No.867048

九番目の熾天使・外伝 = 蒼の章 = 

Blazさん

短編とかの前日談

2016-09-03 16:17:40 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:586   閲覧ユーザー数:547

 

 

 

 

ある日の楽園。その一室でクライシスは、とある人物と通信を行っていた。

相手はATX計画の主任、ラドム博士だ。

ゲテモノ機体に定評のある彼女に、何故団長が連絡を入れたのか。それはある事情があったからだと言う…

 

 

 

『機体の一斉オーバーホールですか』

 

「ええ。最近、これといって使用する機会もなかったので随分とホコリを被っていたのと、最近管理局に不穏な動きが見られたので、そのためにいざという時に」

 

『貴方たちなら生身でも戦えると聞きましたが?』

 

「確かにそうだが、それで済む話ではなさそうなのでな」

 

珍しく可能性、あるかもしれないという言葉を使うクライシスに不思議そうな反応で返すラドム。しかし話の意図が見えないということで、彼女は正面から彼に訊ねた。

 

『で、私に何をしろと?』

 

「…ラドム博士。貴方に頼みたいのはこのオーバーホール中、旅団のパイロットたちが使用する機体。それを一機、組み上げて欲しいのです」

 

『機体を? 私の専門はPTやAMですわよ?』

 

新西暦の世界に居るラドムは基本PTやAMといった機体を専門にしている。技術等もそうだが、本文はPTの設計と開発。そして改修だ。

別段MSやACに興味や知識がないわけではないが、それでもクライシスが彼女に頼む理由にはならない。

 

「ええ。それで構いません。一人、適正を試してみたい者が居ますので」

 

『………良いでしょう。丁度、ハロウィン・プランで使用されるハズだったゲシュペンストを一機、譲り受けてます。仕様とデータなどを送って下されば組み上げますわよ』

 

「感謝します。今そちらにデータを送りますので、確認していただけると嬉しいのですが」

 

そう言われて転送されるデータを受け取ったラドム。

しかし。この後、彼女がまさかそのために次元の狭間に飛ぶことになるとは思いもしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時空管理局。その彼らが思っているよりも旅団という組織は巨大かつ大勢力だ。

次元世界各地にその名は知られ、その戦力は銀河の帝国のような国があってやっと拮抗するかしないかだ。

その中で特に、というより彼らが基本寄り集まったその理由。そもそも彼ら中枢メンバーにはある共通点があった。

 

機動兵器。所謂ロボットを操縦するパイロットたち。

団長クライシスはもちろんのこと、ナンバーズの大半はコレに該当し様々な世界の機動兵器を操れる。

 

モビルスーツ。通称MSと呼ばれる機体は宇宙世紀や西暦、コズミック・イラといった世界で作られる者でその世界に共通するのは「ガンダム」の名を冠する機体が絶対に一機はあること。

 

アーマードコア。通称ACと呼ばれる機体は規格共通化されたパーツによってカスタマイズが可能で、その種類は幅広い。

 

バルキリー。西暦の世界で開発された、戦闘機から人型へと変形する可変戦闘機などが主体。機動力は他の世界の機動兵器よりも抜きんでる。

 

パーソナルトルーパー。新西暦の世界で作られた人型兵器。その世界ではその他にスーパーロボットタイプの特機や戦闘機から派生したアーマードモジュールも存在する。

 

ナイトメアフレーム。皇歴と呼ばれる世界で作られた機体で、全長は四メートルから五メートルで、ファクトスフィアやランドスピナーといった独自の機能を持つ。

 

 

 

特に旅団ではACとMSが主流で「ACネクスト」と呼ばれる機体のパイロット「リンクス」が大半である。

有害万能物質であるコジマ粒子を使用し、バリアフィールドである「プライマルアーマー」と、そのフィールドを応用した「アサルトアーマー」。更に発達した人型からなる手持ち火器の数々。

旅団が結成され、このネクスト部隊が編制された当時。管理局は小規模のテロリストと侮ったせいで幾度となく敗北をしてしまった。

ネクスト一機で国家転覆が可能だった世界。それが約数機という小隊規模でも十分脅威だ。

 

