No.995511

司馬日記外伝 軍師賈詡、『離間の計』!

hujisaiさん

その後の、とある詠さんの策です。
珍しくなんだかスラスラ書けてしまい、お久しぶり…でない御挨拶が出来ました。

2019-06-06 23:37:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3674   閲覧ユーザー数:3012

「も…もう…許してくれ…」

腹の底から声を絞り出す。

 

「この程度で何を言っておられるのやら」

「そんな事でお前の立場が務まると思っているのか?」

「身から出た錆でしょ?とっとと立ち上がって」

完膚なきまでに折られた心のままに頽れた俺に、容赦の無い叱責の言葉が浴びせられる。

 

確かに、この状況の一因は俺が至らなかったせいかもしれない。

でも。でも、ここまでの事にならなければいけなかったのだろうか。

項垂れたまま奥歯をぎり、と噛み締めると、柔らかく温かな掌が俺の手の甲に添えられた。

 

見上げれば、璃々ちゃんだった。

「もうちょっとだから頑張って?ね、御主人さま」

「璃々ちゃん…」

俺と視線を合わせるようにしゃがみこみ、

いまだ幼さを残しながらも慈母の様に優しく微笑む彼女に、

大人としての責任感が俺を再び奮い立たせる。

「…ごめんね、一番辛いのは璃々ちゃんなのにね」

「ううん、璃々は大丈夫だから。気にしないで御主人さま頑張ってね」

「…ああ」

今この場の誰よりも幼い少女が、その華奢な身を苦しめてまで俺の為に

尽くしてくれている。

 

――――――――俺が、やらなければ。

璃々ちゃんに取られた手を意思を込めて握り返し、再び立ち上がる。

 

「―――――詠」

「――――準備いい?じゃ、配置ついたらいつでもいいから」

再び戦う意思を視線で詠に伝えると、謁見室の玉座に深く腰掛けた。

一つ深く深呼吸し、腹の底に力を籠める。

今度こそ。

今度こそこの戦いに、終止符を打つ。

その思いを込めて、低く、声を発した。

 

 

「『…ふん。貴様が韓遂か』」

「声が小さいやり直し!」

「すんませんリテイクお願いします!!」

一言目からの詠のダメ出しに、ヤケクソ気味に周囲に頭を下げる。

 

…ごめん、やっぱり心折れそうです。

 

 

 

---------------------

 

「はぁーい、それじゃ第四回『うちの種馬女増やし過ぎ対策会議』

始めるわよー」

「…えっ?」

詠の開会の挨拶に目が点になる。

外交会議だ、と聞かされて会議室に連れてこられていたのに突然吊し上げられました。

「…外交の会議じゃないの?」

「うんとりあえず説明するから黙ってて?」

「あっはい」

詠がこういう時にべもないのはいつも通りなので大人しく引き下がる。

出席している華琳や蓮華、桃香達には全く動揺の様子が無いので他の皆は既に趣旨が聞かされていたのだろう。って言うか第四回とか言ってるし。

この件に関してはまあ俺自身が積極的に女の子に粉かけて増やしてるわけではないけれど、昔から俺の事を大事にしてくれている娘達からはそう見えても仕方がない。

ひたすら謝り倒して今後は一層行動を自制するようにしよう、と思ったところで会議机の末席に璃々ちゃんが居る事に気が付いた。

この件、璃々ちゃんにまで聞かせなきゃいけない事なんだろうか。

 

「それじゃ、前回までの結論からおさらいするわね。

まず、馬鹿ち〇この脇が甘すぎて女の数は増加の一途を辿ってるわ」

「…すんません」

「うんあんたの謝罪は今要らないから黙ってて」

「ハイ」

今日の詠さん殊更に厳しい。

「対策としてまず後宮拡大派の不用意な行動を抑える事が必要という結論となって、月は私が、仲達は伯達さん他家族と上司の荀攸、麗羽は条件付きで斗詩、田豊、沮授が対応、水鏡さんは雛里朱里、汐里(徐庶)、その他各地元は

