No.95780

真・恋姫†無双 ~長江の華~ 第九話

MuUさん

久しぶりの投稿で、ようやく9話目。
今回は拠点風、ハチミツあえという感じですか。

何だか文章がおかしくなってきた気がしますが
Going My Way!でいきます。

続きを表示

2009-09-16 23:59:07 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:4576   閲覧ユーザー数:3576

 

 

 

 

<登場人物紹介>

 

姓名   字   真名  簡単な説明

 

北郷一刀        錦帆賊の警備部隊の下っ端。主人公。前回、初めての人殺しを経験し倒れた『天の御遣い』

 

甘寧  興覇  思春  錦帆賊の頭領。前回、突然の登場で決め台詞言ったけど、あれ、鈴は?

 

丁奉  承淵  冬灯   錦帆賊の将。あれ?前回、一刀くんの回想3行分のセリフのみ??

 

魯粛  子敬  琴鳴  錦帆賊の客将。目を開いたら虎だったお姉さん。

 

 

 

錦帆賊の現在の兵数:2000

甘寧隊:1000

丁奉隊:800

魯粛隊:200

 

こんな感じかな、天の御遣いを前面に出していないためこの程度と考えています。

 

 

 

 

血のニオイ・・・

 

目の前には先程まで自分と戦っていた賊の男

 

倒れている

 

血がどんどん拡がっていく

 

駄目だ

 

死んじゃ駄目だ

 

自分を殺そうとしていた男

 

でもそれでも死んで欲しくない

 

男の血を止めようと傷口を押さえる

 

暖かい感触

 

止まらない

 

―ジュブ、ズブズブッ

 

それどころか血が噴き出した

 

―バシャーン

 

天高く血が噴き出す

 

雨が降る

 

赤い

 

赤い

 

血の雨が

 

一刀「うわぁああああああああああああ―」

 

 

―バサッ

 

勢いよく身体を起こしたせいか、布団が寝台から落ちる。

 

一刀「―ハァハァハァハァ・・・・・・夢か」

 

額から汗が落ちる。

 

汗で服が引っ付いて気持ちが悪い。

 

まるで血の―

 

甘寧「・・・起きたか、北郷」

 

俺の考えは、その凛とした声で遮られた。

 

一刀「甘・・・寧・・・・・・ここは・・・・・・俺の・・・部屋?」

 

薄暗い部屋に、一人、甘寧は椅子に座っていた。

 

甘寧「そうだ。まだ、朝も早い・・・・・・寝てろ」

 

甘寧の表情はいつも通りの厳しい顔。

 

でも、どこか心配してくれている・・・そんな気がする。

 

一刀「ずっとここにいてくれたの、甘寧?」

 

甘寧「・・・余計なことは考えるな・・・今はただ寝るんだ」

 

話し方は、ぶっきらぼうだが、やはり心配してくれている。

 

一刀「ありがとう、甘寧。なんか疲れて、さ。ごめ―」

 

―リィーン、チリーン

 

優しい鈴の音が聞こえた気がした。

 

あれ、そういえば俺・・・甘寧に鈴・・・・・・渡した・・・っけ―

 

そこで一刀の意識は途絶えた。

 

甘寧「・・・・・・お前は優しすぎるんだ。だから―」

 

甘寧の手には彼女の愛刀『鈴音』が握られていた。

 

―チリィン

 

甘寧「その優しさ・・・・・・穢すものは私が―」

 

―チリィーン

 

握り締めた『鈴音』からは、鈴の音が鳴っていた。

 

 

薄暗い部屋の中、蝋燭の光にうつる影は二つ。

 

琴鳴「それで思春、一刀ちゃんは・・・・・・」

 

賊の一人を倒したまでは良かったが、その後、突然倒れたのが気になっていた。

 

甘寧「・・・・・・一度目を覚ましたが、また眠りについた」

 

優しすぎる一刀には戦いなど向かないのだろう。

 

甘寧「あいつのいた世界―いや、あいつの国は平和で、身近に死を感じたことが無い、そう言っていた」

 

琴鳴「そう・・・・・・だからなのね」

 

琴鳴は自分の思い違いを知った。

 

