No.889996

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

βテスト(バグスターウイルス感染編)

2017-01-22 21:03:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2779   閲覧ユーザー数:1209

書き換えられた運命は、また別の運命を書き換える事となる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、どうして私が外出なんて…」

 

「良いじゃないですかハルカさん。たまには外出するのも悪くないですよ?」

 

ミッドチルダ首都クラナガン。そこまで買い出しに出掛けていたのはディアーリーズとハルカの二人だ。普段なら外出なんてしないであろうハルカは面倒そうな表情でディアーリーズの横を歩いており、ディアーリーズはそんな彼女の様子に苦笑しながらも彼女の手を引っ張り、彼なりに彼女をエスコートする。

 

「まぁ良いわ。ウルと二人っきりで買い出し出来るなら文句ないわ。そう、二人っきり(・・・・・)で」

 

「あはは……たぶん今頃、抜け駆けされてこなた逹が怒ってそうで怖いなぁ」

 

「その点、私が一歩リードしたって事ね。せっかくだから下着も買っておこうかしら? ウルに選んで貰った奴を」

 

「あぁはいはい、やっぱり僕が選ぶ羽目になるんですね」

 

これまで、ディアラヴァーズの面々から私服、下着、靴、アクセサリーなど様々な物の買い物に付き合わされてきたディアーリーズ。特に下着に関してはしつこ過ぎるくらいランジェリーショップまで連れ込まれている為、流石に今更下着を選ばされるくらいでは動揺も少なくなってきている。それはハルカも把握しているのか、つまらなさそうな表情を浮かべる。

 

「イマイチ反応が薄いわね。もっと同様しなさい、よ…」

 

「そりゃまぁ、何度もつき合わされれば嫌でも慣れていくに決まって……っと?」

 

ハルカの手を握りながら歩いていたディアーリーズだったが、その身体は突然ガクッと後ろに引っ張られる。何かと思ったディアーリーズが振り返ってみると、歩みを止めたまま一方向を見つめているハルカの姿があった。

 

「ハルカさん、どうし……あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パパ~! ママ~! このお人形さん欲しい~!」

 

「えぇ~、どうしようかなぁ~…? 結構大きいぞコレは…」

 

「良いじゃないアナタ。まだまだお金には余裕あるわよ?」

 

「しょうがないなぁ~…分かった分かった、エマの為に買ってやる」

 

「本当!? ありがとうパパ~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ハルカの視界に映っていた光景は、何て事ない普通の親子が買い物をしている光景。欲しい物を買って貰う事になり喜ぶ女の子と、その女の子を優しく抱き上げる父親と、その様子を見て笑顔を浮かべている母親。

 

そんな普通過ぎる光景が、ハルカにとっては普通ではなかった。

 

「ハルカさん…?」

 

「…え? あぁ、うん。ごめんなさい、つい余所見しちゃってたわ」

 

「…大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ。私は大丈夫だから」

 

「けどハルカさ…」

 

「大丈夫って私が言ってるでしょ!」

 

ディアーリーズが語りかけるも、ハルカは苛立ちのあまり彼に握って貰っていた手を無理やり解き、早歩きでその場をさっさと立ち去って行く。

 

(…やっぱり、まだ両親の事が…)

 

ディアーリーズはハルカの過去を知っている。ハルカはディアーリーズと出会う前、両親と共に財団Xという組織に所属していた身だった……正確には所属させられていた(・・・・・・・・・)と言うべきか。かつて彼女のいた三千院財閥は、その資金力に目を付けた財団Xに乗っ取られ、そこで両親と共に無理やり働かされた彼女は隙を突いて財団を脱走、逃亡先でディアーリーズに救われた事で彼女は旅団のサポートメンバーとなった。

 

しかしハルカの両親は未だ財団Xに身を置いているままだ。娘が脱走した事で、彼女の両親は今頃財団で散々な扱いをされているかも知れない。もしかしたら拷問を受けたり、実験台にされたりしているかも知れない。先程の親子の様子を見た事でそれを思い出してしまったのか、今のハルカは少々気が気でなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その不安が、彼女を窮地に陥れる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ザザ……ザザァーッ…-

