No.901476

真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第十八話


 お待たせしました!

 今回は、連合が崩壊に至る顛末と連合の面々の

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2017-04-16 15:18:09 投稿 / 全17ページ    総閲覧数:5234   閲覧ユーザー数:3998

 

 ~連合の陣の中・兵士達の宿舎にて~

 

 宿舎の中の一室にて、数人の兵が集まって話をしていた。どうやら本陣近くにいた兵を

 

 囲んでその話を聞いているようだが…。

 

「おい、遂に公孫賛様の軍までいなくなっちまったぞ」

 

「それも仕方ない…何せ、袁紹様と劉備様は公孫賛様の軍を使う為に公孫賛様を拘束まで

 

 したらしいからな」

 

「マジか、それ…でも、公孫賛様が捕まってるのに何故軍だけ撤退したんだ?」

 

「此処だけの話だぞ…どうやら、その軍を指揮していたのは趙雲様と諸葛亮様だって話だ」

 

「えっ!?それじゃ、あのお二人は劉備様を見限ったって事か!?」

 

「ああ、そもそも諸葛亮様は劉備様の方針に反対して檻の中に閉じこもっていただろう?

 

 どうやらそれを追放って名目で公孫賛様の所へ連れて行ったのが趙雲様らしいぞ」

 

「それじゃ、趙雲様は最初からそのつもりで…」

 

「でも、関羽様は趙雲様は援軍を連れて来る為に少しの間離れているだけだって言ってた

 

 ぞ?」

 

「バカだな、お前。そんなの正直に『趙雲は裏切りました』なんて言えないからついた嘘

 

 に決まってるだろうが」

 

「ああ、こりゃ完全に詰んだよな~」

 

「いや、そもそも汜水関の時点でほとんど終わってただろう。それがこんな所まで引っ張

 

 ってるのは、完全に袁紹様と劉備様が意固地になってるからだろうよ」

 

「そういや、そもそもこの戦の目的だった『暴君・董卓から洛陽の民を救う』っていうの

 

 も、まったくの出鱈目だって噂だぜ?」

 

「それは俺も聞いたぞ。何でも本当の董卓様というのは天女の如き美しさと優しさを持っ

 

 た御方だって…」

 

 

 

「それが本当なら、この戦って何なんだ?」

 

「どうやら袁紹様が相国になられた董卓様に嫉妬して引きずり降ろそうとしたらしいって

 

 話だぜ」

 

「何だそれ?それで一体此処まで何人死んでるっていうんだよ!ほとんど無駄死にじゃね

 

 ぇか、それ!!大体、あの虎牢関のあれは何なんだ!?あんなの相手に無駄に突撃ばっ

 

 かり繰り返しやがって!!」

 

 兵士達は話している内に段々とヒートアップしてくる。

 

「それも、何も対処方法が思いつかないのに、このまま退くのは嫌だからってんで、袁紹

 

 様と劉備様が命じてるだけだって話らしいぞ」

 

「…それが本当なら、そんなバカな話があるか!!俺達兵士はただ黙って命令に従って死

 

 ねって事じゃねぇか!!」

 

「ああ、袁紹と劉備は自分さえ良ければ俺達の命なんか屁とも思ってないんだろうよ」

 

「冗談じゃねぇ…俺達にだって、やりたい事もあれば帰りを待っている家族だっているん

 

 だぞ!このまま此処で黙って命令だけ聞いて死ぬなんて真っ平御免だぞ、俺は!!」

 

 ヒートアップしていた兵士達は、輪の中心にいた兵の口から袁紹と劉備に対して敬称が

 

 無くなっている事にすら気付かずにいる。

 

「…そうだな、何も袁紹や劉備の所じゃなけりゃ仕事が無いってわけじゃねぇんだ。確実

 

 に死ぬ事が分かっているような所に何時までもしがみついていられるか!」

 

「ならば『善は急げ』だ。もたもたしてると、気付かれてしまうからな」

 

「ああ、今すぐ決行だ!」

 

 中心にいた兵の『善は急げ』の一言で周りの者達は何かに憑りつかれたかのように陣を

 

 飛び出していく。

 

 そして、一人残った中心にいた兵はそれを見て満足そうにほくそ笑みながら、陣を離れ

 

 ていったのであった。

 

 

 

 次の日。

 

「助けてくれ!!」

 

「嫌だ、死にたくねぇ!!」

 

