No.948246

ヘキサギアSS バルクアームを駆る傭兵

NDさん

コトブキヤのプラモシリーズ ヘキサギアのバルクアーム発売記念で書きました。

2018-04-09 17:52:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1449   閲覧ユーザー数:1449

ガタン、と音を立てて抱えていたライフルが床に落ちて目を覚ます。アーマーに搭載されて支援AIが自動的に覚醒用薬剤を投与したことで自分の意識は急速にはっきりとしていく。

『起きたかい? そろそろ到着だ。奴さんがた、目をギラギラさせてお待ちかねだ』

「……そりゃあ、元気のいいことだな」

輸送ヘリのパイロット、昔馴染みの運び屋が軽口と共に現状戦域データをアーマーに転送してくる。それを確認しつつ、陸戦用多用途人型ヘキサギアーーバルクアームのコックピットハッチを開いてライフルをしまう。

『お前も、そのバルクアームずいぶん使ってるな、改修しないのか』

「したくはあるが、どうにも不出来な傭兵なもんでね。なかなかそういう余裕ができないのさ」

まあそうは言っても、数年前に手に入れて以来ずいぶん連れ回してきた今の機体に文句などなく、これまでも多くの戦場で自分を守ってくれている。強固で信頼できる装甲とこれまた信頼性の高い武装と機体。これ以上なにを望もうというのか。定期的にメンテをかけてはいるから問題が起こることもない。

そうこうしつつセットアップを終えると、バルクアームが暖機運転を開始する。機械の巨人の目に光がともる。アーマーの支援AIと制御系AIがリンクを確立させ、パイロットシートに座った自分に語りかける。

〈お帰りなさい、パイロット。機動シーケンスは89%を完了、戦域データを表示しますか?〉

「いや良い、確認済みだ。敵戦闘単位数に変化はないな?」

〈肯定です。味方部隊は反包囲されつつありジリジリと後退させられており、増援の気配も見られません〉

「了解だ」

アーマーを通して脊髄ユニットからの神経接続が行われて感覚がヘキサギアと同調する。

『予定投下ポイントまであと120!用意しろよ、パーティタイムだぜ!』

運び屋の声を聞いて、改めて依頼内容を反芻する。第八ヘキサグラム集積所を急襲してきた野盗集団の撃滅。シンプルでわかりやすい内容だ。防衛部隊はせんだっての戦闘でその数と戦闘力を減じており野盗集団を抑えきれていない。敵ヘキサギアは9、防衛部隊は7から2機減って5。

『投下まで10!』

運び屋のダミ声が投下カウントを開始する。

やりやすい仕事だこすっからい官僚もどきも関わってこないただの殺し合い。不出来な傭兵には似合いの仕事だ。

『9!8!7!6!』

バルクアーム腕部に据え付けられた武装にオートチェックをかけ、トリガーロックを解除する。

射程の長さと威力に長じたアサルトライフルと近接戦用の溶断型質量ブレードにマルチロックミサイルポッド。それに牽制用の小口径マシンガン。それぞれが順にトリガーロックが解除されるたび、段々と自分が戦闘モードに入っていく。精神が熱を帯び、殺意が滲み出てくる。

『5!4!3!2!』

殺す。ただ殺す!最後の一機まで!最後の一人まで!

『1!投下!』

バルクアーム後方の扉が開いて固定トリガーが外れ、輸送ヘリ後方扉からバルクアームの巨体が投げ出される。各所の姿勢制御スラスタが小刻みに火を吹き、即座にカメラは戦場を捉える。

「よぉし、殺すぞォ!!」

ついに殺意が口をついてあらわれ、アサルトライフルを放たせる。二発放って一発は至近弾、もう一発は支援装甲車両に直撃する。

装甲車両が炎上して敵の殺意がこちらを捉える。

ーーパーティタイムが始まる!。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択