一刀について話は聞いていたが、本当の意味で理解をしていなかった。

 

この時代の人間ならば死は常に隣にあるもの、常に感じているものである。

 

倒れる直前の一刀の言葉を甘いとも考えていた。

 

でも、そうじゃなかった。

 

根本が違うのだ―

 

そんな思考は甘寧の言葉で遮られた。

 

甘寧「・・・・・・琴鳴、あの賊は一体何者だったのだ。お前があそこまで追い詰められるなど―」

 

そう、ありえない。

 

ありえないのだ。

 

極端に言えば、あの人数の賊であれば、琴鳴一人でもどうにかなるのだ。

 

琴鳴「頭領以外はただの賊・・・・・・でも、あの男だけは別。あんな小さな賊の頭領では考えられない強さ・・・・・・。

   あの動きは、訓練を受けたもの、どこかの細作だったのかも知れないわね」

 

甘寧「・・・・・・・・・・・・」

 

琴鳴「いずれにしろ、あまり時間は残っていないわ。・・・・・・一刻も早くあの子達と手を組むべきね」

 

甘寧「・・・・・・分かっている。だからこそ私と冬灯の二人で出向いたのだ。・・・・・・どう転ぶかはあいつ次第かもしれないな」

 

今は眠る、あの優しすぎる男の顔を思い浮かべる。

 

その笑顔が、甘寧には太陽の様に思えるかのようになっていた。

 

 

朝起きると、すでに甘寧の姿は無く、椅子のところに置手紙が一枚あった。

 

『本日休暇』

 

この四文字だけが書いてあった。

 

一刀「休暇・・・・・・か、何をしようか。・・・・・・とりあえず、外に出るか」

 

まだ何かするという気になれない。

 

でも、このままじゃいけない。

 

部屋に閉じこもってばかりでは、気が滅入るだけ。

 

外に出て、気分を変えよう。

 

俺に出来るのはそれくらいだしな。

 

一刀は、聖フランチェスカの制服ではなく、平民の服に着替えて外に出る。

 

大通りに面した宿屋を出ると、そこには活気のある人の流れがあった。

 

笑顔。

 

笑顔。

 

笑顔。

 

道行く人々の顔には、笑顔があった。

 

この顔を見ているだけで心が癒される気がする。

 

一刀「さて、メシでも食いに行くか~!!」

 

うーんっと、伸びをして一刀は歩き出す。

 

人々の笑顔に包まれながら。

 

 

拠点・魯粛01

『涙の居場所』

 

どうして俺はここにいるんでしょうか?

 

警備部隊の詰所の一室。

 

書類整理をする部屋で、最近は琴鳴の専用部屋となりつつある。

 

今日は休暇を貰ったので、通りをフラフラ歩いていただけなのに・・・

 

兵「おーい、北郷ー!」

 

呼び止める声は同じ警備部隊の先輩方。

 

一刀「あれ?先輩達どうしたんですか―って、あ、あー!?」

 

兵「すまんな、北郷。上官には逆らえないんだ」

 

兵達はそう良いながら縄を取り出す。

 

一刀「えっ!?なに?どうして俺縛られてるんですか?というかなんでそんなに笑顔なんですかー!?」

 

突然、同僚に縄で固められ、ここまで荷物のように運ばれてきた。

 

先輩方は理由を聞いても、

 

兵「隊長命令だ」

 

とにこやかな笑顔で答えるだけだし。

 

そして、縛られたままこの部屋に連れて来られ、そのまま椅子に座らされた。

 

兵「失礼します。それでは我らは仕事に戻ります」

 

そう言うと兵達は部屋を出て行く。

 

琴鳴「はい、ご苦労様。・・・・・・あらあら、一刀ちゃんそんな趣味があったの?」

 

一刀「琴鳴がさせたんだろ!」

 

今日は仕事じゃないから隊長と呼ばずに真名で呼ぶ。

 

琴鳴「うふふ、そうだったかしらね」

 

琴鳴は微笑みながら俺の目をじっと見つめる。

 

その目はいつものように閉じられているかのような糸目。

 

あの時、俺が倒れる前に見た賊の返り血にまみれた琴鳴の目は確かに開いていた気がする。

 