 袁紹の天幕の前には数人の兵…前日に脱走を試みた者達が拘束されており、その後ろに

 

 は処刑人が剣を構えていた。

 

「麗羽さん…本当に処刑するんですか?ちゃんと話せば分かってくれるんじゃ…」

 

「今更何を言うのです、桃香さん?軍の規律を守り、我らの正義を実行する為にはこのよ

 

 うな者達を絶対に許してはならないのです…さあ、おやりなさい。そのような者達に慈

 

 悲など必要ありませんわ!!」

 

 袁紹の号令で剣が振り下ろされ、脱走者の首が落ちる。

 

「皆様も良いですわね…脱走などと愚かしい事を考える不届き者はこのような末路を辿る

 

 のです!!こうなりたくなければ、あの忌々しい虎牢関を攻め落としてみせなさい!」

 

「皆、虎牢関さえ突破出来れば私達の勝ちなんだよ!だ、だから、もう少しだけ頑張ろう、

 

 ね?」

 

 袁紹は周りにいた兵達にそう告げると、満足そうな顔で天幕へと戻り、劉備は一応フォ

 

 ローのつもりか、そう声をかけると袁紹の後を追っていったのだが…残った兵達の顔に

 

 怒りの色が表れていたのに気付く事は無かったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 ~劉備の陣にて~

 

 陣の中では関羽と張飛と鳳統が深刻な表情を浮かべて話をしていた。

 

「まさか、脱走者の首を有無も言わさず刎ねるとは…」

 

「桃香お姉ちゃんは止めなかったのか!?鈴々がそこにいたら絶対に止めたのだ!!」

 

「今の桃香様は大分袁紹様に感化されてます…積極的に止めに入る事は無いかと」

 

 

 

「しかし、これで兵達の動揺もより大きい物になっている…このままでは、何時暴動が起

 

 きてもおかしくないぞ」

 

「袁紹の所はともかく、鈴々達は黄巾との戦いや平原でずっと一緒にいた仲間なのだから、

 

 大丈夫じゃないのか?」

 

「鈴々ちゃんの言う通りだったら良かったのでしょうけど…私達も既に現状維持が精一杯

 

 です。天和さんが敵方へ寝返り、朱里ちゃんと星さんが白蓮さんの軍と一緒にいなくな

 

 ってしまった今では初期の結束はほとんど存在しないと言っても過言では…」

 

 張飛の言葉に鳳統は否定的な回答をする。

 

「くっ…星も朱里も何が気に入らなかったというのだ。不満があったのなら何故それをも

 

 っと早くに訴えてくれぬのだ…」

 

 関羽は苦い顔でそう呟くが…諸葛亮が訴えた不満も趙雲がそれを支持するような発言も

 

 彼女は聞いていたのだが、それを劉備に伝える事も他の者に相談する事もしなかった故

 

 の結果でもある事に彼女自身気付いていない。

 

「愛紗さん、今は残ったこの軍を如何に維持するかです。それに…最早この状況で戦を続

 

 けるのは不可能です。むしろこの状況になれば、董卓軍は一気に打って出てくる可能性

 

 が高いです。そうなれば完全に壊乱状態になるのは明白、桃香様にすぐにでもご決断し

 

 ていただかなくてはなりません」

 

「…そうだな、撤退するなら今が最後の機会か」

 

「撤退!?鈴々、全然戦ってないのだ!!このまま逃げるなんて…」

 

「鈴々ちゃん、そのような事を言っている場合じゃないのです。今、打って出て来た董卓

 

 軍と戦っても勝ち目なんか無いのは鈴々ちゃんも分かっているはずです」

 

 関羽が口にした『撤退』の言葉に張飛は異議をはさむが、鳳統にそう言われるとそれ以

 

 上何も言えず、悔しそうに俯くだけであった。

 

 

 

「ならば、すぐにでも桃香様に申し上げてくる」

 

「しかし、今の桃香様では愛紗さんの言葉ですらお聞きにならないかもしれません」

 

「その時は気絶させてでも連れて来る。鈴々と雛里は何時でも撤退出来るように軍を纏め

 

 ておいてくれ」

 

 関羽がそう言って劉備の所へ行こうと立ち上がったその時、大きな爆発音と共に大勢の

 

 人間の叫び声が響き渡る。

 

「何事だ!董卓軍が来るには早すぎるぞ!!」

 

