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呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第027話

どうも皆さんこんにち"は"。
さて今回もまだ戦場には出ませんが、英雄二人の会見のございます。
この会見がこの先の一刀の人生にどう左右されるのか、とくとご覧あれ。

そして今回からおまけ回はしばらく音々音の話でいきたいと思います。もしも内容が変更されたり、おまけ回無しとかなれば、それはネタが思いつかなかったということにしといて下さい。それではどうぞ。

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2019-03-07 17:57:41 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1632   閲覧ユーザー数:1556

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第027話「麒麟児との会見」

 劉備と関羽を退出させ、一刀は曹操との会合に臨んだ。天幕の外から見える様に香が焚かれ、立ち入り禁止とされた。一刀は曹操、夏侯淵、徐晃を招き入れる。

「戦前の突然の来訪にて貴殿のお手を煩わせてもらって、誠に申し訳ございません。私は陳留太守、曹孟徳でございます」

「これはご丁寧に。ご来訪心より歓迎いたします。扶風太守、呂戯郷でございます」

形式に乗っ取った挨拶をそれぞれが行ない、先に口火を切ったのは一刀の方であった。

「曹操殿、現在はこの通り香を焚いて第三者の介入を阻んでいます。ここはお互い肩の力を抜いて語るとしませんか」

「......そうね。正直、あの盗伐軍の集会での空気に嫌気をさしていたところよ。そういうことなら遠慮なく。私は曹操。陳留からやってきた者よ。よろしく」

一刀の提案に乗っかり、曹操はかなり砕けて呂北に話しかける。

「改めまして曹操殿。俺は呂北。こちら右手は妻の王異に、左手が義父の家臣である成簾(せいれん)だ。そちらの二人は徐晃に、弓の名手でもある夏侯淵だな」

「あら。春風(シャンフー)とは面識はあると聞いていたけど、秋蘭(しゅうらん)のことを知っているとは意外だわ」

「これでも一国を預かる身だ。噂は耳に入りやすい。特にこんな時代だ。溢れている悪評は流れにくいが、少ない良評はすぐまわる。曹操殿噂は良く聞こえているよ。『知勇兼備に富んだ家臣に囲まれ、自他共に厳しく、公平な方だとね』」

「あら、そんな貴方の噂も良く聞こえているわ。『扶風に行けば腹が満たせる、職がある』とね。職がなければ食もない大陸に、それを実行できるのだから、貴方の方も家臣に恵まれているのではなくて?」

一通り互いを褒めあうと、呂北は曹操に席に付くよう勧めた。呂北と曹操は互いに向き合う様に席に付くと、王異が曹操に茶を出す。

「どうぞ。戦場ですので安い茶葉の物しか出せなく申し訳ないが」

王異がそれぞれ注いだ茶が二人にまわると、先に呂北がその茶を飲み始める。それに対し曹操も続くように飲むと、曹操は口を開いた。

「あら、美味しい」

その言葉に、呂北は目を光らせる。

「ふふふ、そうだろう。喩え安い茶葉であろうと、宮中で飲まれる高級な物であろうと、本当に旨い茶を作るのは、点て方次第。金さえ出せば美味い茶は出せるかもしれないが、本当の旨い茶を出すことは出来ない。俺の妻は贔屓目で見たとしても、お茶を点てることに関してなら右に出る者はいない」

「あらあなた、お上手だこと」

二人の惚れ気に当てられ、若干曹操は瞼を補足して客前で惚れ気を出す二人に内心呆れると共に、呂北自身の印象が彼女の中で大分と変わった。

謀略・策略で宮中内に蜘蛛の巣の様に管を持ち、影の実力者として君臨する彼。女好きと聞いていれば、妻を溺愛する顔も見せる。実際目の当たりにして、彼自身にさらに興味が沸いた。

