No.92255

冥琳を幸せにするために 中編

komanariさん

すみません。前後編で終わりそうになかったので、中編です。

今回は、というより今回も、書いていてなかなか進まない&話が・・・・

って感じで、とても不安がいっぱいです。

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2009-08-29 16:46:15 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:12493   閲覧ユーザー数:9417

町医者に妊娠していると告げられたあと、私と北郷は二人で、今後どうすべきかについて話し合った。

 

その中で一番の焦点になったのは、『いつ皆にこのことを伝えるか』ということであった。

 

反乱を鎮圧したといっても、孫呉はこれから勢力拡大、曹魏などの他国との覇権争いなど、多くの重要な局面を迎える。

 

そうした重要な時期に私が一人で休養する訳にもいかない。かといって、妊娠は体の変化も伴い、また胎児のことを考えるなら、体に負担をかけるべきではない。

 

そうしたことも考慮しながら、これから行われるであろう領土拡大遠征(おそらくは南征になると思うが)の後に、皆に伝えようということになった。

 

「でも、これから仕事量は減らしてもらうからな!!夜は遅くても夕日が沈むまで!朝は早くても朝日が昇ってから!あと、昼間も適度な休憩をとって・・・・」

 

と北郷が色々と条件を付けてきたが、これも子どもと私のことを思って言ってくれているということが分かっていたから、おとなしくうなずいた。

 

「あぁ、わかっている。もう私一人の体ではないからな・・・・。」

 

私がそう言うと、北郷はとてもうれしそうな顔をしていた。

 

先ほどの町医者の所で、状況が呑み込めたあと急に私を抱きしめて来て、医者に笑われてしまった時はかなり恥ずかしかったが、こうして私の妊娠を素直に喜んでくれるのは、女としてはとてもうれしいことのように思えた。

 

「冥琳の仕事の中で俺ができるものは出来るだけ俺がやるから、俺の方に回してくれ。そうだな・・・・・朝に俺が冥琳の部屋まで取りに行くよ。」

 

そう言う北郷に、私は少し苦笑しながら答えた。

 

「今までそんなことはしていなかったのだから、急にそんなことをし始めたら周りの者たちに怪しまれてしまうだろう?それに、北郷ができる仕事を北郷に渡したところで、先ほどの刻限の中で、今までやっていた仕事をすべてやり終えるのは無理だ。」

 

私がそう言うと、北郷は少し心配そうな顔をした。

 

「心配しなくても大丈夫だ。仕事は他の者に分担して、それとなく侍女などに運んでもらう。それと一緒に北郷にも仕事を持って行かせる。これでいいだろう?」

 

少し呼吸をおいて続けた。

 

「先ほども言ったが、もうこの体は私一人のものではない。これまでのように無理はしないさ。それに、これからは私の背負っているものを、少しでも軽くしてくれるのだろう?」

 

私がそう言うと、北郷はすごくうれしそうに頷いた。

 

 

それからしばらくして、孫呉は南征を行うことを決定した。

 

その陣ぶれは主要な人間のうち、私と祭殿と抜いたほぼすべての者で、私と祭殿は蓮華様たちが留守の間、建業を守ることとなった。

 

この陣様には若手育成という目的もあったが、北郷の私を休ませたいという思いもあった。

 

陣様を決定したのは蓮華様だが、その前にそれとなく私を今回の南征から外すように北郷が言っていたのだ。

 

(・・・まったく、いらぬ心配を・・・・・)

 

と少し苦笑していたが、女としての私としては、うれしく思っていた。

 

 

「俺たちはいないけど、体に無理がかかるようなことはしちゃダメだからな!?」

 

そう出立前に私に言った北郷に、私は頷いて答え、北郷たちを見送った。

 

北郷たちが出立した後は、通常の仕事(むろん無理をしない範囲で)や、「敵がこんかのぉ・・・」などと言っている祭殿をなだめたりしていた。

 

 

そんなある日の夜、祭殿が酒瓶を持って私の部屋にやってきた。

 

「冥琳。ちとわしと付き合わんか。」

 

そう言う祭殿だったが、私は身重ということもあったので、酒は遠慮するといった。

 

「なら茶でもいいから、少し付き合え」

 

そう言って強引に祭殿に付き合わされることになった。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

少しの間、沈黙が部屋を包んだ。

 

「そう言えば、策殿が逝ってから、こうして二人での飲むのは初めてじゃのぅ。」

 

祭殿がそう呟いた。

 