一刀「琴鳴、そういえば―」

 

琴鳴「・・・・・・もう大丈夫そうね」

 

一刀「―ああ、うん、心配かけたみたいだね」

 

琴鳴の真剣な言葉に一刀の疑問はかき消される。

 

琴鳴「一刀ちゃん、私はね、あなたを鍛えている度に思っていたの・・・。

   貴方の剣には何か足りない。でもそれが何なのか分からなかったの。でもようやく分かった。

   天の世界、それも一刀ちゃんのいた国は戦のない平和な国だったって思春から聞いてようやくね・・・。

   駄目ね、私・・・一刀ちゃんの先生失格だわ」

 

一刀に足りなかったもの、それは『死』。

 

自分が『死』ぬ、相手を『死』なせるという実感。

 

この世界で剣を持つものは誰しもが持っているもの。

 

いや、剣を持たない人でも持っているもの。

 

一刀「でもそれは仕方ないよ。この世界は死が多い―違うな、それは俺のいたところでも同じだ。

   前に甘寧や冬灯にも言ったことなんだけど、俺のいた国では、死への実感が薄かったんだ。

   でも、この世界に住む人々は、常に死を感じて生きている。だから俺は・・・あの男を斬った時―」

 

一刀は琴鳴抱きしめられていた。

 

琴鳴「大丈夫、ごめんなさい。そしてこれからも・・・ごめんなさい・・・・・・」

 

あの時は我慢していた言葉。

 

たぶん思春もそう。

 

慰めじゃなく、謝罪の言葉。

 

一刀「・・・・・・ありがとう―」

 

一刀はいつの間にか泣いていた。

 

もう、大丈夫だと思っていたのに・・・。

 

しばらくそうしていただろうか。

 

冷静に考えればこの格好すごく―

 

一刀「あのー、琴鳴さん・・・そろそろ離してくれませんか。その・・・胸が・・・・・・」

 

身動きの取れない状態で椅子に座らされているため顔がとても柔らかいものに挟まれている。

 

とても嬉しい、嬉しいのだが、

 

琴鳴「あらあらまあまあ、私の胸じゃ不満かしら?」

 

一刀「いえ、そんなことありません」

 

一刀は瞬時に否定の言葉を発した。

 

この胸に挟まれて喜ばない男はいるのか?

 

いや、いない!!

 

琴鳴「うふふ、いつでも私の胸の中で泣いていいのよ。・・・・・・こうすれば、誰にも見えないでしょう」

 

そう、自分はこれからも泣き続ける。

 

一人で・・・・・・。

 

そう決めていたのに。

 

一刀「琴鳴・・・・・・本当にありがとう」

 

 

拠点・丁奉01

『空に溶ける声』

 

太陽も高くなり、お腹も減ってきた。

 

そろそろ昼飯かなーっと、通りを歩いていると見たことのある背中が前方にあった。

 

一刀「おーい、冬ー灯ー!」

 

冬灯「あーん、だれだこんな通りで俺の名前をお声で叫ぶのは、ああぁん!」

 

ご機嫌斜めでした。

 

一刀「ドウモスイマセンデシタ」

 

あきらかに目つきが犯罪者だった。

 

いや、確かに江賊ですが。

 

冬灯「おう、兄ちゃんかと思ったら兄ちゃんか」

 

いつものニヤニヤ顔だ。

 

あれっ?今なんか言葉がおかしかったような・・・

 

一刀「あのー、冬灯さん。もしかしなくても呼んだのが俺って気付いてた?」

 

冬灯「ああ、だから兄ちゃんかと思ったら兄ちゃんかと言っただろ。それに俺が真名を教えてる奴なんざ限られてるからな」

 

分かっていたなら睨む必要はないと思うんだが・・・。

 

そんな俺の考えを読むかのようにニヤニヤしてるし。

 

一刀「それは光栄だな。で、それ何?」

 

冬灯の肩には木箱が担がれていた。

 

冬灯「あーん、これかぁ?気になるか、気になるよな」

 

そう言いながら俺に箱を渡す。

 

一刀「中身は、っと―」

 

