No.993928

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第11話

2019-05-22 22:35:38 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1818   閲覧ユーザー数:1545

1月14日、同日AM10:20――――――

 

翌日は休暇だった為、リィンは早速特務支援課のビルを訪れてヴァリマールの太刀の件も含めて様々な依頼をセティ達に出して太刀の改良の為のデータ収集の為の時間を使い…………更にその翌日、”少佐”に昇進した事で二十数名の部下を持つことになったリィンは部下達への挨拶回りをする為に、まず名目上は”部下”として自分の部隊に配属されることになった人物達――――エリス達への挨拶回りをする為に最初にフォルデが待機している部屋を訊ねた。

 

~メンフィル帝国軍・魔導戦艦ヴァリアント・フォルデ大尉の部屋~

 

「フォルデ先輩。」

「よっ、リィン隊長♪早速挨拶回りか?」

「ええ…………というかその”隊長”という呼び方は止めて欲しいのですが…………」

「クク、何を今更。お前は俺の上司なんだから、そう呼んで当然だぜ?」

呼び方に関して謙遜するリィンに対してフォルデは口元に笑みを浮かべて指摘した。

 

「ですが先輩は俺より年上ですし、何よりも訓練兵時代にお世話になった方ですし…………」

「そんな些細な事を気にしていたらキリがねぇぞ?第一今回の昇進の件で俺以外のお前にとっての年上の”先輩”達もお前の下に就く事になったんだから、下の連中に上司らしく指示を出す為にも”年上”とか”先輩”みたいな事は気にするな。――――実際エリゼちゃんはあの年齢で”皇族専属侍女長”を務めているから、自分よりも年上の城のメイド達に頭をペコペコ下げられたり、年上のメイド達に指示を出したりする所とかも見た事があるぜ?」

「い、言われてみればエリゼは既に侍女の中ではトップクラスの地位に就いていましたね…………」

フォルデの指摘を聞いたリィンは冷や汗をかいてエリゼの顔を思い浮かべながら呟いた。

「ま、メンフィルはお前も知っての通り”実力主義”なんだから年下が年上の連中をこき使うなんて割とよくある光景だからあんまり気にすんな。――――あ、でもお前は俺達の事をこき使う事はないと期待しているぜ?」

「…………先輩も迎撃戦での活躍でステラと共に”大尉”に昇進した上、俺達の部隊の”副官”を務める事になっているのですから、以前と違ってちゃんと働いてもらいますよ?」

フォルデの希望に冷や汗をかいて脱力したリィンは呆れた表情で溜息を吐いて答えた。

 

「ま、ほどほどにな。―――しかし、俺達の部隊のお前と俺以外のそこそこの軍位持ちはみんな女性だから、本来2人で使う軍位持ちのこの部屋を一人で使えるから気を遣わなくていいから助かるぜ♪特に相部屋の奴に気を遣わずに娼婦を部屋に呼べるのはいいよな~。」

「先輩の場合、例え相部屋の相手がいたとしても気を遣うような事はしないような気がするのですが…………というか、娼婦を部屋に呼ぶのはほどほどにしてくださいよ…………」

フォルデの話を聞いたリィンは疲れた表情で指摘したが

「クク、”隊長”だから一人部屋のお陰でエリゼちゃん達ともそうだが、お前の使い魔の連中――――メサイア皇女殿下達といつでも”ヤリ放題”のお前だけには言われる筋合いはないと思うぜ?」

「う”っ。」

(クスクス、あの騎士の言う通りね♪ご主人様は今後の戦いに備えて私達と頻繁に性魔術(セックス)をする必要があるのだから♪)

(フフ、まあ間違ってはいないわよね。)

(ええ…………それで実際リィン様達が強くなれますから、お父様あたりが知れば間違いなく本気で羨ましがるでしょうね…………)

からかいの表情を浮かべたフォルデに図星を刺されたリィンが唸り声を上げている中ベルフェゴールはからかいの表情で呟き、ベルフェゴールの念話を聞いたアイドスとメサイアはそれぞれ苦笑していた。

 

「女連中と言えば、その内ステラやあのチビッ娘――――アルティナだったか?二人もエリゼちゃん達みたいに部屋に呼んで”イイコト”をするのか♪」

「いやいやいや、エリゼ達と違って恋仲でもないステラやアルティナを呼んでそんな事をしたらどう考えてもセクハラで軍法会議ものじゃないですか!?先輩は俺を何だと思っているんですか!?」

