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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第14話

今回は比較的早いペース書けました。

では第14話どうぞ。

2016-10-11 20:00:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:6436   閲覧ユーザー数:5014

英雄とも言える人物が自ら一刀に会いに来たという話になれば流石にこれを断るのは無理な事、こうして急遽会談する為、改めて場所を変えて話をすることとし、その準備の間に程普らは孫堅たちを呼びに行った。

 

一刻後(約2時間)には何とか会談の場を設営し孫堅らを出迎える事が出来た。

 

すると程普らに連れられ健康的な褐色の肌で紫苑に負けず劣らずの胸を強調した扇情的な格好にそして眼光は獲物を狙う虎のように鋭い女性とその女性と背格好が良く似ている若い女性も一緒に現れた。

 

すると一刀の後ろにいた碧が近寄り小声で

 

「あれが孫文台だ。私が刃を交えた相手だ間違いない」

 

碧と孫堅は先の戦で顔を合わせているので見間違える事はない。改めて孫堅自ら敵陣とも言える場所に自ら乗り込んでくるのだから驚くしかなかった。

 

そして孫堅は碧に一瞥して席に座る。

 

「北郷一刀です」

 

「孫文台だ。まずは先日の事を詫びさせて貰う」

 

と言いながら孫堅は頭を下げた。

 

これには孫堅の強かな計算があった。言い訳せず先に君主自ら非を認めてしまえば流石にこれを追及するのは難しい。それに今回は朝廷の命令という理由も分かっているので、一刀も

 

「頭を上げて下さい、孫堅殿。今回は孫堅殿の意志で攻められたのでは無く、朝廷の命令であった事は明らか、これ以上孫堅殿が詫びる必要はありません」

 

「そうか…そう言って貰えると有り難い」

 

孫堅は一刀から責任を問わない旨の言を取ると少し笑みを浮かべたが、目は笑っていなかった。

 

「それで孫堅さん。態々、自分に興味があると言って会いに来たそうですが…何故そのような事を?」

 

「愚問だね。『天の御遣いたち』と呼ばれ、寡兵ながら私や名将と言われた皇甫嵩、売り出し中の曹操や張遼が居る官軍を破り、更に韓遂を射殺した『今李広』と呼ばれている北郷紫苑もいる。これで興味が湧かないというのがおかしい話だろう?だからこうして会い来たんじゃないか」

 

孫堅の行動力には一刀らもただ呆れるしか無かった。

 

「それで孫堅さんの見立てで俺たちはどう見えましたか?」

 

「そうだな長年色んな奴を見て来ているが……正直言って正体が掴めん。貴様ら一体何者なんだ?」

 

孫堅は得意の勘が一刀たちに対して働かず、お手上げ状態なので敢えて乱暴な口調を使って様子を見ながら一刀に質問する。

 

一刀は孫堅の口調などは気にせず質問に答える。

 

「そうだね…先に言っておくけど、信じるか信じないかは孫堅さん達次第だけど、俺はありのまま話すから聞いて欲しい。俺や紫苑それに璃々は”この世界の人間”ではない……別の世界に居て気付いたら涼州で倒れており、そこで馬家に保護されたんだ」

「そこで俺たちは馬家の人たちに救って貰った恩返しに西涼の人たちが少しでも生活が豊かになるように俺たちが知っている知識を使った。それでいつの間やら『天の御遣い』と呼ばれる様なったが、別に『天の御遣い』という言葉には拘りはなかった。もし本当に神様から遣わされた人物というのならそうかもしれないが、俺たちはただの人間だよ」

 

「ただ『天』という言葉だけを捕らえ、漢という国は俺たちを許さなかった。『天』の言葉だけで俺や碧さんの命を奪おうとしたんだ。そんな些細な事より他にやるべき事が山ほどあるのだ…だからこそ俺たちは自分たちの命を守る為、兵を上げて戦いを選んだ。……もしこの大陸に落ちた時、世話してくれていたのが孫堅さんだったらそっちに世話になっていたかもね…」

 

「…そう、それは残念だわ」

 