 

 

 

 

「―――う…っ!?」

 

「!? ハルカさん…!?」

 

突如、ハルカに襲い掛かって来た謎の頭痛。ハルカは突然の頭痛に頭を抱えながら近くの店のショーウィンドウに寄り掛かり、ディアーリーズは慌てて彼女の傍まで駆け寄り、慌てて彼女を近くの路地裏まで連れて行く。

 

「ハルカさん、どうしたんですか…!?」

 

「ッ……大丈夫、ただの立ち眩みだから…」

 

「大丈夫じゃないですよ、凄い熱じゃないですか!」

 

≪リカバー・ナウ≫

 

早く彼女の熱を治そうと、ディアーリーズはリカバーリングを右手の指に嵌め、ベルトの手形バックルにかざす事で自分達の足元に巨大な魔法陣を出現させる。しかし…

 

(治らない!? どうして…!?)

 

≪リカバー・ナウ≫

 

≪リカバー・ナウ≫

 

≪リカバー・ナウ≫

 

どれだけリカバーの魔法を発動させても、ハルカの熱は一向に下がる様子が見られない。自分の魔法が全く通用しない症状を前に、流石のディアーリーズも少しずつ焦りが見え始める。

 

「ッ…もう良いわ、ウル……それ以上、魔力を無駄にしてどうするの…ッ…!」

 

「何言ってるんですか、早くその熱を治さないと…」

 

「大丈夫だって何度言えば分かるのよ!! もう良いったら良いの……ッ…ぅ、あぁ…ぁぁぁあ…ッ!!」

 

「!? これは…」

 

頭痛が増し、熱もどんどん上がって行くハルカの身体に、電子機器などで見られる謎のノイズが発生。それと共に彼女の背中からオレンジ色の何かがボコボコと音を立てながら噴き上がって行き、ディアーリーズは何が何だか分からない表情を浮かべる。

 

「ハ、ハルカさ…ッ!?」

 

そして、事態は更に悪化していく。

 

「ぁ、う……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああっ!!!!!」

 

「ッ!?」

 

悲鳴と共にハルカの全身がオレンジ色の何かに飲み込まれて行き、たった数秒の内に一気に巨大化。デジタル3Dの巨大なボディを得たその怪物―――バグスターユニオンは巨大なランタンのような姿となり、高速で横回転しながら路地裏を飛び出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ、早速一人目が発症したか…」

 

その様子を、遠目で監視している男がいた。バグスターユニオンが甲高い声で鳴きながら暴れるのを見て、男は愉快そうに笑いながら手元のパソコンのキーボードを操作する。

 

「その調子で頼むぞ? 我々の研究の為にもなぁ…」

 

「そうされるとこっちが迷惑なんだよ」

 

「!? 誰だ……がぁっ!?」

 

すると男の真後ろに、また別の男が出現。パソコンを操作していた男は首元に手刀を喰らった事で気絶し、手刀を繰り出した男は足元に落ちたパソコンを拾い上げる。

 

「悪いが、まだお前等に気付かれる訳にはいかないんだよ……ゲーム病患者の為にもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!』

 

「!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ば、化け物だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「きゃああああああああああ!!?」

 

「ッ…ハルカさん、やめて下さい!!」

 

≪チェンジ・ナウ≫

 

バグスターユニオンの出現を見た人達は一斉に逃げ出し、ディアーリーズはウォーロックドライバーを実体化させながらバグスターユニオンの前に飛び出す。バグスターユニオンは高速回転しながらディアーリーズの方にも容赦なく襲い掛かり、ディアーリーズはそれを真横にかわしつつもウォーロックリングをドライバーにかざし、仮面ライダーウォーロックに変身する。

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォン!!!』

 

