No.86181

真・恋姫†無双 ~魏~ 終焉後物語4

harutoさん

どうもharutoです。
話が進んでいないなんて気にしません
(追記:誤字修正しました)

熱読してもらえれば光栄です^^

2009-07-24 19:46:52 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:14266   閲覧ユーザー数:9757

心の中に浮かべた名前を一刀はそのまま口にした。

 

一刀「俺の名前は、・・・魏光です」

 

一刀はこの世界に送られてきた自分の役割を考えていた。

 

はじめは物語の主人公である華琳を天下へと導くために、

 

そして今回は、この物語の要である華琳のいる魏を助けるために。

 

この外史とやらは華琳たちののぞまない未来に向かっている。

 

その未来を変えるために俺が呼ばれた。

 

それを忘れぬように、自分の心に刻み込むように、そして『魏を照らす一筋の光』になれるように・・。

 

おかみ「魏光ってのかい。ならこれからよろしくね」

 

蒼蓮「魏光さんですね、よろしくお願いします」

 

一刀「こちらこそ、よろしく」

 

早足で去っていった二人を一刀は見送った。

 

一刀「魏光か・・・大それた名前をつけちゃったかな。なんだか俺に合ってない気がするし」

 

一刀「・・・・・・本当に、俺が照らしてあげれるのかな?皆を・・・」

 

心の中の不安をもらしつつも、街の探索を再開した。

 

 

一方、洛陽では武道会が行われていた。

 

今日の全試合が終わり、四人の武将が勝ち残っていた。

 

一人目は、魏の夏侯惇。

 

魏の大剣といわれた実力は衰えることなく、日々の精進によりなお、その力を増していた。戦い方はいたって単純、突撃あるのみ。しかし、その攻撃は重く、簡単に止められるものではない。

 

二人目は、蜀の趙雲。

 

戦場では華麗に踊るように敵を倒していく。力で押していく型ではなく、技と速さで敵を翻弄する戦い方をする。戦場ではしないが、格下相手だと少し相手をおちょくることもしばしば・・・。

 

三人目は、呉の孫策。

 

呉の王でもあり、その中でも一、二を争う実力の持ち主。毎年行われる武道会のことがあり、政よりも鍛錬に力を入れてきたことにより一層、実力を伸ばしてきた(周瑜はそのことに頭を悩ましているとのこと)。戦いになると自身が興奮状態になり、おちゃらけた普段とはかけ離れたものになる。

 

最後は、蜀の呂布。

 

普段は動物のような愛くるしさがあるが、戦場では激変。その武を知らないものはいないほどの実力。敵に鬼神と恐れられ、三国の武将全員に一目置かれている。戦が終わってもその武は衰えることはなく、いまだにその力は顕在している。(蜀の人間の話だが、手合わせしているとき以外に鍛錬をしている姿を見たことがなく、なぜ、強くなっているのかが不明とのこと)

 

この四人で明日の準決勝を行うことになっている。

 

初戦は、夏侯惇 対 趙雲、そして二戦目が、孫策 対 呂布となっている。

 

その二試合の勝者が午後から行われる決勝に進み、そこで優勝者が決定する。

 

 

 

準決勝には春蘭だけが残ったが、魏の武将たちも各自奮闘はした。

 

今日勝ち残ったものに惜しくも負けた者、同じ国同士で戦った者、

 

去年に比べて力をつけてはいたが、呂布に蹴散らされてしまった者、と様々であった。

 

武道会の終わった後、城の中では三国全員で夕食会が開かれていた。

 

皆思い思いに動き、料理を取っている様子は一刀がかつて提案した立食会だった。

 

沙和「ぶぅ~、負けちゃったの~。今回はいけると思ってたのに」

 

沙和は自分が負けてしまったことに不満をあげていた

 

真桜「負けたもんはしゃあないやろ。それに、明命相手に頑張った方とちがうん?なぁ凪」

 

凪「ん?そうだな。明命様とあれだけできたのだ。以前に比べれば確実に力はついているだろう」

 

沙和「でもでも、負けちゃたらもともこもないの~」

 

真桜「いや、そりゃそうやけど・・・」

 

凪「私たちも、それに霞様だって負けておられるのだ。過ぎてしまったことを言うべきではないぞ」

 

