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真・恋姫無双 新約・外史演義 第03話「鄧艾の評価」

koiwaitomatoさん

【華侖・柳琳・初登場回】
一刀と鄧艾の事情聴取、後半戦。

2016-10-09 20:21:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3093   閲覧ユーザー数:2796

 

 「ああーーーーーーーーーーーー! 華琳姉ぇ!」

 お昼時も過ぎて、客もまばらな茶屋の入り口から元気一杯!天真爛漫!な声が大音量で店内に響き渡る。

 「それに、惇姉と淵姉も! 帰ってたの?」

 「あら、華侖。どうしてあなたがここにいるのかしら」

 「それは、こっちの台詞っす! みんな、朝からどこかに行っちゃうしー……」

 元気一杯の声の主はこちらに駆け寄って、そのままの勢いで華琳に抱きついた。

 

 真・恋姫無双 新約・外史演義 第03話「鄧艾の評価」

 

 「――――琳さん! 俺に何か手伝える事とかってある?…………って、あ、あら」

 スルー!?

 「察するに、刺史殿の妹君の様ですね」

 華琳さんだけでなく、ほかの二人ともお知り合いみたいだな。家族ぐるみってやつかな……?

 華琳さんの妹か……。

 「ああ、雰囲気はかなり違うけど、顔立ちや髪の色とかはそっくりだもんな」

 「……それよりも、北郷さん。今、刺史殿の真名を――」

 「あれーーーー! 二人はどちら様っすか? 華琳姉たちのお客さんっすかねー?」

 「うわ!」

 金髪縦ロール(×1)が横から急に飛び出してきて、思わず椅子から転げ落ちそうになる。

 「こら、華侖。お行儀が悪いわよ……まったくもう」

 「北郷、鄧艾。すまないわね、私の従妹が失礼したわ」

 「……従妹」

 「華侖!華琳さまだけに謝らせるんじゃない!」

 「あ、あの、……ごめんなさいっす。びっくりさせるつもりは無かったっすよ……」

 ……うーん、華琳さんそっくりなのに性格が全然ちがうな。

 なんと言うか、正統派元気系IMOUTOキャラって感じか。しかも、また美少女だし……いいね。

 「ああ、大丈夫だよ。 こっちこそ、俺のせいでお姉さんに怒られちゃったみたいでゴメンな」

 「そうですよ。私も気にしておりませんので頭をあげてください」

 「…………あ、それよりも北郷さん。早急にお聞きしたいことが――」

 「二人ともありがとうっすよー! ええっと、お兄さんたちの名前って……?」

 「こら、華侖! 勝手に話しかける――」

 華侖の行動を諫めようと、春蘭が声を上げるのだが……。

 「俺は北郷一刀。で、こっちの子は鄧艾ちゃんって言うんだ。よろしくな」

 「……あ、はい、鄧艾士載です。……あのぉ、北郷さ――」

 「北郷一刀に鄧艾士載っすかー……、じゃあ、一刀っちに鄧ちゃんだね」

 「あたいは曹仁って言うんすよ。 一刀っちに鄧ちゃんもよろしくっすね~」

 「……とうちゃん、ですか」

 華侖のトークは、ボリュームと勢いを最後まで失わなかった。

 そして、幸か不幸か色々な発言が華侖によってかき消されたことに発言者以外は気がついていなかった。

 

 「曹仁ちゃんか…………曹仁? あれ、曹仁って、あの曹仁か」

 おお!これは、まさかの三国志系女子か!

 ウチの妹なんて、最近はアイドルにしか興味を示さないのに……素晴しい!

 「……?? いや、一刀っち……何、言ってるっすか」

 「君が曹仁なら、ここは差し詰め魏ってことになるのかな」

 「……、ぎ?」

 「古代中国の国の名前だよ。 三国志の……って、もしかして三国志を知らないの」

 「……さんごくし? 知らないっすねー」

 あれぇ?

 え、三国志っていや、中国の一大古典だろ?

