品ベースで少女マンガに注目した記事は、昭和42年〜昭和48年の間、まったく書かれなかった。「少女マンガなんてニュースネタとして弱い」という社会の判断があったのだろう。

しかし、少年マンガに関しては状況はまったく逆だった。以下有名な話ばかりで恐縮だがいくつか例をあげよう。

例えば、週刊少年マガジン昭和45年2月15日号(講談社)において、人気連載「あしたのジョー」の人気キャラ力石徹の死が描かれる。これを受けて、編集部に力石に対する弔問が殺到。そして、ついには昭和45年3月24日東京都文京区の講談社本社講堂にて「力石徹告別式」が行われる。マンガの登場人物の告別式という前代未聞の話、これを社会は「事件」として取り扱った。

例えば、その力石徹告別式の1週間後、昭和45年3月31日に発生したよど号ハイジャック事件。赤軍派のメンバーにハイジャックされた日本航空351便ボーイング727「よど号」。途中乗客を解放、代わりに山村新治郎運輸政務次官を身代わり人質として北朝鮮に飛ぶ。そこで、ハイジャック犯たちは政治的亡命。そのハイジャック犯たちは、犯行声明文にこう記した。「我々は…あしたのジョーになる」。

あれ、なぜ「あしたのジョー」関係の話ばっかり例に書いてるんだ、オレ? それは、梶原一騎ファンだから。

とまぁ、とにかく当時は、社会がマンガと真っ向から対峙しなければならない時代だった訳だ。しかしその結果、マンガは現代文化として決定的に認知されたのである。

以下戯言で申し訳ないが、この世の文化、それも長く続く文化は、どれも一度は社会との軋轢を引き起こしている。歌舞伎なら、出雲のお国の出現から江戸幕府による遊女歌舞伎の禁止という流れ。バレエなら、1913年5月29日パリのシャンゼリゼ劇場で、ロシアバレエ団が上演した『春の祭典』(振付 ワスラフ・ニジンスキー)。これは、「春の虐殺」と当時の新聞に描かれる程の激しい混乱を引き起こした。オタク文化にとっては、やはりあの連続幼女誘拐事件が相当するのだろう。

閑話休題。というように、昭和40年代は社会的にもマンガが注目を浴びるようになった時代だ。なのに、少女マンガに関する記事は出てこない。重ねていうが、これは興味深い。

そして、少年マンガ、特に少年マガジン誌の低迷ととって変わるように、1974年、ある少女マンガ作品が、社会現象を巻き起こす。そして、上記週刊朝日の記事の次に有名一般誌に載った少女マンガ記事のネタ元になった。

その記事には、こんなタイトルがついている。

「ヤングの間で話題騒然のコミック 『ベルサイユのばら』ってどんな本」

誌面:女性セブン(集英社)昭和49年7月18日号
女性セブン(集英社)昭和49年7月18日号より

掲載誌は、女性セブン(集英社)昭和49年7月18日号。記事内容的には、作品紹介、作者のプロフィール、そしていまや定番となった宝塚公演に関する記事。

このあたりから、一般誌も少女マンガを恒常的に記事ネタにするようになる。そう、『ベルサイユのばら』(池田理代子)がすべての門を開けたのだ。こんなこと、当時リアルタイムに経験していた人にとっては。「何を今さら」と言われるかもしれない。だが、私を含む当時を体験していない者にとっては、やはり新鮮な驚きを感じることだ。

あ〜、なんか堅い文章続いてすまんね。「ていうか、いつになったら週刊プレイボーイの話が始まるんじゃ!」とお怒りの貴兄、前振りはようやく終わりました。

なぜなら、週刊プレイボーイ初の少女マンガ記事も、「ベルサイユのばら」を取り上げたものだからである。 

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