霞「そうやで、沙和!武将は武将らしく負けを認めなあかんねん」

 

三人娘が話しているところに霞がやってきた。

 

沙和「お姉様!?・・・なら仕方ないの~」

 

凪「それにしても霞様、雪蓮様との戦いは残念でしたね」

 

霞「せやなぁ。負ける気はなかったんやけど、雪蓮のやつ、だいぶ力つけとったわ」

 

凪「そのようでしたね。以前よりも動きが洗練されていました。しかし、何度見ても雪蓮様の変貌には驚くばかりです」

 

真桜「そうやで、姐さん。あんなんウチが戦ってたら腰抜かしてまうわ」

 

沙和「そうなの~。沙和なんか観客席で見てたのに怖かったの~」

 

霞「まぁ、確かにえらい殺気は出とったけど、別に殺そうとしてるわけやないんやから、そこらへんはどうとでもなるやろ」

 

真桜「いや、姐さんそういう問題やあらへんで」

 

霞「まぁ、それはええとしてや。問題は秋蘭や」

 

霞の発言に三人は納得した。

 

今日の戦いで秋蘭は呉の思春と対戦していた。

 

しかし、秋蘭は善戦もできずあっけなく思春に負けてしまっていた。

 

真桜「せやなぁ、なんか秋蘭様おかしかったしなぁ」

 

沙和「沙和もわかるの~。なんだかいつもの秋蘭様っぽくなかったの~」

 

凪「確かに相手の思春様は強いお方です。しかし、秋蘭様ならば勝てないお方ではありません。

思春様が強かったというより、むしろ秋蘭様が精彩を欠いていたというべきでしょう」

 

霞「なんや秋蘭、最近おかしかったしな。それが影響しとるんとちゃうかな」

 

真桜「華琳様について行ったあの日からやしなぁ」

 

沙和「沙和もそう思うの~」

 

凪「いったい何があったのだろうか」

 

四人は心配しながら秋蘭のほうを見つめていた。

 

秋蘭「・・・・・・」

 

流琉「秋蘭様?どうかなされましたか」

 

ぼーっとしている秋蘭に流流が声をかけた。

 

秋蘭「ん?あぁ、ちょっと考え事をしていてな」

 

流琉「そうですか」

 

秋蘭が何か悩んでいるのはわかっていたが、流流はそれ以上聞くことはしなかった。

 

秋蘭「・・・・・・」

 

流琉「秋蘭様、早く料理の方を食べないと無くなってしまいますよ」

 

秋蘭「いや、それはさすがに・・・・・・」

 

秋蘭は目の前の光景を見てその考えを訂正した。

 

鈴々「はるまき!そこの料理を取って欲しいのだ」

 

季衣「はるまきっていうなぁ!そんなことばっかり言うと取ってやらないぞ」

 

渋々、季衣は鈴々に料理を渡した。

 

鈴々「にゃははは、ありがとうなのだ」

 

春蘭「季衣よ、そこにある料理はおいしかったか?」

 

季衣「このお肉ですか?とってもおいしかったですよ」

 

春蘭「ならもらおう!」

 

小蓮「あぁあ、そんなに急いで食べなくてもいいじゃない・・・」

 

小蓮が三人の食べっぷりを見てあきれている姿が視界に飛び込んできた。

 

机に並べられていた料理が次々と空いていく様子は見ごたえがあるといえばあるのだが・・・

 

秋蘭「姉者・・・またそんなに食べて・・・」

 

春蘭「んっ?流琉に秋蘭!そんなところで食べてないでこちらに来たらどうだ」

 

季衣「そうですよ秋蘭様。一緒に食べましょうよ」

 

鈴々「そうなのだ。両目お姉ちゃんも一緒に楽しむのだ」

 

流琉「今行きます!」

 

流琉は三人の声に答えた。

 

流琉「秋蘭様も!」

 

秋蘭「いや、私は少し城壁の方に行ってくるよ」

 

秋蘭はそういうと一人城壁の方に歩いていった。

 

流琉「・・・・・・」

 

小蓮「なんだか元気ないね秋蘭」

 

不意に声をかけられた。

 

流琉「小蓮様!?」

 

小蓮「だからシャオでいいってば」

 

