No.859341

珠美と幸子 夏の定番

まささん

夏だ!ビギニングサマーガシャだ!一回だけ引こう!と思い立ち、引いて出た新加入がネネちゃんとちびっこステージの珠美だけでした(悲しみ

まぁホラーも夏の定番だな!
と言う訳で、珠美にお仕事だ!(ついでに幸子にも)

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2016-07-19 20:28:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:708   閲覧ユーザー数:706

先週辺りまで天気は連日雨続きだったというのに、7月になった途端、今度は猛暑が続いていた。

茹だるような暑さ、いよいよ夏が到来してきた。

……梅雨明けっていつしたんだ?って言うか本当に梅雨だったのか?え、まだ梅雨?

そんな事を考えないでもない。

「珠美ー、幸子ー、二人ともいるかー?」

自分が担当している二人のアイドルの名前を呼びながら事務所へと入る。

事務所は外と違って涼しい。という事は誰かいる訳だが、今呼んだ二人は……?

「おかえりなさいプロデューサーさん!カワイイボク、幸子をお呼びですか?」

「珠美もここに居ります!」

良かった、二人ともいたようだ。

「お、いたな、ちびっこ共」

「ちびっこちゃうし!」

「ボクはカワイイからこれで良いんですよ!」

流石、二人ともブレないな。特に幸子は。

とそんな事に感心している場合じゃない。早速、二人に仕事の話をする。

「それは置いといて……二人に仕事がある。今度、夏の特番でやるコーナーのロケだ」

「置いといてとは何ですか!……しかし、テレビのお仕事ですか。珠美に声が掛かるという事は、スポーツ系の番組でしょうか?」

「最近、プロデューサーさんからの扱いが酷い様な気がしますが……。まぁカワイイボクはどんなお仕事でも、難無くこなして見せますよ!フフーン!」

と、珠美も幸子もやる気は十分なようだ。

まだ内容は言ってないんだが、これ聞いてからやっぱり無しとか言わないか少し不安だ。

「それで、二人に行ってもらうロケの内容なんだがな……」

「どうしたんですか、プロデューサー殿?」

「……まさか、また変な事をやらせるんじゃないですよね?」

幸子は慣れてきてるのか、勘が鋭いところがある。

だが変な事とはなんだ。仕事だぞ。

しかも幸子のその言葉を聞いて、珠美も少し不安気な顔を見せている。

「おいおい、そんな事言うなよ。珠美がビビってるぞ?」

「び、ビビってませんし!」

まぁ珠美もこう言ってる事だし、そろそろロケの内容を話そう。

「二人が今回出る番組はこれだ」

そう言いながら、鞄から打ち合わせで頂いた資料を見せる。

そこには番組のタイトルが書いてあるのだが、それを見た途端に二人は固まってしまった。

「あ、あの……プロデューサーさん……?」

「ん?どうした?」

先に復活した幸子が声を掛けてくる。

妙に声が震えている気がするが、きっと気のせいだろう。

あ、それとも、冷房が効きすぎてるのか?

「どうした幸子、寒いのか?」

「寒くありません!って違います!何のボケですか、それ!?」

どうやら違ったらしい。

「それじゃあれか、放送時間がゴールデンで、嬉しくて声が震えてるのか」

「そう言う事でもありませんよ!いや確かに、ゴールデンタイムでの放送は嬉しいですけど!!!」

「プロデューサー殿、これは何ですか!?」

ようやく珠美も復活し、幸子と共に抗議の声を上げる。

珠美は何故か、汗が出ている。

「珠美、汗凄いぞ?大丈夫か?」

「だ、大丈夫です!それよりも何ですか、この番組!?」

「何って、今度二人が出る特番だ。間違ってないぞ?」

「そういう意味じゃなくて!!!」

分かっている。

この二人がここまで取り乱す理由。それは、この特番と言うのが心霊番組だからだ。

珠美と幸子が怖がりなのを知っていて、この仕事を持ってきた。

自分で言うのもあれだが、二人が目の前にいなければ、凄く悪い顔をしてるんだろう。だが今は我慢だ。

「これ以上ピッタリな仕事はないだろ?」

そう、この二人にはピッタリなのだ。

実際打ち合わせの時、珠美と幸子の名前は真っ先に挙がっていた。と言うか挙げた。

「ほ、他にも適役なのがいるじゃないですか!小梅さんとか!」

「そうですよ!なぜ珠美達なのですか!」

「あぁ、もちろん小梅も同じ番組に出るぞ。ただし別のコーナーだ」

それを聞いて再び固まる珠美と幸子。

「安心しろ、小梅のロケより二人がやるのは怖くない」

「だだだ誰が怖いって言いましたか!?か、カワイイボクに怖い物なんて……あああある訳ないじゃないですか!

