No.972555

司馬日記外伝 姉さんからの手紙

hujisaiさん

もうご覧の方もいらっしゃらないかもしれませんが、ひっそり更新です。

2018-11-03 14:35:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5026   閲覧ユーザー数:3711

「呼廚泉へ

 

年に一度の魏王への朝貢の為、南匈奴の国境を超えてもう七日が経ちました。

今私は幽州を越えて、冀州にある魏の都である鄴という街にいます。とても大きな街です。

魏王は普段は王都にいるらしいのですが、明後日は別のお仕事の都合もあってここに来て謁見してくれるそうです。

謁見したらまたお手紙を書きます。」

 

 

「呼廚泉へ

 

魏王に謁見しました。

…正直上手くいったのかどうかよくわかりません。

会って挨拶するなり『貴方、女だったのね…危なかったわ』と舌打ちされました。魏王は男の人より女の子の方が好きだと聞いていたので今年初めて私自身で朝貢に来たのですが、失敗だったのかもしれません。

恐る恐る何か失礼をしてしまったでしょうかと聞くと、『ああ気にしないで。別に貴方が悪い訳じゃないから、ちょっとこっちの話』

と言われてそのあとは普通の態度だったので大丈夫だったのかもしれません。

進物をお渡ししてお土産を頂いた後外交について話しあったのですが、『大人しくしといてくれればこっちも何もしないから』と何度も言われたあと、仕事が忙しいのでなるべく早く王都に戻られたいとのことで割とすぐ引き上げようとされました。

それと、皇帝陛下に一度拝謁したいのでお口利きをお願いしたのですがと申し出たら『やめて絶対にやめてこれ以上増やさないで』と物凄く嫌がられました。あと、前に通知が来ていた皇帝陛下への女の子の輿入れも絶対しないようにと念を押されました。

 

もし魏が心変わりして攻めてこられた時の後ろ盾として皇帝の支持が欲しかったのですが、その為に魏の機嫌を損ねても本末転倒なので諦めます。

 

街でお土産を少し仕入れたら南匈奴に帰ります。楽しみにしていてね。」

 

 

「呼廚泉へ

 

蔡文姫さんからお手紙が来ました。

都にいるので是非会いに来てほしいとの事です。匈奴に居た時は辛そうだったけれど、今はとっても幸せに暮らしてるそうです。

ちょっと帰りが遅くなってしまうけれど、気になるので会いに行ってきます。」

 

 

「呼廚泉へ

 

お願いがあります。

都に向かう途中で鍾繇という人に捕まり軟禁されています。

要求に従わないと、南匈奴に攻め込み貴女を捕えて酷い事をすると脅されています。

要求は、潼関に数百人程度で攻め込むふりをしろというよくわからないものです。

南匈奴の旗は立ててはならず、野盗を装ってなるべく騒いで一旦押し寄せさえすれば、すぐに逃げていいそうです。

殺しもケガもさせず、指定場所まで逃げれば糧食や謝礼も用意しておいてくれると言っています。

 

要求に従わなければ私にも酷い事をすると書けと言われたので書きますが、私の事は構いません。

逆らっても、今の魏には勝ち目はありません。どうか軍を出して下さい。貴女の事だけが心配です。」

 

 

「呼廚泉へ

 

軍を手配してくれてありがとう。

貴女のお手紙にある通り、特に怪我人も出ず約束通りだったようでほっとしました。

鍾繇さんからは謝られて、今回の脅迫は最近平和になりすぎて出来なくなった実戦準備の演習の為だったと説明されました。

 

でも一緒にいた張既さんという人は『鍾繇と馬騰が共謀して娘達に点数稼ぎをさせて娘に皇帝の寵愛を受けさせる為だった』と言って、女の人なのに鍾繇さんと馬騰さんの両方から『やぁねぇそんな訳ないじゃない』と笑顔で言われながら殴られていました。

 

鍾繇さんは司隷まで送ってくれて、別れ際にも『何か困った事があればなんでも言って下さいね』と言ってくれました。

 

今回は驚かせてごめんね。」

 

 

「呼廚泉へ

 

王都に着きました。

物凄い大きな都で、人がいっぱいです。物もいっぱいです。迷子になったらもう見つからなさそうです。

それはさておき、蔡文姫さんにお会いしました!