「雪蓮が逝ってからではなく、こうして二人で飲むこと自体初めてですよ。」

 

私が少し苦笑まじりにそう言うと

 

「そうだったかのぅ。」

 

と笑いながら祭殿は盃を揺らしていた。

 

「・・・・のう、冥琳。お主・・・・・・子でも身ごもったのか?」

 

盃の中で酒が揺れるのを眺めながら、祭殿がそう聞いた。

 

「・・・・・」

 

私はすぐにはその問いに答えず、少しの間、祭殿の方を眺めていた。

 

「・・・・なぜ、そうお思いになるのですか?」

 

そう聞くと、祭殿は少し恥ずかしそうに答えた。

 

「な、何となくじゃ。わしはまだ子を孕んだことがないからよく分からんが、最近のお主は、昔、孫堅殿が策殿を孕んだ時のような顔をしておったからのう。」

 

そう恥ずかしそうに言った祭殿が、どこか可愛らしく思えてきて、私は少し笑った。

 

(母親になると、大きい子供も可愛らしく見えるものなのだろうか。)

 

そう心の中で呟いてから、私は静かに息を吸い込んだ。

 

「ええ。・・・・・私のお腹の中には、北郷の子がいます。」

 

そう静かに言うと、祭殿は静かに

 

「そうか・・・・。」

 

と呟いてから、杯をあけた。

 

 

「「・・・・・・」」

 

再び沈黙が部屋を包んだ。

 

「・・・・・いつ頃産まれるのじゃ?」

 

「後6カ月ほどで。」

 

そう答えると、祭殿は少しうれしそうに微笑んだ。

 

「孫呉の未来を築く新しい子どもが、あと6カ月で産まれるのか。めでたいのう。」

 

祭殿はそう言いながら、酒をさらに盃に注いだ。

 

「・・・して、そのことを北郷は知っておるのか?」

 

「えぇ。知っています。」

 

私がそう答えると、祭殿は盃をあおった。

 

「他の皆にはいつ教えるのじゃ?」

 

「この遠征が終わった後に、と北郷と話しています。」

 

「そうか。・・・・皆がこのことを聞いたら、どんな顔をするかのう。」

 

祭殿は盃を揺らしながら笑った。

 

「さぁ?蓮華様や小蓮様あたりには、先を越されたと睨まれるかもしれませんね。」

 

私も茶で口を少し潤しながら、少し笑った。

 

「それぐらいは覚悟せんといかんかも知れんのう。・・・わしとしては、亞莎あたりが驚きのあまりに腰を抜かすのでないかと思っておるがの。」

 

そう言って笑う祭殿に、私も一緒になって笑っていた。

 

そうしてしばらくの間、まだ私が身ごもったことを知らない娘たちが、このことを伝えた時にどんな反応をするか、ということを笑いながら話しあった。

 

「・・・・・まぁ、何にせよ。その後の北郷は、しばらく眠れなくなるだろうな。」

 

祭殿はそう言うと、自分の腹部をそっとさすった。

 

「わしにも、子種を注いでもらわんとならんしな・・・・」

 

「・・・おや。祭殿も北郷の子を産むおつもりですか?たしか祭殿は子どもが苦手だったのでは??」

 

私がそう聞くと、祭殿は少し頬を赤らめながら、答えた。

 

「わ、わしだって、好いた男の子どもを産みたい思う時もあるのじゃ・・・・・。」

 

そう言って、少し拗ねたように酒をすすっている祭殿はすごく可愛らしく見えた。

 

「・・・大丈夫ですよ。北郷ならきっと祭殿の願いも叶えてくれます。他の皆の願いも・・・・。それだけではなく、いつかこの呉を支える大都督となる。と私は思っていますが・・・。」

 

「むぅ。えらく北郷のことを買っておるのだのう。」

 

「えぇ。私の旦那様ですから、それくらいになってもらわないと困ります。」

 

「ふふっ、確かに。わしを含めて、皆の旦那さまになるのなら、それくらいにはなってもらわんと困るのう。」

 

「・・・・ええ。」

 

そうしてしばらく笑いたった後、祭殿はご自分の部屋へと帰って行った。

 

 

 

それから数日後、突如として呂布の軍勢が国境を超え、建業に向かって攻め入って来た。

 

主力を南征に回している今、建業を守っている兵の数は、呂布軍に比べて圧倒的に少ない。

 

祭殿は「うって出る」などと言っていたが、それはやめて頂いた。

 

呂布軍が国境に現れたという情報が来てからすぐに伝令を放ったから、後は援軍が来るまで耐えるだけだ。

 

敵は天下の飛将軍、呂奉先。とはいえ、こちらには呉の宿将である祭殿と建業の高い城壁がある。

 

それに、北郷にはあまり無理をするなと言われていたが、私も守将としてこの建業にいるのだ。

 

(北郷・・・・出来るだけ早く来てくれよ?)