 コスプレネームだと思うけど、三国志の登場人物を名乗っておいて知らないって……。

 「三国志って言うのはさ。ほら、魏の曹孟徳と蜀の劉備玄徳、あと呉の孫策や孫権とか出てくるやつ……」

 「??」

 「曹仁って、三国志に出てくる魏の大将軍じゃあないか。 まあ、曹操に比べたら知名度は低いけどさ……」

 三国志系女子だと思っていた曹仁ちゃんの切り返しに必死になって三国志の概要を説明するのだが……。

 「…………どういうこと?」

 「……何が?」

 「……どうしてあなたが、魏という名前を知っているの?」

 「どうしてもって……曹操って言えば、魏の曹操ってのが定番だろ?」

 魏の曹孟徳。

 三国志の三英雄の一人で、大陸伝統の義という概念を通り越して破竹の勢いで大陸を平定する。

 野心的で狡猾だが、智勇がずば抜けた英雄……そして付いた二つ名は。

 『乱世の奸雄』

 「貴様、華琳さまの名を呼び捨てにするでない! しかも魏だのなんだの、意味不明な事ばかり言いよって……! 華琳さま、やはりこやつは斬りましょう!」

 「あわわ……! 惇姉ぇ、落ち着くっすよ」

 怒り心頭で剣を鞘から抜いてを怒気を飛ばす春蘭を後ろから抱きついて必死になだめる華侖。

 お昼時を過ぎて人が少ないとはいえ、茶屋の客たちが何事かとこちらに注目し始めだした。

 「いや、三国志は知らなくても魏はさすがに知ってるだろ。世界史で習うはずだし」

 「ほ、北郷さん! 今は、あまり喋らないほうが……」

 「全員、落ち着きなさい! 春蘭も剣をしまいなさい」

 「う……は、はい……」

 さすがに騒ぎすぎだと、華琳が一喝!

 これには流石の春蘭もタジタジになって刀を鞘に戻す。そして、一刀の顔を厳しく見つめて華琳が一言……。

 「……信じられないわ」

 「……華琳さま?」

 「魏というのはね。私が考えていた国の名前の候補の一つなのよ」

 「……は?」

 「どういう事でしょうか?」

 「春蘭や秋蘭、華侖にもまだ言ってなかったの。近いうちには言うつもりだったのだけれど……」

 「それを、どうして会ったばかりのあなたが知っていたの! そして、一度も名乗っていない曹孟徳の名ばかりか、操というわたしの字まで知っていた。理由を説明しなさい!」

 「まさかこの男、五胡の妖術使いでは……!」

 「いや、姉者よ。どこぞの間者かもしれんぞ……!」

 「はわわ……、淵姉まで……か、華琳姉ぇー……」

 「華琳さま! お下がり下さい! 魏の王となるお方がこのような怪しげな輩に近づいてなりませぬ!」

 再び、茶屋の中で春蘭がヒートアップ。

 しかも、いきなり魏とか使ってるし!

 「華琳さま!華侖! 私たちの後ろに……!」

 「……っ! 北郷さん!席から離れて……!」

 「……え、え?」

 「華琳姉ーーーー! なんとかしてっすーーーー!」

 今度は二人がかり……鄧艾ちゃんまで、武器っぽいのを取り出してるし!

 ほかのお客さんも大パニックで逃げ出してるし……阿鼻叫喚のこの状況は――

 「全員、落ち着けと言っている! この曹孟徳の言葉が聞こえないのかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 ―― 大吼一喝

 俺たちだけでなくパニックに陥っていた、ほかのお客も声を失っている。

 

 「……華琳さま」

 「……ふう、まったく。 北郷一刀、質問に答えなさい!わたし以外に知るはずもない魏という名を知っていた理由……、そして、わたしの名を知っていた理由を」

 謝る春蘭を無視して、華琳は質問を投げかけてくる。

 「あ、ああ、でもその前に、一つ聞いてもいいかな」

 「なに?」

 「君の名前は曹孟徳で……、君が曹操なんだよね?」

 「私が曹孟徳だとしたら、何かしら?」

 「いや、だって……、それに、さっきは自分の事を華り――はふっ!んん!?」

 瞬間、何が起こったのか分からなかった。

 口の中に何か、モチモチっと肉感があるものが…………手、だよな。うん、これは一体……!