「ん?草食動物の皮を被ったその実体は女を喰いまくっている肉食動物の兄貴族って所か?」

「ううっ、結果的にそうなっただけなのに…………」

フォルデの自分に対する印象を知ったリィンは疲れた表情で肩を落とした。その後フォルデの部屋を出たリィンはエリスとエリスと相部屋になっている人物――――アルティナの部屋を訊ねた。

 

 

~エリスとアルティナの部屋~

 

「…………よし、これで髪が整いましたよ。」

「…………どうも。」

「ハハ、早速仲良くなっているみたいだな?」

リィンが部屋を訊ねるとエリスがアルティナの髪を整え終えており、その様子をリィンは微笑ましそうに見守りながら二人に近づいた。

「兄様。」

「…………ユミルで拉致された件があったからアルティナと相部屋にする事は若干”賭け”だったが、どうやらその様子だと和解したようだな?」

「はい。姫様を攫った事はちょっと許せませんでしたけど…………それもカイエン公達に命じられてやっただけとの事ですし、アルティナさんが部屋に来た時にいきなり謝られましたからもう許しています。」

「そうか。ちゃんと謝る事ができて偉いぞ。」

過去の経緯で関係が心配されたエリスとアルティナが和解した事に安心したリィンはアルティナの頭を優しく撫でた。

 

「…………子供扱いしないでください。メンフィル帝国軍の捕虜であったわたしの身柄がリィン少佐を含めたシュバルツァー家に引き取られることになった以上、エリス様に過去に行った無礼を謝罪するのは当然の事ですので。」

「――――――」

リィンの行動に静かな表情で指摘したアルティナは淡々と答え、アルティナに続くようにアルティナの傍に現れたクラウ=ソラスが機械音を出し、それを見たリィンとエリスは冷や汗をかいた。

「フフ…………リフィア殿下からアルティナさんの処遇を兄様に委ねられた時に、兄様がアルティナさんをシュバルツァー家の使用人として引き取った話を聞いた時は驚きましたけど…………父様達の事ですから、きっとアルティナさんの事を可愛がられるでしょうね。」

「ああ、ひょっとしたら俺達以上に可愛がるかもな。」

「……………………あの、リィン少佐。メンフィル軍から捕虜であったわたしの今後の処遇について聞かされた時からずっと聞きたかったのですが…………どうして、エリス様達の件や貴族連合軍の”裏の協力者”として協力していた上、二日前のパンダグリュエルでも敵対したわたしを引き取る事を申し出たのですか…………?」

リィンとエリスがアルティナの事について話し合っていると、アルティナは複雑そうな表情を浮かべてリィンに訊ねた。

 

 

「俺がカイエン公の”招待”を受けてパンダグリュエルに滞在する時にも言ったように、エリス達の件はアルティナ自身の意志によるものではないとわかっているからもうその件に関しては許しているし、他の件にしても全て誰かに命じられて行った事だから俺はアルティナが俺達と敵対していた件について気にしていないさ。エリスもそうだが、エリゼもエリスの件で最初は君に関して怒っていたが、今ではただ命じられてやっただけの子供相手に怒り過ぎて大人げない事をしたと逆にアルティナに対して申し訳ないと思っているくらいだ。」

「……………………それでも理解できません。敵対関係を抜きにしても、赤の他人であるわたしをどうして…………」

リィンの答えを聞いたアルティナは戸惑いの表情を浮かべながら指摘し

「俺にとっては赤の他人じゃないさ、アルティナは。何せアルティナはかつての俺の仲間達――――”Ⅶ組”の一人とも関係があるんだから、そんな人物が天涯孤独なんだからほおっておけないよ。」

「兄様…………」

「…………ミリアムさんですか。ですがリィン少佐は今回ミリアムさんを含めた”Ⅶ組”と敵対関係になる事を選んだようですが…………」

リィンの話を聞いたエリスが静かな表情でリィンを見つめている中リィンが言っている人物がミリアムである事にすぐに察したアルティナは複雑そうな表情をした後リィンにある事を指摘した。

 

 

「…………ああ。二日前の迎撃戦でも言ったように、エレボニアを滅亡を防ぐ為に俺はあえてその道を進むことにした。本当ならアルティナだけでもユミルで全て終わるまで待っていて欲しかったんだが…………」

