<登場人物紹介>
姓名 字 真名 簡単な説明
北郷一刀 そういえば、主人公。他称『天の御遣い』またの名を『歩く宣伝部長』w
甘寧 興覇 思春 錦帆賊の頭領。最近お忙しいようで今回出番・・・・・・あるよね。
丁奉 承淵 冬灯 錦帆賊の将。甘寧に付いて周ってます。今回出番なしほぼ決定。
魯粛 子敬 琴鳴 錦帆賊の客将。決して出雲荘の管理人さんでも乙女座の金色の人ではありません。
廬江から戻って一ヶ月が経過した。
本格的に天の御遣いの噂も広まり、俺はその効果に驚かされていた。
確かに人も、物も、仕事も集まるようになっていたのだ。
『錦帆賊には天の御遣いがいるみたいだ』
いると断定させたわけでなく、いるかもしれないという噂を流したのは、自分達の勢力が本当に微々たるもので、下手をすると潰される可能性があるという琴鳴の進言から。
そして、俺の安全の為であるとも言っていた。
ただ、光り輝く衣を着た人間を錦帆賊の中に見たという情報も確実に広まっている為、噂に信憑性が出たのだろう。
しかし、天の御遣いの噂は、利益をもたらすだけではなかった。
最近明らかに勢力を伸ばしてきた錦帆賊に、江賊や野盗などからの襲撃が増えてきた。
俺達に直接ではなく、俺達の所に来ようとする行商人や民を狙うというやり方だ。
また、賊だけでなく、官軍―この地方を治める袁術の勢力まで俺達にちょっかいを出してきた。
その話を聞いた時には流石に肝を冷やした。
そりゃあ、
「兄ちゃん、俺らもう終わりかも」
なんて冬灯が真面目に言うんだもん。
今の錦帆賊では手も足も出せないうちに殲滅されるのが落ちだそうです。
ただ、こいつらは天の御遣いの噂を調べていただけみたいで、知らぬ存ぜぬで通したら帰っていった。
というか、琴鳴が微笑みながら追い返したんだよな…。
さて、この一月の間に、俺は琴鳴―先生のおかげで、ようやく文字の読み書きを習得した。
そして今は、馬術、兵法、そして剣術を習っている。
琴鳴は、軍師でありながらも、その辺の一般兵くらいなら簡単に倒せるほどの腕前を持っており、俺よりも確実に強い。
ということで剣術も教えてもらうことになったのだが、これがもう…本当に教え方が上手い。
冬灯のように俺を一方的に痛めつけるやり方ではなく、一つ一つの行為が何を意味するかを頭で理解させ、そして身体に徹底的に教え込む。
そう、徹底的に……。
おかげで最近は一般兵の皆さんくらいの腕前はあると思う。
そのことを琴鳴に言うと、
「まあまあ、鍛え方が足りなかったかしら?」
そう言って、俺を苛め抜いた。
鍛錬です。
これは鍛錬ですよね先生…。
イジメカッコワルイ
そう思いつつ俺は意識を手放した。
「あらあら、少しやりすぎちゃったかしら…でも、一刀ちゃんはもっとやれると思うのに、一体何が足りないのかしら?」
気絶した一刀の頭を優しく撫でていた琴鳴の呟きを聞いていたものは誰もいなかった。
俺の名前は北郷一刀!
最近までは普通の高校生だったのさー!
でも俺の今の立場は、天の御遣い!!
ではなく、琴鳴の副官扱いである。
琴鳴は客将として錦帆賊に席を置いているが、この街の警備部隊を一任されており、
俺はその傍らで勉強させてもらっている。
警備部隊に配属され一週間経ったが、配給された鎧はボロボロ。
もう大変です。
でも、俺は生きています。
さて、本日最後の仕事だ。
詰所で仕事をしている琴鳴のところに報告に行くんだ。
…何故に新人の俺が…
はい、先輩すみません。
俺、一応副官扱いでしたね。
ということで
「隊長」
「あらあら、何かしら?新入りさん」
副官扱いのはずが何故だか部隊の新入り兼、琴鳴への連絡係と紹介され日々忙しく走り回っております。
「本日の報告です。喧嘩、迷子というものから窃盗、強盗、暴行などの犯罪も数件、今日もお仕事満載でした。
というより隊長、この警備体制って問題ありまくりじゃないですか?」
そう、警備といっても警備隊を班分けして見廻ってるだけ、しかも人手不足なので見廻る範囲が広すぎて穴だらけである。
それに人手不足、これが一番の問題。
何故、人手不足なのか。
それは、江賊である錦帆賊が街の警備をする理由から説明した方が早いだろう。
警備をする理由は至極簡単である。
誰だって自分の住む街、帰る家は、暮らしやすい方が良いからである。
元々、錦帆賊は、甘寧の考えに賛同する者たちの集まりだった為、人相が悪くとも、基本的に義を重んじる侠の集団である。
守るべきものを害されたときはそれが誰であろうと徹底的に牙をむく。
その為、集まる人間も悪いことは出来ず一定の治安は保たれてきた。
そう、今までは…。
現在では、天の御遣い効果による急激な人口の増加で人手が足りず、治安も悪くなっているのである。
兵士とはいえ、本隊ほど優遇されてるわけじゃない。
扱いが悪い割に仕事はひどく厳しいから、なり手が少なくて…人が少ないから、さらに仕事が厳しくなる。
分かりやすい悪循環だ。
「そうね、そろそろこの体制だと駄目ね。それにもうこの街じゃ……そろそろかしら」
琴鳴は、眉根をよせ考え込む姿勢をとった。
そろそろって一体何ですか?