流琉「あっ!ごめんなさい」

 

小蓮「別にいいんだけど。それよりも・・・」

 

小蓮は秋蘭のほうに視線を向けていた。

 

小蓮「なんだか、武道会も調子悪かったよね」

 

流琉「はい・・・最近はなんだかあの調子で」

 

小蓮「でも、秋蘭なら大丈夫でしょ。ほら流流、早く食べないと料理なくなっちゃうよ」

 

手を取られ、そのまま季衣たちのところに引っ張られていった。

 

秋蘭は城壁の上で一人、考え込んでいた。

 

秋蘭「ふむ、あんなにも簡単に負けてしまうとは」

 

今日の試合の無様さを思い出していた。

 

秋蘭「(まさか、こんなにも動揺してしまうとはな)」

 

この前の出来事がこれほどまでに自分に影響を与えてしまうとは秋蘭は思いもしていなかった。

 

秋蘭「あそこには人がいた痕跡はあったのだが、北郷はそこにはいなかった。それに華琳様はあのことを他言無用とおっしゃられたからな・・・」

 

秋蘭「(それに・・・誰にも話せないというのは想像以上に厳しいものだ)」

 

秋蘭「(他の者に話せばそれだけで問題になってしまうだろう・・・特に姉者や凪には知られるわけには行かない、話せばすぐにでも探しに行くに違いないからな。)」

 

秋蘭「・・・・」

 

また黙り込んでしまった秋蘭の頭にはある出来事が思い出されていた。

 

【秋蘭「そうか。残念ながら、華琳様と姉者の次だがな」】

 

【一刀「その二人を除けば一番って事だろ?十分すぎるよ」】

 

【秋蘭「・・・・・・」】

 

【一刀「じゃ、ちょっと追いかけてくるわ」】

 

【秋蘭「・・・・・・あ、ああ」】

 

【一刀「待てよ、春蘭―っ!」】

 

【秋蘭「・・・・・・」】

 

【一刀「待てーっ!」】

 

【春蘭「待てと言われて待つ馬鹿がどこにいるかーっ!」】

 

【秋蘭「・・・・・・」】

 

【秋蘭「・・・やれやれ、あれでもう少し女心を分かってくれれば、なお良いのだが・・・な」】

 

・・・・・・

 

戦が終わる少し前に春蘭と一刀と三人で買い物に出かけた日のことだった。

 

秋蘭は一人、笑いがこみ上げてきた。

 

秋蘭「ははっ、北郷がこの世界に来ているかどうかもわからないというのに・・・私らしくもない」

 

そうこう悩んでいるところに下の方から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

春蘭「秋蘭~~!そんなところにいないでお前もこっちにこ~い」

 

鈴々「両目お姉ちゃ~ん!片目お姉ちゃんをどうにかして欲しいのだ!」

 

声のするほうを見ると春蘭と鈴々がいまだに食べていた。

 

秋蘭「まったく、困ったものだな」

 

秋蘭はため息をついてはいたが先ほどまでの暗い表情はなかった。

 

二人の顔を見ていたら悩んでいる自分が情けなく思えてきたのだ。

 

秋蘭「悩みなど無さそうな二人だな・・・」

 

春蘭「なんか言ったかぁ~?」

 

秋蘭「いやなんでもない。今行く!」

 

少し心が軽くなった秋蘭は賑やかな会場へと戻っていった。

 

 

 

翌日、武道会二日目

 

会場は超満員だった。

 

武将の強さを身近で体感できる唯一の場所でもあるため、街の民たちのほとんどが観戦に来ていた。

 

試合場の中にはすでに、春蘭と星が準備を終えていた。

 

星「魏の大剣と剣を交える日が来るとはな」

 

春蘭「ふっ、私は華琳様のために戦うだけだがな」

 

二人の会話が終わると同時に銅鑼の音が響いた。

 

ゴォォ~~~~ン

 

開始の合図と同時に二人はいっせいに動き出した。

 

自分の武を信じて“最強”の称号を得るために・・・・・・

 

 

<月日は経ち、三ヶ月後>

 

南陽の店内には香ばしいにおいと材料を炒める音が響いていた。

 

一刀「蒼蓮ちゃん、2番の料理できたよ」

 