「た、珠美だって怖くないです!剣士である珠美に怖い事なんて……ありません!」

お、言ったな強がりコンビめ。

そう言ってくれるとプロデューサーとして凄く嬉しいぞ!

「それじゃあそろそろ、場所の説明をしよう。今回二人に行ってもらう場所は、期間限定で開催されるお化け屋敷だ。めちゃくちゃ怖いらしいぞ」

「ぷ、プロデューサーさん……」

「何だ?」

「因みに小梅さんのロケはどこに……?」

あぁ、それも言っとくか。

小梅より怖くないとか言いながら脅かしても、小梅のがどんなのか分からないんじゃ意味ないしな。

「小梅の方は心霊スポット巡りだ。有名な場所はもちろん、小梅が最近見つけた場所に行くとか行かないとか……」

同行するスタッフには同情するよ。

無事に帰って来られれば良いね、ホントに。

お前は行かないのかって?嫌だよ。ガチ過ぎて怖いし。

「プロデューサー殿、珠美は、よ、喜んでお化け屋敷のロケに行きます!」

「ぼ、ボクも行ってあげますよ!当然プロデューサーさんも来てくれますよね!?」

あー、そうだな……。

小梅のよりおもしr……怖くないし、行くか。撮影が始まったら俺はお化け屋敷入れないけど。

「もちろん行くぞ」

そう言うと、二人の表情が明るくなった。

しかし残念な事に、珠美も幸子も、この時には気付けなかったのだ。

いや、忘れていたと言うべきかもしれない。今回は出演するコーナーの撮影で、この二人と僅かなスタッフでしかお化け屋敷に行けない事を。

数日後。

再び雨が連日降り続け、ロケ当日も雨天かと思われたが、その日は見事なまでの晴天に恵まれた。

他の仕事で少し遅れて現場へ到着すると、ちょうど珠美と幸子はメイクなどを終わらせて出てきたようだ。

「あ!遅かったですねプロデューサーさん!」

「プロデューサー殿、お疲れ様です!」

「おう、お疲れ様」

ビビってないか心配だったが、見たところ大丈夫そうだな。

スタッフも準備出来たみたいだし、そろそろ送り出すとしよう。

「よし、それじゃ頑張ってこい」

「「え?」」

二人して何を言ってるの?という様な顔でこちらを見る。

いやいや、え?お前らまだ気付いてなかったのか?

と思っていると、どうやら二人はようやく気付いたようだ。

「……まさかとは思うが」

「い、いやですねプロデューサーさん、幸子は最初から分かってましたよ!?」

「た、珠美も勘違いなどしてません!プロデューサー殿が付いて来てくれるなどと思っていた訳ではありませんから!!!」

相変わらず分かりやすい……。まぁそんな所も可愛いが。

「出口で待っててやるから」

「ぜ、絶対ですよ!?そんな事言って居なかったら、許しませんからね!?」

幸子はこういう時に少しだけ素直になるなぁ。

しかし珠美は、

「……珠美は別に待っててもらわなくても」

また強がってる。

「な、何を言うんですか珠美さん!?本当に待ってなかったらどうするつもりなんですか……!」

「うっ……でも幸子ちゃん、もしここでプロデューサー殿に怖がってると思われれば、後で何をされるか!」

「ハッ、言われてみれば確かに……」

悪い事する人みたいな言い方しないでもらえるかな?君達のプロデューサーだよ?分かってる?