「―――必要ありません。わたしはリィン少佐達――――シュバルツァー家をサポートする為に引き取られたのですから、当然今そのサポートを最も必要とする上戦力も必要とするリィン少佐達の元で戦うのがわたしとクラウ=ソラスの役割です。」

「――――――」

リィンの言葉を途中で遮ったアルティナは静かな表情で答え、アルティナに続くようにクラウ=ソラスも機械音を出した。

「…………そうか。これから人の命を奪い合う実戦続きになるだろうが…………改めてよろしく頼む。」

「――――はい。」

アルティナの決意が固い事を悟ったリィンの言葉にアルティナは静かな表情で頷いた。その後二人の部屋を出たリィンはステラとセレーネがいる部屋を訊ねた。

 

 

~ステラ大尉とセレーネの部屋~

 

「まあ…………そのような事が。訓練兵であった頃からお兄様のそういう所も変わりないのですね。」

「はい。というかむしろトールズ士官学院に留学してからの方が無茶をするようになっていると思いますよ?」

「俺の話をしていたようだが…………一体どんな話をしているんだ?セレーネ、ステラ。」

談笑していたセレーネとステラに話しかけたリィンは表情を引きつらせながら訊ねた。

 

「ふふっ、ステラさんはエリスお姉様も知らないお兄様の昔――――訓練兵時代のお兄様を知る方ですからせっかくの機会ですから、どのような事があったのか教えてもらっていたのですわ。」

「逆に私はトールズ士官学院に留学してからのリィンさんの事についてセレーネさんに教えてもらっていましたが…………セレーネさんの話を聞いて思いましたけど、リィンさん、トールズ士官学院時代もそうですが内戦時も相当無茶をされたようですね?正直、よく五体満足で全て乗り越えられましたよね…………もし、セシリア教官が知れば呆れた後説教をすると思いますよ?」

「うっ…………今思い返してみると自分でも相当無茶をしたと思っているよ。」

セレーネの後に答えたステラに呆れた表情で指摘されたリィンは唸り声を上げた後苦笑しながら答えた。

 

「二十数名とはいえ、リィンさんも”部下”を持つ立場になったのですから、今後は無茶な行動は控えてくださいね?”副官”である私とフォルデ先輩もフォローはしますがリィンさんが無茶をすれば私達はともかく、リィンさんの部隊に配属された部下の方々にまで大きな負担をかけたり不要な危険にさらされる事になるのですから。」

「ああ、肝に銘じている。」

「…………今までのお兄様の行動を考えるとその発言もちょっと怪しいですわ…………」

「……………………」

ステラの指摘にリィンが真剣な表情で答えている中セレーネはジト目でリィンを見つめて呟き、セレーネの指摘を聞いたリィンは反論することなく冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。この戦争ではリィンさんにとって目に入れても痛くない大切な妹であるエリゼさんとエリスさんもリィンさんの部隊に配属されているのですから、さすがのリィンさんも無茶はできませんよ。」

「言われてみればそうですわね…………もしかしたら、ゼルギウス将軍閣下達がわたくし達をお兄様と同じ部隊にする事に決めた理由はエリゼお姉様の頼みだけでなく、お兄様に無茶をさせない意味も含まれているかもしれませんわね。」

「…………え、えっと…………二人とも短い間に随分と仲良くなったんだな…………?」

ステラの推測を聞いて納得している様子のセレーネを見たリィンは再び冷や汗をかいた後話を逸らす為に二人の仲の良さについて指摘した。

 

「フフ、お互いお兄様の”相棒(パートナー)”の身ですから、色々と共通する話題があって自然と話が弾むんです。」

「とはいっても私は訓練兵を卒業した際にそれぞれ異なる道を進むことになった為セレーネさんと違って過去の身ですが…………」

リィンの指摘にセレーネは微笑みながら答え、ステラは苦笑しながら答えたが

「――――――そんな事はないさ。現にステラはこうしてまた俺の”パートナー”として、この戦争は共に戦う事になったのだし、例え今回の戦争の件がなくても俺はステラの事を信頼できる”相棒”だと思っている。」

「……………………フウ…………そういえば、肝心な事を聞きそびれていましたが…………リィンさんのこの様子ですと、トールズ士官学院に留学してから知り合った女性達の一部も”被害”を受けた方々もいらっしゃっているのでしょう?」

静かな笑みを浮かべたリィンの答えに目を丸くして黙り込んだステラは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべてセレーネに訊ね