冬灯「(あえて)言い忘れてたが―モニュモニョ(開けたらスゴイことになるぜ)」

 

冬灯は最後の言葉を、音がほとんど出ない様に言った。

 

そう、ニヤニヤと。

 

一刀「今何か聞こえたよ!スゴイことって何?開けません!開けませんから!!返すよ、ほら」

 

そう言って箱を返そうとするが冬灯は受け取らない。

 

一刀「?どうしたんだ冬灯??」

 

冬灯「兄ちゃん、女に荷物を持たせるのはどうかと思うぜ。いいから運べや」

 

ニヤニヤ顔のままで言われても、まあ確かにそうだ。

 

この箱結構重いし、一体中身は何なんだろう?

 

一刀「はいはいっと、ああ俺の昼飯が遠のいていく・・・・・・」

 

そんな考えとは裏腹に、空腹は一刀を襲い始める。

 

冬灯「おう、兄ちゃんも昼飯まだだったのか、そんじゃあこの後一緒に行くか」

 

ニヤニヤというよりはニカッという笑顔で誘われて、断る理由もない。

 

それに―

 

一刀「ご馳走になります」

 

良い物を食べさせてもらおう。

 

冬灯「兄ちゃん・・・・・・誰も奢るとは言ってないぜ・・・ったく、まあ良いか。薄給の兄ちゃんの為に上手いもん食わしてやるぜ」

 

軽く呆れ顔で言うが嫌がる様子もなく冬灯は了承した。

 

一刀「わーい」

 

自分より小さい子に奢ってもらうのに気が引けないかと尋ねられればこう言おう。

 

全然!!とね。

 

平の兵と将の給与差を舐めたらいかんのです。

 

 

一刀「んで、ラーメンですか」

 

二人が居るのは、通りから少し外れたところにあるラーメン屋の屋台。

 

冬灯「あーん、兄ちゃんラーメン嫌いだったか?ここ美味いぞー」

 

一刀「いや、嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど―」

 

―ズズー

 

もっと良いところに連れて行ってもらえると、そう言おうとした時、口の中に旨みが弾けた。

 

一刀「ん、美味ぇー!このラーメン、マジで美味いな!!」

 

冬灯「・・・マジ?・・・・・・まあよく分かんねぇが喜んでもらえたみてぇだな」

 

―ジュルジュルジュルジュル

 

一刀「ぷっはー、一気に食っちまった。うん、ありがとう冬灯。こんな美味いラーメン食ったの初めてだ」

 

冬灯「いやはや、良い食いっぷりだぜ兄ちゃん。おかわりでもするか?もちろん自腹で」

 

冬灯はニヤリとしながら自分の分を食べている。

 

一刀「いや、一杯で充分満足だよ。・・・・・・そういや冬灯さ、甘寧と一緒の仕事って聞いてたけど、どんな仕事だったんだ?」

 

冬灯といえば甘寧と共に最近会わなかった。

 

冬灯「んはー、まー、われだ、ひぃわふる、もご、もごん、うってやふだしぇ」

 

冬灯はリスのように頬をパンパンに膨らませながら食べているので言葉になってない。

 

一刀「うん、冬灯、口の中のものがなくなってから話そうね」

 

冬灯はその言葉に、ゴクンと音が鳴りそうな勢いで飲み込んでいる。

 

もうちょっとよく噛もうね、冬灯さん。

 

冬灯「んじゃ、改めてと、まー、あれだ、いわゆる交渉っていうやつだぜ」

 

一刀「へー、あれっ?でも甘寧と一緒に帰って来たんだよね。でも昨日―」

 

昨日見なかった気がする。

 

そう言う前に冬灯が言う。

 

冬灯「あー、あれな。俺もお前らを助けに行こうと思ったんだが・・・・・・お頭が仕事の後始末とか放ってさっさと行きやがったからな」

 

あれっ?ちょっとご立腹ですか?