「関羽様に申し上げます!袁紹軍の兵士達の一部が反乱、僅かに残っていた火薬を袁紹様

 

 のいる本陣の中に投げつけて、戦闘状態に入っております!!」

 

「何と!?桃香様は、桃香様は無事なのか!?」

 

「劉備様は袁紹様の本陣の中におられたはずですが、この状況では詳細は…」

 

「くそっ、何たる事だ!鈴々、雛里、こうしてはおられん、お前達はすぐにでも兵を纏め

 

 平原へ撤退しろ!!」

 

「愛紗はどうするのだ!?」

 

「私は桃香様を救出しに行ってくる!」

 

「なら、鈴々も…『お前まで行ったら誰が雛里と兵を守るというのだ!!』…分かったの

 

 だ。愛紗、桃香お姉ちゃんの事は頼んだのだ!」

 

 関羽が劉備の救出の為に飛び出して行き、残った二人は急ぎ軍を纏めて撤退の準備をし

 

 ようとしたその時…。

 

「申し上げます!我が軍の大半の兵も反乱軍に同調、こちらに押し寄せて来ます!!」

 

 飛び込んで来た伝令の言葉に二人の顔が驚愕に包まれる。

 

「あわわ…どうしよう、どうしたら良いの、鈴々ちゃん…」

 

 鳳統は涙目で張飛の腕にしがみつく。

 

 

 

「どうするって言っても桃香お姉ちゃんも愛紗もいないのに、鈴々だってどうしたら良い

 

 か分からないのだ…」

 

 張飛もこの状況に困惑の表情を浮かべていたが…。

 

「いたぞ!張飛と鳳統だ!!」

 

 そこに反乱を起こした兵達がなだれ込んで来て二人を囲んでしまう。

 

「何なのだ、お前達!!今、何をしているのか分かっているのか!?」

 

「ああ、悪いが俺達は軍を抜けさせてもらう事にしたんでな」

 

「だったら、鈴々達に何の用なのだ!!」

 

「そんなの決まってるじゃねぇか。董卓様の所に仕官するんだって手土産の一つも無いと、

 

 大した褒美も出ねぇからな…悪いが、あんたらの首は貰うぜ。それとも降参するってい

 

 うなら、それでも良いぜ。生きたままの方が色々楽しめそうだしな…ひっひっひ」

 

 反乱兵達はそう言うと二人に下卑た笑いを向ける。

 

「うが~っ、お前らなんかにやられる鈴々じゃないのだ!死にたくなかったら今すぐ道を

 

 開けるのだ!」

 

 張飛は鳳統を庇うように前に立つと反乱兵達を威嚇する。

 

「ふん、こっちだってあんたとまともにやりあえない事位分かってるさ…おい!」

 

 兵の一人がそう言って手を振ると天幕が開かれ、その周りを弓兵が隙間無く囲んでいた。

 

「どうやら、この方々は大人しく従うつもりが無いみたいだ、構う事は無ぇから蜂の巣に

 

 してしまえ!!」

 

 その号令と共に、一気に矢が二人に降り注ぐ。張飛は必死に当たりそうな矢をはじいて

 

 いたが、さすがに半刻もそれを続けていると息があがってきていた。

 

「ちっ…さすがにやりやがるか。でも、すっかり息もあがっているようだし、そr『気を

 

 抜いている暇はそっちにだって無いのだ!!』…しまっ『ザシュッ!!』…」

 

 

 

 張飛は兵達が一瞬気を抜いた隙を衝いて指示を出していた兵を切り倒すと、鳳統の手を

 

 引いて一気に囲みから抜け出す。

 

「雛里、逃げるのだ!!」

 

「待って、鈴々ちゃ…痛っ!」

 

 しかし、手を引っ張った直後、鳳統はつまずいて転んでしまい、その拍子に握っていた

 

 手を離してしまう。

 

「雛里、立つのd『ドシュッ!』…なっ、卑怯なのだ!!」

 

 張飛は慌てて鳳統の手を取ろうとするが、そこに再び矢を射かけられる。

 

「この状況で卑怯もへったくれもあるか!放て、このまま放ち続けろ!!お前らは転がっ

 

 ている鳳統を捕まえろ!!」

 

 そして張飛が近付いてこれないように矢を放ち続けながら、数人の兵が駆け寄り鳳統を

 

 捕まえてしまう。

 

