No.96657

真・恋姫†無双~江東の花嫁達・娘達~(番外五)

minazukiさん

今日は敬老の日ということで一刀と雪蓮の娘である孫紹が初めて祖母である孫堅の墓へいったお話です。

そろそろ秋の香りが漂ってくる今日この頃、番外編をどうぞ。

2009-09-21 22:54:39 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:18118   閲覧ユーザー数:13746

(番外五)

 

「ここがおばあちゃんのおはか?」

 

 親子水入らずでやってきたのは雪蓮達の母親であり、孫紹の祖母になる孫堅文台の墓だった。

 

 初めて訪れた祖母の墓の前に立つ孫紹は母親である雪蓮によく似ていた。

 

「ええ、貴女のお婆ちゃんよ」

 

 素朴な墓石に定期的に花を添えられていた。

 

 それは誰がやっているかなどいわなくてもわかることだった。

 

「どんなひとだったの?」

 

「そうね。強くて厳しくて容赦なくて」

 

「おいおい」

 

「だって本当のことよ?本気で怒ると私以上に怖いわよ」

 

 雪蓮の本気で怒るところをみたことのない孫紹にとってどれほど怖かったのかよく理解できなかった。

 

「でも、とっても優しかったわ。いつも笑顔で私達のことを考えてくれていた」

 

 もし生きていれば孫を溺愛するだろうと雪蓮は思った。

 

「でもどうしてこんなところにおはかをつくったの?」

 

「お婆ちゃんが死んだ時はまだ乱世が続いていたのよ。それに私達も綺麗な墓を作る余裕すらなかったわ」

 

 初めて味わう身体を裂かれるような思いを経験した雪蓮にとって当時のことは今でも鮮明に覚えていた。

 

「でも私と貴女のパパのおかげでこうして平和になったわ」

 

 一刀がいなければ何もかもが違った運命を辿っていたに違いなかった。

 

 毒矢を受けて自分は死んでいたかもしれない。

 

 そうすれば孫紹を身籠ることもなかった。

 

 だが、天の御遣いとして呉と雪蓮に未来を照らしてくれた。

 

「パパがいなければ私や貴女もこんなにも幸せになれなかったと思うわ」

 

「雪蓮……」

 

 一刀はただ雪蓮と共に未来を見たいと思っていたあの頃。

 

 彼女の命を救い、お互いを愛し合い、そして結ばれて娘も産まれた。

 

 幸せな日々。

 

「パパと出会えたのもきっとお婆ちゃんのおかげなのよ」

 

「そうなの?」

 

 一刀の方を見上げる孫紹。

 

「うん。そうかもしれない。俺が雪蓮と紹に会えたのも孫堅さんが導いてくれたかもしれないな」

 

 一刀も一度でもいいから会いたいと思った。

 

「ぱぱ」

 

「どうかしたのか?」

 孫紹は一刀に抱きついてきた。

 

「紹?」

 

「ぱぱはおばあちゃんのことは好きなの?」

 

「そうだな。会ったことは無いけどきっと好きになれたと思う」

 

「ままよりも?」

 

 孫紹は見たことのない祖母と目の前にいる母親のどちらが好きなのか一刀に問う。

 

「俺は雪蓮以上に好きな人はいないよ。孫堅さんはなんていうかな、憧れのようなものだと思う」

 

「あこがれって?」

 

「みんなが笑顔で暮らせる世の中を作るために懸命に生きた。そしてその想いが雪蓮や蓮華達へと受け継がれていく。そして今度は紹達がそれを受け継いでいく。その流れを作った人だからね。俺も同じようにしたいっていうことかな」

 

 まだ幼い孫紹には難しい話だったが、自分の大好きな父親と母親が認める祖母なのだからきっと素晴らしい人なのだと理解した。

 

「わたしもおばあちゃんのようになれるかな?」

 

 その問いに一刀ではなく雪蓮が優しく答えた。

 

「ええ、貴女にもお婆ちゃんの血が流れているのだからなれるわよ」

 

 平和への土台を作った孫堅。

 

 平和をもたらした雪蓮と一刀達。

 

 そしてこれからの平和を守っていく孫紹達。

 

 想いは受け継がれていく。

 

「でも、貴女がしっかり頑張らなければお婆ちゃんは怒るわよ?」

 

「そのときはぱぱにたすけてもらうもん」

 

「お、俺か?」

 

 おそらく何の防壁にもならないだろうと一刀は思った。

 

「まったく、すぐにパパに頼っていたらお婆ちゃんは呆れるわよ?」

 

 それは建前であって娘であっても少し一刀にべったり過ぎるのではないかと最近、思っているだけに油断できない雪蓮。

 

「そうだぞ。一人でできる事は一人でしないとお婆ちゃんに呆れられるぞ」

 

「ぱぱがそういうなら、わたしがんばる」

 

 一刀から離れて孫紹は墓前に手を合わせた。

 

「おばあちゃん、わたしはがんばります」

 

 その姿を見て一刀と雪蓮は微笑みそっと肩を寄せ合った。

 

「いっしょうけんめいにがんばって、いつかままよりもむねがおおきくなってぱぱとむすばれます」

 

「「はい?」」

 

 とんでもないことを孫堅に誓う孫紹に二人は唖然とした。

 

「だからいつまでもみまもっていてください」

 

 そう締めくくると孫紹は振り返って両親にこう言った。

 

「ぱぱ、まま。わたし、おばあちゃんにやくそくしたよ」

 

 孫紹は満面の笑みを浮かべてそう言った。

 

 二人はそんな愛娘を優しく見守った。

(座談)

 

水無月:お久しぶりです。最近は何かと悲しい出来事が多くて気持ち的に落ち込んでいました。

 

雪蓮 :そういうときはゆっくりするのがいいと思うわよ?

 

水無月:そうですね。そのおかげで山越編最終話も遅れていますのでもう少しお待ちください。

 

雪蓮 :そういえば、前回の時、娘達の話の順番のことが出たわよね?

 

水無月:ええ。とりあえず具体的な内容は次回のお知らせの時いたしますのでそちらをご覧ください。

 

雪蓮 :それじゃあ、今日は短いけれどこの辺でね♪

 

水無月:それではまた次回。


 
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