No.967247

それでも太陽は赤く染まる!第20回「青い空の下で!」

こころない歯医者で、助手の神山に長々とありがたい説教話しに付き合わされて結局習字の時間も大幅に過ぎてしまい、不満とあせりで自転車を猛スピードで走らせていたひとし。
だが、無我夢中で苛立ちと戦うようにペダルを漕いでいたせいか、さやかが住んでいると思われる街、細い十字路の交差点で気をとられいきなり不意に横切ってきた別の自転車とぶつかってしまう・・・。

2018-09-15 10:08:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:595   閲覧ユーザー数:595

瞬間、時間が止まったように「わあ~っ!Σ(゚Д゚)」と一瞬にガシャーンとその場に倒れ込んだひとしは、腰と尻もちを強く打ち付けたようだが、それでも痛みをこらえるようにすぐにゆっくりと起き上がった。

 

スポーツ系のマウンテンバイクのような自転車!とほぼ同時に倒れた相手の姿がまぶしい太陽に照らされながらも鮮明に視界に飛び込んできた。黒いTシャツのユニホームに白い短パンズボン。シャツには1とゼッケン番号が書かれていた。

 

その姿に一瞬あぜんとしたが、ひとしはその相手が、昨日さやかと校庭で親しげに話していた今年3年になる梶谷秀一(かじたにしゅういち)だとわかった。

 

梶谷の方も「う~ん!」と短くつらそうなうめき声をあげたかと思うと、にらむようにひとしにふりかえり、「痛てぇ・・なあーーー!」と自力で起き上がるように罵声を飛ばしてきた。

 

あ・わわ・・・Σ(゚Д゚)

突然の罵声にびくんとするひとし。

冷や汗と一緒に心臓の鼓動がじょしょにバクバクと大きな音を立ててゆくのが分かった。

 

梶谷はハンドボール部で部長もしていて、行内では有名で名前の知られている生徒だった。おまけに外見もかっこいい・・・。

 

でも髪を茶色に染めているからかちょっとヤンキーっぽい風格がありしてひとしは苦手意識を感じていた。

 

ひとし、何とか言葉を探すように緊張した声色で・・・。

 

ひとし

「だ、だいじょうぶですか・・・!Σ(゚Д゚)」

 

梶谷

「はあ、だいじょうぶじゃねえ!(# ゚Д゚)俺の新車に何してくれとんだ!」

 

ひとしのひと言もむなしく一瞬で言葉のキャッチボールを叩き落されてしまう。

しかも運動部のせいかさすがに声には無駄な迫力があり、威圧されたひとしはただ、たじたじするばかりだ。

 

梶谷

「くそが!」

 

梶谷、吐き捨てるように、ゆっくりと苦痛と見下しの表情をみせながらも立ち上がると倒れた自転車を手際よくチェックするように見回すと、首にかけていた青いスポーツバッグを地面に投げつけて、そのはしの道路脇に落ちてる何かを拾いに行く。

 

梶谷

「壊れてねえよな!」

 

独り言のように長方形の平たく黒い物体を手にした。どうやらスマホのようだ。

なにやら、いろいろなデータを確認しているのか誰かにメールを打っているのか、いずれにしても、ひとしはここにいてはいけないと本能と無意識に何かを感じたらしく、どさくさに梶谷に感づかれないように、前かごから飛び出した習字道具を急いでかごに戻し身体に痛みをかんじながらも無理して立ち上がる。

 

ひとし

「いたた!」

 

だが、小声でつぶやくように、いそいで自転車にまたがった瞬間!後ろから・・・

 

梶谷

「おい、なに勝手に逃げようとしてんだよ、おまえ!(# ゚Д゚)」

 

ひとし、再びびくりとして、振り向きざま、ぼそっと・・・。

 

ひとし

「い、いえ、なんかもう大丈夫そうなのでいいかなって・・・。」

 

梶谷

「ああ!(# ゚Д゚)」

 

ひとし、いそいで弁解するように・・・。

 

ひとし

「い、いや、ちがいます。信号赤になるので、道路の真ん中にいたら危ないと思って、移動を・・・!」

 