が。だからといってそれが一方的に出来たわけでもない。

原動力であるコジマ粒子は有害物質でそれは森林などの無機物にも被害が及ぶ。

なので乱用は禁止され、MSやバルキリーといった直接的に無害の原動力を使用する機体が多様され、いしつかネクストたちは来る日を待つために奥底に封印されてしまった。

今回。その機体を一度表に出し、オーバーホールを行っているのだが、ものは序でにと他のMSなどの機動兵器全てがバラされてしまい、現在の彼らには使える機動兵器というのが不足していた。

 

 

 

 

 

 

そこで。

 

 

 

 

 

 

「リオン系部品パーツ搬入されました」

 

「ジェガンタイプのサーボモーターは向こうのハンガーに直接回してくれ。今、改修作業が進められている」

 

「次元航行型の輸送艦が到着。消耗部品の補填は順次確認します」

 

 

とある海洋の広がる次元世界。そこには旅団が保有するメガフロートがあり、数隻だが大戦艦クラスを格納できるだけのドッグなどが存在する。主に戦艦の補修や応急修理などを行えるここは、解体戦争時などでネクストの簡易整備や修理などを行える施設として使用されていたが、現在は機体の殆どがお蔵入り状態ということでクロガネ隊の拠点の一つとしても使用されていた。

 

 

「―――俺がクロガネ隊入って間もないころだったかな。封印戦争前にここに寄ってよ。今じゃ、ウチが管理任されてんだ」

 

「こんな巨大なプラントをですか?」

 

「ああ。今じゃ、ネクストとかも使用する機会がないし、ここも連中が手を出さないところだからな。で、単艦でいろんなところを行き来するウチの隊が目をつけられたってワケだ」

 

「なんで? 単艦だからというのが…」

 

「複数だと、どうしても戦艦の隊列維持でスピードに問題が出る。けどクロガネみたいに一隻だけなら、他の艦と行動を共にすることもないからな。

いざって時に直ぐに行けるし、こういったドッグも一つだけで済む。足の速さってワケでじゃねぇが、ウチの隊はそういった素早さが売りだからな」

 

 

入港する一隻の輸送艦を眺めながら、Blazとアーチャーは言葉を交わす。

クロガネ隊の預かりはどうしてなのかなど、素朴な疑問に彼が答えていたが、彼も正直聞かされたことをそのまま返していたりする部分もあるので、性格のこともあって難しそうに頭を抱えていた。

 

「…受け売りですよね?」

 

「否定はしない」

 

 

 

 

 

海洋一色の世界に建てられたメガフロートは、元はこの世界にある海中資源を取るために建造されたプラントだったらしいが、荒波や嵐などといったものによってプラントは壊滅的ダメージを負って修復不可能となったので放棄され、しばらくは無人の人工島だった。

 

が、旅団が結成され、小さくても拠点をと探していた時にこのプラント跡地を見つけ、Unknownの部隊の資金、資材を用いプラントを修復。その後さらにプラントからバージョンアップするということでこのメガフロートに変更されたのだ。

その後、勢力が大規模になって物資と施設に余裕が出て来たということで、その一部をサポート組織や協力組織に委託。クロガネ隊も例外ではなく、このメガフロートの管理を任されることとなった。

 

 

「元々はACのための施設だったからな。設備も機動兵器用のがそのまま残ってたし、あとはドッグをスペースノア級に対応したのに改造した程度か。

 資源プラントだったから一応自家発電も出来るし、ここなら機体の修理とかも出来るってワケだ」

 

「へぇ…」

 

「今じゃ、現役で機体を動かしてるのはウチとかぐらいだからな。ま。裏を返せばそんだけ連中の力が弱まってるってワケだ」

 

「嬉しいんだか悲しいんだかですね」

 

「嬉しいハズだろ。俺らにとっちゃ」

 

一応は敵対している組織の力が弱まっているということで、前向きに考えれば確かに喜ばしいことだ。だが、それだけに使用できる戦力を持て余すという感覚は、慣れていない者たちにとってはどうにもむず痒いものだ、と彼は言う。

 

「舐めプされてたのが、する側になったからなぁ…人生、今までそんな経験は無かったぜ」

 

