No.96660

真・恋姫無双another 風ストーリーその3

ぴかさん

恋姫無双の2次小説、風ストーリーのその3です。

タイトルにある通り、風の視点で物語が進行していきます。

今回、ようやくあの人が登場します。

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2009-09-21 23:10:03 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:15886   閲覧ユーザー数:11632

その日、私は夢を見ました。

大きな日輪を、私が支えて立つ夢です。

その日輪は力強く、とても暖かいものでした。

 

そして、私は感じました。

英雄の登場を。

その英雄を支える自分を・・・。

 

 

翌日、私は夢の話を稟ちゃんにしました。

そして、自分の名前を程立から程昱に変える事も伝えました。

 

「それは、おそらく吉報なのでしょうね。」

 

稟ちゃんは、そう言って自分の事のように喜んでくれました。

 

私は、白蓮さん達に名前を変えた事を伝えました。

ただ、その理由は言いませんでした。

別に隠す必要はないのですが、稟ちゃん以外には何となく言ってはダメな気がしました。

その相手が現れた時に言うべきな気がします。

意味もなく理由を言わない私に、皆さんは訝しげな表情をしていましたが、勘のいい星ちゃんだけは何となく察してくれたようです。

 

そんなちょっとした変化がありましたが、一日一日は普通に過ぎていきました。

国土の充実、兵士達の鍛錬などやるべき事が多い事に変わりありませんが、非常に充実していました。

最初は路銀稼ぎの為だったはずなのですが、こうもやりがいがあるとなかなか離れられません。

星ちゃんや稟ちゃんも同じようで、疲れているようですがその中に満足感を得ているようです。

 

桃香さん達も同じように充実した毎日を送っているようでした。

面倒くさがって逃げ出す鈴々ちゃんを追いかける愛紗さん。

そんな愛紗さんの生真面目っぷりを冷やかす星ちゃん。

そんなやり取りを見ながら笑うみんな。

ほどよい緊張感の中で垣間見る平和な光景に、こんな時間がいつまでも続けばと思いました。

 

ですが、この世界はそれを許してはくれませんでした。

ある出来事が起こったのです。

 

 

それはある日唐突に起きました。

久々の昼寝で気持ちよく眠っていた私の安眠を奪ったのは、白蓮さんからの招集でした。

 

「どうしたんですか~?」

 

私が玉座に着くと、私以外の皆さんがすでに集まっている状態でした。

 

「風、休んでいるところをすまない。実は東の山の麓に流星が落ちたとの報告を受けたんだ。」

「流星ですか~?」

 

白蓮さんの真剣な眼差しに何事かと思ったのですが、はっきり言って期待外れです。

 

「それで、今からその辺りを調査に行こうと思っているのだが。」

「そんなに改まって言う事ですか~?」

 

東の山付近は、白蓮さんの領土なのですからそんな改まる必要はないはずです。

数名の兵士さんにおねがいすればいいと思うのですが。

 

「いや、流星だぞ・・・。」

「流星って・・・、もしかして~。」

「天の御遣いさんだよ、風ちゃん!!」

 

私が結論を出す前に、桃香さんが興奮した様子で話しました。

最初の流星という話でピンと来てはいましたが、あえて触れないようにしていたのですが。

 

「もし、噂のような人物がいるとしたら、適当な応対ではダメだと思うんだ。」

「それで、誰が向かうかと言う話ですか~?」

「そうなんだが・・・。」

「はーい!!私が行きまーす!!」

 

そう言って手を挙げる桃香さん。

白蓮さんは、そんな桃香さんの様子に溜息をつきます。

 

「桃香にはこれからやってもらいたい事があるんだよ。」

「えー!!」

 

桃香さんは、ぶうぶうと文句を言ってます。

 

「稟には西方地域の調査、愛紗はその護衛。鈴々と星は兵の鍛錬があるんだ。」

「要するに、風に行けという事なのですね~?」

「そう言う事なんだ。だが、東の山向こうはまだ盗賊などがはびこっている可能性があって、風だけに向かわせるのはちょっと不安があってな。」

 

