No.84994

真・恋姫†無双~江東の花嫁達~(リクエスト参)

minazukiさん

リクエストSS第三弾!
今回のリクエストは竹師様のリクエストです。

三国が一刀をかけて炒飯対決!
果たして勝者はどの国か!

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2009-07-17 20:19:45 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:20620   閲覧ユーザー数:14367

(リクエスト参)

 

 冥琳が無事に女の子を出産した。

 

 一刀の第二子として名を循とした。

 

 そして半月後、三国による立食パーティーが荊州江陵城で開かれた。

 

 五胡の脅威が完全にはなくならないものの、魏呉蜀の三国の協力体制のもと今のところは平穏な日々が過ぎていた。

 

「少しは大きくなったかしら?」

 

 魏王の華琳は雪蓮に抱かれている孫紹を見て微笑む。

 

「孫紹ちゃん、お姉さんだよ♪」

 

 孫紹に桃香はお姉さんのように振舞う。

 

 それに対して孫紹もにっこりと笑顔を見せるので、桃香は何度も連れて帰りたいと言ってしまうほどだった。

 

「私も欲しいなぁ~」

 

「そうね」

 

 二人の王は何気なく一刀の方を見る。

 

「ダメよ♪一刀にはまだまだ後がつかえているのだから」

 

「そうなの?」

 

 桃香は残念そうに言う。

 

「貴女達の国にもいい男はいるでしょう?」

 

「でもどうせなら好きな人の子供が欲しいなぁ~」

 

「そういう意味では雪蓮が羨ましいわね」

 

「それが運命ってものよ♪」

 

 孫紹をあやしながら雪蓮は今の自分の幸せを二人に見せ付けていく。

 

「華琳さん、なんだか悔しいです」

 

「あら、奇遇ね。私も同じことを思っていたわ」

 

 とても冗談には聞こえない二人の王。

 

「ま、まぁ、俺よりもいい人なんていくらでもいるよ」

 

 一刀の慰めもこの時ばかりは、二人にとって逆効果だった。

 

「こうなったらお酒の力を借りるしかないです」

 

 桃香はとんでもないことを言い出した。

 

「そうね。お酒が入っていればいくらでも言い訳ができるわね」

 

 同調する華琳。

 

 そんな二人を見て雪蓮は苦笑した。

 

「そんなに一刀が欲しいの?」

 

「「欲しいわ「欲しいです」」

 

 何の躊躇もなく二人は答える。

 

 一刀は自分がそこまで求められているのかよくわからなかった。

「仕方ないわね。それじゃあ、こういうのはどうかしら」

 

 雪蓮は一刀を賭けて何かを競うことを提案した。

 

「しかも景品は一刀を一月の間、その国で自由にしていいっていうのはどうかしら?」

 

 その提案に魏王と蜀王は脳裏に一月の間、一刀が自分達と過ごす想像をした。

 

 当然、二人は拒否することなどなかった。

 

「それはいいですね」

 

「つまりその一月の間、何をしても文句なしってことかしら?」

 

「ええ。五体満足で返してくれるのであれば問題はないわ」

 

 一刀の意見を聞かずに話を進めていく雪蓮。

 

 三人が一刀の方を見ると、妙な空気になってきていると感じ取った一刀は後ろに一歩引き下がった。

 

 雪蓮の不適な笑みを見て余計に何か考えていると思った一刀。

 

 逃げるが勝ちと後ろに下がっていくと、何かにぶつかった。

 

「おや、お兄さんどちらへ?」

 

 一刀が振り向くとそこには風、葵、琥珀の三人娘が立っていた。

 

「少し酔ったから外の風でも当たってこようと思ったんだ」

 

 適当な理由をつけてこの場から離れないと、とんでもないことに巻き込まれかねないと悟った一刀。

 

「なるほど、そういうことですか」

 

 風は雪連達の方を見て一刀の気持ちが分かったのか、妙に納得していた。

 

「つまりお兄さんはこれから素晴らしい生贄になるのですね」

 

「分かっているなら見逃してもらいたいんだけど」

 

「たぶん、手遅れです」

 

 葵は残念そうに一刀に言う。

 

 それと同時に一刀の肩を雪蓮が満面の笑みを浮かべて掴んだ。

 

「景品が逃げたらダメよ♪」

 

「か、勘弁してくれよ」

 

「してもいいけど、蓮華にあることないこと報告するけどいいかしら?」

 

 素直に従わないとあとでどうなるか知らないわよと、ほとんど脅迫している雪蓮に一刀は男として多少の抵抗をしようとした。

 

「私や蓮華にはしたことのないことを、月や詠でしているって聞いたわよ?」

 

 耳元で小さな声を囁くと、一刀は全身から汗が吹き出そうになった。

 

「な、な、なんで知っているんだよ?」

 