「ッ……まずは動きを止めないと…!!」

 

≪チェイン・ナウ≫

 

ウォーロックのチェイン魔法により、周囲に出現した複数の魔法陣から鎖が伸び、バグスターユニオンのボディに巻きついて動きを止める……が、バグスターユニオンは何でもないかのように鎖を簡単に引き千切り、高速回転しながらとある方向へと突っ込んでいく。その先には、先程ハルカが眺めていた親子が走って逃げており、女の子が躓いて地面に倒れている姿があった。

 

「うぅ、痛いよ…!」

 

「「エマ!!」」

 

「ッ……駄目です、ハルカさん!!」

 

≪アクセル・ナウ≫

 

≪バリアー・ナウ≫

 

ウォーロックは超高速を発動し、転んでいる女の子の目の前まで瞬時に移動。同時に魔法陣型のバリアも張る事でバグスターユニオンの体当たりの軌道を逸らす事に成功し、別方向に突っ込んだバグスターユニオンが街路樹をスパスパ切り倒していく。

 

「さぁ、急いで逃げて下さい!! 早く!!」

 

「「あ、ありがとうございます…!!」」

 

親子は急いでその場から逃げ出し、ウォーロックは改めてバグスターユニオンと対峙する。バグスターユニオンは今も鳴き声を上げながら空中で高速回転を続けている。

 

「ハルカさん、あなたに何が起きたのかは分からない……だけど、あなたは僕が助け出します」

 

≪エタニティ・ナウ≫

 

「守りたい物を守る……僕は、そう決めたんだから!!」

 

エタニティリングをドライバーにかざし、出現したレグルスの幻影を纏う事で一気にエタニティスタイルへと強化変身を遂げたウォーロック。手元に出現した大剣レグルスカリバーを右手に構え、その強力な一撃で突っ込んで来たバグスターユニオンを弾き飛ばしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、楽園(エデン)では…

 

 

 

 

 

 

 

「一城様。ミッドチルダにて、バグスターウイルスが確認されました」

 

「あぁ、俺もすぐにミッドに向かう。例のライダーシステムは?」

 

「既にこちらに」

 

バグスターウイルスの出現を聞いて、出動準備に取り掛かっていたokaka。桃花から例のライダーシステム(・・・・・・・・・・)が入っているスーツケースを受け取り、すぐさまミッドチルダまで転移しようとしていた彼の下へ、橘花が慌てて駆けつけて来た。

 

「か、一城様、大変ですぅっ!!!」

 

「橘花、落ち着いて話しなさい」

 

「あ、すみません!! じ、実はさっき入った情報によると、そのバグスターウイルスってのに感染したのはハルカさんらしくて…!!」

 

「!? ハルカだと……おいおい、確かハルカは」

 

「はい。先程、ディアーリーズ様と共にミッドチルダまで外出されています」

 

「…あの馬鹿の事だ、間違いなく無茶してやがるぞ!! 桃花、付いて来い!!」

 

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

okakaのその予感は当たっていた。

 

 

 

 

 

 

≪イエス! スラッシュストライク! アンダースタン?≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『ギャオォォォォォォォォォォ…!!?』

 

場所は戻り、ミッドチルダ。ウォーロック・エタニティスタイルは必殺技を発動し、レグルスカリバーを振るい氷の斬撃“フローズンスラッシュ”をバグスターユニオンに炸裂させる。バグスターユニオンのボディはみるみる凍りついていき、その動きが完全に停止した……かと思いきや。

 

『―――ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!』

 

「!? またか……ぐぁっ!?」

 

その氷はすぐさま粉砕され、再び動き出したバグスターユニオンはウォーロックを大きく突き飛ばす。バグスターユニオンは傷一つ付いておらず、先程までよりも更に動きが活性化していっている。

 

「ッ……何で……どうして攻撃が効かないんだ…!!」

 

自分の魔法がまるで効いていない。今まで数多くの難敵を魔法で打ち破って来た彼にとって、目の前で起きている現象は少なからず受け入れがたい物だった。

 

『ギャオォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「!! この……がぁあっ!?」

 

突っ込んで来たバグスターユニオンを受け止めようとするも、活性化しているバグスターユニオンはパワーも増大しており、エタニティスタイルであるウォーロックを容易く吹き飛ばしてみせた。その拍子にレグルスカリバーも弾き飛ばされてしまい、ウォーロックは素手の状態で地面を転がされる。

 

(ッ……僕は一体、どうすれば…!!)