蒼蓮「はい!今持っていきます」

 

作り終えた料理を蒼蓮がお客のもとに運んでいった。

 

蒼蓮「お待たせしました、」

 

お客A「おっ、蒼蓮ちゃんありがとう。今日もかわいいね」

 

蒼蓮「ふふ、ありがとうございます」

 

お客B「お前、蒼蓮ちゃんをくどいたりなんかしたらおかみさんに何されるか・・・」

 

お客A「今はさすがに・・・・・・いない・・だろ・・・」

 

おかみさんの存在がないことを確認し安堵の息が漏れた。

 

一刀「蒼蓮ちゃん!三番の料理ができたよ」

 

蒼蓮「あっ、はい。今行きます!それでは」

 

今は昼食の時間帯、

 

店内にはお客であふれていた。

 

あのあと、一刀は南陽で店を開いていた。

 

こちらの世界に持ってきたかばんの中身の大半は料理器具やレシピだった。

 

あの三年間、長期休みや祝日を利用して料理屋でアルバイトを続けていた。

 

その成果もあり、それなりの料理の知識と技術を身につけていた。

 

もともと彼女たちに振る舞うために準備していたものだったので、商売道具として使うつもりは当初はまったく無かったのだが、

 

現状が現状なので南陽で生きていくために商売に使うことにしたのだ。

 

???「魏光さん!できあがりました」

 

一刀「じゃあ李淵、仕上げて、蒼蓮ちゃんに渡してくれ」

 

李淵「わかりました」

 

今、この店では一刀以外に二人の人が働いている。

 

一人は蒼蓮。おかみさんにお店を出すことを話した翌日、おかみさんが人手が足らないだろうから娘を手伝いに回すよと言ってくれたのだ。

 

蒼蓮が納得しているのかどうかが気になっていた一刀だったが、おかみさんから蒼蓮が言いだした事だと聞かされていた。

 

何にしろ、手伝ってもらえるのは嬉しいことだった。

 

そしてもう一人は、李淵という少し年が離れている男の子だ。

 

店を初めてから1ヶ月たった頃に彼はお店にお客として訪れた。

 

そこで食べた料理がおいしかったのか、

 

その日のうちに弟子にしてくれと一刀に頼み込んできたのだ。

 

一刀自体は弟子などをとる気はなかったのだが手伝いをしてもらえるのは助かるので、

 

弟子としてではなく一緒に働く仲間として手伝ってもらうことにしたのだ。

 

蒼蓮「いらっしゃいませ」

 

数人のお客が出ていったあとにまた次のお客が入ってきていた。

 

毎日のように忙しい昼が今日も過ぎていった。

 

 

・・・・・・

 

蒼蓮「ありがとうございましたー」

 

最後のお客を見送り、今日の仕事が終わりとなった。

 

李淵「ふぅ、今日も終わりましたねー」

 

一刀「二人ともお疲れさま」

 

二人にねぎらいの言葉をかけた。

 

この店は二人のことを考えて夜まで営業はせず、朝から昼食のお客がいなくなるまでという時間だけ店を開けている。

 

李淵も蒼蓮も一刀からすればまだ子供のうちに入るので、夜まで働かせたくないという考えだった。

 

李淵「でも魏光さん、やっぱり夜までやりましょうよ。そのほうが今よりも儲かりますって」

 

蒼蓮「儲けのことも一理ありますし、夜までやっても普通にいいんじゃないかって私も思います」

 

二人は店を閉める時間を変更するべきだと、一刀に言ってきた。

 

一刀「そうだな、でも夜まで働くともっと忙しくなるかもしれないからね。それに、俺は二人と一緒にゆっくりと過ごしていられるこの時間が大事なんだけどな」

 

一刀は満面の笑みで返した。本当の理由を言うと怒られそうな気がしたので・・・。

 

李淵「ん~。まぁ、魏光さんがそういってくれるならそれでいっか」

 

蒼蓮「////そ、そうですね。ゆっくりと過ごす時間も大事ですよね」

 

二人が納得してくれたことに一刀をほっとしていた。

 

一刀「じゃあ仕事も終わったし、どこかに食べに行こうか。俺がおごってあげるよ」

 

李淵「ほんとですか?やったぁ。早く行きましょうよ」

 