匈奴に居た時は少し翳のある感じだったのが、とても明るくなられて凄い美人さんになられていました(元々奇麗な方でしたけど)。

今は皇帝陛下の側室の一人でありながら、メイドのお仕事と酒場の給仕をされているそうですが日々楽しく暮らしているとの事です。

 

あと何故か私も皇帝陛下の側室にならないかと誘われました…貴女を国に残しているし、お会いした事も無く会うなと魏王にも言われている所でもあるのでやんわりとお断りしたら、文姫さんは上司らしい月さんと呼ばれていた方に『いいですよね!?』と聞かれ、『文姫さんの御友達でしたら構いませんよ』と答えられてました。

 

冗談ですよね…?」

 

 

「呼廚泉へ

 

皇帝陛下にお会いしました。

月さんがちょっといいですかと私の宿舎を訪ねて来られ、にこにこされてどこに連れていかれるのかと思ったら魏王のお部屋でした。

月さんが私を文姫さんの友人なので皇帝陛下に御目通りさせたいのですけれど、と言われると魏王は『あの通知があるんだから特別扱いは出来ない』と露骨に顔を顰められて拒否されました。すると月さんは少し困った顔をして『例のランドセルの御掃除をしました私に免じてそこを何とかならないでしょうか』と言われると『い、いーわよいーわよっ!?月と私の仲じゃない、目通り位幾らでもしなさいな何なら行き着くとこまで行っちゃってもいいのよあっはっはっはっは!?』と真っ赤な顔をされ許可下さいました。

 

一刀さん…皇帝陛下は優しそうな方でした。

でも、何故か満面の笑みを浮かべて立ち会われた文姫さんの顔を見ると平たい目をされて『しないよ?そうはならないからね?絶対に文姫さんの思惑通りになんかなったりしない!』と言われ、文姫さんは文姫さんで『ふらぐですね…』と初めて見る邪悪そうな笑みを浮かべていたのがちょっと怖かったです。」

 

 

「呼廚泉へ

 

今日は大変なことがありました。

一刀さんと文姫さんに街にお出かけに連れて行って貰ったんですが、文姫さんの御願いで一刀さんが買い物に行かれた隙に文姫さんと二人揃って誘拐されてしまいました。人気のない所へ運ばれて二人とも縛られてしまい、文姫さんがこの後は慰み者にされ凌辱の限りを尽くされてしまうのだと涙を流されていると、一刀さんが空から賊の一人に飛び蹴りをして助けに来てくれました!

賊たちは一刀さんの姿を見ると、大きな声で逃げろこいつには敵わねえと叫びながら逃げていきました。賊の首魁らしき薄紫髪長身の覆面の人が去り際に『全く、月の命じゃなければこんな下らん事…』と呟かれていたのと、賊たちが妙に統率が取れていたのが気になりましたが、幸い助かりました。

一刀さんは助けに来たわけではなく恋という女の子に(賊に向かって)投げつけられただけとなぜか必死に言っていました。でも、聞けば半里(約200m)程離れた所から投げ飛ばされたと仰って、そんなに遠くから男の人を掴んで投げ飛ばし、賊に命中させられる女の人なんているわけありません。きっと謙遜されていたのでしょうね。

 

その夜文姫さんと飲みに行ったのですが、改めて一刀さんの側室に入らないかと誘われました。

大恩のある方ですし優しい方ですが、後宮は文姫さんみたいな美人さん揃いみたいですから私ではちょっと身に余ってしまいます。でも、もし私が王じゃなくて一人の女の子だったら…

 

何を言ってるんでしょうね私は。ちょっと酔ってしまったみたいです。」

 

 

「呼廚泉へ

 

突然だけれど、これが私からの最後の手紙になります。そして貴女に謝らねばならない事があります。本当にごめんなさい。

先に一刀さんに助けて頂いた事は書いたかと思いますが、その後ちゃんとお礼がしたいと文姫さんに相談しました。文姫さんは一席を設けてくれた上、慣れぬ異国の地での疲労回復にと薬用酒とお香を下さり一刀さんとの会食の席で使うようにと助言下さいました。