「はい、お察しの通りですわ…………特にアリサさんはわかりやすい反応をされていますし、エマさんやアルフィン殿下も恐らくそうでしょうし、ひょっとしたらトワ会長やクレア大尉も怪しいと思っていますわ…………」

「まあ、そんなにも…………そこの所、もっと詳しく伺っても構いませんか?」

「ええ、構いませんわ。まずアリサさんですが――――」

(な、何でそこでアリサ達の名前が挙がって、俺がアリサ達に何の”被害”を与えたのかわからないが…………これ以上ここにいたら、ステラの説教があるかもしれないからここは失礼させてもらうか…………)

ステラの質問にセレーネが答えている中、リィンは冷や汗をかいて表情を引きつらせた後これ以上この場にいるのは不味いと思い、二人が会話している隙に部屋を出た。部屋を出たリィンは次に自分にとって直接的な上司となるゼルギウスとシグルーンの元を訪れた。

 

 

~リフィア皇女親衛隊隊長・副長の執務室~

 

「―――リィン・シュバルツァー少佐です。入室してもよろしいでしょうか?」

「ああ、入って構わない。」

「…………失礼します。」

入室の許可を聞いたリィンは二人がいる執務室に入った。

「それで要件は?」

「要件…………というか単なる挨拶回りです。これから自分は自分に配属された部下達もそうですがリフィア殿下やゼルギウス将軍閣下達にお世話になる身ですので、戦争が本格的になる前に挨拶回りを済ませておこうかと。」

「フフ、挨拶は仲間同士の関係や上下関係を円滑に築く上での基礎にして必須な事ですから、良い判断ですわ。」

「そうだな…………――――一昨日の迎撃戦の活躍は見事だった。リフィア殿下もお前の活躍――――特に”騎神”を駆って次々と敵の空挺部隊を撃破している様子を見てお喜びのご様子だったぞ。」

リィンが自分達を訊ねた理由を知って感心している様子のシグルーンの言葉に頷いたゼルギウスはリィンを称賛した。

 

「…………恐縮です。あの…………自分と同じ所属になった者達の件で将軍閣下達には伺いたい事があるのですが。」

「ん?エリス嬢達なら、エリゼの頼みがあった為お前と同じ配属にしたことをエリゼから聞いていないのか?」

「いえ、そちらの件ではありません。―――ステラとフォルデ先輩の件です。二人とも自分にとって馴染みの軍人の為、ひょっとしたら二人の件もエリゼが気を遣ってゼルギウス将軍閣下達に進言したと思っていたのですが、エリゼは違うと言っていたので…………」

「ああ、その件か。二人に関してはシグルーンと話し合った上で決めたが…………何か問題があるのか?」

リィンの問いかけに答えたゼルギウスは不思議そうな表情でリィンを見つめて訊ねた。

 

「い、いえ。問題どころかむしろありがたかったです。二人とも気さくな態度でエリス達に接してくれるお陰で、エリス達もすぐに軍に馴染めるようになった様子ですし、パンダグリュエルでの戦いもすぐに連携が取れました。えっと………さすがにこれは自分の勘違いだと思うのですが、ゼルギウス将軍閣下達が二人の配属を決めた理由は自分達を気遣ってですか?」

「まあ、私達の新しい部下として配属されることになったリィンさんの事情は私達も知っていますから、その理由もないとは言いませんが、一番の理由はリィンさん自身も言ったように配属される者達が顔馴染みである事で、すぐに連携を取りやすくして味方の生存率を上げると共に戦力を向上させる為でもあります。」

「後はそれぞれの武装や戦闘方法も考えた上だ。お前達は一応前衛、後衛は揃っているが中距離――――槍のような長物を武装とする仲間や弓や銃のような遠距離武装による援護ができる仲間はいなかった為、戦力的にバランスの取れた小部隊にする意味でもその二人がすぐに挙がったのだ。」

「なるほど…………(もしかしたら、”特別実習”のメンバーを考える時サラ教官もゼルギウス将軍閣下達が言ったような理由も踏まえてあのメンバーにしたのか…………?)」

顔馴染みであるステラとフォルデが自分達と同じ配属にした理由を語ったシグルーンとゼルギウスの説明を聞いて納得したリィンはサラの事について考えていた。

 

「…………お前も理解していると思うが、戦争は軍と軍が真正面にぶつかり合う戦いだ。トールズ士官学院時代や内戦時で経験したお前の戦いとは異なっている事は理解しているな?」

