No.951529

ビーストテイマー・ナタ

リュートさん

昔、書いていたオリジナル小説の第1話です。

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2018-05-07 08:50:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:206   閲覧ユーザー数:204

森の中の拓けた場所で、小さな女の子が泣いていました。木で作られた遊具のような物も置いてあります。そこへ鎧を着込んだ剣士が通りかかりました。

 

「お前はなぜ泣いている?」

 

「お友達がいなくなっちゃったの…」

 

女の子は泣き止むと剣士の顔を見上げて、答えました。

 

「フッ…。私には友達など一人もいない」

 

「じゃあナタがお友達になってあげる!」

 

女の子は急に笑顔になると、剣士の腕にしがみ付きました。剣士は少し困ったような顔をしています。

 

「いなくなった友達を探さなくて良いのか?」

 

「おじさんも一緒に探してよ?」

 

「おじさんと言われるほど歳は取っていないのだが…」

 

「おじさんはどこに行くの?」

 

「この森に住んでいるという魔法使い・ユリアーノ様に会いに来たのだが、もう何日も探し歩いているのに見つからない…」

 

「ユリアーノってお師匠様のことかなぁ」

 

「ユリアーノ様を知っているのか?」

 

「ナタが案内してあげる!」

 

ナタに手を引かれて一歩前に出た途端、目の前に雲を貫く巨大な塔が現れました。

 

「こんなところに塔があったのか?これだけ巨大な塔ならば、遠くからでも見えそうなものだが、全く気づかなかった…」

 

「お師匠様が魔法で隠してるからだよ?普通の人間には近づいても見えないの」

 

「なるほど、魔法使いの家は簡単には見つからないと聞いていたが、そう言う事だったのか」

 

塔の正門から中に入ると中央に階段があって、その両脇に巨大な銅像が立っています。突然、剣士の方へ銅像が動き出しましたが、ナタが手を振ると銅像は手を振り返して、また元の位置に戻って行きました。剣士は銅像の間を通って階段を昇り始めます。

 

「そっちはダメ!落とし穴があるの」

 

塔の中は入り組んでいましたが、ナタが案内してくれるので、トラップが仕掛けてある場所は全て教えてくれます。塔の中腹辺りに来ると大広間がありました。鋭い牙の魔獣が唸り声を上げて、階段の前を塞いでいます。剣士は腰に携えた剣を引き抜いて構えました。

 

「ジョルジュ!ここにいたんだねー」

 

ナタが魔獣のそばに駆け寄ると、魔獣はまるで飼い犬のように尻尾を振って、ナタと戯れています。ナタは魔法使いの弟子だから、普通の子供ではないのだと剣士は悟りました。

 

「まさか…、そのモンスターがお前の友達だと言うのか?」

 

「うん!ナタのお友達のジョルジュ。他にもたくさんお友達いるよ」

 

「人間の友達はいないのか?」

 

「人間のお友達はおじさんだけかな?」

 

「私はお前の友達になった覚えはないのだが…」

 

ナタがほっぺを膨らませて怒っているので、剣士は慌てて謝りました。今、ナタの機嫌を損ねてしまったら、このモンスターとトラップだらけの塔を昇り切れる自信がなかったからです。

 

「すまない…。友達にでも何でもなるから、ユリアーノ様のところへ案内してくれないか?」

 

「あと少しでお師匠様の部屋に着くよー」

 

「雲の上まで貫くような巨大な塔だったから、まだ中腹辺りではないのか?」

 

「あれは魔法でそう言う風に見せかけてるだけだよ?」

 

「何の為にそんな事を…」

 

「うーん。多分、人間が塔を見つけても入って来るのをやめるからじゃないかな?」

 

「確かにあの塔を見たら、尻込みしてしまうかもしれないな…」

 

「ジョルジュは番犬だから、お師匠様の部屋のすぐ下の部屋にいたんだと思う」

 

「ではこの上にユリアーノ様がおられるのか」

 

剣士は覚悟を決めて、階段を昇り始めました。

 

…つづく


 
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