「雛里を放すのだ!!」

 

「ふん、嫌なこった。お前ら、鳳統を捕まえれば十分だ!!」

 

 兵達は鳳統を抱えるとそのままいなくなってしまう。

 

「鈴々ちゃん、鈴々ちゃん!!」

 

「待て、待つのd『ドコッ』…痛っ!!」

 

 張飛は追おうとするが、一人の兵が投げた石が右膝に当たり、その痛みに一瞬怯んだ隙

 

 に見失ってしまう。

 

「おのれ、おのれ!!待つのだ、雛里を返せなのだ!!」

 

 張飛は兵達が逃げていったであろう方向に進むが…。

 

「張飛、覚悟…ぐはっ!!」

 

「死ねぇ…ごふっ!!」

 

「邪魔するななのだ!」

 

 次から次へと襲い掛かって来る反乱兵達を倒しながら進んでいる内に自分が何処にいる

 

 のかすら分からなくなってしまう。

 

 

 

「雛里、雛里!!何処なのだ、いたら返事するのだ!!」

 

 張飛は必死に鳳統を捜すが、そんな状況で見つかるはずは無かったのだが…。

 

「うん、これは…雛里の帽子?雛里、雛里!!」

 

 そこに鳳統の帽子が落ちており、近くにいないか捜すが、結局見つかる事は無かった。

 

「雛里…何処だ、何処へ行ったのだ?桃香お姉ちゃん…愛紗…皆、何処にいるのだ?何で

 

 こうなったのだ?何で誰もいなくなったのだ?ほんのちょっと前まで皆一緒だったのに

 

 …桃香お姉ちゃんも愛紗も雛里も…星も…朱里も…天和も…うがーーーーーっ!!」

 

 張飛は恨みを込めて空に叫ぶが、何も返って来る事は無く、うなだれた様子で鳳統の帽

 

 子を頭に被ると、そのままトボトボと何処かへといなくなってしまったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 その頃、孫策の陣にて。

 

「そっ、やっぱりといえばやっぱりだって事なんだろうけどね…七志野権兵衛だけでも討

 

 ち取ろうって此処に残ったけど、それも最早夢のまた夢ってわけね」

 

 袁紹・劉備の陣で起こった兵の反乱を聞いた孫策は静かにそう呟く。

 

「孫策様、お早く…このままでは反乱兵達がこちらにも押し寄せて来ます」

 

「董卓軍は?」

 

「虎牢関の前に軍を展開したまま動きがありません。どうやら反乱が起きた展開に向こう

 

 もどうすれば良いか戸惑っている様子です」

 

「そう、もし調子に乗ってこっちに押し寄せて来たら、虎牢関に入る隙位あったかもしれ

 

 なかったのだけど…それも無理そうね」

 

「では、建業へ帰りますか?」

 

「それも無理ね…今更、どの面下げて帰れっていうのよ」

 

 

 

「それでは一体どうされるおつもりで…?」

 

「とりあえず此処は離れるわ。今後の事はそれからかしらね…皆、此処まで付いて来てく

 

 れてありがとう。私の事なんか構わずにあなた達は建業に帰りなさい。今なら蓮華や冥

 

 琳もあなた達を処罰する事は無いでしょうから」

 

「お一人でどうされ…まさか、洛陽に潜入して件の七志野権兵衛とやらの首を狙われるの

 

 ですか?」

 

「それこそまさかね…戦場であれば狙いようもあったんだけど、私はそいつの顔を知らな

 

 いのよ」

 

 兵士の問いに孫策は苦笑しながらそう答える。

 

「ならば、何処へ行かれるのです?」

 

「さあ?それは私にも分からないわね…それじゃ、お互い運があったらまた会いましょう」

 

 孫策はそう言うと、近所に買い物に出かけるかのようにふらっと陣を出て、姿を消した

 

 のであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そして袁紹の本陣では…。

 

「麗羽様!ダメです、ほとんどの兵が反乱に加わってしまっていて、これ以上は…」

 

「このままじゃ逃げ道すら確保出来なくなっちまいますよ~!」

 

「逃げる!?何をおバカな事を…恐れ多くも、三公を輩してきた名門たる袁家の当主たる

 

 この袁本初が尻尾を巻いて逃げるなどあり得…『そんなもん、こんな状況じゃ何の役に

 

 も立ちませんってばぁ~!』…ぐぬぬっ、何たる事ですの!我が正義がこのような事で

 