蒼蓮「あたしは別に魏光さんの料理でもいいのになぁ・・・」

 

蒼蓮はぼそりと本音を漏らしていた。

 

一刀「んっ?どうしたの蒼蓮ちゃん?」

 

蒼蓮「い、いえ。なんでもないです!さっ、早く行きましょう」

 

蒼蓮は足早に店から出て行った。

 

李淵「あっ、ずるいぞ蒼蓮。先に行って!」

 

一刀も首をかしげながらもそのあとを追っていった。

 

 

 

蒼蓮「それにしてもいい天気ですね」

 

お店に向かう途中、蒼蓮が何気ない一言を言った。

 

李淵「んっ、まぁ晴れてるけどそんなに気にすることか?」

 

蒼蓮「だって、雲ひとつないんだよ。すがすがしいじゃない」

 

一刀「そうだね、こんなに晴れているとどこかで昼寝でもしたくなるなぁ」

 

李淵「いいですねそれ、こんな日に草むらの上で寝たら気持ちいだろうなぁ」

 

蒼蓮「もう、いつもそういう方向ばっかりに・・・」

 

と二人の会話に少しあきれていた。

 

一刀「はははっ、ごめんごめん」

 

一刀「(でも、この同じ空の下にみんながいるのか・・・戻ってきたって言う実感はもう湧いてるんだけど。なんだか物足りない感じがするな、やっぱり。)」

 

蒼蓮に謝りながらも、一刀はそんなことを思っていた。

 

魏のみんなに会いたい気持ちは日々募るばかりだった。

 

一刀「(みんなどうしてるかな・・・)」

 

一刀がボーっとしていることに蒼蓮は気づいた。

 

蒼蓮「魏光さん?どうしました」

 

一刀「んっ?ああごめんちょっと考え事していて」

 

李淵「そんなことよりも、もう着きましたよ、魏光さん」

 

そうこうしている間に目的の場所に到着していた。

 

一刀「おっ?それじゃあ入ろうか」

 

三人がお店に入ろうとしたそのときだった。

 

???「きゃぁぁぁぁ~~~」

 

???「うわぁぁ~~」

 

街の入り口の方から悲鳴が聞こえてきた。

 

一刀「なんだ?」

 

その異質な悲鳴声に一刀は嫌な予感がしていた。

 

一刀「どうしたんですか?」

 

声のするほうから走ってきた男に一刀は声をかけた。

 

男「いきなり盗賊が押し寄せてきたんだ。警邏隊の人たちもやられちまって」

 

一刀「なっ!?」

 

一刀「(なんで見張りは気づかなかったんだ・・・・・・常に交代で見張っているはずなのに・・・)」

 

一刀が考え込んでいる間に男は奥に走っていった。

 

蒼蓮「魏光さんどうしましょう?!」

 

李淵「やばいですよ。警邏隊の人たちがやられてるって言ってたし」

 

一刀「うん、二人は安全な場所にいてくれ」

 

一刀はおもむろに走り出した。

 

蒼蓮「えっ?」

 

李淵「ちょ、ちょっと魏光さんどこに行くんですか?!」

 

一刀「ちょっと取ってくるものがあるんだ」

 

そういって一刀はその場を去った。

 

李淵「取ってくるものってなんだよ・・・」

 

蒼蓮「魏光さん・・・・・・」

 

李淵「俺、その現場に行くわ」

 

蒼蓮「えっ?魏光さんが安全な場所に行けって言ってたじゃん」

 

李淵「でも、盗賊の奴らをほっておけないだろう」

 

李淵は蒼蓮を振切り、入り口の方に走っていった。

 

蒼蓮「ちょっと!」

 

蒼蓮も李淵のあとを追いかけるしかなかった。

 

 

 

現場に着いたとき、最悪な光景が飛び込んできた。

 

地面には盗賊たちにやられた警邏の人間が倒れていて、盗賊団、数十人が街をあらしていた。

 

幸い、警邏の人たちは怪我を負ってはいるが息はあるようで死んでいる様子ではなかった。

 

盗賊「おら!殺されたくなかったらそこをどきな!」

 

盗賊「食料がこんなにあらぁ、ご苦労なこったな」

 

盗賊たちが思い思いに物を盗んでいた。

 