「今でもされてる側では?」

 

「喧しい」

 

否定はしないと言いつつも認めたくないものだと言って目を逸らすBlaz。すると、彼らの後ろから整備班の隊員が近づき、声をかける。

 

「Blazー直ぐに格納庫に来てくれ。例の物が届いたぞ」

 

「ん。って事は…」

 

「ああ。博士も一緒だ」

 

「博士って…エリック博士?」

 

「じゃなくて、ラドム博士」

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロートには元々機動兵器のための設備が多く残されていた。

といっても大規模な物というには言い難く、施設の中は最低限のものが揃えられている程度。開発や建造をする工廠はなく、代わりに機体の改修や修理が出来るぐらいで、生産能力についてはゼロ。またドッグも数隻を入れるだけでやっとで、残りは全て自家発電と最低限の生活設備があるだけだ。

 

「Gタイプ二機、搬入開始します」

 

「量産型Mk-Ⅱのほうはハンガーに回せ。あっちは博士の預かりだ」

 

「シュテルベンはクロガネの預かりだから…どうします?」

 

「パーツは組み上がってるらしいから、艦内に直接運べってレーツェルさんから言われてる。換装装備は向こうで組みつけするらしい」

 

メガフロートの航空機専用のポートでは、やってきた輸送型の次元航行艦から荷物の物資が搬入されている最中で、そこにはクロガネのクルーたちだけでなくメガフロートに常駐する旅団の隊員たちもいて作業を手伝っていた。

クロガネ隊の予備機受け取りということで何時になく忙しい雰囲気になり、今し方やってきた航行艦から、二機の機動兵器が搬入されている。

どちらも同じ世界で作られた機体だが、開発元が違うことと使用目的が違うことから、それぞれが違った場所に移され、片やは施設内のハンガーに移送。もう一つは直ぐに使用するのかクロガネに運び込まれた。

 

 

「予備機は予定通りハンガーに移動させました」

 

「結構。改修に使用するパーツはこちらに記されてます。それと、改修時に取り外したパーツはそのままにしていただいて結構。万が一…いえ、こちらでの研究のために実験機として使用しますので取り外し後はパッケージして輸送機に運んでください」

 

「了解しました」

 

整備員に指示を出し、持っていた端末を手渡すラドムは目の前で立ち上げの作業に入っている機体の姿を下から眺めていた。

というのも彼女の仕事はもう直ぐ始まるからと、既に改修プランは出来上がっているので作業に取り掛かるだけ。今はそれまでの休憩時間ということで、騒がしく動く整備員たちの中で改修機体を見ていたのだ。

 

 

「………。」

 

 

 

「おやおや。珍しく耽ってますねぇ」

 

「……別にプランに間違いがあるとは思ってもませんし、後悔すらもしてませんわよ」

 

「前に会った時もそうだったけど、そういうことをするタイプじゃないですもんねぇ、貴方」

 

 

 

「………取り合えずこんな形でまた会えるとは思ってもませんでしたわ。ロイド博士」

 

本当にムカつく相手だな。とあからさまに怒りを見せた顔で返すラドム。そこには別世界でKMFの開発を行っているロイドが立っており、彼の後ろには別の世界から搬入されてきた物資と機体が移送されていた。

どうやらアレも今回改修されるようだ、と特別関係のないことなのでそれどけで済ませたラドムは平静を取り戻す。

 

「…彼女は居ないのですね。珍しい」

 

「今は多忙でね。今頃デスクでオーバーヒートしてるんじゃないかなぁ」

 

「正直その言葉を聞いて、貴方よりもカザハラ博士のほうが数倍マシだと今気づきました」

 

「え~僕、流石にナンパとかには興味ないなぁ」

 

「人格としてです。セクハラ親父でもまだ話は通じるという意味です」

 

「えー」

 

「何ですか、その顔は」

 

 

 

 

 

 

 

「それ以前に科学者にはロクな奴が居ねぇっていう点では共通してるがな」

 

更に後ろから現れて言い合いをしていた科学者二人に対し痛烈な言葉を投げるBlaz。だが対して二人とも気にしていないようで、まるでその言葉を聞いてなかったかのように気付いて顔を振り向かせた。