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れているウォーロックのすぐ右隣を、一人の男が通りかかったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

「何の騒ぎかと思えば、やっぱり発症してやがったか」

 

突然現れた謎の男。白衣を身に纏い、黒髪に少量の白髪が混じっている長身の男。白衣を着ている事から一瞬だけ竜神丸と見間違えるウォーロックだったが、髪の色が異なっている事からすぐに別人だと分かった。なお、サングラスをかけている為、男の目元はウォーロックには見えない。

 

「お前、あんなのを相手によくここまで持つもんだな……まぁ良い。後は俺に任せて、お前は下がってろ」

 

「ッ…待って下さい!! 彼女は僕の大切な人なんです、僕が助け出さなきゃ…!!」

 

「さっきから手も足も出ていない奴が何を言ってやがる。お前等の詳しい関係までは知らんが、お前じゃアレは救えない」

 

「そんなのは、やってみなくちゃ分からない!!」

 

「…餓鬼が」

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォン!!!』

 

「!? チィ…!!」

 

「この…ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

意地でも引き下がろうとしないウォーロックに、長身の男はめんどくさそうな表情を浮かべる。そこへバグスターユニオンが容赦なく襲い掛かり、ウォーロックと長身の男はそれぞれ左右に回避。しかしバグスターユニオンは回転速度が更に速まり、ウォーロックのボディをガリガリ削りつけてから長身の男のすぐ傍まで吹き飛ばした。

 

「たく、言わんこっちゃない……もう良いから下がってろ」

 

長身の男は呆れたような顔をしつつも、白衣の中からある物を取り出した。取り出したそれは……ディアーリーズ達がよく知る物に、特徴がそっくりだった。

 

「…ッ!? それって、ドライバー…!?」

 

ウォーロックが驚く中、長身の男は取り出した物―――ゲーマドライバーを腰に持って行き、伸びたベルトが腰に巻きついて装着が完了される。そして長身の男は白衣のポケットからゲームカセットのようなアイテム―――ライダーガシャットを取り出し、起動スイッチを押す。

 

 

 

 

 

 

≪ステルスミッション!≫

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

あちこちに複数のコンテナが配置されていき、ウォーロックは困惑を隠せない。その一方で、長身の男は首を捻りながらコキコキ鳴らした後、右手に持っていたライダーガシャットを半回転させ、自身の左胸の前まで持って行き、そのままゲーマドライバーに装填する。

 

「変身」

 

≪ガシャット! レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム?≫

 

出現した複数のパネルから、長身の男は一枚のパネルを選択し、それを左手で殴りつける。すると長身の男は全身がエフェクトに包まれ……仮面ライダースニーク・レベル1の姿へと変化した。

 

≪アイム・ア・カメンライダー…!≫

 

「…え? 仮面、ライダー…?」

 

「…フン!」

 

≪ガシャコンカービン!≫

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォンッ!!?』

 

驚くウォーロックには目も暮れず、スニークは右手で構えたガシャコンカービンから銃弾を連射。放たれた弾丸は全てバグスターユニオンにだけ命中し、バグスターユニオンは苦しそうな悲鳴を上げ始める。それを見ていたウォーロックはいても立ってもいられず、すぐに立ち上がってスニークの横に並び立つ。

 

「あ、あの!! 僕も手伝います!!」

 

「必要ない。下がってろと言った筈だ」

 

「それこそ聞けません!! 僕が彼女を助けなきゃいけないんです…!!」

 