梶谷

「じゃ、なんでいちいちチャリにまたがる必要あんだよ!降りろよ、さっさと!(# ゚Д゚)」

 

スマホを手につかつかと左足を引きずるような感じでにじり寄ってきた梶谷に恐怖しながらも「はい・・」と観念したように自転車からおりるひとし。

 

梶谷、舌打ちして・・・。ひとしをみくだすような視線で・・・。

 

梶谷

「て、いうかおまえさあ、ふつう人に自転車ぶつけといてなんかひと言ねえのかよ!」

 

ひとし、間近に来ると自分よりも一回りも大きい梶谷の威圧に動揺して・・・。つぶやくような声で・・・。

 

ひとし

「だ、だからさっき大丈夫ですかって!」

 

梶谷

「ちげーだろ~!ごめんなさいだろ~がまず!幼稚園のガキでも言えるぞそんな事!(# ゚Д゚)」

 

ひとし

「ぼ、ぼく、幼稚園じゃなくて保育園だったので・・・。(^ω^#)」

 

梶谷

「そんな話ししてねえ~よ!つーかこっち見ろっての、人が話してる時は!おまえ舐めてるたろ俺の事絶対!(# ゚Д゚)」

 

えりをつかまれるひとし。梶谷の顔をまじかに少しパニくってなきそうになりながら・・・。

 

ひとし

「ご、ごめんなさい!そんな事ないです。舐めてなんかいません!許してください!(;´д`)」

 

ひとしが情けない声を出すと多少悪気を感じたのか、梶谷は興奮を収めるように急に手をゆるめて離すと・・・。

 

梶谷

「まあ、スマホみてチャリ漕いでた俺も俺だったし、おあいこという事で許してやる!( ̄д ̄)いちいち警察呼んで事情聴取なんてのも面倒だしな。」

 

梶谷のいちいち上から目線の話し方には納得いかなかったが、なんとかこの場が丸く収まりそうでひとしはようやくほっとしたような表情をみせる。

 

が・・・。

 

梶谷

「でも、一応保険は必要だし。まんがいちの時に、名前だけ聞いとくわ。おまえ東中(ひがしちゅう)だろ、なんか見た事あるぞ。何年何組だ!( ̄д ̄)」

 

ひとし

「え・・・え、それはちょっと!困ります。先生に、迷惑かけたくないので!家にも知られたくないんです!Σ(゚Д゚)」

 

梶谷、ひとしのそんな態度に再び火が付いたように大声を張り上げて・・・。

 

梶谷

「はあ、何言ってんだおまえ!明らかに事故だろうがこれは!被害者ぶってんじゃねえぞ。俺の足見てみろ、さっきてめえに、ぶつけられた所が腫れあがっちまってるだろうが!(# ゚Д゚)」

 

ひとしの頭をつかむなや、梶谷は自分の左足に強引にぐいっと引き寄せる!

 

ひとし、梶谷の顔を目前にかなりおびえながらも精一杯つぶやくように・・・。

 

ひとし

「そ、それはたぶん、大丈夫です。か、梶谷さん中学生だから、医療制度でただでみてもらえますよ。絶対!(^ω^#)」

 

梶谷

「馬鹿かおまえ!自分でかした問題とんずらして、いっちょ前に他人任せにしてんじゃねえぞこら~!どさくさに俺の名前きやすく呼びやがって!やっぱりおまえ気に食わねえわ!クラスの連中の名前教えろ!そいつらからてめえの事聞き出してやるから!つーか、だちもいね~だろそんな性格じゃ!(# ゚Д゚)」

 

ひとし、おびえながらも少しむきになって・・・。

 

ひとし

「か、勝手に決めつけないでください。と、ともだちのひとりくらいいますよ!Σ(゚Д゚)」

 

梶谷

「いいから、さっさといえよ!試合に遅れるだろうが!おまえみたいにひまじゃねんだよ俺は!(# ゚Д゚)」

 

ひとし、「(学校への自転車通学は違法なんじゃ・・・。)」と喉まで言葉が出かかったが、今そんな事口走ったら間違いなくこの先輩に殺されると思い、踏みとどまる。

 