年長者を中心に抑制に対応する事で合意した所までいいかしら」

「それ無理って言ったじゃないですか~!あのババア抑えるなんて神様だって出来ませんよ、ってかそんな事したらブッ殺されますよ!」

詠が議事録を読み上げると汐里(徐庶)さんが机に突っ伏して頭を抱えながら悲鳴を上げ、その隣で雛里朱里も青い顔してこくこくと頷いている。

水鏡先生、そんな恐ろしい人には見えなかったけどな。優しくて包容力ある感じで。

「崔州平と代えられる位だったらやりますっつったのあんたよ?」

「それはそうですけどぉ!」

「やんの?それとも(三国)塾に左遷させられたいの?」

「分かりましたよやりますよ、やればいいんでしょ!」

不貞腐れて背凭れに体を預ける汐里(徐庶)さん。会議中の詠はたまにガチのヤクザに見える。

「話し中ごめん、斗詩達の条件付きって何?」

「自分が仲いい女数人に関しては積極的な妨害は勘弁してくれって。

だからってあんたも積極的に手ェ出すんじゃないわよ」

「勿論分かってる」

「で次、今度韓遂が女引き連れて上京してくる。この情報変化ないわね?」

「あ、ああ」

突然振られた翠が少し慌てて頷く。

「目的は手下八部(旗本八旗)、あわよくば自身の後宮入り。

これも見込み通りでいいかしら」

「そうなんだよな?蒲公英」

「まず間違いないよ。月さんがにこにこして下着目録を発送しようとしてて、隙を見て宛名を確認したら韓遂さんだったし、付いてた手紙に『御依頼のものを送ります。御主人さまが特に好みそうなものには付箋をつけておきました。皆さん頑張って下さいね』って書かれてたからね」

「…確定ね。あと月を抑えられてなくて申し訳ないわね」

翠から振られた蒲公英の報告を受けて詠が小さく舌打ちした。

汐里(徐庶)さんが自分だって出来てないくせにと言う目で一瞬詠を見たが詠にギロリと睨み返されて、慌てて目をそらしていた。うーん厳しい上下関係。

と言うか、本来俺がやらなきゃならない嫌われ役を詠に押し付けている状態なので文句は言えない。

 

「ま、正直これ以上女が増えるのは御免なのよ、そこで皆で協議しした結果一芝居打つことになったってわけ。

脚本の方針については前々回から打ち合わせてて、出来たのがそこにある台本。最終確認が終わったら、今日からそれに沿って練習するから読んで」

詠に机の上を指さされ、ようやく伏せられた冊子を手に取りひっくり返すと『韓遂謁見場面(仮)』と表書されていたページをめくる。

 

【配役】

一刀:一刀

寵姫一:趙雲

寵姫二:夏候淵

瑠璃(寵姫二の妹):黄叙(璃々)

兵一:黄忠

兵二:華雄

兵三:張遼

 

 

--------------------

(謁見の間にて)

 

(椅子にふんぞり返り寵姫一、二を左右に侍らせながら)

一刀「…ふん。貴様が韓遂か」

韓遂「(何らかの応答を想定)」

 

(なるべく韓遂の応答を遮って)

一刀「つまらん挨拶はいい、この俺が貴重な時間を割いて会ってやってるんだ。それなりの土産は用意しているんだろうな?」

韓遂「(私自身です又はこの娘達ですを想定)」

 

(韓遂や供の女性を眺めまわした後興味を失ったような視線で、小声でかつ聞こえるように)

一刀「ちっ…全部ハズレだな」

 

一刀「生憎女には不自由してなくてな」

(言いながら寵姫一、二の腋の下から手を廻して胸を揉む。なるべく見えやすく。寵姫一、二は無言で心底嫌そうな表情をして顔をそむける)

 

一刀「涼州に上玉が居ないなら次は財宝を持って来い。行くぞ御前等、今日もヒィヒィ言うまで可愛がってやるからきっちり締めるんだぞ?はーっはっはっはっ!」

(下品になるよう意識しながら高笑いし寵姫一、二と席を立ち、二人の尻を音がするように叩きつつ上手控室に向かおうとする) 

 

(廊下側扉から部屋に飛び込み、走って一刀に抱き着く)

瑠璃「王様っ、お姉ちゃんに酷いことしないで!」

寵姫二「瑠璃!?来てはいけないと言っただろう!?」

一刀「な、なんだこのガキはっ、離れろっ!」

(瑠璃を突き飛ばす。瑠璃は悲鳴を上げて派手に転がり、兵一が素早く近づいて後ろ手に拘束する)