 

そう心の中で呟いてから、私は篭城の準備を始めた。

 

 

数日後、呂布軍が建業の眼前に姿を現した。

 

私と祭殿は城門を固め、城壁を乗り越えようとする敵兵を落とし、どうにかして敵の攻撃を耐え忍んだ。

 

敵軍が我が方よりも圧倒的に兵数が多く、城門を守りきるのには骨が折れたが、祭殿の弓矢隊の活躍もあり、予想していたよりも余裕をもつことができていた。

 

「のう公謹・・・。うって出てはいかんかのう。」

 

と時々祭殿が聞いてきたが、

 

「蓮華様たちが戻って来られたら、先鋒を黄蓋殿にしてもらうように頼みますから。」

 

と言ってどうにか(しぶしぶではあったが)抑えて頂いた。

 

そうして、数日間防衛戦を行った。

 

「えぇい。北郷め、まだ戻って来んのか!?建業に身重の公謹を残しておいて心配ではないのか!!?」

 

「・・・はぁ~。黄蓋殿?ご自分が早くうって出たいからと言って、北郷をあまり責めないでやってください。」

 

という会話をしながらも、祭殿はよく防衛の指揮を行ってくれていた。

 

「公謹は後ろに下がっておれ、もしもの事があったら北郷に何といえばいいか分からんからのう。」

 

そう言ってずっと城壁の上で指揮をしてくれていた祭殿のやさしさに感謝しながらも、私は出来るだけ損害を抑えられるように、敵の策を推測したり、兵の配置について案を巡らせるなどの仕事を行った。

 

そうして、さらに数日後。待ちに待った援軍が到着した。

 

援軍には穏の軍を除くすべての南征軍が駆けつけており、亞莎の指揮で見事に呂布軍を受け流し、我々と合流することに成功した。

 

「わしが先鋒じゃからな!」

 

と言って合流して早々に、先陣を切って呂布軍に突撃して行った祭殿に少し苦笑していると、北郷と蓮華様が近づいてきた。

 

「冥琳。よく守ってくれた。」

 

そう言う蓮華様に、

 

「はい。黄蓋殿が指揮をしてくださったので、何とか持ちこたえられました。」

 

と答えた。蓮華様の後ろにいる北郷は私の顔を見て、少しほっとしたような顔をしていた。

 

「さて、黄蓋殿はもう行ってしまいましたが、私たちもそろそろ反撃に転じましょう。」

 

そんな北郷の顔に少し苦笑した後、私はそう言って蓮華様たちとともに呂布軍との戦闘に臨んだ。

 

もちろん、私は本陣に留まったままであったが・・・・。

 

 

 

その後、呂布軍を撃退することに成功した我々は、そのまま臨戦態勢を維持し、ひとしきりの追撃を終えた祭殿たちが帰って来てから、建業に入った。

 

数日後、穏が南方から帰還してから、かねてから予定していた皆への報告をするために、北郷が皆を玉座の間に集めた。

 

「一刀?今日はどうしたというの??」

 

そう聞く蓮華様に、北郷は少し深呼吸してから答えた。

 

「え~っと。今日は、みんなに伝えたいことがあります。」

 

そう北郷が言うと、祭殿を除いて、皆は少し真剣な表情になった。

 

「えっと。冥琳が・・・・・俺の子どもを授かりました。」

 

少し恥ずかしそうに、そして嬉しそうに言った北郷の言葉が、あまりに意外なものだったのか、私と祭殿をのぞいた皆は、唖然としていた。

 

「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」

 

皆何を言っていいのか分からないのか、少しの間、沈黙が玉座の間を包んだ。

 

「・・・・・・か、一刀?・・・・・・・今、・・・・・何と?」

 

そんな中で、どうにかして言葉を絞り出した蓮華様に、北郷はまた少し恥ずかしそうに答えた。

 

「だから、冥琳に俺の子どもができたんだ。」

 

「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

北郷に返答に、またも無言になる玉座の間。

 

「ちょっと、一刀!?妻であるシャオより先に、冥琳と赤ちゃん作っちゃったの!?」

 