 

「あら、居ましたの」

 

「お久しぶりぃ~♪」

 

「どうも。で、ラドム博士。例のパーツは?」

 

「用意してますわよ。もうクロガネに運び込まれてるハズですから」

 

本来は別件だが、まずはそっちのほうをとラドムに訊ねたBlazに、ふと目線を下げると隣にいたアーチャーに気付き、ロイドが裏のない言い方で問いを投げた。

 

「…その娘、君の妹?」

 

「誰がこんなの妹か」

 

「お兄ちゃん、お金頂戴」

 

「テメェは黙ってろ」

 

完全にからかわれていることに怒るBlazは上から拳骨でアーチャーの頭をすりつぶすように動かし、地味な痛みを加えていく。地味だが妙に痛いその痛さに「痛い、痛い」と言いながらも、どう反応すればいいか分からないという顔をする。痛いのは痛いが、それでも地味な痛みということで完全に言い切れない。

無理矢理されているということで嫌そうな顔をしているが、彼が手を抜いているということは確かなので、自然に終わるのを待って面々は話を続ける。

 

 

 

「つか。なんでアンタまで来てるんだ? 俺、KMFなんて乗れねぇぞ」

 

「僕は別件。ま、お届け物をしにも来たんだけどね」

 

「別件…?」

 

「そ。KMFのコクピットレイアウト。と、予備機を一機。後者が僕の仕事なんだけど、そこの博士に頼まれてね」

 

「……どういうこった。ラドム博士」

 

何故コクピット周りだけを別で用意させたのかと疑問に持つBlazは、直ぐに流すような言い方でラドムへと問う。一応、運ばれた中身を知っている彼にとってそれと今運ばれて来たコクピット周りとにどういう関係、脈絡があるのか分からない。

 

 

「どうもこうもありませんわ。いざ話を聞けば、適正はネクストとKMFだけ。ですからレイアウトを直接変えるしか方法が無かったのです」

 

「適正が、ね。それって…」

 

「貴方のところにいる、あのへっぽこ顔の青年です」

 

「へっぽこ……あーディアね」

 

「ええ。見るだけでホント、現代の青年そのものですから。的外れでもないでしょう?」

 

 

 

 

 

 

これには何故か、その場にいた三人全員が「まぁそうだな」と声を合わせた。

当人にはもちろん失礼なことだが、それでも仮に居たとしても彼らの反応と返しは変わらなかっただろう。

 

「…で。ロイド博士の方の予備機って…まさか?」

 

「うん? あーこれはねー別の人用だよ」

 

「えっ、他に乗るヤツ居るのかよ?」

 

「居るらしいよ。で、君のところのだんちょーさんに頼まれて持ってきたってワケ」

 

そうなると、自ずと彼といっしょに搬入されてきた機体の中身が分かり始めてくる。ロイドが開発する機体、それは現在の時点では一つのシリーズのみ。それのみを開発しており、そこから次期量産機も開発されている。優秀な機体であることは確かだが、試作機は彼の嗜好からハイスペックを追求したことによって量産機や量産試作機を開発するとき多くの機能を撤廃している。

 

「最近、こっちじゃめっきり戦争も減ったからねぇ。新型や新しいシステムを試す場所がないから困ってたんだよね」

 

「平和なのはいいこった。で、中身の機体はタダの予備機じゃないんだろ?」

 

「そりゃあ、もう♪ 新型の動力機関と武装。あ、あとあそこも―――」

 

「話を聞いていたら日が暮れますわよ」

 

「………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ゲシュテルベンの換装フレーム?」

 

「そうだ。ゲシュペンストシリーズにとどまらず、他の量産機へのフレーム、パック換装などによる汎用性の実証と有用性を示すこと。これを前提として、まずは第一弾。そもそもの単機への複数のフレーム換装の実用性を示すために、現在使用可能な装備換装が可能な機体として君のところで運用しているゲシュペンストシリーズで試すこととなった」

 

と、クライシスからの説明を受けて大筋には納得するBlazだが、どうにもそれで全部納得しろというには理由不十分に思えた彼は、けど、と反論の意見を切り出した。

 