「はい。トールズや内戦時に経験した自分の戦いはエレボニアの”裏の戦い”――――”真実”を探る為の戦いであった為、軍と真正面からぶつかって自分達の力だけで撤退させるような事は行っていません。ですから今回の戦争は心機一転の心構えで挑む所存です。」

ゼルギウスの指摘に対してリィンは静かな表情で頷いた後決意の表情を浮かべた。

「――――――理解しているならばいい。お前達の今後の活躍、期待している。」

「そしてリィンさん達が今回の戦争で目的を果たす事ができる事、リィンさん達の上司として応援していますわ。」

「はい…………!」

ゼルギウスとシグルーンの応援の言葉に対してリィンは力強く答えて敬礼をした。その後部屋を退出したリィンはリフィアに挨拶する為にリフィアの執務室を訊ねた。

 

 

~リフィア皇女の執務室~

 

「――――――リィン・シュバルツァーです。リフィア殿下、御前失礼してもよろしいでしょうか?」

「む?よいぞ。」

「――――――御前失礼します。」

リィンが執務室に入ると書類の整理を行っているエリゼとリフィアがいた。

「兄様、リフィアに何か用が?」

「いや、ただの挨拶回りだよ。親衛隊に配属されてからすぐに迎撃戦だったから、俺の部隊に配属される部下達への挨拶回りも兼ねてこれからお世話になる人達に挨拶回りをしていたんだ。」

「うむ、よい心構えだ。全く…………エリゼも余の専属侍女として配属された当初はリィンのような慎み深さがあったというのに、気づけばどうして”こんなの”になったのじゃ?」

エリゼの質問に答えたリィンの答えを聞いて満足げな様子で頷いたリフィアはエリゼに視線を向けた後疲れた表情で溜息を吐いたが

「私が”こんなの”になった理由は、だ・れ・の・せ・い・か・し・ら?」

「ぬおっ!?余が悪かったことを認めるから、落ち着くのだ!」

膨大な威圧を纏ったエリゼに微笑まれると驚きの声を上げて冷や汗をかきながらエリゼを諫め、その様子を見たリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「そ、それよりも先日の迎撃戦での活躍もそうだが、”魔神”に加えて”女神”と”契約”を交わすとは見事じゃぞ!」

「恐縮です。ただアイドスは”古神”の為、ディル=リフィーナでは”古神”を”邪神”として扱っている事で自分がアイドスと契約した事に殿下を含めたメンフィル帝国の皇族の方々の頭を悩ましていないとよいのですが…………」

「リウイや父はその件を知った当初は頭を抱えたそうじゃが、余はそんな些細な事は全く気にしておらんぞ。メンフィルは”全ての種族との共存”を謳っているのだから、当然その中には”古神”も含まれるのだから、何故悩む必要があるのか逆に問いたいくらいじゃ。」

「普通に考えて問題大ありじゃない…………もし、メンフィルが”古神”と協力関係を結んでいる事がディル=リフィーナの他国や教会に知られたら、その件を口実にメンフィルが”世界の敵”にされて世界中の国家や教会を敵に回す可能性も考えられるのよ?」

リィンの推測に対して答えたリフィアの答えに呆れたエリゼはリフィアに指摘した。

 

「そんなのメンフィルにとっては”今更”な話だ。元々メンフィルは光と闇、どちらの勢力も受け入れているのだからその件でメンフィルを敵視したり危険視する勢力は幾らでもおる。それにもし、世界中を敵に回したとしても勝てばいいだけじゃろ。―――かつてレスペレント地方全土の国家を敵にした”幻燐戦争”のようにな!」

堂々と言い切ったリフィアの発言を聞いた二人はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。

「―――そんな事よりもリィンよ。今回のお主の迎撃戦での活躍の件で、アルフィン皇女の処罰に関する事で朗報があるぞ。」

「え…………もしかして、アルフィン殿下の処罰内容が穏便な内容に変更するように見直されることになったのですか!?」

リフィアの話を聞いたリィンは一瞬呆けた後すぐに血相を変えて訊ねた。

 

「いや、処罰内容は変わっておらん。―――決まっていなかったアルフィン皇女の仕え先がお主に決定したのじゃ。」

「…………へ。」

リフィアの答えを聞いたリィンは一瞬固まった後呆けた声を出し

「ええええええええええええええええええええええええっ!?な、何故アルフィン殿下の仕え先が自分に…………!?」

(あはははははっ!本物のお姫様までハーレムにするとかさすがご主人様ね♪)