残念ですが、私の武力では盗賊さん達には対抗できません。

とはいえ、兵士さんをたくさん連れて行けば何事かと民に不安を与えます。

それ以上に隣国に刺激を与える事にもなりかねません。

 

「それでどうしようかという事なのだが。」

「では、私が風の護衛につきましょう。」

 

そう言って星ちゃんが名乗りを上げました。

 

「だが、星には兵の鍛錬があるではないか。」

「それは、愛紗に任せよう。稟の護衛は鈴々で。」

「なっ。」

 

突然の指名に驚く愛紗。

 

「ちょっとまて、星。勝手に決めてもらっては困る。」

「我が軍の大事な軍師殿には護衛は必要だ。とはいえ、鈴々一人に兵の鍛錬は任せられん。その点、愛紗になら任せられる。」

「鈴々でも、一人で出来るのだ!!」

「いや、鈴々!!お前一人じゃ無理だろ!!」

 

これは愛紗さんです。

過去に鈴々ちゃんは、鍛錬を勝手に自由行動にさせて自分は街で遊んでいたという事が何度もありました。

 

愛紗さんに突っ込まれぐうの音も出ない鈴々ちゃん。

愛紗さんは自分で突っ込んでおきながらしまったという顔をしています。

星ちゃんは納得の表情です。

白蓮さんは、そんな三人の様子を見ながら一つ溜息をついて話しだしました。

 

「では、星の案を採用しよう。稟の護衛に鈴々。風の護衛に星。愛紗には申し訳ないが、一人で頑張って欲しい。後で私も手伝うようにするから。」

「分かりました・・・。」

 

白蓮さんの決定は絶対です。

こうして私と星ちゃんは数名の兵士を引き連れて東の山の麓へと向かいました。

 

 

道中は非常に平和でした。

星ちゃんと話をしたり、最初のうちは恐縮していた兵士さん達とも話をして歩みを進めました。

正直護衛なんて必要ないかと思いましたが、何が起こるか分からないのが今の世の中です。

領内の盗賊さん達の数は減ってはいますがいなくなったわけではなく、野生の危険な動物達も結構います。

大事を取るに越した事はないという事です。

そんな感じで、お城を出て3日ほどで流星が落ちたと思われる付近に到着しました。

 

「これは何だ!?」

 

星ちゃんの驚きはもっともです。

流星が落ちたと思われる場所の木々は焼け落ちて、焦げ臭い匂いをさせていました。

ただ、その際に起きたと思われる火災が広がることなく、なぜかある場所以降の木には燃えた後が全くありませんでした。

その中心に何やら青白い光がありました。

 

私はその光に吸い寄せられるように近づいていきました。

 

「風!!危険だぞ!!」

 

星ちゃんは私を遮るように立ちましたが、私はそれをどかすようにしてさらに光に近づきました。

そんな私の行動に、星ちゃんは驚いたようですが、諦めて一緒に来てくれました。

危険だと星ちゃんは言ってましたが、私には安心感を感じてました。

 

私が近づくにつれ、光はどんどん弱まっていき最終的には収まりました。

その光があった場所には一人の人間が倒れていました。

 

私と星ちゃんは急いでその人の元に寄りました。

まずは生死の確認です。

 

星ちゃんは鼻に手を当てました。

 

「息をしている。気を失っているだけのようだ。」

 

生きていると言う確認が出来て安心した後、改めてその人を見てみました。

それは男性のようで、今まで見たこと無い光り輝く衣を身に纏っていました。

天の御遣い・・・。

その噂話が現実のものになろうとしていました。

 

星ちゃんが、起こそうとしたのですが、なかなか目覚めません。

 

「仕方ないですね~。お城に連れて行きましょうか?兵士さんおねがいします。」

 

私は兵士さんにおねがいしてその人を馬に乗せました。

そして、お城への帰途についたのです。

 