 「ぷはっ……! え、鄧艾ちゃん?」

 「北郷さん……その名を口にしてはいけません。その名前は、『真名』だって気が付きませんか?」

 「ま、まなぁ?」

 「……やっぱり。 本当に知らかったんですね……危うく殺されるところでしたよ」

 は、殺される?

 「あら、あなた真名のことを知らないの?」

 「え、え、殺されるって? 真名って何?」

 「真名とは自分を現す神聖なもの。 心を許した者に証として預ける大切なもので、それ以外の者が真名を口にすることは……」

 「名を汚したとして、斬られても文句はいえない……命拾いしたわね。 鄧艾に感謝なさい」

 「……マジかよ。殺されても文句は言えないって、FU●K YOUどころの話じゃないな……」

 まったくだ。 禁止ワードが個々の名前って、しかも罰則が死って、怖すぎるだろ!

 「……? で、私は曹孟徳なのだけれど」

 「ああ、君が曹孟徳で曹仁ちゃんが曹仁……たしか、子考だったか」

 「おおー! 一刀っち、華侖の字まで知ってるっすか?」

 「うん。 そして、そこの二人は……えーと、黄巾党と敵対している時期だから、夏侯惇と夏侯淵あたりか……」

 「……な!」

 「貴様!なぜ、私の名を……!」

 「春蘭、落ち着きなさい。 そうよ、この二人は夏侯惇と夏侯淵……で?」

 「俺も信じられないけど…………、俺はこの世界でいう、未来から来た人間って事らしい」

 三国志の時代へのタイムスリップ。

 漫画やSF映画でお馴染みの時間逆行、今まで起こってきた不思議で理不尽でワケが分からない、の大半はそれで説明が付いた。

 「はあ?」

 「未来の歴史書で、魏の曹孟徳のことを知った。 これが答えだけど……」

 「……秋蘭、理解できたか?」

 「……ある程度は。しかし、にわかには信じがたい話ではあるが……」

 「俺だって全部信じてるわけじゃないよ。ただ、そう考えないと辻褄が合わない事が多すぎるんだ」

 日本も中国も知らない。三国志も知らない。そして、曹操が、曹仁が、夏侯惇が、夏侯淵がここにいる。

 知らないのは当然だ。曹操たちの時代には日本も中国も存在してなく、三国志も執筆されていないのだから。

 「北郷さんが、未来からきた……」

 「え、え? 華侖には全然わかんないっすよー」

 「この時代の王朝って、漢王朝だろ? たしか新に一度滅ぼされかけて、そこから国を復興させた皇帝の名は……光武帝だったか?」

 「ええ、そのあたりの知識もあるのね」

 「三国志関連の歴史は個人的にも覚えたし、こないだのテストで出てたしな……」

 「……てすと?」

 「試験のことだよ。学校の」

 「……学校?」

 「ええっと……みんなを集めて、文字や計算……そう、学問を教わるところ……かな?」

 「学問って……、あなた、学者だったの? そういう風には見えないけど……」

 「そんな偉いものじゃなくって、若い人たちを集めて、生活に必要な学を教える場所」

 「私塾みたいなものかしら?」

 「まあそんなもんかな……。日本は個人ではなく国が運営していて、国民全員に義務として学校で勉強させているんだ」

 「なるほど、最低限の学力を平均的に身に付けさせるわけね。予算を考えなければ悪くない方法だわ」

 「それでだ。今の時代……漢王朝の末期って言うのは、俺の世界じゃ、千八百年ほど昔の話になるんだよ」

 「……ふむ」

 「あれ? 惇姉は今の話、わかったんすか?」

 「……いや、分かっていない顔だな。 そりゃ」

 「ふん、……文句あるか」

 「いや、……例えばだな夏侯惇」

 「おう!」