ひとし

「そ、その、仲の良いと、ともだちはやっぱりいないかも、知り合いなら、さ、さやかとかいますけど・・・。」

 

梶谷

「はあ、さやかって、1年のさやかと知り合いかおまえ・・・。(# ゚Д゚)」

 

ひとし

「い、いえ、ななんでもないです。遠い知り合い、人違いです!やっぱ・・・。」

 

梶谷

「どっちなんだ!ごちゃごちゃ何言ってんだかわかんねんだよさっきから!はっきりしゃべれよ、女かてめえは!締め上げるぞマジで!もういいわ!てめえが持ってるスマホか携帯あるだろ。出せ!(# ゚Д゚)」

 

再び、襟首をぐいっとつかまれるひとし。

 

ひとし、も再び冷や汗で鼓動がバクバクになり、恐怖で願望するように!

 

ひとし

「す、すみません!やっぱりどうしても言えないです!それから、携帯もスマホもないです。友達いないので!(^ω^#)」

 

梶谷、ひとしのそんな態度についに怒りが爆発したのか、襟首をつかんだままいきなり大声で「腹立つなあ~、おまえ!(# ゚Д゚)」ともう一方の手で。ひとしのズボンの左右前後ろのポケットに乱暴に手探りで突っ込んできた。

 

ひとし、突然の出来事にかなり動揺して両手で持ってつかんでいたハンドルが離れて自転車をまたもやガシャーンと倒してしまう・・・。

 

ひとし

「えっ!ちょ、ちょっとやめてください!ほ、ほんとに何もないんです!Σ(☆Д☆)」

 

梶谷の興奮した熱い息と目前の首筋に振動で何度も顔があたると少し汗ばんだ生温かい香りがひとしの鼻をついてウっとなった。しかも運動で鍛えてるせいか腕や身体の筋肉と骨の固い感触が生々しく伝わってくる。

 

梶谷、がしがしと探る手を止めずに不満を愚痴るように・・・。

 

梶谷

「マジ、くそイラつくんだよてめえ!この自己中やろうが!どういう教育受けてきたんだ~今まで!それとも生意気ないじめられっ子の不登校児か!だっせ~!生きてる価値ねーぞ!(# ゚Д゚)」

 

梶谷にされるがままパニクッてると、ちょうどその瞬間、「プップー!」と向こうから走ってきた赤いスポーツカーにクラクションをならされ、ふいにつかまれていた襟元の力が緩んだ。細い道路の真ん中で言いあっていたのでさすがに通行人には邪魔になるはずだ。

 

しかも中に乗ってたアベックらしく二人のサングラスをかけていた男女には、もめていた今のひとしたちの様子がかなり異様な光景に映っただろう。

ひとしは梶谷がスポーツカーの方に振り向いて気を取られているこの時を逃さずに、すかさず倒れた自分の自転車を無意識に起こすとそのまま横に惹きながら猛スピードで突っ走っていった。

 

梶谷

「おい、まてこのやろお~~~!(# ゚Д゚)」

 

だが、梶谷も反射的に逃げるひとしに気づいて、すぐに、走るように追っていく。部活で鍛えてるせいか殺意じみた目に走る勢いが凄まじい。さっき引きずっていた足がまるで嘘のように速い。

 

ひとし

「(わああああああ~~~~~~~~~~~!Σ(☆Д☆)」

 

ひさにペダルをぶつけながら、心の中でさけぶように振り向きもせず恐怖にひきつられ半泣き顔で走って行くひとし。

 

「プップー!」それでも2度目の強いクラクションに梶谷の倒れたままのマウンテンバイクが邪魔になってるのに気づくと梶谷は逃げるひとしの背中に息荒げ舌打ちするように、途中でかけ戻っていった。

 

それには気づかずに息をきらしながら死に物狂いでかけ走って行くひとしだったが、まさかこの皮肉にも、痛々しい出会いがこれからの1年、先の長い人生に彼が心のささえの大切な架け橋となるだなんてこの時のひとしにはまだ夢にも思わなかったのだ。

 

雲ひとつない青空に輝く太陽だけがそんな空回りしているひとしをあたたかく見守っていた。


 
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