No.909418

マイ「艦これ」「みほ2ん」第35話<針のムシロ>

しろっこさん

神社の境内で司令は深海棲艦への説得を続けていた。やがて神社周辺が慌ただしくなってくる。

2017-06-09 20:55:46 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:416   閲覧ユーザー数:416

私たちは、いったい誰と、なぜ戦っているのか?

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第35話 <針のムシロ>(改2)

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 深海棲艦(大井・仮)は神社の境内で苦しそうにしている。しかし相変わらず捕虜になることには抵抗していた。

 

私は日向にだけ聞えるように呟く。

「確か軍用車のどこかに拘束用の手錠もあったはずだが……」

 

すると彼女は珍しく渋い顔をした。

「司令?」

 

「あ」

私は苦笑いした。

 

「いや、私は憲兵じゃないからな。それは避けたいな……と」

 

 時おり神社の周りを陸軍の兵士が駆け足で通り過ぎる。その度に私は冷や冷やした。境内の外からは見え難いのだが、もしここに憲兵が入って来れば、さすがに今の状況は説明し難い。

 

「おお、そうだ!」

私は、さっきから複雑な表情で固まっている日向を振り返った。

 

「日向、車に戻って、この神社の周辺を見張っていてくれ」

「ハッ」

 

続けて指示を出す。

「あと瑞雲と協力して敵の動きも警戒だ」

 

「了解!」

日向は弾かれたようにサッと敬礼をした。パッと反転して……

 

「あれ?」

妙に嬉しそうに走っていくな。

 

 まあ日向にとって自分が蹴飛ばした相手……深海棲艦との心苦しい対話をしているよりは外で警戒待機していたほうが良いだろう。それに陸軍の監視も出来る。一石二鳥か。

 

 ただ針のムシロだったのは深海棲艦も同様だったらしい。

「あれ?」

 

日向が出て行くのを見た彼女も急にホッとしたような顔をしている。

これは意外……というか。

「なるほど」

 

 階段に腰掛けていた彼女は「ふう」と言いながら、その長い髪をかき上げた。

 

「ほう」

そういえば前、夜の鎮守府岸壁でも、こんな感じで髪をかき上げてたな……ちょっと女子っぽい。

 

よく見たら深海棲艦も敵とはいえ、基本的な顔のパーツは美人系だ。

(いや女子か?)

 

 おぼろげな記憶をたどると舞鶴に居た大井も、性格に難はあったが結構な美人系だった。

 

「いやいや、関係ない!」

私は妙な妄想をする自分の恥ずかしさを隠すように軽く咳払いをした。

 

 すると深海棲艦は驚いたように私に視線を向けた。その視線に私は鳥肌ではなく普通にドキっとした。この落差に正直、戸惑う。

 

いま私を見詰めている深海棲艦の瞳。それは昨夜……月夜の鎮守府での北上のそれと、よく似ていた。

 

 凄(すご)んでいる時の深海棲艦は、もっと眼光も鋭く、まるで刺すようだ。それでいて濁って鈍器で殴ってくるような威圧感のある瞳なのだ。

 

 しかし……今の彼女は不思議なくらい普通の、あどけない少女の瞳にしか見えない。

 

「ワカラナイな」

私は呟いた。私たちは、いったい誰と、なぜ戦っているのか?

 

「……」

「……」

また、お互いに沈黙した。

 

 相変わらず境内のセミがうるさい。神社上空では瑞雲が警戒を続けている。このまま瑞雲を上空で待たせるのは悪いな。

 

 それに小さいとはいえ、ぐるぐる回っている飛行機を見れば、さすがに陸軍も変に思うだろう。あまり長引かせると憲兵が調べに来るかも知れない。

 

 海軍の提督でありながら今の私は純粋に彼女を助けたい気持だ。陸軍からは「海軍は腑抜けだ」と呆れられるだろうが。

 

 だが、きっと彼らは深海棲艦が、ここに居ると知れば目の色を変えるだろう。役立たずの機体や戦車の残骸ではない。彼らが喉から手が出る程、欲しい「生きた」資料。ランクから言えば最上級だ。

 

 ただもし彼女が陸軍の手に渡ってしまえば尋問や拷問どころではない。連中は本当に人体実験をやりかねない。陸軍の特殊部隊の噂は知っているぞ。あそこは怖いなんてもんじゃない。残虐、冷酷、非道……。

 

 旧来より捕虜の扱いでは陸軍省と海軍省が何度も衝突している。一度、お互いの議員が国会で掴み合いのケンカになったこともある。それくらい政治での陸と海は微妙な関係だ。

 

 ただ地方の陸軍、特にこの山陰地方の兵士たちは誰も温厚そうなのが助かるが。

 

 ……目の前の彼女は護りたいな。

 

私はダメもとで、もう一度、突っ込みどころを変えて声をかけてみた。

「このまま留まって、お前たちの仲間が迎えに来るのか?」

 

「……」

反応なし。どうやら、その当ては無いらしい。

 

 私は軽く腕を組んだ。

もしかして抵抗しているのは、こいつの単なる意地なのか?

 

(もしそうだとすると逆に、話が通じる相手なのかもしれないな)

 

 そう思った矢先、上空の瑞雲のエンジン音が微妙に変化した。セミが急に鳴きやみ日向が慌てて走りこんできた。

「司令!」

 

「どうした!」

 

神社周辺には、急にバタバタとした慌ただしい気配が漂ってきた。

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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PS:「みほ2ん」とは

「美保鎮守府:第二部」の略称です。

 

 


 
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