 「夏侯惇がどこかワケの分からない場所に連れて行かれて、項羽と劉邦に出会ったようなもんだ。後は秦の始皇帝とか殷の紂王とか……」

 「はあ? ……項羽と劉邦と言えば、はるか昔の英傑だぞ!そんな昔の人物に会えるわけがないだろう。何を馬鹿な例えを……」

 「だから、そういう馬鹿な状況にいるの!今の俺が」

 「…………な、なんと?」

 「なるほど……今の話が本当ならば、北郷が私たちの名前や華琳さまが考えていた魏という国を知っていたことも説明が付くだろうな」

 「……うーん。一刀っちが未来から来たっていうのは、一刀っちは華侖のおじいちゃんって事っすか?」

 「いや……、曹仁ちゃんがおばあちゃんって事になるのかな……」

 「だが北郷……貴様はどうやってそのような事を成し遂げたのだ。それこそ、五胡の妖術ではないのか」

 「それは本当に分からない。事故に巻き込まれての時間逆行か……もしくは魔法を掛けられたのか、本当に妖術を掛けられたのか。 俺の方が知りたいよ」

 「まるで南華老仙の言葉のようね」

 「……な、南華老仙?」

 「昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩栩然として胡蝶なり。自ら喩しみて志に適えるかな。周たるを知らざるなり。 俄然として覚むれば、則ち蘧々然として周なり。知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此を之れ物化と謂う」

 「鄧艾ちゃん?」

 鄧艾が詠う胡蝶の夢……淀みなく紡ぐ言葉はまるで歌の様。その歌声は……とても可愛らしかった

 「へえ~……博学ね。ほぼ原文じゃないの」

 「恐れ入ります」

 「ずいぶんと教養があるみたいだけど、どこかの名家の出身かしら」

 「いえ、妈妈に……母に教わりました」

 「…………そう。 まあいいわ」

 「……なあ、秋蘭」

 「なんだ、姉者よ」

 「……わからん。鄧艾は何を言っていたのだ」

 「南華老仙の胡蝶の夢の事であろう」

 「……胡蝶の夢?」

 「荘周が夢を見て蝶になり、蝶として大いに楽しんだあと、目が覚める。ただ、それが果たして荘周が夢で蝶になっていたのか、蝶が夢を見て荘周になっていたのかは誰にも証明できない」

 「……?」

 「華琳さまは、未来から来たという北郷を蝶になった夢の世界の荘周に例えているのだろう」

 「な、ならば華琳さま! 我々はこやつが見ている夢の中の人物だと仰るのですか!」

 「そうは言っていないわ。けれど私たちの世界に北郷が迷い込んできたのも事実。そういう風に考える事も出来る、という話よ」

 「……要するに、どういうことです?」

 「誰にもこの状況を説明できないが少なくともここに北郷がいる、という事だけは間違いなく事実だ」

 「……むうっ?」

 「それで分からないなら諦めろ。華琳さまでもお分かりにならない事を姉者が理解しようとしても、知恵熱がでるだけだ」

 「春蘭、難しいことを言ったけれど…………この北郷一刀は天の国から来た遣いなのだそうよ」

 ………………はあ!

 「なんと……! いや、しかし……こんな威厳の欠片も無い男が天からの遣いなのですか?」

 「妖術遣いや未来から来た、なんて説明するよりはよっぽど分かりやすくて済むのよ」

 「あなたもこれからは自分の事を説明する時は、天の国から来た、そう説明なさい」

 「天の国から来た遣いかー……怪しい宗教団体みたいで、余計に胡散臭く感じるんだけど……」

 「あら、妖術使いと言われて兵たちから串刺しにされるほうがいいの?」

 「…………天の国からの遣いでいいです」

 まあ、胡散臭さも言い方次第ってことか。

 