「そういえば、曹操殿。貴女の軍にとやかくいうつもりではないが、軍議を終えてそれ程(とき)を待たずにこちらに来られたが、大丈夫なのか?」

「あぁ、それは心配ないわ。あなたの言う通り、私の優秀な部下達が全て上手くやってくれているわ。私は軽く指示を与えて、こうして優雅にお茶を飲むだけ。......部下に働かせて、頭首は高見物。幻滅したかしら?」

「いやいや、幻滅なんてとんでもない。寧ろ逆だ」

「逆?」

「管理者の役割とは、下の者が動きやすい環境を整えておくもの。役割を与え、教育し、やがては一人で考えさせて、循環を作り上げる。それが管理者だ。その点において曹操は申し分ない。寧ろ問題は、自らが管理者ぶって何もせず、ただ時を無為にさせる管理者。そっちの方が問題だ。それならまだ、下の者と共に役割をこなす管理者の方がマシだ」

曹操は、自分の考え方が呂北に近い物だと感じた。

「貴方、なかなか面白いわね。ねぇ呂北、貴方が目指しているものは何?」

「俺の目指す物?」

「そう。貴方の目指す物。私はこの天下に覇を唱えることを目的としている。乱れ切ったこの世の中。民の安息の為、持てる力の全てを使おうと考えているわ」

「......なるほど、立派な考えだ。その充溢(じゅういつ)するその覇気、空気が躁狂(そうきょう)している。あの何進(こもの)とは大違いだ」

「あら、いいのかしら。将軍様は貴方に気がありそうだけど」

その言葉に苛立ちを覚えたのか、一刀は不躾な顔をしながら煙管を取り出して、先端に火を付けて煙を吹かせる。

「妻持ちになんてこと言うか。それに例え白華と一緒になっていないとしても、あのような俗物と共になる気はない。人は自らの足で歩む者。時間を怠惰に過ごす者に興味はない」

「.........なるほど。確かに人を見る目はありそうね。ところで、貴方の答えを聞いていないのだけれども――」

改めての催促に、呂北はもう二つ程煙を吹かせながら考え、もう一つ吸ったところで煙の灰を捨てた。そして灰の無くなった煙管を曹操に向ける。その仕草に夏侯淵と徐晃は良い気分はしなかったが、曹操は内心、この挑発的な態度から何を語るのかの期待が上回った。

「曹操、君はこの大陸の外の状況を考えたことはあるか?」

“外”。あまりにも突拍子な質問に、曹操は思わず首を捻る。

「この中華大陸の外には、匈奴がある。鮮卑がある。羯・氐・羌と所謂五胡と呼ばれる非漢民族がいる。漢は度々彼らの侵略の危機に晒されては、一丸となって乗り切った。しかしそれも限界に来ている。漢王朝の中枢は腐りきり、腐敗の波は大陸全土に広がり、人々にまで汚染されている。もしまた五胡が一丸となり死に物狂いで攻めてくるようになれば、この中華大陸は――終わる」

灰皿に落とした灰を潰しながら、呂北は答える。曹操も彼の言うことを理解している。今のままでは、民に安息を与えるどころか、自分たち漢民族は滅ぼされ、彼らの奴隷に陥るだろう。そういう風に捉え、彼女は問いかける。

「なるほど。ということは、貴方も私と同じく、中華大陸の統いt「違う」......違う――?」

「違う。そんなものは序章に過ぎない。俺が描くこの大陸の物語は、もっと先にある」

曹操は椅子に背中を預け、腕を組んで多少の苛立ちを覚え問いかけた。

「言っていることがわからないのだけれども。大陸を統一して民に安息を与え、五胡の脅威を取り除く。これ以外に他にすることが思いつかないのだけれども」

「そうか。......”まだ”君でもそれ以上見通せることは出来ないか」

呂北はわかりやすく挑発をかける。しかし後ろに控える夏侯淵、徐晃は怒気を孕ませているのに対し、曹操は至って冷静であった。寧ろ目配せをして、二人の気を静めた程だ。

「どんな時でも決して怒りや苦悩を漏らさない。まさに指導者の資質の持ち主だ。そんな君に俺の考えの”一端”を語ろうか」

呂北は自らの考えを流し読みされる巻物の様に答えていく。そして聞けば聞くほどに、曹操の頭は冴えてきて、もっと語り明かしたい気が溢れてきたが、その時、天幕の外より呂北を呼ぶ声が聞こえる。いつの間にか室内の香は切れ、伝令が一刀を呼ぶ。