そう叫ぶ小蓮様の声が沈黙を終わらせた。

 

「か、一刀様と冥琳様のお子様が・・・・・・・」

 

亞莎はそう言いながら、少し頬を染めていた。

 

「あらら~。冥琳様に先を越されてしまいましたねぇ。」

 

穏は少し残念そうな顔で、一刀の方を見ていた。

 

「・・・・・・・」

 

思春は心配そうな顔で蓮華様の方を見ていた。

 

「は、はうぁ・・・・・。」

 

明命はそう言いながら、私のお腹のあたりを見ていた。

 

祭殿はそんな皆の様子を見ながら、楽しそうに酒を飲んでいた。

 

「・・・・冥琳。」

 

ふと蓮華様が私に声をかけた。

 

「先ほどの一刀の話は・・・・本当、なの?」

 

そう蓮華様が聞くと、他の皆も口を閉じて、私の言葉を待つように黙った。

 

「・・・・」

 

ふと祭殿を見ると、私の方を見て盃を掲げ、少し微笑んでいた。

 

(まったく、祭殿は・・・・)

 

そう心の中ですこし苦笑しから、私は北郷の方を見た。

 

「・・・・・。」

 

北郷は「大丈夫」とでも言うようにしっかりと頷き、やさしげな微笑みでこちらを見ていた。

 

私はその表情を見てから、蓮華様の目を見据えた。

 

「・・・・えぇ、本当です。あと5カ月ほどで産まれます。」

 

私はゆっくり、その言葉がしっかりと伝わるように話した。

 

 

 

「そう・・・・。」

 

蓮華様は私の答えを聞いてから、少しの間目を瞑った。

 

そしてその目を開き、それまで見たことがないほどのやさしげな表情で微笑みになられた。

 

「・・・・おめでとう、冥琳。」

 

蓮華様がおっしゃったその一言がまるで雪蓮のようで、まるで雪蓮が祝福してくれているようで、私は思わず、声を失った。

 

「・・・・・・・・・」

 

天にいる雪蓮が蓮華様にそう言わせたのか、それとも蓮華様がここまで成長してくださったのか、それは分からない。

 

だが、どちらにしても蓮華様の言葉の中には、王としての言葉が含まれていたように思えた。

 

祭殿と話していたように、蓮華様は北郷のことを好いていらっしゃる。当然、北郷と子を成したいと思っていらっしゃるだろうし、女として北郷を独占したいと思う気持ちもあるだろう。

 

だが、蓮華様はそうした気持ちを抑えて、私を祝福してくださった。

 

王として、臣下を祝福してくださった。

 

「ありがとう・・・・ございます・・・・・・・。」

 

その嬉しさに、私は言葉を詰まらせてしまった。

 

(・・・・雪蓮、見ている?蓮華様は王としてしっかり成長しているわ。)

 

私は泣きそうになるのに耐えながら、その顔が皆に見えないように下を向いた。すると北郷がスッと私の横に来た。

 

「・・・・・冥琳。顔をあげて・・・・。」

 

肩にそっと手をおいて、北郷がそう私の耳元でつぶやいた。

 

「・・・・・っ!」

 

北郷の声に促され、そっと顔をあげると、その場に集まっていた皆がとても優しい笑顔で私の方を見ていた。

 

「「「「「おめでとう(ございます)。冥琳(様)!!」」」」」

 

その言葉で、先ほどまで抑えていた涙が溢れそうになったが、北郷が私の肩を抱き寄せた。

 

「・・・・・・」

 

あふれそうな涙を瞳に溜めたまま北郷の方を見ると、北郷はとても優しげで微笑んでいた。そこに、2ヵ月前に感じた頼りなさは、もうなかった。

 

(北郷も成長していたのだな・・・・・・。)

 

北郷の成長を感じられたことも嬉しくて、私は瞳に溜まっていた涙をぬぐった。

 

 

 

 

 

「・・・・ありがとうっ。」

 

 

 

 

私は出来るだけの笑顔で、皆にそう答えた。

 

 

 

私がそう答えた後は、皆が私の体の具合を気遣ってくれたり、産まれてくる子どもが男か女かなどという話をしていた。

 

一通りそうした話をした後、これからは私に仕事をしなくて良いと、蓮華様が言ってくださった。

 

だが、私は出来る限り孫呉の柱石としての役目を果たしたかったし、雪蓮から頼むと言われたこの国のためにも、無理をしない範囲で仕事させてもらえるように頼んだ。

 