孫堅は残念そうな表情を浮かべていた。

「ちょっと待ってよ、お母さま。こんな話信じるの?」

 

「雪蓮、向こうが今更私たちを騙して何の得があるんだ?」

 

「それはそうだけど…」

 

同行していた孫策が一刀の話に疑問を投げかけるが、孫堅はこれを一刀両断で論破する。

 

だが孫堅は一刀の話した内容について大いに気にいった点があった。一刀たちは自分たちを助けてくれた馬家の為に義理を尽くし、そして命を懸けて共に戦ったという事だ。元々孫家自体は血の繋がりを大切にしてきた一族であるが、ここ最近は義理人情が廃れて民の生活を顧みず自分の出世や欲望を叶える民を踏みつける者が蔓延る様な世であったので、一刀たちの存在はそう言った意味でも貴重な存在であった。

 

「もう一つ聞きたいわ。貴方は、この天下で何を望み、何を為そうと考えているのかしら?」

 

孫堅の心中は今の朝廷よりも一刀の方が余程信頼できる人物であると確信したが、孫堅は一刀の目指す物が何なのか質問した。

 

「そうだね…今は天下という事よりもこの涼州の人たちを守りたいというのが1番だね、でも俺の根底にあるのは俺の横にいる妻の紫苑の横に対等に居れる良い男でありたいというのがあるかな」

 

「紫苑が俺と夫婦になった時に俺に誓った言葉で、この身も心も必要であれば屍も思うがまま、自由に使って下さいと俺に言ったんだよ。それを聞いた時、何て俺は幸せな男で、好きな女性にここまで言わせたのならば、それに見合う男になろうと誓ったんだ」

 

「ハハハハハ!!これはまいったね!ここで奥方を惚気る言葉が出るとは思わなかったよ」

 

孫堅は一刀の言葉を聞いて大声を出して笑うが、これは流石に失礼だと思い直ぐに顔を引き締め

 

「ああ…笑ったりしてすまなかった。別に二人を馬鹿にした訳じゃないから。だが奥方殿、これほど魅力的な旦那に言い寄る女も多いだろう」

 

孫堅は紫苑が真名かもしれないので失礼に当たらない様、敢えて奥方殿と呼ぶ。

 

「ええ確かに、でもご主人様みたいな魅力的な男性を私が一人占めすることなんて勿体無い事ですわ。ですがご主人様も努力しているのなら私もいつまでもご主人様の1番であり続けたいという女としての意地がありますわ…だからこそ私は心身ともにできるだけ良好に保ち、そしてご主人様の心の安らぎを得られる場所も多く作り出すのも正室の手腕の一つ。そこまで出来てこそ、一番大切な人となれると私はそう思っていますわ」

 

「フフフ……気にいったわ。それで私たちと手を結んでくれるのかしら」

 

一刀と紫苑の言葉を聞いて孫堅は手を結ぶ事を決意した。この世界の規格外である一刀と常識外れの勘の持ち主である孫堅との波長が合ってしまったのだろうか、何せ孫堅は一刀の事を気に行ってしまった。

「ちょっと待って下さい、孫堅殿。貴女は過去に天下を望んでいるという噂を聞いた事があるわ。それが事実ならそう簡単に手を組む訳にはいかない。それをこの場で明らかにして欲しいわ」

 

以前真里が荊州の水鏡塾に在学中に孫堅の野望は漢に代わり天下を取るという噂が流れ、その直後に荊州刺史の王叡を殺害した為、噂は事実かと思われたが孫堅はその後漢の処分に素直に従い従順な態度を取り続け、又自分の勢力も強くなかったのでその後噂は四散したが、真里は過去の噂や孫堅という人物を見て、敵になれば厄介以外何者でもないので軍師として孫堅の真意を聞く必要があった。

 

「そんな噂があったわね…だけど正直言って迷惑な話だよ。確かに一時そんな事も考えたけど、もし私が天下を取った場合、後の政(まつりごと)が面倒くさいじゃない、ただでさえ書類仕事が嫌なのにこれ以上増やして私を書類の中で埋もれて死ねとでも言うのかしら、でもね…天下を懸けた戦いをしてみたいという願いはあるわね」

