No.999723

トラック運転手がなぜ異世界に送られてしまった話

BLACKさん

最近の異世界転生ものの影響で書いたものです。そしてネットで異世界転生のトラックにはねられるというのが多く「トラック運転手かわいそう」とあったのでトラックの運転手の方を異世界に飛ばすという発想が生まれてできたものです。続編ができるかは作者の気分などによります。
またPixivにも同じものを投稿しています。(作者名は違いますが同一人物です)

2019-07-21 22:07:56 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:645   閲覧ユーザー数:642

 

ある世界の現代の地球。そこに一人の男がいた。

その男は配送トラックの運転手をしていた。

その男の名は芝神士十郎(しばがみ しじゅうろう)、年齢30歳である。

特にやることがなく配送トラックの運転手をしていた。

 

「はぁ~あ」

 

楽しいことはないかと運転しながら思う士十郎。

 

「おっと信号が青だ」

 

きちんと自分側の信号が青だと確認し、発進させる。

 

「! なっ!?」

 

歩車分離式の信号だということをまともに知らなかった歩行者が走って横断歩道を渡ろうとしたのだ。

 

「やばい!」

 

士十郎は急いでブレーキを踏むが……。

 

「間に合わねえ!」

 

だがその時である。突如その場で光が現れその光が周りを包み込む。

 

「!」

 

士十郎は思わず目をつぶった。

そして光が消えると同時に突如トラックと士十郎はその場から消えていた。

 

「え? 何?」

「トラックが消えた?」

「何!? マジックか何か?」

 

周りの人間も混乱するのであった。

 

 

 

 

 

士十郎が目を開ける。

すると……。

 

「なんじゃこりゃあああ!」

 

自分と自分の乗ってるトラックがいつの間にか平野にいたのだ。

 

「え? 何!? 俺さっきまで街にいたんだぞ。瞬間移動!? でもなんで? え?」

 

士十郎はあまりのことに混乱する。

その時である。自分の持っている携帯電話が振動する。

 

「なんだ?」

 

士十郎は携帯を見てみる。そこにはメールが届いていた。

 

「メールか……なんだこのアドレス?」

 

士十郎には発信者が「???」と書かれていたメールが届いていた。

 

「馬鹿な、俺の携帯は登録したアドレス以外は来ないようにしてるんだぞ。ハッカーか何かか?」

 

士十郎はあまりに不可解だと思ったが……。

 

「バグるかもしれんが……」

 

士十郎はメールを開いた。

 

「……」

 

メールにはこう書かれていた。

 

【あなたは自分のいた世界とは別の世界、よく言う「異世界」にいます。あのままだとあなたは事故を起こしていたので異世界に飛ばすしかありませんでした。

ただし異世界に飛ばしましたが元の世界に戻すことが現在不可能なのでこの世界で暮らしてください。

なおこのメールのあとにまた別のメールを送りますが、このメールを読めばあなたはこの異世界の言語が自動翻訳されその世界の言葉を自動で読み書きすることが可能となり会話もできます。

それではご武運を……】

 

「…………なんだよこのメール……」

 

士十郎は携帯を使って現在地を見てみるが……。

 

「何々? 全然わからん」

 

一応現在地は出て来たものの見たことない地名や国が出てきていた。

 

「…あ、メールだ」

 

士十郎は新しいメールを見る。

 

【この世界は「カオレース」と言いあなたの今いる場所は「ヴェス」でその場所は「ファレシア王国」という国の中にあります。

またこの世界は「ファレシア王国」の他に「バレス共和国」「ゲレン帝国」「ヘリケン合衆国」「サーラン」があり、「ファレシア王国」この世界の中心に位置し一番大きな土地を有しています。

また「カオレースは中世くらいの文化なのでトラックなど現代的なものはありません】

 

「一番でかい土地ね……次のメールだ」

 

【この携帯はあなたの魔力で簡単に充電できます。この世界に来たと同時にあなたに魔力が宿っています。魔力はあなたがよく知る魔法を使えるためのものです。

ちなみにあなたの魔力数は1000万です。この世界に飛ばしたお詫びとして常人はおろか本来その世界で最強とされる人の1000倍の魔力を渡しました。

またこのトラックの燃料はガソリンではなくあなたの魔力となっておりあなたの魔力タンクとしても使用可能です。このトラックの魔力容量は100万であり、連続使用5年は可能な燃費となっています。

それと魔力は基本的に1日経てば回復できますが一番の回復方法は寝ることです。6時間寝れば全回復します】

 