寵姫二「瑠璃っ!」

(瑠璃に駆け寄ろうとし、それを兵二が喉元に刃を添えて阻止する)

 

一刀「無礼なクソガキめ、始末しておけっ!」

兵一「はっ」

(無理やり引きずり起こす)

瑠璃「い、痛いようっ!お姉ちゃぁんっ!」

寵姫二「瑠璃っ!た、頼むっ、瑠璃だけは助けてくれ、たった一人の血を分けた妹なんだ!私なら何でもする、だから瑠璃の命だけは!」

一刀「ちっ…何でもって言ったな?」

(やや怯えたように)

寵姫二「…あ、ああ…」

一刀「では『例の薬』…使わせてもらうぞ?」

 

(驚愕しながら)

寵姫一「れ、『例の薬』を!?お、おやめ下さいませっ、あの薬のせいで姫は性欲だけの廃人にっ!」

一刀「うるさい!」

(腕にすがる寵姫一を振り払い、寵姫一はへたりこむ)

 

(動揺した様子を見せ、その後がっくりとしながら)

寵姫二「うっ…わ、分かった、言う通りにする…だから妹だけは…」

一刀「くっくっくっ…いいだろう。おい、そのガキは適当な部屋に放り込んでおけ」

兵一「はっ」

(瑠璃を引きずって下手控室へ)

瑠璃「嫌ぁっ!お姉ちゃぁんっ!お姉ちゃぁんっ!」

(泣きながら抵抗するが引きずられていく)

 

 

兵三「謁見は終わりだ、速やかに下がれ。また今見た事は他言無用だ。口外すれば命の保証はしない」

(退室を促す。またここまでの間に韓遂らが止めに入ろうとした場合兵三が阻止する)

 

(韓遂ら退室)

 

【終演】

 

 

---------------------

「」

 

ひでえ。

読み終えて思わず真顔になる。

「待ってこれ俺の胃がストレスでマッハ」

「あっそう?ボクたちの胃はとっくにストレスでマッハよ分かりなさいよこのアホンダラ」

「すいませんほんとすいません」

めっちゃいい笑顔の詠に叩き落されました。いやでも、流石に言わなくてはならない事がある。

「だがちょっと待って欲しい、このお芝居の趣旨は分かるけどここで璃々ちゃん突き飛ばされなきゃいけないって事はないだろ、誰だよこの配役考えたの!?」

 

そう俺が叫ぶと全員がある一人を無言で指差し、その指の先では璃々ちゃんがにこにこ笑顔で手を挙げていた。

なんも言えねえ。いや言う。

「…いや、璃々ちゃん、無理する事ないんだよ?そもそも一番悪い俺が言うのは何だけど、こういう事は大人に任せて」

「ううんご主人様、璃々が適任だと思うよ?詠お姉ちゃんが言ってたけどこの役はなるべく小柄で子供に近い見かけの人の方がご主人様がすごく悪い人に見えていいんだって。でも子供っぽく見える人で、突き飛ばされても上手に転がれてケガしないのって璃々くらいだと思うんだ?」

「いや、でも…」

「私からも推薦させて頂きましたわ。璃々は最近魏の司馬懿さんに稽古をつけて頂いてまして、体捌きも大分上達しておりますからこれくらいの事で怪我をする事は御座いませんわ。璃々も皆さんのお世話になるばかりでなく、何か御恩返しがしたいと申しておりましたので良い機会かと」

璃々ちゃん本人からの申し出に加えて、紫苑も笑顔で太鼓判を押して来た。けど、本当にいいのか?と言う思いを込めて桃香の方を見ると、微妙な表情を浮かべていた。

「えーっと、私も始めは反対したんだけどね?紫苑さんがいいって言うし、あとなんて言うか、他の候補がね…」

「意外と居ないのよ、これが」

言い淀む桃香と顔を見合わせ、華琳が後を引き取った。

「始め、鈴々ちゃんはどうかなって私言ったんだけどね」

「ちょっと大根(役者)過ぎるわ。同じ理由で季衣も駄目。そこで小柄で腕に覚えがあって、一番演技力がマシなのは流琉だと思ったんだけど、貴方に突き飛ばされる時点で心が折れてしまうから辞退したいって言うのよ」