主犯格「お前ら奪えるものを奪ってさっさとずらかるぞ」

 

盗賊団「おぅ!!!!!」

 

主犯格と思われる男の声でますます盗賊たちの行動はヒートアップした。

 

おかみ「あんたらやめないか!」

 

主犯格「あっ?」

 

現場にいたおかみが盗賊たちに声を張り上げた。

 

おかみ「自分たちのしていることが分かってんのかい?あんたたちは!」

 

主犯格「なんだお前?そんなに死にたいのか」

 

主犯格の男がおかみの言葉に苛立ちを感じていた。

 

主犯格「おまえらが汗水たらして稼いだお金や作った米を俺様が奪ってやってんだよ。こんなに名誉なことはないだろうよ、あっはははははははは」

 

おかみ「なんて下衆な奴だよ」

 

主犯格「・・・おまえ、自分の立場を分かった方がいいな」

 

その発言が気に入らなかったのかあからさまに機嫌が悪くなった。

 

ドゴッ!!

 

主犯格の男が他の仲間に指示をしたと同時に、

 

一人の男がおかみに蹴りを入れていた。

 

おかみ「ぐっ?!」

 

おかみは強くけられ顔をゆがませながらその場に倒れた。

 

主犯格「見せしめだ、そいつを殺しとけ」

 

盗賊団の一人が剣を構えた。

 

蒼蓮「おかあさん!逃げて!!」

 

男は剣を躊躇なく振り下ろした。

 

???「うわぁぁぁぁぁ~」

 

ドンッ!

 

しかし、その瞬間、誰かが横から体当たりをした。

 

盗賊「ぐあ?!」

 

男は派手に横に吹き飛ばされていた。

 

主犯格「はぁ?」

 

李淵「おかみさん!大丈夫ですか?」

 

体当たりをしたのは李淵だった。

 

おかみ「り、李淵あんた・・早く逃げな」

 

李淵「おかみさんをおいて逃げるなんてできないよ!」

 

盗賊「なら、おまえが死ぬしかないな」

 

李淵が体当たりをした男がすでに後ろに立っていた。

 

李淵「なっ?!」

 

盗賊「死ね!!」

 

男は李淵めがけて剣を振り下ろした。

 

李淵「くっ!」

 

周りの民が悲鳴を上げ、李淵もここで殺されると諦めた瞬間だった。

ガキィ~ン

 

斬られる音ではなく金属音がその場には響いた。

 

???「ったく、だから安全な場所にいろって言ったのに・・・」

 

李淵「えっ?」

 

李淵は自分を覆う陰の正体を確認した。

 

李淵「あっ・・・」

 

蒼蓮「魏光さん!!!」

 

一刀は男の一撃を刀で受け止めていた。

 

一刀「刀を取りに行っててね、遅れたことは謝るよ」

 

そういって一刀は男の剣をはじき、体勢の崩れている隙に急所に一撃をくらわせた。

 

盗賊「ぐはっ!?」

 

その一撃で男はその場に倒れこんだ。

 

一刀「何も考えずに行動するのは李淵の悪いところだ」

 

李淵「うっ・・・」

 

一刀「でも、よくおかみさんを守ったな。偉いぞ」

 

李淵の取った行動を叱るもその勇気を褒めてあげた。

 

李淵「魏光さん・・・・・・」

 

主犯格「なっ!なんだてめーは」

 

盗賊の親玉らしき男が痺れを切らし、口を挟んできた。

 

一刀「悪党なんかに名乗る名前なんて・・・俺は持ってないよ」

 

主犯格「くっ!お前らあいつを・・・」

 

その男が仲間に指示を飛ばす前に、瞬時に自分の間合いまで詰め寄った。

 

主犯格「はっ!?」

 

一刀は渾身の一撃を親玉の横腹に叩き込んだ。

 

ゴキッ!!