「チッ……ゲームエリア、選択」

 

スニークは舌打ちしつつ、目の前に出現した複数のゲーム画面から一つのゲーム画面を選択。するとスニークとバグスターユニオン、そして周囲に配置されていた木箱などが一瞬で姿を消し、その場にはウォーロックだけが取り残された。

 

「…え、あれ!? ちょっと!?」

 

まさかの置いてけぼりを喰らう羽目になったウォーロック。彼が慌てて転移先を特定しようとしている中、彼の下へokakaと桃花が転移して来た。

 

「ディア、ハルカは!?」

 

「そ、それが、変な仮面ライダーと一緒に何処かに転移してしまって…!!」

 

「転移……ゲームエリアを変えたのか。安心しろ、反応ならすぐに追える。桃花」

 

「了解、すぐに転移先を特定します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これで邪魔者はいなくなった」

 

街から転移し、とある採掘場へと一瞬で転移したスニーク。その前方からはバグスターユニオンが高速回転しながら体当たりを仕掛けて来るが…

 

「これより、任務(オペ)を遂行する…!」

 

≪ズ・ダーン!≫

 

ガシャコンカービンのAボタンを押し、ガシャコンカービンから強力な弾丸を放つスニーク。放たれた弾丸はバグスターユニオンに命中し、バグスターユニオンは苦しそうに悲鳴を上げた後、そのボディに少しずつ変化が及び始めた。その瞬間を見逃さないスニークはジャンプしてバグスターユニオンに飛びかかり、ボディに入った裂け目に右手を突っ込み、そこから一気に取り込まれていたハルカを引きずり出した。

 

「さて、第1関門はクリア。次は…」

 

≪ガッチャーン! レベルアップ! 潜めミッション! 隠れろミッション! ステルスミッショーン!≫

 

助け出したハルカを地面に優しく寝かせたスニークはレベル2の姿に変化し、残ったバグスターユニオンの方へと振り返る。宿主であるハルカを失ったバグスターユニオンをどんどん姿を変えて小さくなっていき、最終的には死神のような黒い衣装を身に纏った謎の怪人に変化。更にその周囲には、ミイラ男の恰好をしたオレンジ頭の戦闘員らしき怪人も複数出現した。

 

『グゥゥゥゥ……おのれェ、仮面ライダァ~…!!』

 

「サバイバルホラーゲーム『サイレントホロウ』に登場する悪霊ファントマか。面白いのが出て来たな」

 

『邪魔をするならばァ、容赦はしないィ…!!』

 

『『『『『ゲゲェ…!!』』』』』

 

「良いぜ、かかって来な…!」

 

≪ダ・ダーン!≫

 

死神のような怪人―――ファントマバグスターは手下のバグスター戦闘員達に指示を下し、それに応じてバグスター戦闘員達も一斉にスニークに襲い掛かる。スニークは再びガシャコンカービンのAボタンを押し、再びガシャコンカービンを連射。一気に複数の戦闘員達を薙ぎ倒していく。

 

『喰らえェ~い…!!』

 

「おっと」

 

ファントマバグスターは構えていた大鎌を大きく振るい、スニーク目掛けて斬撃を飛ばす。スニークが前転してそれをかわし……外れた斬撃は、そのまま転移して来たウォーロックに命中した。

 

「ハルカさん、大丈夫でスバァッ!!?」

 

「「あ」」

 

『? 何だお前達はァ~…?』

 

「…アイツ」

 

斬撃が命中したウォーロックは地面に倒れるも、持ち前の防御力のおかげでダメージは無く、すぐに立ち上がりハルカの下へ駆け寄って行く。共に転移して来たokakaと桃花は、ファントマバグスターと戦闘中だったスニークに視線を向ける。

 

「よぉ。また会えるとは思わなかったぜ、仮面ライダースニーク」

 

「…面倒なのが増えたな」

 

『私の邪魔をするなァ~…!!』

 