「ますますRPG的だな。……まだメールあるのか」

 

【なお、この携帯は一応あなたのいた世界とつながることができますが通話はできません。あくまでインターネットなどができるだけです。

また通販でご注文された場合あなたが元いた住所を記入すればこちらの世界に送られるようにしておきます。ご自由に通販をご利用ください。

なおお金に関しましては通貨がありますがこれはこの世界では国ごとではなく全国共通の通貨となり貨幣価値はこうなっております。

 

1カロ=100円 最低単位が1カロからとなっています。ちなみにこの世界での一般的職業の賃金は月給で2000カロとなっています。

ちなみにあなたが行っていた運送業をこの世界で直すと平均は3000カロ(あなたの世界で言う30万円)となっています。

またこの世界には保険などが一切ないです。】

 

「……保険なしで30万か微妙と言えば微妙だ。だが30万円か……まあ何事もなければいい感じだな。…いや家賃とかも考えるとやはり微妙……どころかまずいな、まあ最初の手取りとしては上々と考えるべきか」

 

士十郎はトラックを動かそうとすると……。

 

「…またメールか」

 

士十郎はメールを見る。

 

【あとこの世界はRPGのようなレベルがありますが、あなたの場合は仕事をすればレベルが上がります。あなたは魔力量こそ世界最強ですが能力がてんでダメです】

 

「仕事か……まあどちらにしろ仕事探ししないといけないが……仕事ってどうやって登録するんだ? ……メールが来たぞ」

 

【仕事はギルドに行って登録してください】

 

「電話してくれよ……またか」

 

【この世界では魔力念話がありますがあなたに念話を送れば、あなたの携帯にその人の名前が出てきますので登録することが可能です。

ちなみにあなたから電話念話する場合は登録した人限定となります】

 

「基本受け取りしかできないね、登録した人は別として……」

 

士十郎は今度こそトラックを動かして移動した。

 

「まあこのトラック、会社が俺個人にくれたもんだから会社としてはなくしても問題ないと思うけど……いや問題あるか。

登録のこととか突然なくしたのかとか言われるだろうしな……。とはいっても今の俺にはどうすることもできんか」

 

士十郎はぼやきながらも移動した。

 

 

 

 

 

トラック運転手がなぜ異世界に送られてしまった話

 

 

 

 

 

 

士十郎はファレシア王国の王都である「キリケーン」にやってきた。

トラックは流石にそのまま入れるのはまずいと思い街の外に置いてきた。

 

「……」

 

士十郎は特に問題なく街に入れた。

 

「身分証とかの提示なしか。それだけ治安がいいのか、それともその発想がないのか……」

 

士十郎は少し警備体制を不安に思ったがその緩さのおかげで入れたことに感謝する。

 

「ギルドギルドっと……」

 

士十郎はギルド店を探して仕事の登録をしようとする。

 

「え~と運送業の登録ですね」

「はい」

「それではこれに指名を書いてください。それと事業社の名前も書いてください」

「わかりました……」

 

士十郎は氏名は普通に書く。しかし……。

 

「会社名なんてしよう」

 

会社名は全く考えてなかった。

 

「う~ん……」

 

考えた末考えた会社名は……。

 

「個人名『芝神士十郎』さま、会社名は『縦横運送』ですね」

「はい、それでお願いします」

 

職員が登録手続きをする。そして登録が完了し、士十郎はギルド店を出ていく。

 

「われながら適当な名前だな」

 

士十郎はそこまでネーミングセンスがなかったので適当に縦横無尽から取った名前なのだ。

 

「とりあえずこれで許可証ももらったし、改めて身分証もできたし……まずは売り込みだけど……」

 

士十郎は何を運ぶかとかまではまだ考えてなかった。

 

「とりあえずまずは外を見て回るか、それと道筋とかも覚えておかないとな」

 

士十郎はいったん街を出てトラックに戻る。

そしてトラックを動かして道筋を走らせてみた。

 

「ふむふむ、さっきはとにかく適当だったからか少し凸凹してたけどこっちはちゃんとした道っぽいから整備されてるな。まあさすがにアスファルトとかはないけど……」

 

士十郎がトラックを走らせて数分後……。

 

「うん?」

 

道の真ん中でフードをかぶった一人の女性が座り込んでる馬と一緒にいた。

 

「どうしたんですか?」

「え?」

 

女性は驚く。女性が驚いたのは声をかけられたからではなくトラックを見たからである。

 