 崩れるなんて!」

 

 顔良と文醜が必死に防衛しながら、袁紹にこの場からの撤退を進言するが、袁紹は無駄

 

 なプライドが邪魔をして、なかなかその決断を出来ずにいた。

 

 

 

「姫~!何時まで悩んでたって解決なんてしませんって~!!」

 

「文ちゃん、もう持たないよ!!」

 

「それじゃ、仕方ねぇ…姫、すまねぇけど、しばらく寝ててくれよな」

 

「猪々子さん?どういう事d…『ドガッ!』…なっ、何をするのでs…」

 

 袁紹の態度に業を煮やした文醜は彼女に当て身をくらわして気絶させると、彼女を肩に

 

 担ぐ。

 

「よし、それじゃさっさと逃げr『待って!』…そういや、あんたもいたな。此処はもう

 

 持たないぞ、あんたもさっさと逃げな。悪いがあたいらは姫を守るだけで精一杯なもん

 

 でね。自分の事は自分で考えな」

 

 文醜は未だ陣の中にいた劉備にそう言うと、顔良や残った兵と共にそこから逃げ出して

 

 しまう。

 

「そんな…何で?何でこうなるの?私はただ洛陽の人達を董卓から救いたかっただけだっ

 

 たのに…」

 

 一人残された劉備はそう呟いて泣き崩れていたのだが…。

 

「まだ誰か残ってるぞ!!」

 

「俺は知ってるぞ、こいつは劉備だ!!」

 

「へぇ…これはこれは。もう何も残ってないかと思っていたが、とんだ残り物だな」

 

 そこに反乱兵達がなだれ込んで来て、劉備を取り囲む。

 

「あ、あなた達…何を」

 

「何を、だってよ…ひひひっ、分かってんだろ?袁紹に逃げられちまった今、手柄になり

 

 そうなのはあんたしかいないって事位」

 

 

 

「おいおい、手柄だけで終わりかよ?」

 

「まさか、その前にたっぷり楽しんでからに決まってるじゃねぇか」

 

「ひっ!?」

 

 反乱兵の言葉に劉備は身をよじりながら悲鳴を上げる。

 

「おい、聞いたか?『ひっ!?』だってよ。随分と可愛い悲鳴上げてんじゃねぇか…その

 

 同じ口から俺達に死ねと言わんばかりの無謀な命令を出したとは、とても思えねぇな」

 

「む、無謀だなんて…私はただ、洛陽の人達を助k『ほぅ、そんじゃその為には俺達みた

 

 いな兵士は幾ら死んでも構わねぇって事か。さすがお偉いお方は考える事が違うねぇ』

 

 …そ、そんな事は一言も言っt『まあ、あんたがどう思ってようがそんな事はどうでも

 

 良いんだけどよ』…痛っ、何をするんです!?」

 

「何をするって?決まってるだろう…『ナニ』をするんだよ。さすがに此処じゃ邪魔が入

 

 るから手頃な茂みまで行こうってわけだ」

 

 反乱兵が劉備の腕を捻ると、彼女は抗議の声を上げるが、続いて発せられた兵士からの

 

 言葉に表情が凍り付く。

 

「おいおい、そんな怖い顔するなって。最初はどうか知らんけど、その内気持ちよくなっ

 

 てくるからよ…さあ、行くぞ」

 

 反乱兵達は劉備を力任せに引き上げるとそのまま場を離れようとする。しかしその時…。

 

「桃香を放せ!!」

 

「ぎゃっ!!」

 

 そこに駆け込んで来た公孫賛が劉備を連れて行こうとした兵士を斬り伏せ、彼女と兵士

 

 の間に割り込んで剣を構える。

 

「大丈夫か、桃香?」

 

「ぱ、白蓮ちゃん?何で…?」

 

「こんな状況で軟禁されてた私に構う奴なんか何処にもいなかったってだけだ」 

 

 

 

「そ、そうじゃなくて…何で此処に?」

 

「さあ、何でかな?本当だったら一人でとっとと逃げれば良かったんだろうけど…我なが

 

 ら呆れるばかりだ」

 

 劉備の問いに公孫賛は苦笑混じりにそう答える。

 

「ちっ、余計な邪魔が入りやがった…まあ、良い。こうなりゃ、お楽しみは無しだ」

 

 反乱兵達は二人の首を取る為に囲もうとするが、

 