「うぉ危ねぇ!?」

 

「チィ…!!」

 

ファントマバグスターは再度斬撃を飛ばし、okaka逹は瞬時にそれを回避。そしてハルカがまだ無事である事に安堵したウォーロックは、okakaやスニーク逹の隣に並び立つ。

 

「ディア、ハルカの様子は?」

 

「はい、彼女は無事です……えっと、ありがとうございます」

 

「…言っておくが、そこの娘はまだ助かっちゃいないぞ。アイツを倒さなきゃ、いずれその娘は消滅する」

 

「え!?」

 

『その通りィ…!! 私はその娘の身体を乗っ取りィ、完全な存在となるのだァ~…!!』

 

「ッ…一城様、ハルカ様の身体が消えかかっています…!」

 

スニークと桃花の言葉通り、倒れたまま意識を失っているハルカは今も身体が消えかかっている。それを知ったウォーロックは怒りのあまり拳を握り締める。

 

「ふざけるな……そんな事、この僕がさせない!!」

 

「あ、おい……たくっ」

 

スニークの制止も聞かず、ウォーロックはレグルスカリバーを構えてファントマバグスターに挑みかかる。その行いに対し、スニークは苛立った様子で頭を抱える。

 

『邪魔をするな、小僧ォ…!!』

 

「そんな物効くか……ッ!?」

 

ファントマバグスターの振り下ろした大鎌を、ウォーロックはレグルスカリバーで防ごうとした……が、振り下ろされた大鎌を防ぎ切れず、そのままウォーロックを斬りつけて吹き飛ばし、okakaは慌てて吹き飛んで来たウォーロックを回避する。

 

「おっと……ディア、大丈夫か?」

 

「ッ……そんな、何で攻撃が…!?」

 

「…これだから素人は」

 

スニークは痺れを切らしたのか、倒れた状態から起き上がろうとしているウォーロックの方に振り返る。

 

「おい」

 

「ッ…? 何ですか―――」

 

ウォーロックが立ち上がったその瞬間―――

 

 

 

 

 

 

-ズドォンッ!!-

 

 

 

 

 

 

「―――え」

 

ウォーロックは呆気に取られた。

 

何故なら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身のウォーロックドライバーが、ガシャコンカービンの銃弾によって撃ち抜かれていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? おい、何を……ッ!!」

 

スニークの行動を見たokakaは驚愕するも、バグスター戦闘員達が襲い掛かって来た事で注意がそちらの方に逸れてしまう。そんな中、スニークからいきなり攻撃を受けたウォーロックは信じられないような表情を仮面の下で浮かべていた。

 

「な、何……を…」

 

「お前がいると治療(・・)の邪魔だ。いい加減失せろ」

 

-バキィィィィィィィィィン…-

 

ウォーロックドライバーが粉々に砕け散ると共に、変身が解けたディアーリーズは謎の疲労感に襲われ、その場にガクッと膝を突く。それを見たスニークはこれで邪魔者がいなくなったと判断し、改めてファントマバグスターと対峙する。

 

『ふゥん、仲間割れかァ…? お前も始末してやるゥ…!!』

 

「仲間割れ? 冗談は止せ。それから…」

 

『ンゥ~……ッ!?』

 

「亡霊への対抗手段が、俺に無いと思うなよ」

 

スニークが新たに取り出した灰色のライダーガシャット。それを見てファントマバグスターは驚愕した。何故ならそれは、自身が今の肉体を形成するのに参考にしたゲームだったのだから。

 

『ま、まさか、それはァ…!?』

 

「サバイバルホラーゲームとは言ったが……一応、撃退手段は存在するって事だ」

 

≪サイレントホロウ…!≫

 

ライダーガシャットの起動スイッチが押され、スニークの背後から黒い亡霊のような一頭身型のマシン―――ホロウゲーマが出現。ホロウゲーマがスニークの周囲を浮遊する中、スニークはゲーマドライバーの開いているレバーを閉じた後、起動したライダーガシャットをゲーマドライバーの左のスロットに装填する。