「あの……それは…?」

「ああ、これトラックって言う荷物とか運ぶためのものね。それより馬がどうかしたんですか?」

「実はちょっと大事な用があって急いで馬を走らせていたのですが、馬が脚をくじいてしまったようで……」

「ふぅ~ん……じゃあとりあえずトラックに乗りなよ、送ってやるから」

「え? これですか?」

「その程度の馬なら今のこいつでも十分運べるし大丈夫だよ。まあしっかりどこかにつないでおかないと危ないけどな。それに急いでるならこいつで行けば楽だぜ」

「でも……」

「遠慮なさるなって……まあどうしてもいやなら別にいいけど」

「…わかりました、乗せてください」

「はいわかった、ちょっと下がっててな」

 

士十郎はハンドル近くにあるボタンを押して荷台を展開する。

 

「じ、自動で動く!?」

「うん? ああ、そうか珍しいんだったな。とりあえず後ろの荷台に馬をどこかしっかりつないでおいてくれ」

「は、はい」

 

女性は馬を荷台に連れて行き、しっかりつなぐ。

 

「あんたは俺の隣に座ったほうがいいぞ。そこだと人間は馬以上に危ないからさ」

「は、はい」

 

女性はトラックの助手席にやってくる。

 

「で、どこまで? 俺も来たばかりで道はまだ詳しくないから教えてくれないか?」

「はい、『ゲレン帝国』の首都『ガリオン』でここから100キロのところです。早くお願いします……できれば今日までに…」

「なんだ思ったより近いな、この距離ならいつものスピードで1時間くらいだな」

「1時間!? 馬をどれだけ飛ばしても最低でも6時間かかりますよ!?」

「そりゃ馬は1時間連続では長く走れんからな。だがこいつなら時速100キロを俺の根性が続けばどれだけでも走れるさ。その気になれば200キロは行けるけどさすがにそれはきつい」

「は、はぁ……」

 

女性は信じられないという顔をする。

 

「っても怪我してる馬がいるから安全運転にしておくか。

それでも30キロくらいなら安全運転は簡単だな。あ、でも30キロだとどれだけ頑張っても3時間かかるな。

連続運転はあれだから少し休憩するか、それでいいか?」

「今日中に着ければ……」

「そういえば今何時?」

「今ですか?」

 

女性は懐中時計を出す。

 

「午後2時15分ごろです」

「休憩込みだと……午後6時くらいだな」

「午後6時……やはりそれでも早い……」

「ええっと……時計合わせっと……」

 

士十郎は腕時計を今の時間に合わせる。

 

「それじゃあ出発っと。ああ言い忘れたけどこれ初めて乗るんだろ。ならしっかり捕まっとけよ。

あ、それとそこにシートベルトって言うこういう固定するもんあるから肩と腰に着けといて」

 

士十郎が丁寧にシートベルトのはめ方を教えて、女性は要領よくシートベルトを着ける。

 

「それじゃあ行くぜ」

 

士十郎はトラックを動かし出発した。

 

士十郎達が出発して40分ほど経つ。

 

「すごいですね、この速度を40分ほどずっと保てるなんて……」

「そういう乗り物なんですよ」

「こんなものがあったなんて知りませんでした」

「まあそりゃそうです、俺とこれこの世界のものじゃないんですから」

「え?」

「まあ信じられんでしょうけど、マジなんですよ。俺この世界の人間じゃなくて別の世界の人間なんですよ。

世界名は知らんけど星の名前は地球で国は日本って言うんですよ」

「ちきゅう? にほん?」

「まあ知らんでしょうね。これ見たことないでしょ」

 

士十郎が携帯を取り出す。

 

「これは?」

「携帯電話」

「けいたい…でんわ?」

「ちょっと止めていいか? 休憩も兼ねて色々説明するから」

 

士十郎は女性に携帯を色々見せる。

 

「で、俺にこの世界のこととかを教えたのはこのメール」

 

士十郎は自分をこの世界に導いたとされるメールを見せた。

 

「これは……もしかして……」

 

その時であった。突然トラックが揺れた。

 

「な、なんだ?」

 

士十郎が前を見てみるとそこには怪しげなローブをかぶった人間が5,6人ほどいた。

 

「もの珍しさにやってきた強盗か?」

「いえ……おそらくは…狙いは私です」

「は? あんたが狙いだって?」

「はい」

「……仕方ねえ、飛ばすか。しっかり捕まってくれ!」

 

士十郎がトラックを一気に動かす!