 

お城に戻って白蓮さんに報告した後、部屋をあてがってもらいその人を寝かせました。

兵士さんに交代で見張りをしてもらい、気が付いたらすぐに知らせるようにしました。

 

「すごーい!!天の御遣いさんって本当にいたんだ!!」

 

私達の報告に桃香さんは興奮しています。

白蓮さんも少なからず興奮しているようです。

 

「いや、そうとも限りませんぞ。」

「えー!!だって、青白い光を放っていて、見たこともない光り輝く衣を纏っているんでしょ?きっと、あの人が天の御遣いさんなんだよ!!」

「そうなのだー!!」

「それはそうだが・・・。」

「まずは、あのお兄さんが目を覚まさないことには話が進みませんね~。」

「確かに。」

 

私や稟ちゃんは冷静でした。

桃香さんや鈴々ちゃんは、何やら興奮しどうしですし、星ちゃんと愛紗さんは珍しく困惑しています。

白蓮さんも戸惑っているようですし、私達が冷静でないと事態が収拾しそうにありません。

 

「とにかく、今はあの者が目覚めるのを待とう。話はそれからだ。」

 

白蓮さんがそう言ってその場は解散しました。

 

それからというもの桃香さんは、何かにつけてあのお兄さんの元に行こうとしましたが、兵士さんに止められていました。

いらぬ混乱を与えないようにとの白蓮さんの配慮でした。

 

それから数日、その日はようやく訪れました。

 

「おー!!ようやく気が付いたか!!」

 

見張りをしていた兵士さんの報告に興奮気味に話す白蓮さん。

 

「早速行こう!!」

「おい、桃香待てって!!」

 

報告を聞くやいなや玉座を飛び出す桃香さん。

そんな桃香さんの様子に呆れながらもすぐに追いかける白蓮さん。

私達は、その後ろをついて行きました。

 

 

部屋の前ではすぐにでも中に入ろうしている桃香さんを抑える白蓮さんの姿がありました。

白蓮さんの代わりに愛紗さんが桃香さんを抑え、白蓮さんは部屋の中に入りました。

その後ろに私、稟ちゃん、星ちゃん。

さらに後ろから桃香さん、愛紗さん、鈴々ちゃんの順番で部屋に入ってきました。

 

多数の人間の登場にそのお兄さんは困惑しているようでした。

 

「大丈夫か?」

「あ・・・はい。大丈夫です。」

 

白蓮さんの問いかけに答えるお兄さん。

よかった、言葉は通じるようです。

 

「私の名は公孫賛。ここの太守を務めている。お前の名は?」

 

お兄さんは公孫賛という名前に驚いています。

無理もありません。

白蓮さんは一国の太守。

その太守が直々に話しかけるというのは、数少ないことなのですから。

ですが、そのお兄さんは別の部分に驚いているように見えました。

 

「君が公孫賛?ま・・・まさかあ・・・。」

「まさかとは何だ!?私は、正真正銘公孫賛だぞ!!」

「そんな嘘だぁ~。じゃあ、後ろにいるのは劉備とか?」

「!?」

 

驚きました。

名乗ってもいないのに桃香さんの事を知っていたのです。

桃香さんがいると言うことは、外に出さないようにしていたので知っているのは城内にいる者だけです。

あんまり考えたくないですが、どこかの国の間諜が紛れ込んでいて情報が漏れたと言う可能性も否定できませんが。

 

「すごーい!!私の事を知っているんだ!!」

 

事の重大さを認識していないのでしょうか。

桃香さんは、自分の名前が呼ばれたと言うだけで、凄く興奮しています。

 

「なぜ、桃香の事を知っているんだ?」

「桃香?桃香って?」

 

ピキッ。

そのお兄さんが桃香さんの真名を口にした瞬間、何やら場の空気が凍り付くのを感じました。

桃香さんの横にいた愛紗さんがまさに鬼の形相になっています。

 