「おっと、時間の様だ。俺もそろそろ準備をしなくてはな」

「残念よ。貴方の話は中々面白かったのに」

「麒麟児曹操殿にそう言われるとは光栄だな」

「華琳よ」

曹操がそういうと、一刀は首を捻る。

「私の真名。貴方に預けるわ」

「......いいのか?君は男嫌いだろう?」

「あら、一体何処の与太話かしら。確かに私は女の子も好きだけど、別に男嫌いというわけではないわ。嫌いなのは無能な者、粗略な者だけよ。有能な者だったら、男だろうと使いこなす。真の王たる者はそういうことでしょう。貴方は私の眼鏡に叶ったのよ。感謝なさい」

「そりゃどうも。俺を狙うのは構わないが、白華は渡さないからな」

「別に狙わないわよ。それに貴方を手に入れたとしたら、王異も一緒についてくるでしょう」

「残念ながら、俺が君の物になろうとも、白華は俺の物だ。誰にも渡すつもりはない」

「それは残念。貴方という障壁を越えるのは高そうだわ」

二人は笑いあうと、続けて一刀も答える。

「俺の真名は一刀だ」

「主人が認めたのだから、私も預けるわ。白華よ」

「ありがとう一刀。白華も私のことは華琳と呼んで」

華琳は一刀達に右手を差し出す。

「握手よ。夢音から聞いたわ。貴方たちの間では、こういうのが常識なのでしょう?」

二人は気付くと、それぞれ華琳と握手を交わし、彼女は天幕を出ようとした。

「あぁ一刀。今回の”報酬”は山分けでいいわよね」

そう問いかける華琳に対し、一刀は含み笑いを零して答える。

「問題はないが、遅れたらこっちが先にいただくからな」

そう答えながら、二人は互いに笑顔を交わして別れる。天幕の入り口が閉じられしばらくすると、一刀は先程とは真逆に、冷めきった表情で口を開く。

「王異、成簾」

彼の気を察知して、二人は相槌を打って答える。

「成簾は土竜(もぐら)を使って、曹孟徳のあらゆる情報を早急に調べ上げろ。金に糸目は付けるな。そして調べた情報は逐一王異経緯で俺に流せ」

土竜とは一刀の作った部隊の一つ。歩闇暗が指揮下に置いているのは、隠密実行部隊の闇蜘蛛。主に暗殺や工作などと言った実働的なことを専門に行うが、土竜は諜報や情報収集においての部隊である。一刀が張り巡らせた人脈の管。その構造が土竜の巣の様であることから、土竜と命名された。

「旦那様、この件に関しては――」

「無論口外厳守だ。郷里にも愛華(メイファ)にも......闇蜘蛛にも――」

「闇蜘蛛にも?......っということは、歩闇暗ちゃんにも......」

「そうだ。誰にも漏らすな。ことはそう単純な問題じゃなさそうだ。お前はウチの中で誰よりも狡猾で謀略に長けている。こういったことの件に関しては、俺はお前に全幅の信頼を預けている。首尾よくやれ」

「畏まりました旦那様」

白華がそう答えると、一刀はほくそ笑んだ。

「さて、どんな面白い情報が出てくるか楽しみだ」

出している言葉と口調とは裏腹に、一刀の表情は何処か緊迫していた。

 

 盗伐軍の編成とは別に、呂北軍自体の編成は、囮である一陣目は一刀(護衛に関羽)と(しあ)。敵に勢いを突かせる二陣目を隴、夜桜、留梨。本陣を守護する前衛は白華(護衛に夢音)と郷里と劉備(護衛に張飛)である。