 

「動き出しました!」

「撃て! 撃て!」

 

ローブの人間たちは炎や氷を出したりしてトラックを攻撃するがトラックはびくともしない。

 

「馬鹿な!? 直撃だぞ!」

「こっち来ます!」

「死にたくなければ避けておとなしくしてろ!」

 

ローブの人間たちはトラックをよけ、トラックはそのまま猛スピードで走り抜けた!

 

「は、速い……」

「追いつけるか?」

「ダメです、追いつけません!」

「くそ!」

 

ローブの人間たちは追跡を断念した。

猛スピードで走るトラックの中で士十郎は女性に尋ねる。

 

「狙いがあんたってあんた命狙われてるの? それともやばいもんを運ぼうとしてるの?」

「やばいもの……とまではいきませんが重要なものは持っています」

「ああ連中、俗にいうテロリストね」

「テロリスト?」

「俺の世界の言葉で簡単に言えば国賊ってやつ。いやテロリストは国賊どころか世界中の敵だから世界の賊って言ったほうが簡単か」

「先程私を狙ったのはおそらくはその賊の一味か雇われた人間だと思います」

「ってことはあんたVIPだな」

「びっぷ?」

「国とかにとって重要人物とかお得意様ってこと」

「ええ……」

「だったらちんたら走ってる暇ないな。馬には悪いがこのままのスピードで行くぜ! このスピードなら1時間もかからん!」

 

士十郎はトラックを走らせる!

 

「……あの私のことは聞かないのですか?」

「聞いてほしいの? 聞かれたくないだろうからあえて聞かなかったが…」

「あなたを巻き込んでしまった以上話します」

 

女性はローブを脱ぐ。

 

「私は『ファレシア王国』の第二王女『サキリ・ファレシア』です」

「え? あんた王女だったの? 俺はてっきり大臣とかそういうのだと思った」

「申し訳ありません」

「いや別にそこ謝るところじゃないでしょ」

「いえ、馬が脚を痛めたからって見ず知らずの……それも異世界から来たというあなたにいきなり私をゲレン帝国に連れて行ってほしいなんて……」

「もう過ぎたことだ、今は帝国の首都につくことが先だ」

「…はい」

 

そして1時間もしないうちにゲレン帝国の首都であるガリオンに着いた。

 

「ここです」

「テロリストも気になるが……検問か、仕方ねえ」

 

士十郎はそのまま検問所までトラックを動かした。

 

「なんだそれは?」

「貴様、なんだそれは? 乗り物か?」

「悪いが少し急いでるんだ。このままで通してもらうぜ」

「なんだと?」

「本当にごめんなさい!」

 

サキリが顔を出し、兵士たちに謝る。

 

「あなた様は確か」

「サキリ・ファレシア様、国王から話は聞いております。すぐにお通りください」

 

兵士たちはサキリの顔を見てすぐに検問を解除した。

 

「じゃあこのまま行くぜ」

「はい!」

 

トラックは帝都内に入り、そして城の前までやってきて二人はトラックを下りて謁見の間までやってきた。

 

 

「よくぞ参られたサキリ・ファレシア殿」

 

そこにはゲレン帝国皇帝とみられる中年の男が現れる。

サキリに合わせる形ではないが士十郎も士十郎で一応膝をつく。

しかし膝の付き方が時代劇に出てくる忍者のようなものだった。

 

「しかしこんなにも早く着くとは思わなんだ」

「それは彼のおかげです」

「彼? おぬしは?」

「芝神士十郎と申します」

「この城の前に止めてあるトラックと呼ばれる自動で動く馬車車に乗せてもらったのです」

「自動で動く馬車車とな?」

「いや、自動じゃないぞ。俺が一応運転というか動かしてるからな」

「ほぅ、そのようなものがあるとは……」

「いや俺異世界から来たもんで」

「異世界?」

「はい、彼はまったく我々の知らない言葉や持ち物もあり、その持ち物に書かれた文章から察すると彼はこの世界の神とされる存在『キリネシア』が送り込んだものかと……」

「世界神とされるキリネシアとな!? 伝説の存在だと思っておったが……」

「いやそれはそれで迷惑なんだけど……まあ事故起こさなかったという点では助かるけどさ……、それよりもっと大事な要件があるんじゃないのか?」

「あ、そうでした。皇帝、こちらを……わが父ファレシア王からの親書です」

 

サキリがゲレン皇帝に親書を手渡す。

 

「うむ……」

 