 

冬灯「ちっ・・・・・・ああ、そうだ。あの時の行商人は無事に商売してたぞ。あの木箱もあいつに届けてもらったもんだったしな」

 

一刀「そうか・・・・・・良かった」

 

冬灯「真面目に働いてる奴が生き残る。それがまかり通らないのがこの世なんだぜ。それでも、あの男は生きてる。兄ちゃん達が助けた。それだけは忘れんなや」

 

一刀「うん、ありがとう冬灯。そうだよな、真面目に一生懸命生きている人が涙を飲むようなことはあっちゃいけないんだよな・・・」

 

そう言って空を見上げた一刀の顔には、何か力強い意志が秘めており冬灯は思わず見惚れてしまった。

 

冬灯は顔の温度が上がっていくのを感じた。

 

それを一刀に悟られないように、

 

―バシンッ

 

一刀「っ!?」

 

ニヤニヤしながら一刀の背を勢いよく叩く。

 

冬灯「がんばろうぜ兄ちゃん!」

 

その声は一刀の見上げていた空に溶けていた。

 

 

拠点・甘寧01

『鈴の思い』

 

夕暮れ時、風に揺れる錦の帆。

 

その下に甘寧が一人、夕焼けを見ながら座っていた。

 

甘寧「・・・・・・北郷か・・・」

 

たぶん近付いてきた俺に気付いていたんだろう、こちらを見ずに言う。

 

一刀「甘寧・・・隣、いい?」

 

甘寧「・・・・・・好きにしろ」

 

少しの間、無言で隣り合っていた。

 

二人の間に、柔らかな風が吹き抜けていた。

 

一刀「・・・・・・あの、これ」

 

いつか露店で買ったお礼の入った小袋を渡す。

 

甘寧「?・・・何だ?」

 

甘寧は受け取った小袋を胡散臭そうに見ながら言う。

 

一刀「えーっと、今日までありがとうの・・・お礼かな」

 

頬をポリポリと掻きながら言う。

 

甘寧「―っ・・・・・・・・・そうか、まあいい。ここを去るというなら止めはしない。だが―」

 

俺の言葉を聞き、甘寧は目を見開いたかと思うと顔を逸らした。

 

一刀「へっ!?」

 

甘寧「・・・・・・寂しく・・・なるな」

 

甘寧の言った一言は一刀には聞こえなかった。

 

それよりも去るとは一体どういうことなんだろう。

 

一刀「何のこと?俺は別にどこも行かないけど・・・。というか行く当てもないしさ」

 

甘寧「―っ//////」

 

―チャキッ

 

だー、だから首筋に刃を当てるのは止めてって。

 

一刀「――――――っ」

 

身動きも出来ず、そんな言葉も出せない。

 

どれくらいの時間が経ったのだろう。

 

たぶんほとんど経っていないのだろうが俺にはとても長く感じられた。

 

だって首筋に刃ですよ、何度経験しても慣れません。

 

慣れたくもないしね。

 

―カチャ

 

甘寧「・・・・・・はぁ」

 

甘寧は剣を傍らに置き、溜め息をつく。

 

何だか色々諦めた顔をしている。

 

一刀「勘違いさせてごめん。これからも宜しくっていう意味も籠めてなんだ、それ」

 

そういう一刀の言葉に甘寧は小袋を開ける。

 

甘寧「これは・・・・・・鈴か」

 

一刀「うん、甘寧って『鈴の甘寧』って呼ばれているのに鈴持ってないよね。だから気になってて」

 

甘寧「・・・ああ、それはな―」

 

―チャ

 

甘寧は、剣を手にする。

 

甘寧「この剣の名は『鈴音』。その名の通り―」

 

―ィーン、チリーン

 

剣から鈴の音が聞こえる。

 

甘寧「氣を籠めると、空気が震えて鈴の音のように聞こえるのだ。・・・・・・そこから付いた通り名が・・・『鈴の甘寧』だ」

 

一刀「へー、だから鈴を持ってなかったんだ。でもさ、それだけじゃないんだ、その鈴を選んだのって」

 

甘寧はその言葉に惹かれるようにこちらを見る。

 

一刀「その鈴に彫られてるスイセンの花を見たときにさ、甘寧のことが思い浮かんだんだ」

 

水辺で咲くスイセンの姿が長江を見つめる甘寧に思えた。

 

だから、この鈴を選んだ。

 

甘寧「・・・・・・春の訪れと共に咲く花・・・か・・・・・・・・・ふふっ・・・北郷―」

 