(あ、あの…………一応ですが私も”本物のお姫様”なのですが…………)

(――――なるほど。そのアルフィン皇女がリィンに仕える事になれば、リィンがアルフィン皇女に手出ししなければ、本来なら”娼婦”として仕える主に犯され続けるはずだったアルフィン皇女の貞操は守られることになるわね。)

我に返ると驚きの声を上げてアルフィン皇女が自分の使用人兼娼婦に決定した理由をリフィアに訊ね、その様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて大声で笑い、メサイアは冷や汗をかいてベルフェゴールに指摘し、リフィアの”朗報”という言葉を理解していたアイドスは納得した表情を浮かべていた。

 

「エレボニアの内戦勃発後、メンフィルはエレボニアの領土と隣接しているユミルにエレボニアの内戦に巻き込まれた際に対処する軍を派遣しなかったから、元々その件でシュバルツァー家に対する”詫び”としてアルフィン皇女の仕え先の候補としてシュバルツァー家が挙がっておったのじゃ。」

「そして先日の迎撃戦での兄様の活躍によって、アルフィン殿下の仕え先は将来のシュバルツァー家の当主である兄様に決定したとの事です。」

「な、なるほど…………というか、それのどこが”朗報”なのでしょうか…………?」

リフィアとエリゼの説明を聞いたリィンは冷や汗をかきながら聞いた後疑問に思っている事を訊ねた。

 

「―――兄様が使用人兼娼婦として仕える事になるアルフィン殿下の”主”になれば、兄様がアルフィン殿下に手出ししなければアルフィン殿下の貞操は守られることになりますし、それと同時にアルフィン殿下はメンフィルの民――――つまり、メンフィル帝国による庇護を受けられる事になります。アルフィン殿下は使用人兼娼婦とはいえ、メンフィル帝国貴族である兄様に仕える事で”メンフィルの民”になれるのですから。」

「あ……………………その、リフィア殿下。エリゼが言ったように、メンフィル帝国から処罰が求められているアルフィン殿下が俺の元にくればアルフィン殿下も本当にメンフィル帝国の庇護を受けられるのでしょうか…………?」

エリゼの指摘を聞いたリィンは呆けた後リフィアに確認した。

「お主に限らず、アルフィン皇女が使用人兼娼婦としてメンフィル帝国の誰かに仕えている時点でアルフィン皇女も”メンフィル帝国人扱い”だから、アルフィン皇女の”主”以外はアルフィン皇女を犯したり危害を加える事は許されず、もし”主”以外の者がアルフィン皇女に危害を加える等をすれば罪に問われることはは事実だ。―――例えその者がメンフィル帝国の皇族や貴族であろうとな。」

「そうですか…………最悪エレボニアの滅亡を防ぐ事ができなくなっても、アルフィン殿下の貞操や身は大丈夫になった事を知れば、エリスも一先ず安心するだろうな…………」

「…………そうですね。最も使用人兼娼婦の処罰が求められているアルフィン殿下の仕え先が兄様である事を知ったエリスにとっては別の意味の心配が出てくるでしょうが。」

リフィアの答えを聞いたリィンは安堵の表情で呟き、リィンの意見に頷いたエリゼはジト目でリィンを見つめた。

 

「へ…………別の意味の心配ってどういう事だ?まさか、俺がアルフィン殿下に手出しするかもしれない心配か?」

「違います。――――アルフィン殿下が私やエリス達のように兄様と”将来を見据えた関係を持つ事”です。」

リィンの推測をエリゼは呆れた表情で否定した後ジト目でリィンを見つめながら指摘し

「”将来を見据えた関係を持つ事”って………い、いやいやいや!?さすがにそれはありえないだろう!?」

「…………どうでしょうね。アルフィン殿下は夏至祭のパーティーで兄様を自分にとっての初めてのダンスパートナーに指名してダンスをしましたし、その件以降もアルフィン殿下の兄様に対する接し方は普通の男性と比べると近しい事はエリスやセレーネから聞いているのですが?」

「ダンスの件はリウイ陛下の指示によるものだったし、親しい件についても俺が親友(エリス)の兄だから、普通の男性よりは親しみを感じて接しているだけなんじゃないのか?現にエリスのように俺も殿下にからかわれる事はよくあったし。」