 

≪ガシャット!≫

 

「第3段階、突入」

 

≪ガッチャーン! レベルアップ!≫

 

そして閉じたゲーマドライバーのレバーを再び開くと、周囲を浮遊していたホロウゲーマがバラバラに分解され、スニークのボディに装備されていく。フードの付いた黒装束、傷だらけの胸部装甲、髑髏のような右肩の装甲、左肩の装甲に付いているランタン状の装飾。そして口元をボロボロの包帯が覆った仮面。

 

≪潜めミッション! 隠れろミッション! ステルスミッショーン!≫

 

≪アガッチャ! 彷徨う亡霊…! ホロ・ホロ・ホロウ…! サイレントホロウ…!≫

 

ホロウゲーマを装備した姿―――仮面ライダースニーク・ホロウミッションゲーマーレベル3は幽霊のようにユラユラ身体を揺らしながら、左肩の装甲に付いているランタン―――スピリットランプを右手で掴んでから取り外す。

 

「とっとと仕留めてやるよ…」

 

『させるかァ~…!! やれェ、お前達ィ…!!』

 

『『『『『グゥ…!!』』』』』

 

スニークに何もさせまいと、ファントマバグスターの指示を受けたバグスター戦闘員達がノロノロと一斉に駆け出す。それに対し、スニークはユラユラしていた状態から突然、急に素早い動きでスピリットランプを振り回し、人魂のような青い炎を飛ばしてバグスター戦闘員達を一斉に焼き尽くし、消滅させた。

 

『な、何ィ…!?』

 

「おぉ、凄いな。たった一撃で全部倒すか…」

 

「一城様、今はそれどころではないかと」

 

1体のバグスター戦闘員を蹴り倒していたokakaは、レベル3となったスニークのパワーを見て興味津々のようだ。桃花がそれに突っ込むのを他所に、スニークはサイレントホロウガシャットを抜き取り、左腰のスロットホルダーに装填し、スロットホルダーのボタンを押し込む。

 

≪ガシャット! キメワザ!≫

 

『ぬゥ…!? ま、まずいィ~…!!』

 

この状況はマズいと判断したファントマバグスターはその場から浮遊し、その場から逃げ出そうとする。しかしスニークは慌てず、再びスロットホルダーのボタンを押し込んだ。

 

≪SILENT CRITICAL STRIKE!≫

 

「終わりだ…!」

 

スニークは幽霊のように空中に浮遊した後、自身の周囲に無数の青い炎を生成。それらを一斉に飛ばし、逃げようとしていたファントマバグスターの全身を焼き尽くした。

 

≪会心の一発!≫

 

『!? ぬ、おォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!?』

 

≪GAME CLEAR!≫

 

ファントマバグスターが爆散した後、ゲームクリアの音声と共に浮遊していたスニークが地面に着地。それと共に周囲の背景も、採掘場からミッドチルダの街中へと戻った。

 

「…さて」

 

≪ガシューン!≫

 

スニークはゲーマドライバーのレバーを再び閉じ、2本のライダーガシャットを同時に抜き取る事で変身を解き、白衣を纏った長身の男の姿へと戻る。長身の男は今も膝を突いているディアーリーズの前まで歩み寄り、ディアーリーズを足で容赦なく蹴り倒す。

 

「ぐっ!? 何をす…っ!?」

 

「さっきは何度も俺の邪魔をしてくれやがったな、お前さん」

 

胸部を踏み付けられたディアーリーズが苦しそうに呻く中、長身の男は自身の腰に装着していたゲーマドライバーを取り外し、それをディアーリーズの腰に装着させる。

 

「見た感じ、お前のあの姿は魔法による物と見た……だから」

 

長身の男は絵柄の無い黒いガシャットを取り出し、起動スイッチを押した後、ディアーリーズに装着させたゲーマドライバーのスロット部分に装填させた。

 