「うちには極端に容姿が若い武官が居ないから余りお役に立てなかったわ。実質一番若手のシャオだとそもそも『一刀に近づくんじゃないわよ』って暴れ出しそうだし」

「で、ボクはどうしても困ったら鐘会にやってもらおうと思ってたんだけどね、あの娘小柄だし化粧上手いし演技力あるし。でも璃々ちゃんが出来るならその方が見た目の衝撃感が大きいからお願いしたってわけ」

「…ご主人様、もし璃々に悪いと思って下さるのでしたら、是非此処は今後このような芝居が不要となるよう、璃々と名演して頂ければと」

「…」

最後に紫苑に痛い所を突かれて言葉が出ない。

 

「…その後璃々を女として労わって頂ければ何も申し上げる事は御座いません」

最後の最後にしれっと何か放り込んでこられたのにはあえて反応しない。

 

分かった?それじゃ特になければ会議は散会、練習に入るわよという詠の言葉を締めに、冒頭に還るわけなんだが。

 

 

---------------------

「…二人はホント(演技)上手いよねぇ」

「まあ、『おーでぃしょん』を潜り抜けておりますからな」

「大事な弟の為ならこれ位の演技など訳も無い事だ」

 

十八回目のNGに総監督の詠が出した休憩宣言を受けて、星と秋蘭と共に椅子に腰かけてコップの水を一息に飲む。

「オーディションなんかあったんだ?」

この二人なら通過するのは良くわかるが、その時の様子が少し気になった。

「他に誰が受験したの?」

「そうですな。焔耶と、愛紗と思春、祭殿と…」

「姉者だな」

「焔耶と春蘭は無理だろ…」

「「だって面白いではない(です)か」」

笑顔の二人の声がハモった。きっと二人ともこの二人に騙されたかおだてられて受けてしまったんだろう、焔耶と春蘭の超大根棒読み演技が目に浮かぶ。

「あと祭さん無理だよな。シチュ的に」

「ふふ、赤壁で華琳様を騙した演技力には自信があるぞと言ってはいたがな」

「蓮華殿が何と言って不合格と伝えようか、困っておられたな」

暴君に嫌々従わさせられる演技は祭に似合わなさ過ぎる、むしろ説教始めてしまいかねない。

「愛紗と思春は?あの二人こういうの好きそうじゃない?」

「ああ…ノリノリではありましたが」

「熱は入っていたのは認めるが」

「が?」

「詠が『一刀と本番では確実に嬉しそうにし過ぎて、嫌がって見えなくなる』から不合格なのだそうですよ」

「あー…」

二人とのそれぞれの夜を思い浮かべると、凄く納得がいく。

「我らとて演技力には自信は御座いますが、主殿の内心を思い浮かべながら乱暴に胸を揉まれると心穏やかではありませんからな」

「そうだな。お前が嫌々、躊躇いながら握りしめてくるのに嫌そうな顔をしなくてはいけないんだが、ついにやついてしまいそうで堪えるのに一苦労だ」

「ドSだこの二人!…ところで、他の役はすぐに決まったの?」

「紫苑の役は、紫苑以外誰一人希望しませんでしたから即決でした」

「そりゃそうだろうな…」

「兵士の役だって押し付け合いだ。結局、霞は恋に交代してしまったしな」

嫌々やらされた霞は10回目位でもう堪忍したってや、と音を上げてしまった。

「璃々、迫真にもほどがあるで!こんなん見てるだけで心折れて頭おかしなってまうわ!」

俺が漸くある程度まともに璃々ちゃんを突き飛ばせるようになって、初の通し稽古をやることとなった。そこで璃々ちゃんを突き飛ばすと彼女の華奢な体は軽く吹っ飛び、音を立てて痛そうに転がった。それを手荒く紫苑が取り押さえ、涙を浮かべた璃々ちゃんが哀切極まりない声で『い、痛いようっ!お姉ちゃぁんっ!』と叫ぶと、流石の星や秋蘭どころか監督の詠迄が言葉を失った。

ややあって、璃々ちゃんがきょとんとして「ご主人さま、次の台詞は?」と促すまで誰も動けず、記念すべき一回目のNGとなったが詠が『予想以上に強烈ね…ちょっとこのホン(台本)書き直そうかしら』と呟く程のインパクトだった。