 「さて、大きな問題が解決したところで―― 」

 と秋蘭が切り出そうとしたところで一人の女官が近づいてきて、何かを耳打ちする。

 「……うむ、そうか。すぐに向かうと伝えろ……華琳さま」

 「そう……、ずいぶん早いのね」

 「あれ、もうお終いか?」

 「急用が入ったのよ。 続きは後日、聞かせてもらうわ」

 「……そっか」

 「あ、それと部屋を準備させるから。好きに使ってもいいわ」

 「え、いいのか!」

 「二人とも行くあてが無いんでしょ。私たちに協力してくれる間は住むところの面倒だけは見てあげるわ」

 「……協力?」

 「あなたが持つ未来の知識、上手に使えば私の覇道の大きな力となるでしょう」

 「そういう考えは凄く曹操っぽいなー……了解。俺に利用価値があるうちはせいぜい上手く使ってくれ」

 「そう、良い心がけね。 鄧艾、あなたもいいわね」

 「はい、ご好意……ありがたく頂戴します」

 「よろしい。 華侖、あなたは北郷と鄧艾に街を案内してあげなさい」

 「うん! じゃあ、一刀っちと鄧ちゃんは華侖といっしょにお出かけっすよー」

 「春蘭は騎馬隊と合流し、街周辺の警戒任務に戻りなさい」

 「は!」

 