しかし当日香を焚き薬用酒を嗜みしばらくすると、何故か突然猛烈に体が熱くなり…落ち着くようにと制止される一刀さんを押し倒し、破廉恥極まりない、ふしだらな事に及んでしまいました。一刀さんに好意を抱いていなかったと言えば嘘になりますが、何故そのような事をしてしまったのか、自分で自分が信じられません。…いえ、そんなのは言い訳ですね。私は自分の立場も忘れ、大陸の王に向かって劣情をぶつけてしまいました。事此処に及んでは、もはや私は死ぬか一刀様の下女になる事で無礼を詫びる他無いと思います。そして代わりに貴女が南匈奴の王に立って下さい。去卑叔父様も助けてくれる筈です。

 

情けない姉でごめんなさい。

お元気で。」

 

 

「呼廚泉様へ

 

お久しぶりでございます、蔡文姫です。

於夫羅様がお手紙を書ける状況でない為、私の方からお手紙を差し上げさせて頂きました。

 

於夫羅様が一刀さんに接見されるや、一刀さんは一目で於夫羅様を気に入り是非妻にと連日の猛攻勢。三国の王妃やその他有象無象の自称妾達(私と月さんと詠さんを除く)の事などうっちゃって、仕事も何も手につかない程の御執心ですが単于の職務や国に残した呼廚泉様の事を思い於夫羅様は首を横に振るばかり。於夫羅様は一刀さんは御優しい的な事を手紙に書かれていたかと思いますがそれは呼廚泉様に御心労をかけぬが為の御優しい嘘。業を煮やした一刀さんは於夫羅様に媚薬を盛って手籠めにし、『妻にならねば南匈奴は攻め滅ぼし、其の妹の呼廚泉をこそ慰み者にしてくれようぞ』と脅されるや、進退窮まった於夫羅様は幸せいっぱ…もとい泣く泣くその身を一刀さんへと差し出し、心優しく美貌で名高い妹の呼廚泉だけは、いいですか妹だけは、絶対に妹だけは分かってますねと懇願されました。

 

かくて哀れ於夫羅様は昼に夜に一刀さんと愛し合…げふんげふんその身を凌辱蹂躙され、それはもう〇〇を××に△△しっぱなしでぐっちょんぐっちょんのずっこんばっこんでその悲鳴は庁内に響き渡り涙は色々な所から溢れさせ羨望…ではなく不憫に堪えぬ事ひと方なりません。

さて姉様思いで知られる呼廚泉様に置かれましてはさぞ心痛に堪えぬ事と思います。一刀さんによれば於夫羅様と同じく美貌で鳴らす呼廚泉様が身代わりになるのなら、於夫羅様を手放しても良いとの事で御座います。

 

これを読まれた呼廚泉様がどのようにお考えになるかは私めの思慮の外で御座いますが、もし於夫羅様を御救いになりたいとお考えになられましたら急ぎ御上京をお願い致します。

そして私の方にて手引き致しますので、於夫羅様が御寵あ…身を捧げられ二人とも寝入られた後に服を脱いで忍び入って下さい。一刀さんは眠っている間に女が忍んできてことに及ぶのを好まれますので、パクっとしゃぶってずぷっと咥えこんでしまえば一刀さんも満足され於夫羅様が今よりもお幸せになれる事間違い御座いません。

 

こうしている間にも於夫羅様の悲鳴が耳を打って止みません。羨ましくなんてありません。

呼廚泉様の御気持ちと御行動をお待ち申し上げております。 

蔡文姫」

 

 

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「…………くっ、姉様っ…去卑叔父様、私は漢の都に参ります!後の事は宜しく御願い致しますっ!!」

 

 

 

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「ううっ!?…なんだろう、凄い寒気がする」

「あら、一刀さん御風邪でしょうか?私の国程ではありませんが、こちらも最近は夜は冷えますからもっとこちらに…」

「ん、ありがと於夫羅さん。ところでホント、無理しなくていいからね?全部文姫さんの所為だった訳だし」

「いえ…ちょっと乱暴ではありましたけれど私の淡い恋心を察して下さって、文姫さんには感謝しております。今こうしているのは私の意志ですから」

「そう言ってもらえると少し気が楽にはなるけど…」

「(それに後日もう一人お相手して頂くわけですし)」

「?何か言った?」

「いえ。うふ、そんな事よりもう一度お願いします…ね?」

 


 
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