かくて二桁に上る璃々ちゃんの熱演にSAN値を削られ過ぎた霞は『もうアカン、アカンて。このまま見せられたらウチ一刀の事ホンマにドクズに見えて嫌いになってしまいそうや』と泣きを入れ、恋を代わりに立てて逃げて行ってしまった。

「華雄もあの表情見て下され、かなり参ってますな。ここは早く成功させて終わらせてやりませんと、華雄まで逃げ出してしまいますぞ」

「…そうだね」

少し離れた休憩机に肘を突き、額を支える華雄の表情は冴えない。元々常にニコニコしている方では無いにしてもかなり精神的なダメージを負っているのが見て取れる。

そもそもが俺が色々不甲斐無いのが原因なんだから、俺が頑張って終わらせないとと大きく一つ息をつく。

 

「ご主人さま!もう練習再開するってー!」

「有難う、今行くよ」

「…あの親娘は元気いっぱいだな」

「ふふ、全くですな」

地味な兵士服に無理矢理胸を詰め込んだ紫苑の隣で、姉妹感を出す為に秋蘭とお揃いのチャイナドレスに身を包み、ニコニコ笑顔でこちらに手を振る璃々ちゃんに応えて立ち上がる。

「…よし、次で決める」

「その意気ですぞ」

ポンと肩を叩く星に微笑み返し、不退転の覚悟で舞台となる謁見室に向かった。

 

 

尚、詠のOKが出たのはその19テイク後だった。

 

 

----------------------

 

「お待たせしました、追加の麦酒九杯と枝豆唐揚げ盛り合わせ三皿こちらですねぇ。あ、すいません奥の方廻して頂けますかー。

…あとこの煮物、うちの方から無料提供ですんで良かったらどうぞ。いえあの、お客さん達失礼ですけどなんか随分沈んでらっしゃるようだったんで、うちの美味しい料理で少しでも笑顔になって頂けたらってうちの給仕長の方から。

…えっ?あ、はあ、この時間空いてるんでちょっとくらい油売ってても。…はあ、縁談が無しに。明日帰郷で。…そーですかー、それは大変でしたね…え、私ですか?いや、いるっちゃーいるんですけど、えへへ。

どんなのって……えー…あのすいません、お客さんたち地方の方?…涼州?また随分遠くから。一昨日初めて来られたんですか、…じゃー喋っちゃってもいいかなぁ、実は私ですねぇ、皇帝のオンナなんですよぉ。

…え、何ですか皆さんそんな真顔になって、いや驚かれるのは分かりますけど。名前って、一刀さんて言うんですけど。ええまあ、実際には私以外にもいっぱいいますけどね、でも愛されてるからいーんです私納得してますから。

…えー?愛されてますよ?ま、忙しい方だし私も職場掛け持ちなんで毎日会えるわけじゃないんですけど、節目節目は必ず時間取ってくれるし、手紙とか手作りの贈り物とか貰ってますし、この髪留めだってそうなんですよ…いやそんな馬鹿なとか話が違うとか言われても。

…いえ?私だけじゃなく皆に優しいと思いますけど残念ながら。あ、そうそう、ですけどねぇ、確か一昨日だか、なんか人に嫌われる為のお芝居しなきゃいけないとかで愚痴ってましたねぇ…あの?皆さん急に黙っちゃってどうしたんです?

…はあ、その時の事ですか?いや昨日、白蓮さんて言う私とも仲いい女の人と飲みに来てまして、本当は一刀さん事前にそのお客さん達の事調べてておもてなししようとしてたらしいんですけど、急遽物凄い嫌われ方しなきゃいけなくなって凄い悪い人の振りするお芝居したらしいんですよ。おかげで胃悪くしちゃって、昨日飲みに来たって言いましたけどお酒飲まずに胃薬飲んでお粥食べて、しょうがなかったけどその人たちに悪いことしたなーって言って帰って行きましたよ。普段はいつもご飯作ってくれる人が居るんですけど、その人にも言えないらしくてうちに食べに来てて。

…って、なんか皆さん目据わってません?あ、あれ?もうお帰りなんですか?…はあ、確かにこの時間なら庁舎の宿泊棟の滞在延長手続き利きますけど。詠に一杯食わされたわ…って、うちの詠さんご存じなんです?てかあの、お客さーん!お釣り!お釣り!流石にこれお勘定多すぎますからー!」

 


 
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