「あら、私達は北郷家よ?隠し事することなんてあったかしら?」

 

 一刀は血の気が引いていくのを感じた。

 

(あの二人、何教えているんだ)

 

 恋達と楽しそうにしている月と詠を見て、心の中で涙を流す一刀。

 

 そしてあっさりと降伏をした。

 

 そんな情けない一刀を琥珀は肉団子を食べさせて慰めた。

「というわけで第一回、北郷一刀争奪戦を始めるわよ」

 

 雪蓮のその言葉に会場内が一瞬、静寂が訪れた。

 

 誰もが壇上の雪蓮、華琳、桃香、それになぜか縄でぐるぐる巻きにされて椅子に座らされている一刀を見た。

 

「逃げないからこの縄を解いてくれ」

 

「景品は黙ってなさい♪」

 

 孫紹を月に預けて場を仕切る雪蓮は一刀の意見を一蹴した。

 

「今から呉、魏、蜀の代表者三名による競技を行ってもらうわ」

 

 ルール説明を華琳が雪蓮に代わってする。

 

「代表者三名はこれから一刻の猶予を与えるから、ここにいる北郷一刀に炒飯を作りなさい。それでどこの国が一番かを競うのよ」

 

「誰を選ぶかはそれぞれの国で決めてください。あと、ずるはだめですよ」

 

 桃香も付け加えると会場内が騒がしくなる。

 

「ちなみに景品はここにいる一刀を一月の間、その国で自由にできる権利が与えられるわ」

 

 それを聞いてさらに騒がしくなる。

 

 それもそのはず。

 

 天の御遣いであり、呉の大都督である一刀を一月の間、自由にできるとあって色めき立つ。

 

 しかも一刀の正妻である雪蓮が公認しているのだから何をしてもいいと解釈する者も多かった。

 

 将軍の位や金品などよりも価値のある人物なだけに反応も様々だった。

 

「一刀と一月も一緒に過ごせるなんて夢のようやな~♪」

 

 霞は親友でありながらも未だ一刀を諦めたわけではなかっただけに、今回のことは嬉しくて興奮を抑えることはできなかった。

 

「あわわ、朱里ちゃん、どうしよう」

 

「はわわ、雛里ちゃん、これは好機だよ」

 

 蜀の「はわわ」「あわわ」二大軍師も興奮を隠せないでいる。

 

「この勝負に勝ってシャオの魅力をさらに一刀に見せつけてあげる♪」

 

「旦那様と好きなことを…………」

 

 張り切る小蓮と顔を紅くしていく亞莎。

 

「良い感じに盛り上がってきたわね」

 

 雪蓮は楽しそうにその光景を眺めていた。

 

「でもさ、これってうちが勝ったらどうするんだ?」

 

「別にこれといって変わらないわ。ただ、私は黙認するだけよ♪」

 

 妙に嫌な予感を漂わせる雪連の言葉に一刀は頼みの綱である月達を見たが、孫紹を嬉しそうに抱いており一刀に気づいていなかった。

 

「まぁ覚悟を決めなさい♪」

 

「はぁ~…………」

 

 一刀は思いっきりため息をついて自分の運命が少しでもマシな方向に行くように心から願った。

 そして公平なクジをした結果こうなった。

 

 魏代表は春蘭、稟、流琉。

 

 蜀代表は愛紗、朱里、蒲公英。

 

 呉代表は小蓮、明命、亞莎。

 

 魏は春蘭が選ばれたことにため息が漏れ、蜀は愛紗が選ばれたことになぜか涙を流しており、呉は小蓮が選ばれたことに不安を隠せないでいた。

 

「流琉がなんとかしてくれるわ」

 

「朱里ちゃん、頑張って」

 

「この三人大丈夫かしら」

 

 この場に蓮華がいれば大反対していただろうが、残念なことに彼女は思春、祭と共に体調を考慮して参加しなかったことが一刀を余計に不安にさせていく。

 

「蓮華が知ったら間違いなく俺…………」

 

「下手したら斬られるわね♪」

 

「楽しそうに言うなよ」

 

 半泣きの一刀を無視して雪蓮は競技に注目していく。

 

 宴の会場はいつの間にか調理場に変化しており、それぞれが別れて準備を始めていた。

 

「一刀、念のためにコレをつけてもらうわね」

 

 華琳はそう言って一刀の目を塞ぐように布を巻いていく。

 

「何で隠すんだよ?」

 

「あなたねぇ…………「華琳」はいはい」

 

 雪蓮に注意された華琳は少しきつめに布を巻き終えた。

 

「安心しなさい。私達が勝てば雪連よりもいいことしてあげるわ」

 

 離れ間際に華琳は小声で一刀に囁いた。

 

 それに顔を紅くする一刀だがすぐに頬に痛みが走った。

 

「一刀、余裕があるみたいね♪」

 