「それなら俺じゃなくてもよくねぇか? それに今、俺の機体はオーバーホール中で…」

 

「それは承知している。現在、予備の機体を手配しているから、君はクロガネで例の海上メガフロート基地に向かってくれ」

 

話は通っていた。というより既に用意が出来ていたことに、相変わらず手際がいいな、と感心し、もはや否定も反論もすることができないと見たBlazは小さく息をつくと、了承し、それを前提にして話を進めた。

 

「……分かったよ。で、フレームの特徴とかは?」

 

「それは自由だ。現在は実証段階で特筆して「コレにしろ」とは決めてないからな。それに、君もそこまで縛られるのは嫌いだろ?」

 

「………どうかね」

 

 

 

 

 

これが、クライシスとBlazの二日前の会話である。

こうして、戦力調整という理由からナンバーズなどエースや指揮官機に限定した装備換装仕様の機体とそのパック開発のため機動兵器が再び日の目を浴びることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「BフレームとOフレームの二つはロールアウト。ですがAフレームともう一つは時間を要しますわ」

 

「四番目のフレームはまだ仕様が決まってないからなぁ…接近に割り振り過ぎたか」

 

「別に仕様についてとやかく言われてないのでしょう? であれば試したいものを試すまで。重砲撃フレームは決まっているのですからあとはご自由に」

 

クロガネの格納庫では、予備機として搬入されていた機体の換装フレームの組みつけ作業が始まっており、予備機の周りにはいくつかの換装用のフレームパーツが吊るされていたり、組みつけられていたりしている。装備換装といってもフレームを着脱するだけの話で、機体重量はかさばる反面、戦況に合わせた装備を使用する事が出来る。

その作業の様子を眺めながら、その予備機を組み上げたラドムと、それに乗る予定のBlazが残る換装フレームの仕様についてどうするかを話し合っていた。

一応四種のフレームを考えていたらしいが、既に二つが接近戦仕様ということと、更に三つめが砲撃戦仕様と、残された一つの仕様をどうするかについて決めあぐねていたのだ。

 

 

「セオリーなら電子戦、射撃戦が常道だが…」

 

「Blazさん、電子戦なんて出来るんですか?」

 

「…世辞にも出来たもんじゃねぇな」

 

今も昔も、そういった後方支援系は得意ではなく専ら前線での戦闘がメイン。射撃戦であればそこそこ命中精度もいいが、基本は接近戦での戦いがほとんどだ。

いわゆる典型的前線兵。しかし、その分前線での活躍は期待できたということで、かつて属していた軍からも一定の期待は置かれていた。

 

「ってことは…」

 

「必然的に接近戦仕様確定ですね」

 

アーチャーの言葉にぐうの音もでないBlaz。しかしそれは事実であり、電子戦や狙撃などの支援系に全くの自信がない彼にとって、それは避けられないことだった。

 

「つってもなぁ…もう接近戦のフレームは出来上がってるし…あとはどうするか…」

 

「必然的に射撃戦のフレームが必要になるようですけど…どうします?」

 

どうします、というセリフに困った顔をする。

いざそう聞かれると、答えるに答えられない。射撃戦の装備が必要なのは確かだが、だからといって今すぐに決めろというような雰囲気では頭をしっかりと回らず、焦りによって考えも纏まらない。

当人たちも急かす気はないのだろうが、その言い方ではかえって急がなくてはならないと思ってしまい、頭の中が混乱し始める。

 

 

 

 

「どうしますつってもなぁ…」

 

直ぐに決まる話でもないのは分かっていた。それでも何時かは決めなくてはならないと、そのいつかで面倒な事にならないように先に考えなくてはならないと、無意識に決めて考えていたBlazは、唸り声を出しながら頭を抱え、なにかいいアイディア、装備はないかと辺りを見回す。

 

 

 

 

「………。」

 

―――すると。

 

 

 

 

「あれは……」

 

「………?」

 

ふと、後ろのハンガーに入れられていた物を見て振り向くと、そこにあったものに、思わず独り言のように言い出した。

 

 

「……コレ。いいな」

 

「………え?」

 

 

 

斯くして、四つ目の装備が決まったとか決まってないトカ…

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択