騎馬で編成された一陣が敵を誘い出し、二陣目が適度に負けて撒布するようにばらける。同じように盗伐軍の諸将もその流れに乗り、完全に敵に勢いが付いていると錯覚を起こさせて、その流れを本陣近くまで持っていくと、全軍反転。四面楚歌に陥れて各個撃破の流れだ。その間に一刀達は、敵将の撃破の手柄は諸将にくれてやり、自分たちは張角達を回収する。

張角達の首は偽装して、適当な誰かに手柄を譲るってやり、自分たちは当の本人たちを回収する。仮に張角達が取るに足りない人物だとしても、手柄としてそのまま朝廷に差し出せば手柄も入って来る。今回参戦した利益にも十分ある。

最後の軍議として、装備を整えた諸将は天幕に集まっている。

「さて、いよいよ合戦本番なのだが、皆、何か質問はあるか?

「それでは私が――」

最初に挙手したのは郷里である。

「ご主人様。作戦の趣旨については何も問題はありませんが、一陣は別にご主人様が率いる必要がないのでは?敵は元農民の賊集団といえど、戦には万が一もございます」

「大丈夫だ仮に俺に万の一が起こっても、霞が補助してくれる。霞の用兵術は俺が保証する。心配ない。それに一人で孤立したとしても、関羽が守ってくれるさ。なぁ」

「はっ、呂北様の命はこの命に代えましても」

一刀と劉備はこの戦での義勇軍の方針を決めていた。基本的には劉備達義勇軍は本陣に待機。戦に慣れた場数組と比べれば遥かに劣る義勇軍と連携がまともに取れるとも限らない。それに、初陣で敗戦を喫した者はそれがトラウマとなり、生涯戦下手になるというジンクスもある。よって劉備達は本陣に待機で、攻撃時に白華達に付いていき、初めて戦に加わるという流れである。関羽を連れて行くのは、少しでも戦の厳しさを知ってもらう為という一刀の優しさでもある。張飛は関羽曰く頭に血が昇りやすく、直ぐに突撃をしてしまいそうなので却下されたことと、一刀に近づけることは非常に危険であること。劉備は武の心得が無い為、非常時に足手まといにならないようにする為。その点関羽は、未だ将として発展途上であるものの、自らより上の者の言うことは冷静に聞ける人物との判断。現に始めの出会いこそ数奇であったものの、将としても武人としても未発達な自らに、色々世話を焼いてくれる一刀に、関羽も恩を感じていた。そんな人物に対して失礼なことがあれば、人として恥ずべきことだと思い、本質としては張飛と同じように頭に血が昇りやすい彼女も、素直に言うことを聞いていた。ちなみに余談ではあるが、関羽が一陣に選ばれた際、駄々を捏ねた張飛であるが、指揮をするのが一刀と聞いた瞬間、彼を避けるように大人しくなったとか。他にも一刀を盲信する隴が、彼の護衛に関羽が選ばれた時に、若干睨み(ガン)を飛ばして、関羽を委縮させたなどの話もある。後日、その件で夜桜と留梨に隴が弄られることになる。

「さてさて皆の衆。世の乱れで、良くも悪くも功名を挙げる機会が周ってきた。世の安寧を願う者・自らが学んできたことを試したい者・力を誇示させたい者。様々な思いがあるであろうが、それも全て力があってこそ。正しいことをしたければ、自らの義を貫きたければ偉くなれ。地位を・権威を手に入れろ!!自らの道を示したいのであれば、皆、今日(こんにち)の戦にて証明して見せろ!!」