 

鈍い音とともにその男は吹き飛ばされ、民家の壁にたたきつけられた。

 

男はその場に倒れこみ、泡を吹きながら気絶していた。

 

盗賊「ひぃ!??」

 

盗賊「なっ!頭?!」

 

盗賊たちは親玉がやられたことで明らかに戦意と士気が下がり、恐怖におびえていた。

 

一刀「そいつを連れてさっさとこの街から出て行け、さもなければ・・・」

 

盗賊たちは息を呑んだ。

 

ゴクリ・・・

 

一刀「容赦はしない」

 

鋭い目つきで盗賊たちに睨みをきかせた。

 

盗賊「う、うわぁぁ~」

 

盗賊「逃げろ~~」

 

盗賊たちは倒れていた者達を抱えて街からけたたましく逃げるように去っていった。

 

その様子をみた一刀は刀を鞘に納めていた。

 

一刀「ん~、ちょっとかっこつけすぎたかな」

 

一刀は自分の言った台詞にすこし恥ずかしさを感じていた。

 

一刀「まぁ、いっか。あっ。みんな大丈夫ですか?」

 

シ~ン

 

一刀の呼びかけに誰一人反応をしなかった。

 

一刀「あれ、俺なんか悪いことをしたかな・・・」

 

自分が倒したことがいけなかったのだろうか、それともあんな言葉言ったのがいけなかったのかな・・・

 

悩んでしまっていた一刀ではあったが、

 

次の瞬間、

 

街の人々「おおおおおおおぉぉぉ~~~~!!!!」

 

と、街が壊れんばかりの歓声が上がった。

 

女「ありがとう!あなたのおかげで街が救われたわよ」

 

男「あんたすげ~な!!」

 

商人「いや、お強いねぇあんた!!」

 

子供「兄ちゃんかっこよかったよ!」

 

賛美と感謝の声を一度に受け取った。

 

一刀「あぁ・・・いえ、俺はたいしたことはしてないですよ」

 

一刀は先ほどまでとは違う雰囲気に少し面食らってしまった。

 

一刀「そうだ。早く警邏隊の人たちの手当てをしないと」

 

男「おっ、そうだった」

 

医者「私に任せてくれ。すぐにこの人たちを運んでいこう。誰か手を貸してくれ」

 

そういうと、周りにいた人たちが続々と動き始めた。

 

一刀はおかみを心配している蒼蓮を見つけそちらに向かった。

 

蒼蓮「魏光さん」

 

一刀「おかみさん大丈夫ですか?」

 

おかみ「こんなのどうってことはないよ。それよりもあんた、そんなに強かったのかい?」

 

一刀「いえ、俺が強いわけではなくてたぶん相手が弱かったんだと思います」

 

おかみ「何いってんだい?どう見てもあんたが強かったじゃないか」

 

李淵「そうだよ魏光さん、一瞬で敵をやっつけたじゃないか!それにほかの奴らはめちゃくちゃ怖がってたし」

 

一刀「ん~むしろ、俺は相手が弱いって、見ただけで分かったからな。だから、相手の親玉を真っ先に狙ったんだよ」

 

蒼蓮「??」

 

李淵「えっ?なんで?」

 

二人は言葉の意味を理解出来ていなかった。

 

一刀「殺一警百(しゃ~い~じんぱい)っていえば分かるかな?」

 

蒼蓮「なんなんですかそれは?」

 

おかみ「一人を殺して百人に警告するって言葉だよ」

 

李淵「?」

 

一刀「つまり、敵を一人殺せば、周りの奴らに恐怖を与えれるってことだよ」

 

李淵「じゃあなんで、あの親玉を倒したんですか?」

 

一刀「それはね、たぶんあいつらはあの親玉の強さを見込んで盗賊団を作ったんだと思うんだ」

 

蒼蓮「あの人が一番強かったってことですか?」

 

一刀「俺の見立てが正しければね。案の定、あいつを倒したらまわりの奴らは腰が引けていただろう」

 

さきほどの自分がとった行動と状況を説明した。

 

蒼蓮「そういえば、なんだか勢いがなくなっていましたね」

 

一刀「まぁ、あとはそれらしいことを言えば敵は一目散に逃げていくだろうって俺は思ったわけなんだよ」

 

先ほどの戦いの中にいろいろな考えがあったことを二人はようやく理解した。

 

李淵「魏光さん!料理も出来て頭も良くてそんなに強いんだなんてすごいや!やっぱり俺の目に狂いはなかったんだな」

 

蒼蓮「そうですよ魏光さん、敵を倒したときの魏光さんはかっこよかったです」

 