 

孫堅の発言を聞いて一刀たちは呆れた表情を隠せなかった。ここの孫堅は根っから戦人だと…。

 

「孫策さん」

 

「何?」

 

「孫堅さんがああ言っているけど、孫策さんの考えを聞かせて欲しいんだけど」

 

流石に孫堅の話では判断が付かないので一刀は孫策に質問する。

 

「そうね、私もお母様と同じ意見よ。私も書類仕事は大嫌いだから」

 

「程普さんの意見は?」

 

「言いたい事は分かるけどね…これが孫文台と孫伯符という人物なの。確かに私たちが天下を取る可能性は持っているわ。でも今の漢では上がり目は無いし、このままじゃ何れ上の者たちに使い潰される可能性が高いわ。だからそうなる前に私たちは手を結びたいのよ」

 

「それは分かったが、しかし手を結んで私たちを裏切らないという保証が何処にあるんだ、孫文台」

 

碧は孫堅らの話を聞いてある程度理解を示したが、やはり涼州で連合の盟主をしていた碧は幾度となく豪族たちの裏切り行為等を目にしてきたので、手を結んだ場合の何らかの担保を聞いてみた。

 

ただ涼州と揚州自体は距離が離れているので、もし孫家が裏切っても直接攻め入られるという事はないのでその辺は安心なのだが、碧は今回の同盟に当たっての孫家の熱意を見たかったのだが、これが思わぬ方向に話が進んでしまう。

 

「保障ね…確かに馬寿成の言う事ももっともだわ」

 

孫堅は思わぬ話の流れで内心ほくそ笑んでいた。

「そうよね…我ら孫呉の決意を明らかにしておきましょう。私の娘、ここにいる孫策、そして次女の孫権、そして三女孫尚香がいます。この三人の何れかを嫁として差し出しましょう」

 

「はぁっ!? よ、嫁!?」

 

「えっ!?」

 

「何だと――!?」

 

孫堅の発言を聞いて一刀、璃々と新婚の翠が驚きの声を上げる。

 

「ほ、本気ですか?」

 

「ええ、我らの決意を明らかにするため、是非私の娘を嫁に貰って頂きたい」

 

何とか一刀が孫堅に質問するが孫堅の目は爛々と輝き、表情は悪戯が成功したという満面の笑みを浮かべている。

 

「ちょっと待て、孫文台。江東の虎と呼ばれた貴様が何故、態々娘を差し出してまで我々と手を組みたいのだ。これでは貴様の方が、分が悪いではないか」

 

一刀は勿論、百戦練磨の紫苑や碧も孫堅の話を聞いて驚きを隠せない。何せ江東の虎と呼ばれた誇り高い虎が自分の娘を差し出してまで手を結ぼうとするのだから。自ら娘を差し出す事はその者の下風に立つ事になり、名目上同盟と言っても事実上配下に近い状態になってしまう。一刀たちはどうしてもそこまでして一刀と同盟を結びたい孫堅の真意がどうしても分からなかった。

 

「そうだね…孫堅さんが、俺が気になるのはというのは分かる。だけど何故孫策さんたちまで嫁に出してまで俺たちと手を結びたいのか本音を聞かせて欲しい」

 

一刀がそう告げると部屋に沈黙が落ちる。そして漸く孫堅が口を開く。

 

「……そうだね…器の違いを見たと言ったらいいかね。さっきそこのお嬢さんが天下を狙っているのかという指摘だが、さっき言った事に間違いは無い。しかし心の何処かで時期が来れば、隙があれば天下を我が手に言うのは心の片隅に持っていた。だが王叡を殺した時に私は勇気を出していれば朝廷に歯向かう事が出来たはず、だが私は朝廷を恐れ、朝廷に歯向かう一歩を踏み出す事ができなかったが、貴方は敢えて朝廷に反旗を翻した…」

 

「そして貴方は朝廷に戦いに勝った…これで仮に私が貴方に続いて朝廷に歯向かったとしても所詮それは二番煎じか付和雷同と言われるのがオチよ。そして貴方は私が出来ないことをやってのけた。だから手を結びたいのよ」