拳を挙げて説教する一刀に、天幕にいる一同は声を揃えて了解の意を示した。

おまけ 音々音編

~音々音との出会い~

 目的も無く、荒野を彷徨う少女がいた。彼女は賊に村を焼かれ、両親が命からがら逃がしてくれたおかげで生きていられるが、その灯も尽きようとしていた。荒野を歩き続けて3日。何処かに当てがあるわけでもない。涙も枯果て、体の水分も徐々に失われ、やがて倒れる。砂塵が巻き起こる土の上で、両親や村の者に育てられた日々を思い出す。目を閉じればその日々が鮮明に浮かばれ、このまま眠ってしまえば、今見ている現実という悪夢から逃れることも出来る。そして少女は気を失った。

 

深紅の旗を靡かせて、荒野を行脚する集団があった。彼らは扶風を治める呂北軍であり、その主は呂北といい、真名を一刀と言った。

一刀は賊の盗伐の為に軍を動かしていた。賊は見事に撃退され、現在は帰還中である。臧覇・郷里という発展途上であるが、優秀な軍師を手に入れて、高順・愛華(めいふぁ)と曹性・歩闇暗(ふぁんあん)のお陰で隠密部隊『闇蜘蛛』を発足出来てから、仕事もずいぶん楽にもなった。西扶風を任され、他にも妻を迎えることも出来てまずまずな日々を過ごしていた。

「お兄ちゃん」

今回の賊の盗伐には、自身の義妹である恋も連れていた。一刀の目から見ても、恋は天性の武才を秘めていた。それでも戦いとは別で普通に育って欲しい兄心とは裏腹に、根本的に槍を持つことが嫌いな愛華が珍しく「最低限、自分の身ぐらいは守れないと」という理由で武を教えていた。

自らの秀でた部分が伸びている自覚を持てば、試したいのが人の性であり、恋は一刀に強請って戦場に連れてきてもらった。今回の戦も一刀は連れてくる気は毛頭なかったが、愛華の口添えもあって今に至る。

そんな彼女が荒野に向けて指を指すと、その先には一人の子供が倒れていることが判る。混沌とした時代、たまにこうして荒野に人が倒れていることも珍しいことでもないと思った一刀は、素っ気なく返事をする。すると突然恋は馬から降りて倒れている子供に向かって、一刀の静止も聞かずに走り出す。戻ってきた恋が抱えていたのは、緑色の髪をした少女であり、服には焦げ目が付き、砂塵で髪は汚れている。それにより、少女に何があったのか大体察しがつくが、一刀は無情に恋に告げる。

「捨ててこい」

「!?」

その冷ややかな義兄の目は今まで恋が見たことの無い物であった。実際の所、一刀達が立っている中華大陸にて、子供や流民の餓死者は対して珍しい物でもない。それらの者を見つけては引き取っては、自らの首を絞めることになる。先日も恋は犬を拾って帰ってきており、その時は自身が構ってやれない時もある時の罪悪感も伴って、渋々了承した。

しかし人と犬は違う。表現を悪くすれば、人が生み出す社会において、犬や猫などといった動物は人が飼っている”物”として扱われる。また基本的に一刀は恋に甘いが、なんでも彼女の望みを叶えているわけではない。教育上一線を引くところは引いており、そんな一刀の前では、恋も自身の甘え攻撃が効かないことを熟知している為に、普段であれば素直に引く。

「......いや――」

しかしその日の恋は違った。決して譲らず、上目ではなく力強く一刀の視線を捉えて彼を見据える。

「恋」

「いや‼」

「人と動物では話が違う」

「いや‼」

「お兄ちゃんの言うことが聞けないか‼」

「‼‼?」

久方に見る自身に対しての一刀の怒声。内心は号泣して泣き出しそうな気持で胸がいっぱいであったが、それでも恋は唇を噛んで一刀に立ち向かう。

「......絶対に......離さない‼‼」

恋の力強い意志に、一刀の方が根負けしたのか、彼は踵を返す。

「もういい。好きにしろ。ただし俺は一切干渉しないからな。拾ったからには全てお前が面倒をみろよ」

一刀は恋に冷たく言い捨てて馬に乗り帰還を開始させた。そして残された恋は少女を力強く抱きしめて騎乗し、一人で馬を走らせる。

 


 
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