ゲレン皇帝はすぐにその親書の中を確認する。

 

「確かに親書だ。すまない」

「いえ、これも友好国であるためです」

「親書か、皇帝一ついいですか?」

「なんじゃ?」

「実はこのサキリは道中賊に襲われたのですが心当たりは?」

「……ないこともないが確証がない。おそらく賊はわが国、もしくはファレシア王国、またはそのどちらにもいい顔をしていない者が賊を雇ったのであろう」

「ちなみにその親書が届いてなかったり、サキリが死んでいたら?」

「親書の方ならまだいいがサキリ殿が死んでいたら間違いなく友好は解消され、戦争になっていただろう」

「結構やばかったのね」

「サキリ殿、今日は休まれよ」

「いえ、すぐに帰ります。父を安心させたいので」

「しかしそんなすぐに戻れるのか? 今すでに4時だぞ。ファレシア王国の基本門限は7時だぞ」

「ああ、トラックで飛ばせば6時までには着きますよ」

「そうか、そういえばここに来たのもトラックというものだったな。しかし少し待たれよ、こちらからの親書の返事を書く」

 

ゲレン皇帝はすぐに親書の返事を書く。

 

「これを」

「……はい」

 

ゲレン皇帝から返事をもらうサキリ。

 

「士十郎さん」

「任されよ、あ、馬どうするの?」

「皇帝陛下、我が馬の世話、お願いできますか? 怪我が治るまででいいので」

「うむ、任されよ」

 

二人は急いで玉座の間を出た。

そしてトラックに乗り込み、急いでファレシア国王都のキリケーンへと戻った。

 

 

キリケーンにある王の城の玉座の間。

 

「父上、ただいま戻りました」

「サキリ、ずいぶん早かったが本当に行ったのか?」

「はい、こちらにゲレン皇帝の親書の返事があります」

 

サキリはファレシア国王にゲレン皇帝からの親書の返事が書かれた紙を手渡す。

 

「確かにあの皇帝の文字だ……なんとお前賊に襲われたのか?」

「はい、事実です。そして私の隣にいる芝神士十郎殿に助けられました」

「おお!?」

「いやいや、俺が助けたのって馬の脚が壊れたからであって賊から助けたのじゃねえだろ」

「しかしあなたがいなければあの賊たちに襲われて期限までにたどり着けなかった可能性も……最悪は私が殺されていたかもしれない」

「結果としてはそうだろうけども……」

「サキリの命まで助けてくれたのか?」

「え? そうなるの?」

 

士十郎も色々困る。

 

「ありがとう、ありがとう」

 

ファレシア国王は少し涙ぐみながら士十郎に礼を言う。

 

「は、はあ……」

「ところでおぬしは何者なんだ?」

「異世界から来た人です」

「は?」

「どうも話を聞く限り世界神キリネシアがこの世界に導いたようなのです」

「世界神キリネシアが……、うむそれならその見慣れない格好なども少し納得がいく」

「簡単に納得してどうするの」

 

士十郎がツッコむ。

 

「とにかく恩人であることに変わりはない。何か褒美でもやらねば、何がほしい? できる範囲で与えるぞ」

「何かほしいかね~……だったら俺この世界に来たばかりで一応ギルドで運送業の登録したんですけど事業所とかないんでその建物を一つほしいんですが……」

「その程度ならお安い御用だ。すぐに手配しよう」

「あの、父上」

「なんだ? サキリ」

「私はしばらく家を出てこの士十郎の元にいたいと思います」

「はっ!?」

 

士十郎は思わず大声で驚く。

 

「サキリ……お前、この男が気に入ったのか?」

「はい」

「いいぞ、お前の好きにするがいい」

「はい!」

「おいおい、ちょっと待てくれよ」

 

士十郎が割って入る。

 

「サキリさんよ、お前さんつり橋効果受けてないか?」

「つり橋効果?」

「簡単に言うとやばい状況になった男女が助け合ったことで恋仲になるってことだ。だけどそういうので恋仲になった男女の仲は続かないって言われるんだぞ。最低でも俺の世界じゃ……」

「確かにそのつり橋効果であなたのことが気になってるのかもしれません……けど一度城を出てもう少し外をよく見た方がいいとは前から思ってました。今がその機会だと思いました。お願いします、一緒にいさせてください」