ジト目のエリゼの指摘に対してリィンは疲れた表情で答えたが

「………エリス達に聞きましたよ。1度目のユミル襲撃が起こる直前にエリスとセレーネどころか、湯着を着ているとはいえアルフィン殿下とまで露天風呂を共にしたそうですね?」

「うっ。そ、それがさっきのエリゼの推測とどう関係してくるんだ…………?」

(あはははははっ!普通に考えて、湯着を着ていても年頃の女の子が異性とお風呂を一緒にするなんて、その異性に少なからず気がある証拠じゃない♪)

(それで実際の所はどうなのかしら?)

(そ、そうですわね…………私見ではありますが、アルフィン殿下はエリゼ様の推測通り恐らくリィン様に心を寄せているかと…………)

エリゼにある事を持ち出されると唸り声を上げ、その様子を見守っていたベルフェゴールは腹を抱えて笑い、興味ありげな様子のアイドスに訊ねられたメサイアは苦笑しながら答えた。

 

「エ、エリゼよ、ここはお主達に充てられた部屋ではないのじゃから、そういう事は後で自分達が休む部屋でエリス達と共に追及してはどうじゃ?」

一方二人の会話を聞いて嫌な予感がしたリフィアは冷や汗をかきながらエリゼに指摘し

「…………それもそうね。そういう訳ですから、アルフィン殿下の件についてはエリス達と共に後でじっくりと追及させてもらいますね?」

「はい…………」

指摘されたエリゼは頷いた後膨大な威圧を纏ってリィンに微笑み、微笑まれたリィンは反論することなく疲れた表情で頷いた。その後リフィアの執務室を退室したリィンは自分の部隊に配属されたメンフィル兵や義勇兵に挨拶をした後遅めの昼食をとって一端自室に戻った。

 

 

同日、PM2:15―――

 

~リィン少佐の部屋~

 

「さてと…………(挨拶回りも一通り終わった…………ブリーフィングは明日の朝だから、今日は約半日空いている事になるな…………学生時代は”自由行動日”はトワ会長が集めた依頼の消化や旧校舎の探索で時間を費やしていたから、純粋に何もする必要がない時間ができるのは久しぶりで何をすべきか考えてしまうな…………)」

リィンが午後の行動について考えていると部屋に備え付けている内線が鳴り始めた。

「はい、シュバルツァーです。」

「こちらエントランス。お疲れ様です、シュバルツァー少佐。天使族の女性がシュバルツァー少佐に御用があり、この艦を訊ねたとの事ですがいかがなさいますか?」

「へ…………天使族の女性が…………?…………わかりました。その方から自分を訊ねた要件を聞きますので自分の部屋に案内してください。」

「了解しました。」

「天使族という事はその人はディル=リフィーナの出身なんだろうけど、天使族なんて今まで会った事がないぞ…………?」

内線との通信を終えたリィンは自分を訊ねた天使族の女性について考え込んでいた。そして10分後リィンの部屋がノックされた。

 

「シュバルツァー少佐、先程お伝えした天使族の女性をお連れしました。」

「お疲れ様です。後は自分が対応しますので貴方は軍務に戻ってください。自分に用がある天使族の方はそのまま部屋に入ってきてください。」

「ハッ!失礼します。」

「…………失礼します。」

そして扉が開くとユリーシャが部屋に入ってきた――――

 

 

 

というわけでアルティナもリィン達側のメンバーとしてパーティインしました!リィン達側の拠点のBGMはVERITAの”英雄集結”、FF5の”暁の戦士”、FF2の”反乱軍のテーマ”、ティアーズ・トゥ・ティアラ2の”征伐”のどれかで通常戦闘BGMはVERITAの幻燐側の戦闘BGMである”我が旗の元に”、ロイド達やエステル達、Ⅶ組側の通常戦闘BGMは閃Ⅳの通常戦闘BGMである”Burning Throb”だと思ってください♪なお、ユリーシャの話が終わったらアルフィンがリィン達側のメンバーになる話、Ⅶ組側の話、エステル達側の話へと次々と話の内容の勢力が切り替わる予定です。なお、クルトとミュゼのパーティーインはそれらの話の後になるので二人のフライング登場&パーティーインはまだまだになりそうです。ちなみにクルトとミュゼは同時にリィン達側のメンバーになる予定です。


 
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