「とりあえず近々、志願兵をこっちにまわして貰うから当分はそれで対応しましょう。それでね一刀ちゃん」
俺のことを一刀ちゃんと呼ぶということは先生モードになっているのだろう。
もうある意味ツーカーですね。
「はい、なんです?先生」
「警備部隊の新体制を一刀ちゃんが考えてくれないかしら?」
「えっ!?俺?」
何を言っとるんですかこの人は?
最近までただの高校生だった俺にどうしろと?
「あらあらまあまあ、聞こえなかったのかしら。そう、貴方よ」
微笑みを浮かべながらそう言う琴鳴。
でも、見える。
俺には微笑みの後ろに般若が見える。
ハイかイエスのみの選択しか出来ないんですね。
「さー、いえっさー」
体が自然と敬礼してしまう。
「??了承ということね。大丈夫、一刀ちゃんなら出来るわ。期限は、新しい子達が来るまでね」
それって、いつまでなんだ?
というツッコミはさておき、これまでのことや、これからのこと、考えを日々まとめておく必要がありそうだ。
「ああ、自分の出来る限りでやってみるさ」
「まあまあ。私も一刀ちゃんに負けないように頑張らないと思春も冬灯ちゃんもいない今、この街は私が運営しなきゃね」
そう今、甘寧、冬灯は護衛と輸送の仕事でこの港町にはいない。
これも天の御遣いの噂から出た一つの弊害なのだと思う。
仕事が増えたが、その分、甘寧、冬灯のような上級の将が出張らなければいけない仕事も多くなってきたのだ。
街のことは琴鳴に任せられると2人は安心して仕事に行ったのだが…。
あと数人、いや1人でもいいから、人を率いることの出来る将がいれば楽なんだと思う。
「でもなかなかそんな人間いないしな」
「あらあら、なあに?一刀ちゃん、独り言?」
また無意識に考えが言葉に出ていたようだ。
「ん、ああ、あと1人でも人を率いれる将がいたらなって話だよ。
そしたら琴鳴にも警備部隊と街の運営の両方をする必要がなくなって、楽になるんじゃないかなって思ってさ」
「あらあらまあまあ、嬉しいわ一刀ちゃん。私のことを心配してくれているのね。
でも、大丈夫よ。予定ではもうすぐ1人増えるはずだから」
そう言うと琴鳴は冬灯が乗り移ったのではないかという風に微笑んでいた。
琴鳴の仕事を少し手伝い、部屋に戻る。
部屋といってもあの楼船の中に与えられた部屋ではない。
あの楼船は今、甘寧達が仕事で使っているので宿屋の一室を借り切っているのだ。
「ぬぁー、疲れたー」
今日も一日街を走り回り、疲れきっていた一刀は、寝台の上に倒れこんでしまう。
もうこのまま寝ても良いですか?