「……そりゃ俺には強制力ないし、好きにすればいいけどさ……あんまりわがまま言わないでくれよ。俺そういうの苦手だから」

「……できる限り善処します」

「そうか、ならばお前の荷物も運ばないといけないな。そうなると建物は事業所兼住まいの方がいいかな?」

「いちいち事業所と家を行ったり来たりはめんどくさいからその方がいいですかね」

「ならばそのように手配しよう」

「すみません」

「父上」

 

そこに士十郎よりやや若い男と女が現れる。

 

「兄上、姉上」

「ケリィにカレンではないか」

「サキリをそんなどこの馬の骨ともわからぬ者と一緒にいさせるなんて……」

「正直不安です」

「まあ俺本当に馬の骨どころか怪しさ満点の男だからな」

 

士十郎は笑い飛ばす。

 

「しかも世界神キリネシアに導かれてきたなんて」

「あ、そこ聞いてたんだ」

「とても信じられませんわ、けど……」

「あんなでかい馬車車を見るとね……」

「トラックも見たのか」

「あんなでかいのは目立つよ」

「まあそりゃそうか」

「兄上、姉上、私はもう少し外を見たいのです。それに私はあくまで第二王女、お二人に万が一のことがない限りは王の座につくことはありません。どうかわがままを……」

「「……」」

「わしは構わんがお前たちはどうする?」

「父上が反対しないなら別にいいですわ」

「ええ、それに最終決定権はサキリにあります。俺たちが反対したところでサキリが勝手に出ていくこともありますので無理に反対するのも……」

「ありがとうございます、それじゃあお世話になりますね士十郎」

「う~ん、まあ仕方ないか」

 

士十郎もしぶしぶ承諾した。

 

「しかし今日はもう遅い、今日は城に泊っていくがよい」

「どうも」

 

そして士十郎は城に泊ることになり、客室で寝ることに。

 

 

その日の夜。

 

「さて、ある意味では王族のつてができたが……」

 

士十郎は自分が少し幸運に思っていたが……。

 

「やっぱ幸運ではないな、事故を防ぐためとはいえ異世界に飛ばされたんだ」

「あのいいですか?」

 

そこにドアをノックする音とサキリの声が聞こえてくる。

 

「どうぞ」

 

サキリが客室に入ってくる。

 

「あの改めてお礼を言いたいです、今日はほんとうにありがとうございました!」

「いやいや当然のこと……いやけどこの世界でも見てみぬふりする奴なんているから当然のことでもないのか? まあ俺としては当然のことしたレベルだから気にしないでくれ」

「しかしあなたがいなければ最悪戦争なんてこともありました……」

「戦争ね~」

「士十郎の世界には戦争はなかったんですか?」

「いや、あるよ。俺の住んで国は過去に戦争はしてたけど今は戦争放棄になってるから戦争はしないってことになってる。もっとも他の国じゃ内乱とか戦争とか普通にしてるところはあった。ただ俺には身近な出来事じゃないから実感がわかない」

「そうなんですか」

「ああ、ところで用ってそれだけか?」

「はい」

「そろそろ寝るから出てってくれないか?」

「あ、すみません最後に一つだけ」

「?」

「不束者ですが今後よろしくお願いします」

「結婚を前提にした話は今はしないでくれ」

 

士十郎は苦笑いをした。

 

 

翌日。

 

「それではここに書かれている場所がお前たち二人の住む場所だ」

「ありがとうございます」

 

士十郎はサキリとの事業所兼住宅の場所が描かれている地図をもらう。

 

「サキリの荷物は……」

「ああ、トラックで運ぶからいいですよ。あ、でも引っ越し業者がいてくれると荷物置くのに楽か、業者さんたちにはちょっときついかもだけど荷台の方に乗ってもらいたいかな。スピードはそんな出さないから大丈夫だけどしっかり捕まってほしいです」

「それとこれを、路銀じゃ。10万カロ分ある」

 

従者から路銀の入った袋をもらう。

 

(1千万円分ね、まあ会社の資本金としては必要分だな)

「それとおぬしが着ている服に似たようなものは作らせておいたぞ。素材が綿なのがよかったの、同じ素材がこの世界にもあって」

「ええ、幸運ですねそこは」

 

従者から士十郎の衣服が入った袋ももらう。

 

「それでは父上、兄上、姉上、行ってまいります」

「まあ今生の別れじゃないんだ」

「暇があれば様子を見に行きますわ」

「頑張れよ」

「はい」

 

そして士十郎とサキリはトラックに乗って自分たちの事業所兼住宅に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして芝神士十郎の異世界トラック運送生活が始まる……のか?


 
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