ったく、こっちに聞こえない様に言ってるつもりだろうが、全部聞こえてるからな。

「ほら、さっさと行ってこい。スタッフも待ってるんだから」

「えっ?あ、ちょっと!」

仕方ない。

二人の背中を押して、お化け屋敷の入り口まで歩く。

「んじゃ、出口でな」

そう言って、スタッフに準備が出来たことを伝える。

今回はカメラさんと珠美、幸子だけで入る事になっている。

二人だけでハンディカメラを持たせて行かせるのも考えたが、それはプロデューサーとして心配があった。

怖すぎて動けなくなったとか、気分が悪くなったとか……まぁあの二人なら大丈夫だろうが、念のためだ。

「た、珠美さん、生きて帰りましょう……!」

「ええ、必ず……!」

ちょっと大袈裟じゃない?ホントに大丈夫か?と、そんな事を思いながら二人を見送る。

固い決意をしたはずの二人は、早くも泣きそうな顔でお化け屋敷へと入って行った。

――――二人が強がりながら怖がる姿、目の前で見れないのが残念だ。

「ヒャァァァ!?」

「ぎゃああああああ!?」

早っ!

って言うか、今アイドルのものとは思えない悲鳴が聞こえた気がするんだが、もしかして幸子か?

 

 

 

 

 

珠美と幸子がお化け屋敷に入ってから数分が経った。

俺は約束通り、出口で二人が出てくるのを待っている。

中は涼しいだろうが、ここは外。しかも屋根なんて物は近くになく、強烈な日差しが容赦無く襲う。

二人が早く出てきてくれなければ、俺はこの自然のソーラ・システムに焼かれ続けるのだ。

しばらくそんな事を考えていると、お化け屋敷の中から慌ただしい音がしてきて……。

「やだぁぁぁ!もう許してぇぇぇ!!!」

「プロデューサーさん助けて下さいぃぃぃ!!!」

「おわっ!?」

二人揃ってお化け屋敷の出口から飛び出し、そのまま勢いよくこちらへと抱き付く。

ちゃんと見た訳ではないが、二人の様子から泣いているのが分かる。

あれ、カメラさんは?

……あ、遅れて出てきた。

「おーよしよし、お前らよく頑張ったな」

とりあえず、二人の頭を撫でてやる。

全く、一体誰がこんな事を…………あ、俺か。

と、そこにカメラさんが撮影を止める事なく近付いて来て、まだ終わっていないのに気付く。

「……珠美、幸子。まだ撮影終わってないぞ」

「ハッ、そうでした!」

幸子は一瞬で涙を拭い、カメラに向き直る。

しかし珠美は、未だにしがみ付いて離れようとはしない。

あれ?珠美の方が年上だよな?

「た、珠美さん、カメラの前ですよ!」

「ううぅ……」

幸子が少し強引に珠美を引き離す。

そして二人で最後の締めに入る。ほとんど幸子が喋ってたけど。

ふとカメラさんを見ると、少しニヤついてる気がするんだが……あれ、これもしかして使われるんじゃないか……?

そう思い他の番組スタッフを見ると、そっちも笑っていた。

あ、これ確実に使う奴だわ。

「……ま、二人が可愛かったし別に良いか」

そうしてロケの撮影は無事終了した。

「プロデューサー殿、ピンチです!」

「助けて下さい!」

特番の収録を終えた珠美と幸子が、そんな事を言いながら事務所へと帰ってきた。

「おう、おかえり」

スケジュールの確認をしながら、二人を迎える。

すると二人はそのまま駆け寄ってきた。

「プロデューサーさん聞いてください!」

「何だ?収録で憑かれたのか?」

「え?いえ、疲れてはないですけど……」

憑かれてないのか。良かった。

それじゃあ、一体何がピンチなんだ?

「実は、収録後に小梅ちゃんと話してまして……」

「そこで小梅さんから『今度はみんなでお化け屋敷、行きたいね…えへへ……』と言われて……」

幸子は小梅の真似が上手いな……。

しかし、そう言う事か。

「スケジュールか?それなら大丈夫だ。次の休みを、三人同じ日にしておくから安心しろ」

「へっ!?いや、そうじゃなくてですね!?」

「ん?」

何か違ったか?

「プロデューサー殿……その、今度こそ一緒に……」

「一緒に来て下さいプロデューサーさん!」

……しょうがないな。

前のは撮影だから目の前で怖がる二人を見れなかったし、今回は存分に楽しませて貰おう。

「分かった、それじゃあ俺も予定空けとくか」

「「!!」」

それを聞いた二人は、とても嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

後日。

 

お化け屋敷の噂通りなのか、それとも小梅がいるからなのか分からないが、怖過ぎて珠美と幸子の反応を楽しむという余裕は、その時の俺にはなかった。

 


 
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