良いですよね琴鳴先せ……いやいやいやいやいや、寝ませんよ。
そうですね警備部隊の新体制の草案ですよね。
想像した琴鳴の後ろに般若が見えました。
「あー、確実に調教されてるな俺」
ついつい呟いてしまう。
変な意味でなくですよ、もちろん。
確かこの部屋に来るとき、小物類は全部引き出しに入れたっけ。
「えーっと、書くもの書くものっと―あれっ?何だっけ、この小袋??」
引き出しの中には、どこかで見た記憶がある小袋が。
この部屋に来て数週間、部屋の中で何か書くということをしなかったために引き出しなんて開けてこなかった。
なんだろう、よく分からないが変な汗が出てきた。
いや、分かってる。
分かってるんだよ。
ただ、脳が考えることを拒否してるだけで…。
意を決して袋を開けてみる
「Noooooooooooooo!!」
叫んでしまう。
心の底から。
北郷一刀、一生の不覚。
袋の中身は、廬江で買った甘寧へのお礼。
水仙の花が彫られた鉄製の鈴。
渡すのをすっかり忘れていましたとも。
廬江の酒家では、天の御遣いの話で頭が一杯になり、帰りの船の中では……。
思い出したくありません。
何も最初が肝心だからって、あんなことまでするなんて琴鳴…先生め。
おっと、意識が違う方へ、危ない危ない。
この街に戻ってからも勉強に追われ、この一月、甘寧、冬灯ともにほとんど会ってない気がする。
というかあの2人も仕事で忙しそうだったし。
……これじゃあ、ただの良い訳だな。
そんなんじゃ、いつまで経っても甘寧に真名を許してもらえない。
「よし!次に会ったときに絶対渡すぞ!」
―コンコン
そう叫んだとき、扉の方から控えめなノックが聞こえた。
「はい、なんですか?」
たぶん宿屋の主人だろう、用があるときは扉をノックするようにと言ってある。
ノックを知らなかったので中にいる人への配慮の一つとして、教えておいた。
「あのー北郷様。周りのお客様の迷惑になりますのでもう少しお静かにお願いできますか」
扉の向こうから申し訳なさそうな声がする。
「ハイ、スミマセンデシタ」
こうして夜が更けていく。
そうして3日が過ぎた。
「甘寧が帰ってくるのは明日か~」
「あらあら、一刀ちゃんはそんなに思春が恋しいの?」
そんな俺の呟きに、琴鳴が反応する。
「い、いや、そんなこと―あるかもね。今は一刻も早く会いたい気持ちだよ」
ちゃんと会ってお礼を渡さなきゃいけない。
俺の感謝を伝えたい。
「まあまあ、妬けちゃうわね。でも、今はしっかりと周りを注意してね」
「わかってます、隊長」
俺達は今日、街近くの街道の見廻りに来ている。
行商人を狙った賊も増えているので街付近だけだが、見廻りをしているのだ。
見回りの人数は俺、琴鳴を合わせて10人。
全員馬に乗っている。
やはり人手不足が問題だな。
最近の賊は、20~30人くらい徒党を組んでいることが多い。
もっと多いときもある。
たった10騎では、どうなるか分かったものではない。
最悪、死ぬことにも繋がる。
死ぬ……か。
それは相手も同じ。
俺は、出来るだろうか……人の命を奪うことが。
兵1「隊長ー!!」
そんな俺の考えを打ち破るかのような声。
この先の道を見に行った兵が戻ってきたようだ。
その様子は慌てふためいていた。
「どうしたの!?報告は!!」
兵1「はい!報告します!前方で行商人の荷馬車が賊に追われています。
賊の数は30、全員歩兵です」
「30…あなた、一番速かったわね。今すぐ応援を」
兵2「はっ!」
命令を受けるなりすぐに街へ馬を走らせる。
「それと一刀ちゃん、私達が交戦中の行商人の荷馬車の護衛を」
「えっ!?お、俺もやれ―」
「そんなに震えて戦えるの?」
えっ、俺、震えてるのか?
確かに自分は震えている。
「く、くそ収まれ、収まれよ」
震える身体を自分で叩いて抑えようとする。
兵3「まかせとけって北郷、お前みたいな新人がいなくても30人くらいなら俺達でもどうにかなるって」
兵4「そうそう、新入り。俺達は昔から戦うのに慣れてんだ。
初陣なら初陣らしく、震えてろって」
「で、でも、俺も皆と―」
「邪魔よ」
俺の言葉は琴鳴によって切って捨てられた
普段の琴鳴とは思えぬくらいつめたい声。
「琴…鳴…」
分かっていた、自分はまだ人を切る覚悟が出来ていない。
そんな俺が一緒に行ったら、邪魔になるだけ。
でも、それでも俺は…。
「それに人の命を守ることこそ警備部隊よ。
…皆、5、3の2列で波状攻撃を行います。
最初の一列目が突撃した後、注意がそちらに向いた時に二列目が突撃。
その瞬間一列目が転進、挟撃を仕掛けます。
その時に荷馬車を助ける。一刀ちゃんは二列目後方で待機、いいわね」
「商人を安全な所まで送ったら戻る。それだけは・・・それだけは、譲らない!」
「一刀ちゃん……いいわ。それでは、全員抜刀!我ら錦の帆に天の風を!!突撃ぃ!!!!!」
兵達「「うおおおおおおおっ!!!!!」」
<あとがき>
毎度この駄文を読んでくれている方々には変わらぬ感謝を
初めてっていう人には、最初から宜しくという思いを
隅々まで呼んで誤字脱字の指摘や感想などのコメントをくれている方々には変わらぬ妄想を
どうもMuUです。
前回出た『黒頭団』はもう少ししたら出ますので少々お待ちを~♪
ということで次回は一刀くん初陣。
戦闘シーンが書けるのでしょうか私。
というより全く出てこなかった思春、冬灯ペア
次回こそ出てきてもらいます。
というより次回更新がいつ出来るのかが心配です。
注意)鈴を渡すシーンは書き忘れたのではありません。仕様です。
3/1ぷらリと改定
3月になっても新作が出せない自分に呆れが…
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甘寧、丁奉が全く出てなかった気がするのは、私の思い違いでしょう。
最近1頁目の人物紹介に全てを籠めています。
3/1あわわと改定