何かを考えこむようにしていた甘寧は、突然俺に声をかける。

 

甘寧「私の真名は思春、『春を思う』と書いて思春だ。我が心、お前に預ける」

 

一刀「甘―」

 

思春(甘寧)「思春で良い・・・・・・・・・か、一刀///」

 

一刀「ああ、ありがとう思春。君の真名に恥じないように精進するよ。

   それに呼び方も無理しなくていいよ。一刀が呼びにくかったら北郷のままでいいし、そっちの方が思春らしい」

 

思春「・・・・・・・・・気が向いたら一刀と呼んでやる。・・・・・・私はもう行く」

 

思春は勢いよく立ち上がり、ダンダンと足音を鳴らしながら歩いていく。

 

思春の声には棘があった気がする。

 

俺何かしたっけな?

 

見上げる先には、錦の帆がふわりふわりと風に揺られていた。

 

 

休暇の翌日、俺は甘寧―思春に呼ばれ、楼船の船長室へとやって来た。

 

そこには、ニヤニヤ顔の冬灯、穏やかな微笑を浮かべた琴鳴、そしてしかめっ面の思春がいた。

 

思春の腰には俺が渡した鈴があった。

 

それを見つけたとき、俺は笑顔を隠すことが出来なかった。

 

っと、いけないいけない。

 

一刀「それで何の用?」

 

思春「・・・・・・北郷、貴様は警備部隊から降格だ。志願兵と一緒に錦帆賊の選抜を受けろ」

 

一刀「はっ?はああああああ!?」

 

 

その頃、袁術の居城―

 

袁術「のう、七乃。最近、天の御遣いがどうとかいう噂の賊がおったのー」

 

張勲「突然どうしたんですかお嬢様?『そんなの放っておいてハチミツが食べたいのじゃー』とか言ってませんでしたっけ?」

 

袁術「何だか最近ハチミツの量が減ってきている気がするんじゃ。これはそいつらの仕業だと思うのじゃー。

   小さな虫と思って放っておいたがこれは由々しき事態なのじゃ!!」

 

張勲「(というかお嬢様、放っておいたというよりは単に忘れてただけじゃ・・・。

    それにハチミツはお嬢様が食べ過ぎないように私が制限させているだけなんですけど・・・)

   まあ、いつでも潰せるように色々動いてますがねぇ~」

 

袁術「流石じゃ、七乃!早速、殲滅じゃー!でも、妾が自分で行くのは面倒なのじゃ。また孫堅にやらせるのじゃ!」

 

張勲「あははー、お嬢様すぐには無理ですよー。でも、孫堅さんにやらせて、手柄は全部自分のものですか~♪

   それはいい考えですね~♪よっ、この生まれながらの悪謀家!」

 

袁術「うははー、もっと妾を褒めるのじゃー♪」

 

張勲「いよっ、この可愛いいじめっ子!大陸一のいやがらせの天才!鬼め悪魔め美羽様め♪」

 

袁術「うむうむ。妾は気分が良いのじゃ。蜂蜜水を持ってくるのじゃー♪」

 

 

<あとがき>

 

毎度この駄文を読んでくれている方々には変わらぬ感謝を

初めてっていう人には、最初から宜しくという思いを

隅々まで呼んで誤字脱字の指摘や感想などのコメントをくれている方々には変わらぬ妄想を

どうも仕事が本当に忙しくそろそろ病んできたMuUです。

 

書く暇はなくても、他人様の作品を読む暇はありますがねw

 

 

前回、お気に入りが50名を超えて驚いたと書きましたが、60名超えたー!!

御礼申し上げる。

今回も言っとこう

MuU「うっほ~い!!」 

叫んでみました。

 

 

さて、今回は拠点・・・・・・拠点?

まあいいでしょう、甘寧は今回の最後の方から思春表記になりましたね。

でも、呼び方は基本的に北郷ですな。

 

次回は、『一刀くん、平の兵以下から成り上がるの巻(仮)』をお送りします。

 

あー、そろそろ本拠地移動しないと・・・

 

 

最後にもう一度、こんな読みにくい文章を読んでくださる皆様に謝々!


 
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