「遅い!!」

 

 公孫賛が先に動き、一気に二人の兵を斬り伏せる。

 

「逃げるぞ、桃香!!」

 

「えっ、白蓮ちゃ…うわっ!?」

 

 そして反乱兵達が怯んだ隙に公孫賛は劉備の手を取ってその場から逃げ出す。

 

「待て!逃げるな!!」

 

「この状況で逃げるなと言われて逃げない馬鹿が何処にいる!!」

 

 反乱兵達は一斉に二人を追いかける。二人も必死に走るものの、しばらくすると劉備の

 

 体力に限界が来たのか、走る速度が遅くなる。

 

「くそっ、このままじゃ追いつかれるのも時間の問題だな…桃香、此処は私が抑えるから

 

 お前は逃げろ!」

 

「えっ!?そんな、逃げるなら二人d『二人で逃げたら追いつかれるからお前だけでも逃

 

 げろって言ってるんだ!』だったら私も一緒に戦う…『バカな事を言うな!!この場で

 

 お前の腕が役に立つわけが無い位、分かってるだろうが!!』…で、でも」

 

「うるさい、早く行け!お前が此処にいても邪魔なだけだ!!感情ばかりで言ってないで、

 

 たまにはちゃんと頭で考えて行動しろ!!これは友人としての最期の忠告だ!!」

 

 

 

「ごめん、白蓮ちゃん…ごめんなさい!!」

 

 公孫賛の言葉に劉備はそう言って泣きじゃくりながら再び走り出す。

 

「ふっ、これで少しはあいつもマシになれば良いけどな…我ながら人が好過ぎるよな。本

 

 当、貧乏くじだ」

 

 公孫賛はそう言って自嘲気味に笑みを浮かべる。

 

「さあ、来い!この公孫伯珪、そう簡単に首はやらんぞ!!」

 

 そして、迫って来る反乱兵達に向けて剣を構えるのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 それから半刻後。

 

「桃香様!!」

 

 本陣のあった場所から少し離れた森の中で、劉備を捜していた関羽が彼女の姿を見つけ

 

 て駆け寄ってくる。

 

「愛紗ちゃん…?愛紗ちゃん!」

 

「ご無事で良かったです」

 

「白蓮ちゃんが、白蓮ちゃんが助けてくれたの…私、あんなひどい事したのに、あんなに

 

 一杯兵士さん達を死なせたのに…わあああああーーーーーん!」

 

 劉備はそう言うと、一気に泣き崩れる。

 

「桃香様…」

 

 そして関羽はそんな劉備を優しく抱きしめる。

 

「もう一度やり直しですね…そんな機会があるのかも分かりませんが」

 

「やり、直す?」

 

「はい、今度の戦で我らは多くの事を学びました。その為に払った犠牲も大きい物になっ

 

 てしまいましたが…しかし、我らはこうして生きている。生きている限りは何かを成さ

 

 ねばならないです。その時に、今日体験した事が何かの役に立つ事やもしれません」

 

 

 

「でも、私…」

 

「今はまだ何が出来るか分かりません。ただ、このまま地を向いて泣くのではなく、まっ

 

 すぐ前を向いて生きていきましょう。そうすれば、きっと…」

 

 関羽のその言葉は半ば自分に言い聞かせるかのような響きがあった。

 

 劉備もそれが分かったのか、涙を拭いて立ち上がると、関羽と二人何処かへと消えてい

 

 ったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「一刀、何もお前が一緒に来んでも良かったやん」

 

「戦が終わるというのなら、俺なりに結末は見届けたくてね。霞や詠には無理言って申し

 

 訳ないけど」

 

「そう言うんなら、しゃあないな。まあ、一刀の事はウチが守ってやるさかいにな」

 

「姐さん、師匠の護衛は一応ウチなんやけど…」

 

「はっはぁ~、悪いけど、一刀は董卓軍やで。だったらウチが優先や」

 

「ウチかて一応ちゃんと命ぜられて来たんやけど…」

 

「まあ、細かい事は気にしない。だったら二人で一刀の護衛や」

 

「おおっ、なら了解ですわ!」

 

 何だか関西弁コンビの間で話が進んでるのですが…しかし、古代中国でも関西弁キャラ

 

 の押しの強さは変わらないものなのだろうか?(あくまでも一刀の個人的見解です)

 