二人からの言葉をうれしく思う一刀だったが、少し気に掛かっていることがあった。

 

戦もなく他国から侵略される恐れもなかったこの三年間が、南陽だけでなく、ほとんどのところの警戒心を解いているのではないかと感じていた。

 

三国同盟が組まれたことによって争いは起きないという先入観がもたらしたものだろう

 

たしかに平和になったことはいいことだが、そのせいで警邏隊の質や襲撃にたいしての備えがないことに一刀は危機感を感じた。

 

一刀「(たぶん洛陽の方は、華琳たちがいるからな。そこらへんは大丈夫なんだろうけど・・・・・・他のところになると平和ボケしているところがほとんどだろうな。さすがに華琳も、街ごとの兵の数を増やすことは出来ないんだろう。兵の数が増えるということは何かがあると民を不安にさせてしまうからな・・・・・・)」

 

現状の厳しさを理解した一刀

 

一刀「(南陽にいたことが今回は幸に転じたか。なら戦が起きるまでにここの警邏隊と体制を整えておく必要があるな)」

 

その現状を変えるために自分が出来ることをやろうと決心していた。

 

蒼蓮「魏光さん?」

 

何もしゃべらなくなった一刀を心配して蒼蓮が声をかけてきた。

 

一刀「あっ、ごめんどうしたの?」

 

蒼蓮「いえ、むしろこちらの台詞です。何か深く考え込んでいらっしゃったから」

 

一刀「そうだね、ちょっと今後やることが増えたからね。それについて考え込んでたんだよ」

 

蒼蓮「やること?」

 

一刀「そっ。俺はこの街に来て正解だったのかもしれない」

 

ただ、華琳たちを助けるだけじゃだめなんだ。まずはこの街から変えていかないと・・・・・

 

蒼蓮「?」

 

一刀「もしかしたら、もうどこかで何かが動いているのかもしれない・・・」

 

勘ではあったが、そんな気がしてならない一刀だった。

 

  ・ ・ ・ 雑 談 ・ ・ ・

 

いやぁ更新が遅い気がするのはたぶん気のせいでしょう。

 

ようやく第4話になりました。

 

冒頭でようやく一刀の名前を書きました。

 

魏光って名前はどうですかね。なんだか一刀君ぽくない気がしますが、

 

他の候補もあったにはあったんです。

 

最初なんて聖フランェスカ学園からとってきて『聖園』にしようとしていたぐらい適当だったんです。

 

さすがに、それはまずいってことで、意外と悩んであの名前になったというわけです。

 

さてさて、物語の話をしますと、

 

武道会のお話は本当は準決勝から戦い自体を書こうかなっと思っていたんですが、

 

それを書くと私の進行速度がなおさら遅くなる気が・・・

 

まぁ、でもあそこの戦いは書きたいと思っているので

 

いつか本編を進めずに武道会のお話を書く可能性も。

 

そういえば、一刀君の武器はありきたりな刀にしました。

 

それも、逆刃の刀です。

 

むしろ、一刀君にはこれしか思いつきませんね。

 

本編ではたしか警邏隊で長い棒を装備してるし・・・

 

名 前;北郷一刀

装  備

頭 : な し

 体 : 制 服

 足 :普通の靴

武 器;長 い 棒

 

・・・・・・

 

ちょっとばかり軽装過ぎる気が・・・

 

まぁそんなことはおいといて、

 

薙刀とか超剣やら夏侯惇が使ってるような剣も考えたんですが、

 

どうもしっくりこない。

 

木刀はかなりしっくりくるんですが・・・

 

戦で木刀ってあんた・・・

 

信念貫く前に華琳に殺されてしまうわ(笑

 

まぁそんなこんなで刀なわけです。

 

ちなみになんで持っているかというと、

 

元の世界から持ってきていたというわけです。

 

もともと家が剣道の家だったので代々受け継がれていた刀だとか何とか・・・。

 

数本あるそうなんですが、その中でも自分にあった逆刃を持ってきたんです。

 

まぁ、一刀君らしいですな(設定してるの私なんですけどね・・・)

 

 

 

最後にいつもコメントをしてくださる方、支援してくださる方に感謝です!!

 

 

 

それではまた次のお話でお会いしましょう (・ω・)ノシ

 


 
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