 「待たせたわね」

 「いえ、私が早く来ただけですから」

 華琳は部屋の中にいた少女に言葉を掛け、執務用の机に備え付けられた椅子に腰を下ろす。

 ここは華琳の執務室であり、彼女に続いて秋蘭も部屋の中に足を運んだ。

 日当たりの悪い位置にあるのか、全体的に光量が少なめの部屋は室内の三人をぼやかしていた。

 「柳琳、先遣隊の任ご苦労だった。 続けざまに現場の調査までさせてしまったな……手数をかける」

 「いえいえ、このくらいの事……」

 「では、柳琳」

 「はい、こちらに……」

 柳琳と呼ばれれた少女は、華琳に促され懐から紙を取り出し机の上にソレを広げる。

 『太平要術の書、盗難に関連した報告書 其の八』

 柳琳から渡された現場の資料を黙って目を通す。二人は内容をよく吟味した上で口を開く。

 「現場で起こった事は、彼女の証言とほぼ一致していますね」

 「そのようね……ただ、殺りかたが一介の武芸者とは思えないわ」

 「はい、油断しているところに後ろから攻撃。 10数える間に三人ともを絶命させています」

 報告書には、盗難にあった太平要術の書を所持していると思わしき人物の同行が克明に記されている。

 三人が目にしているのは最後の所持者となった盗賊たちの最期、末路だった。

 「柳琳。 あなたの目から見て、鄧艾の力量は?」

 「相手が完全に油断した状態でしたので、なんとも……」

 「……そう、獲物は分かった?」

 「現場から、三つ回収してあります」

 取り扱いには注意してくださいと、一言おいて、柳琳は麻袋から棒のようなモノを取り出す。

 「ほう……、これは?」

 「小刀……かしら? それにしては装飾が無さ過ぎるわ」

 「はい。 一見するとただの鉄の棒にも見えます、ただ……」

 小刀とも鉄の棒ともとれるモノを、麻袋に触れるように軽くあてると……音もなく、綺麗に一直線の穴が開いた。

 「……これは!」

 「凄まじい切れ味です……、おそらく刃に触れただけで肌を切り裂くことが出来るかと」

 「秋蘭、あなたはどう思う?」

 「……暗器、殺手の可能性があるかと」

 「どこの勢力かしら?」

 「さて、心当たりが多すぎて皆目検討も……」

 「あの……鄧艾さんでしたっけ。たしかに物騒なものを持っていますが……それだけでお姉さまへの刺客と考えるのは早計かと」

 「そうか、柳琳は鄧艾と直接対峙をしていなかったのだな」

 「ええっと……、それは?」

 「殺気よ…………初めて対面した時、そして、お店の中で春蘭が刀を抜いた時に」

 「それは……、お姉さまに対してですか」

 まさか、という様な表情で問いかける。

 「ええ、ほんの一瞬だったけど、鄧艾はこの曹孟徳を殺そういう強い意思を見せた」

 「どちらにせよ、鄧艾が誰に『お使い』を頼まれているのか分かるまでは泳がせておきましょう」

 「は!」

 三人の密談。敵対勢力の間者の可能性あり……それが鄧艾の評価だった。

 「あの~……お姉さま。 北郷一刀さんという方は……」

 「ああ、あれは気にしなくてもいいわ」

 ……それが北郷一刀の評価だった。

 

 【人物・用語・解説】

 

 【鄧艾士載・其の3】

 一刀曰く、声がかわいらしい。恋姫声優と被らなければ好きな声優さんで脳内再生してください。田村ゆ●りだろうと、小●唯だろうと、榊原●子だろうと、銀河●丈だろうとあなたのお好みで。

 

 【曹孟徳・華琳】

 恋姫無双シリーズのヒロイン。史実においては説明不要の中国の大英雄であり、華琳は恋姫キャラの中でも再現度がかなり高い。金髪ドリル、ちっぱい、チビっ子、ドS、百合、ツンデレ(9:1)CV:乃嶋●菜とその筋の方にとっては存在自体がご褒美。ドMのトマトが2番目に好きな恋姫キャラ

 

 【曹仁・華侖】

 恋姫英雄譚2のヒロイン。容姿は華琳と似ているが中身は天真爛漫な元気っ娘っすよ。03話では前回の死亡フラグをへし折るための主人公補正として登場。史実の曹仁は超優秀な武将で蜀の関羽や呉の周瑜との死闘で自軍の危機的状況を何度も救う。某猪っ子風に例えるなら政以外のパラメータは全部90越え。魏のNO.1武将を挙げるなら張遼か曹仁かな?再現度は……ほぼ0に近いかも?

 

 【夏侯惇・春蘭】

 恋姫無双シリーズのヒロイン。おばかわいい黒髪ロング系の綺麗なお姉さん。華琳さま大好きな恋姫・夏侯惇ですが、史実の夏侯惇も春蘭に負けず劣らずの孟徳大好き。もちろんエロい意味ではありませんよ。初期の頃からの腐れ縁で同じ戦場で共に死を覚悟すること数知れず、いわいる辛苦をホモにし……失敬、ともにした中だった。そんな2人の絆は固く、曹操は夏侯惇を家臣としてでは無く生涯家族として扱った。トマトが腐女子なら間違いなく腐ったSSを書いていたと思います。

 

 【夏侯淵・秋蘭】

 恋姫無双シリーズのヒロイン。姉とは逆のクールビューティ系綺麗なお姉さん。華琳さま大好き、そして、姉者大好きのシスコン属性あり。弓の名手として広く知られているが正史では弓が得意という記録が無いとか……しかも、性格は猪突猛進の頭からっぽ系猪武者で曹操から「おまえさー、もーちょっと考えて戦えよなー、オメーんところだけ戦死者やべえんだわー、ほら策とか色々あんだろー」と直にお説教をくらうほど(史実です)再現度は……いわいる、恋パターンですね。

 

 【FU●K YOU】

 英語圏のほうのかなり汚いスラング。この言葉を人に向かって言うとボコボコに殴られても文句が言えない超危険ワード。とは言え、気を付けていれば防げるぶん真名よりはマシ。後ろに立つと手刀が飛んでくる某13も気を付けていれば防げるためこれも真名よりはマシ。恋姫世界で何人が真名の犠牲になったのかが気になる。

 

 【殺手】

 さって、と読む。殺し屋の中国での古い表現。同義語としては刺客あたりかな。

 

 【柳琳】

 るーりん、と読む。本編で名と字が出たら詳しく解説する予定。

 


 
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