 

「それに…これは私の勘だけど、貴方たちが今は微弱な勢力であったとしても何れは漢を上回る力を持つと思うわ。その時に慌てて手を結ぶよりも今この時点で手を結んだ方が良策よ。それに今なら馬家に次いで二番目の地位は狙えるわ」

 

「でもこの先漢がこちらに目が行って孫堅さんが反乱を起こしたら、状況によっては孫堅さん達の方が優位に立つ可能性も十分にあると思うし、今この時点で下風に立つ必要性はないと思うけど」

 

「確かに貴方の言う通り、優位に立つ可能性はあるわ。だけど私たちの現状は周辺を諸豪族に囲まれた状態で、勢力を伸ばすのにも豪族たちをそれぞれ潰さないといけない。だけど貴方達は既に涼州を支配下に置いて、後は東へ兵を進めるのみでこの時点でかなりの差があるわ。それにさっき言った通りは貴方の後追いでは漁夫の利を得ただけで私の本当の力とは言えない、それこそ私の誇りが許せないわ。それだったら初めから貴方たちと手を結んだ方が余程良いわ。下風に立ったとしても貴方だったら私たちを悪い様にしないだろうし、何れ『天の御遣い』の血を入れる事で孫家の誇りや地位も上がる事は間違いないから」

 

「う~ん……どうすべきだと思う」

 

流石に事が重大なので一刀は皆の意見を聞く。

 

「私は孫家と手を結ぶことには異論はないが、結婚については正直様子を見たい」

 

「孫堅殿の決意は分かりましたので、同盟については問題が無いでしょう。しかし結婚してこれが漢に発覚した場合、周りへの見せしめの為にその鉾先が孫家に向かう可能性は十分にありますので、ここは同盟だけでも確約すればいいかと」

 

碧と真里は同盟には賛成だが結婚については様子見の意見を伝える。碧の意見は皆の感情的な面が含まれており、真里の場合は婚姻を断る尤もな理由であった。

 

「ふん…そんな事か既にここに来た時点で漢を敵に回すことは覚悟しておるわ。そんな心配無用だ」

 

「碧さんや真里ちゃんの言い分は分かりましたし、孫堅様のご覚悟は分かりました。しかし私の立場とすれば孫策様や孫権様たちがどのような人物か正直分からない状態ですぐ結婚というのは承服致しかねますわ。それで私たちも孫策様がどのような人物か知りたいので、もし孫策様が良ければしばらく客人として滞在してお互いをよく知るというのはどうでしょう?」

 

「ちょっと待って下さい。それじゃ態の良い人質じゃないですか?」

 

「私は良ければと最初に言っております。もし断るのであればそれは構いません。それで同盟を反故にする様な真似はしません」

 

魯粛は孫策が涼州に留めることに難色を示したが、紫苑はこれを毅然とした態度を取った。紫苑の意見にはお互いの顔を立てているので碧と真里は同意した。

 

「雪蓮どうする?貴女の意志に任せるわ。もし嫌だったらこの役目蓮華やシャオに回してもいいわよ」

 

「冗談言わないでよ、お母様。こんな面白い話、蓮華たちに任せるのは勿体ないわ。私がこの男の事じっくりと見極めてやるわ」

 

「なら話は決まりだな。婚姻まで行かなかったのは残念だが、北郷殿もし雪蓮たちに満足できなかったら寧ろ私が嫁いでもいいかしら、それに私もまだまだ捨てたものではないと思うけど?」

 

孫堅は挑発的に胸を張って突き出してくるが

 

「何言っているのよ!私は母様みたいに腐り掛けと違って、まだ現役バリバリよ!!」

 

「何じゃと誰が腐り掛けじゃ、誰が!!」

 

「二人ともいい加減しなさい!!」

 

孫堅と孫策の親子喧嘩に呆れながらこれを止める程普、これを見て一刀たちは似た者親子だなと感じていた。

 

こうして新たに一刀と孫家の同盟が結ばれたのであった。

 


 
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