「しかし、冥琳と産まれてくる子のことを考えると、出来るだけ負担をかけぬようにせねば・・・。」

 

と蓮華様はなかなか認めてくれなかったが、思わぬところから助け舟が来た。

 

「大丈夫だよ、蓮華。冥琳はちゃんと無理しない範囲で、って言ってるし、ちゃんと自分の体のことを考えながら仕事をしてくれるよ。」

 

そう北郷が言うと、蓮華様は少し驚いたように北郷に聞き返した。

 

「し、しかし、冥琳は身重なのだぞ!?一刀は心配ではないのか!??」

 

そう言った蓮華に、北郷は少し顔を強張らせた。

 

「そんなわけないだろう!?」

 

北郷が少し声を荒げてそう言うと、玉座の間がシーンっと静まった。

 

「もちろん冥琳のことは心配だ。けど、冥琳は今の孫呉を支えるために必要な存在なんだ。今の大陸の情勢の中で、冥琳が妊娠中で全く仕事をしていないという情報が他国に漏れたら、きっとその国は孫呉を攻め滅ぼす好機と思って、この国に攻め入ってくるだろう。冥琳は孫呉にとってそれくらい大きな存在なんだ。」

 

北郷が真剣に話すのを、蓮華様を含めて、皆が真剣に聞いていた。

 

「冥琳が妊娠したってことが他国に伝わるのは時間の問題だ。それはどうしようもない。今は、それと同時に冥琳が休んでいるという隙を見せるより、冥琳がまだ現場に残っているっていう事実を残しておいて、そのことで敵をけん制する方が、孫呉としては良策なんだ。」

 

そこまで言い終えると、北郷はふっと表情を緩めた。

 

「それに、冥琳は自分で仕事をしたいって言ってるんだ。しかも『無理をしない範囲で』ね。孫呉の柱石が自ら言った言葉を反故にすると思うかい?」

 

そう言って北郷はちらりと私の方を見た。

 

(蓮華様を説得するのと同時に、私にも制約をかけようというのか。・・・まったく、軍師としての成長をこんな所で見れるとはな・・・・。)

 

「もちろん。冥琳には、少しでも体に無理がかかると思ったらすぐに言ってもらうよ?俺もできるだけ、冥琳の仕事を手伝うようにする。」

 

そう言った後、北郷は蓮華様の方を見て、やさしげに言った。

 

「蓮華。冥琳を心配してる気持ちは俺も同じだよ。けど、今は少しでも冥琳に仕事をしていてもらわないといけないんだ。それに、冥琳も仕事をしたいって思ってる。冥琳が仕事を出来るって言う間は、冥琳に仕事をさせてあげてくれないか?」

 

蓮華様は少し考えるようにしてから、私の方を向いた。

 

「・・・わかった。仕事をすることは許可しよう。ただし、定期的に城の医者の診察を受けてもらう。あと、仕事をしていて、冥琳が少しでも負担を感じたのなら、すぐにそのことを言うように。皆も、冥琳を助けるために協力してほしい。」

 

「「「「「「「御意!!」」」」」」」

蓮華様がそう皆に言うと、北郷をはじめ、その場にいた者たちがその言葉に答えた。

 

「そ、それと、一刀・・・・」

 

蓮華様は少し顔を赤らめながら、北郷の方を向いた。

 

「うん??」

 

北郷はすこし驚いたような顔をしていた。

 

「その・・・・、さっきはあんなことを言ってすまなかった。一刀が冥琳を心配していないはずなんてないのに、そのことも考えず、怒らせてしまったようだ。・・・・すまん。」

 

そう言う蓮華様に、一刀は少し照れたような顔で答えた。

 

「いや。俺の方こそ、大きな声上げちゃってごめんな。別に蓮華を怒ってたわけじゃないんだ。ただ、蓮華に冥琳の気持ちや俺の気持ちをわかってもらいたくってさ・・・・・。」

 

そう頭をかきながら言う一刀に、蓮華様は少しほっとしたようだった。

 

「ありがとう。・・・・一刀。」

 

「いえいえ。こちらこそ。」

 

 

 

 

そう言って見つめあう二人の間に、桃色の雰囲気が漂い始めようとしたところで、二人に対して、つっこみが入った。

 

「・・・・って、お姉ちゃん!なにちゃっかり一刀といい雰囲気になってるの!?次に一刀の赤ちゃんを授かるのはシャオなんだから、自重してよね!!?」

 

「な、何を言っているのだ!別にいい雰囲気になっていたわけではない!!それに、誰が次に一刀の子を孕むかなど、わからないではないか!!」

 