 ちなみに何故俺がこの二人と一緒にいるのかというと、連合側が兵の反乱で壊滅した事

 

 で、実質戦が終わったような物なので、これ以上余計な死者が出ないように出来ればと

 

 思い、霞の軍に同行を希望したのである。詠も最初は渋っていたが、護衛を付けるとい

 

 う条件で許可してくれたのであった。

 

 

 

 そして、それを聞いた華琳が真桜を護衛にと言った為、こうして俺は関西弁コンビに囲

 

 まれているのであった。

 

「しかし、もうほとんど何も無いなぁ…連合の兵は皆、逃げたか死んだかしたんかな?」

 

「姐さん、一部こっちに降伏したのもおるって聞いたけど…」

 

「ああ、そうやったな。でも、結局何も無いのに変わりは無いけどな」

 

 霞と真桜がそう話をしながら連合の陣があった所を抜けてしばらく進んでいく…おや?

 

「なぁ、霞。あの辺に人がいるような感じがするんだけど?」

 

「うん?あないな森の奥にか?気のせいや…ないな。おい、そこにいるのは誰や!大人し

 

 ゅう出て来い!!」

 

 森の奥の方に人が動いたような気がしたので霞に言うと、霞もそれに気付き、そちらの

 

 方を一喝すると、十人近くの兵らしき男達が飛び出して来る。

 

「ほぅ…その格好、連合のもんやな?」

 

「お、お助けを…降参しますから!」

 

「まあ、大人しくするっていうのなら…『霞、まだ誰かいるぞ!』…おや、あんたらだけ

 

 ちゃうんか?」

 

「い、いえ、その…」

 

 何やら態度がおかしいな…。

 

「真桜」

 

「へぇ~い…姐さん、師匠の護衛は頼んます」

 

 真桜が茂みの奥の方に入って行くと、降伏した兵士達の様子がますますおかしくなる。

 

「姐さん!女の子がいてます!!おい、大丈夫か?あいつらになんかされたんか!?」

 

 女の子…まさか?

 

 霞も同じことを思ったのか、兵士達を見る眼付きが鋭くなってくる。

 

 

 

「い、いえ、まだそういう事をしたわけじゃ…『まだって何や?これからそういう事をす

 

 るつもりやったいう事か!?』…ひっ!?」

 

 霞から発せられる怒気に兵士達は一斉に固まる。

 

「霞、此処で叩き斬るのは容易いかもしれないけど…一応、降参の意を示した以上、判断

 

 は詠に任せるべきだろう。詠が許すとは思えないけど」

 

「…そうやな。忌々しいけど、それが月からの命やしな。おい、お前ら!こいつらをふん

 

 縛っておけ!」

 

 霞の命で降伏した兵達は拘束されて連れて行かれる。

 

「真桜、そっちの娘は大丈夫なのk『師匠、見たらダメです!!』…すまん、誰か大きめ

 

 の布を!」

 

 俺は真桜のいる方に大きめの布を渡すと、それで倒れていた女の子の身体を包んで抱え

 

 て来る…おや、随分と小さい娘だな。ツインテールの可愛い娘だ。

 

「真桜、その娘、大丈夫やったんか?」

 

「はい、服は半分以上ちぎれてましたけど、まだそこまでは…多分、後四半刻も遅かった

 

 らやばかったですわ」

 

「しかし、何処の娘だ?まさか地元のってわけじゃないだろうし…連合の中にいたとか?」

 

「まさか、そんなわけあらへんやろ…どう見ても戦えるようには見えへんで」

 

「…まあ、とりあえず、連れていくしかないか」

 

 俺達は保護したその娘を連れて虎牢関へと戻っていったのだが…。

 

「鈴々ちゃん…朱里ちゃん…助けて」

 

 その娘のかすかなうわ言が聞こえる事は無かったのであった。

 

 

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は少しだけ早めに投稿出来ました。

 

 そして、今回で戦の後始末までと思ったのですが、大分

 

 長くなってしまったので、一旦此処で切らせていただき

 

 ます。

 

 戦の後始末については次回でお送りする予定ですので。

 

 というわけで次回は戦の後始末をお送りします。

 

 

 それでは次回、第十九話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 白蓮さんと保護された女の子(最早バレバレでし

 

    ょうが)の事については次回にて。

 

    白蓮さんはきっと元気に生きているさ!(オイ 

 

 

 

 

 


 
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