「おい、お前!!何故桃香様の真名を口にした!!」

「えっ!!真名って何!?」

 

今にも襲いかかりそうな愛紗さんと困惑気味のお兄さん。

そんな愛紗さんを星ちゃんが抑えました。

 

「まて、愛紗!!この者は真名の事を知らないようだぞ!!」

「そんなはずはない!!この大陸にいて真名を知らない者はいない!!」

「だが、冷静になって様子を見てみろ!!」

 

星ちゃんの指摘に、愛紗さんが冷静さを取り戻していきます。

確かに、お兄さんはなぜ愛紗さんが怒ったのか分からず困惑している様子でした。

 

「とにかく、桃香の事は置いておいて、お前は何者だ?名前は何という?」

「俺は、北郷一刀。」

「北郷か・・・。あまり聞かない名だな。」

「では、姓が北、名が郷、字が一刀という事だな?」

「いや、俺には字はないよ。姓が北郷で名が一刀だ。」

 

星ちゃんの質問に冷静に答えるお兄さん。

字がないと言うのも珍しいです。

 

「そうか。それで、北郷。お前はどこから来たんだ?」

「東京だけど?」

「東京?東京とはどこだ?そんな邑あったか?」

「私は知らないな。風や稟は聞いた事あるか?」

「聞いた事無いですね。」

「私もありませんね~?桃香さん達は?」

「私達も聞いた事無いよ。」

 

私達の答えに驚くお兄さん。

 

「えっ?ここは日本じゃないのか?」

「にほん・・・というのも聞いた事無いなぁ。」

「それじゃ、ここは?」

「ここは、幽州の私の居城だ。」

「幽州って・・・。それに公孫賛に劉備か・・・。ひょっとすると・・・。」

 

お兄さんは何やら一人でブツブツと話してます。

何か思い当たる節でもあるのでしょうか。

 

「とにかく、北郷も気が付いてすぐで色々混乱もしているだろう。今日のところは休んで詳しい話は明日にでもしよう。」

 

そう言って私達に部屋を出るよう促す白蓮さん。

桃香さんはもっと話をしたがっている様子でしたが、愛紗さんに促され渋々出ていきました。

そして、私が出ていく瞬間にお兄さんに呼び止められました。

 

「ごめん。何か食べる物ないかな?お腹が空いちゃって。」

 

笑いながらお腹をさするお兄さん。

 

「分かりました~。何か持ってくるように伝えますよ~。」

 

そう言って私は兵士さんに食べ物を持ってくるように伝えました。

よかった、どうも普通の人間のようです。

光り輝いていたモノですから神様か何かとも思いました。

 

さて、このお兄さんを拾った事が吉と出るか凶と出るか。

その回答は、時間が示してくれるでしょう。

それよりも、私はこのお兄さんに別の何かを感じ取っていました。

それがこの大陸を戦乱の世に駆り立てるとは、さすがの私もこの時には分かりませんでした。

 

 

あとがき

 

ようやく登場です、天の御遣い北郷一刀君。

当初出そうかどうしようか悩んでいました。

この話の主役はあくまで風のつもりでいたので、一刀の存在はそれにとって邪魔になるのではと・・・。

ですが、一刀が居ないと始まらない事もあるので、ここで登場させました。

 

かなりくどい感じの登場になってしまいましたね。

本当はもっとシンプルな方がいいと思ったのですが、話を組み立てていくうちにこんな感じに。

 

今後どんな形で進んでいくか。

もう一度恋姫やり直して色々練っているところです。

 

あと、鈴々が若干空気気味ですが、登場させる場がない(^^ゞ

戦闘シーンでも書ければいくらでも頑張ってくれるはずなのですが、なかなか・・・。

 

次はまたしばらく時間をいただく事になりそうです。

恋姫をじっくりとやり直して矛盾がないようにしないと。

 

というわけで、時間がかかるかもしれませんが、見捨てずにいてくれると嬉しいです。

 

今回もご覧いただきありがとうございました。


 
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