「そうです、小蓮様。蓮華様は、ついこの間、やっと北郷と交わることができたのです。少しぐらい北郷といい雰囲気になったとしても、見逃していただけないでしょうか?」

 

「なっ!思春!?お前は何を!!??」

 

「一刀さぁ~ん。今日の夜はお暇ですか?良ければ私と一緒にお勉強しませんか~??」

 

「お、おい穏!何を抜け駆けしようとしているのだ!?」

 

「えぇ~。だってぇ、穏も早く一刀さんの赤ちゃんほしいですしぃ・・・・。」

 

「だってではない!そう思うのは皆の同じなのだ!ちゃんと秩序を守ってだな・・・・・」

 

「・・・・のう北郷。うまい酒が手に入ったのじゃが、今夜一緒に飲まんか??」

 

「って、言ってるそばから、一刀を誘惑しない!!」

 

「・・・・権殿。そう目くじらを立てんで下され、見ての通りわしはこの中で一番歳をとっておる。皆はあと数年しても子を産めるかもしれんが、わしは早くに産んでしまわんと、子が産めなくなってしまうんじゃ。」

 

「こ、こんな時だけ、歳のことを卑怯です!ただでさえ、祭様は卑怯な胸をお持ちなのに・・・。」

 

「なんじゃ明命。お主も北郷の子がほしいのか??」

 

「はうぁ!・・・・わ、私も・・・・・、一刀様の赤ちゃんが、・・・・ほしい、・・・です!!」

 

「ほ~う。言うようになったではないか。じゃが、今回は譲らんぞ?」

 

「か、一刀様?が、頑張ってゴマ団子を作りますので、今夜お邪魔しても、よ、よろしいですか?」

 

「亞莎まで!?うぅ~・・・・・、もうこうなったら、実力行使に出ないとダメみたいだね・・・・。一刀!今ここでシャオに赤ちゃんをちょうだい!!」

 

「小蓮!?おまえこんな所で服を脱ぐなど何を考えているのだ!!恥を知れ!!」

 

 

 

 

 

「・・・・・ねぇ、冥琳?今日冥琳の部屋に泊まっていい??」

 

目の前で繰り広げられている女の戦いを目にして、北郷がそう弱弱しく聞いてきた。

 

「・・・・・いや。私がそれを許したら、明日から皆ににらまれるだろうから、それは遠慮しておこう。」

 

「そ、そっか・・・・・」

 

北郷は青い顔でひきつったような笑顔でそう答えた。

 

結局その日、北郷は一晩中、皆の相手をしたらしい。

 

次の日、真っ白になった北郷と、つやつやした顔をした蓮華様たちがあまりに対称的で、私は少し笑ってしまった。

 

 

 

数日後、蓮華様から義務付けられた医者に診察を受けたところ、子どもは順調に大きくなっているということだった。

 

ただ、肺が少し弱っているから、少しでも違和感があったらすぐに言うように、とも言われた。

 

今後、呂布をかくまった劉備へと攻め入ることが決まっていたが、今回の遠征にも参加できなさそうだった。

 

 

 

続く。

 

 

あとがき

 

 

どうも、遅くなりました。komanariです。

 

前回の作品に多くの閲覧と、支援、コメントをくださった皆様。本当にありがとうございました。

 

今回の話を書いている途中で、何度がくじけそうになったところを皆様の温かいコメントで救っていただきました。

 

 

さて、前後編と言っておきながら、いつものように中編をはさんでしまう無計画さをさらけ出してしましましたが、皆様、今回の話はいかがだったでしょか?

 

僕としては、これまでで一番ぐらいに不安です。

 

とりあえず、ごめんなさいorz。

 

ただ、このお話はとにかく冥琳を幸せにするのが目的なので、後編でちゃんとまとめられるように、次の話を頑張って書こうと思っています。(対劉備戦と赤壁があるのに、後編だけでまとめられるか不安ですが・・・・)

 

あ。関係ないんですけど、この話を書いてて思ったのですが、祭さんってめっちゃ可愛いですね。

 

書いて行く中で、原作をもう一度プレイしたりしていたのですが、

 

「だって、暇なんじゃもん・・・」

 

とか言う祭さんに、一瞬魂が飛びかけましたw

 

 

そんなことを思いながら書いた作品でしたが、少しでも皆様のご期待に添えていることを願っています。

 

それでは、今回も、僕のお話を読んで頂き、本当にありがとうございました。

 


 
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