≪ガシャット!≫

 

「その力、俺が没収してやる」

 

「!? ぐ、ぁ…が、ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!??」

 

その瞬間、ディアーリーズの全身を謎の電流が襲い、ディアーリーズの悲痛な断末魔が上がる。これにはokakaも流石に抗議の声を上げる。

 

「!? おい、何のつもりだ!! やめろ!!」

 

「悪く思うな。コイツにこんな力があったんじゃ、今後も俺の治療(・・)の邪魔をされかねないんだよ」

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

 

長身の男に踏みつけられたまま押さえつけられている為、身動きがまともに取れない状態で苦しみ続けるディアーリーズ。しかし、苦しんでいるのはディアーリーズだけではなかった。

 

『!? な、何だこりゃあ…ウオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!??』

 

ディアーリーズの体内にいる、彼にとっての魔力源であるファントム―――レグルスもまた、何が起きているのか分からないままデータ化され、ゲーマドライバーを通じて黒いガシャットの中へと吸い込まれていく。そして…

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!! …ア、ァ…」

 

「…よし」

 

電流が収まり、苦痛が消えたディアーリーズは力が抜けて動けなくなる。それを見た長身の男はディアーリーズの腰からゲーマドライバーを取り外し、ゲーマドライバーに挿し込んでいた黒いガシャットを抜き取る。

 

「『マジカルザウォーロック』……なるほどねぇ。これがお前の力の一つか」

 

長身の男が右手に持っている黒いガシャットに、突如絵柄が出現する。描かれているのは、先程までディアーリーズが変身していたウォーロックその物で、ゲームタイトルは『MAGICAL THE WARLOCK』と記されていた。

 

「!? お前、まさかそれは…」

 

「そいつの中にある魔力、全てこのガシャットに吸収した。そいつはもう、魔法を使う事は出来ない」

 

「「「ッ!?」」」

 

「二度と俺の治療の邪魔をするな。良いな?」

 

長身の男はそれだけ告げた後、そのガシャットを持ったままクルリと振り返り、その場を後にしていく。ディアーリーズは倒れた状態のまま、立ち去ろうとする長身の男の後ろ姿を見ながら右手を力なく伸ばす。

 

「ま…て……かえ、せ…」

 

しかし、長身の男はすぐに姿がなくなり、okakaと桃花でも反応が追えなくなる。それすらも理解が追いついていないディアーリーズは右手を伸ばし続けた結果……遂には力尽き、ハルカ同様に意識を飛ばしてしまった。

 

「…一城様」

 

「…ひとまず、この場を移動しよう。あんだけド派手に暴れたんだ、そろそろ管理局の魔導師逹もここに到着する筈だ」

 

okakaはディアーリーズを、桃花はハルカを抱えた状態ですぐさま転移し、ミッドチルダを後にする。それからほんの数十秒後、彼等がいた場所に管理局の魔導師逹が到着するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上が、今回の事件の大まかな結末である。

 

サポートメンバーのハルカは無事にゲーム病から回復。しかし仮面ライダースニークに変身した男の手により、ディアーリーズはウォーロックを含めた魔法の力を全て失い、戦力としては大幅に弱体化。一人では碌に転移すら碌に出来ない状態である為、今後の任務は他のメンバーに同行して貰う形となるだろう。

 

奇妙なのは、スニークの男が言っていたあの台詞だ。

 

なるほどねぇ。これがお前の力の一つか(・・・・・・・・・・・)

 

あの発言から、彼は明らかにディアーリーズが複数の能力を持つ事を知っている様子だった。彼がどのようにしてディアーリーズの事を知ったのか。また、彼は他の旅団メンバーの持つ能力についても把握しているのか。それらも一通り調査するべきだと判断。

 

その為にも、まずは自分が手に入れた例のライダーシステム……ゲーマドライバーとライダーガシャットについて、一刻も早くその全性能を把握しなければならない事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告者 No.09 okaka

 


 
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