 頬を抓っている雪蓮は一刀から見えないが笑顔を向けていた。

 

 だがそこからは殺気が感じられていた。

 

「雪蓮」

 

「なによ?」

 

「雪連と二人で逃げたい」

 

「あら、嬉しいこと言うわね。でもだめよ。諦めなさい♪」

 

 今回の競技をどこまでも楽しむつもりでいる雪蓮に一刀は諦めて生贄になることにした。

 

「さあて、そろそろ準備ができたかしら」

 

「「「「「おーーーーーー」」」」」

 

「それでは調理開始!」

 

 いつの間にか小さな銅鑼が用意され、霞が勢いよく鳴らした。

 

 そして一刀の地獄が始まった。

 参加しない者は各自集まっては調理の様子を楽しげに見ていた。

 

 見えない一刀からすれば待つ間が長く感じる上、周りが気になって仕方なかった。

 

 そこへ孫紹を抱いた月が一刀の傍にやってきた。

 

「お義兄さま、大丈夫ですか?」

 

「月か。見てのとおりひどい扱いだよ」

 

 彼女に愚痴っても仕方ないのだが、一刀は月の優しさが身に染みていた。

 

「布をお取りしましょうか?」

 

「取ってもらいたいけど、そんなことをしたら雪蓮に怒られるからいいよ」

 

 月としてもここまでする必要はないのではないかと思っていた。

 

「雪蓮お義姉さまに聞いてきます」

 

 この一年ほど、月は積極的に動くことがあった。

 

 それは一刀の側室になれた喜びと、そんな自分を受け入れてくれた一刀と雪蓮に対しての感謝の気持ちがあった。

 

「まったく、なんでアンタの為に月が苦労しないといけないわけなの?」

 

「悪いって思っているよ」

 

 詠の文句を素直に受け止める一刀。

 

「本当にそう思っているのなら、月をもっと大切にしてあげなさいよ」

 

 詠は蓮華達が懐妊したと知ったとき、なぜ自分達はその兆しがまったくないのか悩んでいた。

 

 いつも月と一緒に抱かれている詠は誰もしないことを見つけては、何かと理由とつけて実践しているが、今のところ効果はなかった。

 

「私達を側室にしたんだからしっかりしなさいよね」

 

「どうしっかりなんだ?」

 

「ば、馬鹿、それぐらい自分で考えなさいよ」

 

 一刀は見えなくても詠が顔を紅くしているのが分かった。

 

「お義兄さま」

 

 そこへ説得に向かっていた月が戻ってきたが、布を取ることは許されなかった。

 

「へぅ~…………すいません」

 

「いいよ。月が謝ることじゃあないよ」

 

 縄で縛られていなければ彼女の頭を撫でているところなのだが、それができなくて残念に思う一刀。

 

「それよりもこんなことが蓮華に知られたらどうしよう…………」

 

「安心しなさい。ボクがしっかりと報告しておくから」

 

「詠、お前ってヤツは…………」

 

 落ち込む一刀に月は孫紹を抱いたまま頭を撫でた。

 

「詠ちゃん、それはかわいそうだよ」

 

「いいのよ。これぐらい何ともないわよね、義兄さん♪」

 

「俺、何にも悪いことしてないのになぁ~…………」

 

 ぼやく一刀。

 

「それにしてもあの琥珀って子も恋に負けないほどよく食べるわね」

 

 恋の横で黙々と料理を食べていく琥珀。

 

 まさに大食い選手権が開催されており、大量にあった料理の半分が四人によって制圧されていた。

 

「よく食べるのはいいことだと思うぞ」

 

 口の周りの汚している琥珀に気づいた恋が、用意されていた口拭きで彼女の口の周りを優しく拭き取っていた。

 

「和むよなあ」

 

「そうね。でも見えてないのによくわかるわね。」

 

「なんとなくね。それよりも俺も何か食わせてくれないか?」

 

「は?ボクが食べさせるの?」

 

「俺、動けないんだけど」

 

「仕方ないわね。今日だけよ」

 

 そう言いながらも詠は笑みを浮かべ、いくらかの料理を皿にのせてそれを一刀に食べさせた。

 そして運命の一刻後。

 

 三国の代表がそれぞれの炒飯を作り上げ、綺麗な布をかけていた。

 

 春蘭、愛紗、小蓮は自信があるのか満面の笑みを浮かべ、その他の者は疲れきっていた。

 

「それじゃあ早速、見てみようかしら」

 

 布を取り三つの炒飯を一斉に見た。

 

 そして静かになった。

 

「な、なんだ、この静けさ」

 

 異様な空気を感じた一刀は慌て始める。

 

「(これを一刀が食べるの?)」

 

「(厳しいわね)」

 

「(愛紗ちゃん…………)」

 

 雪蓮、華琳、桃香は笑顔が引き攣っていた。

 

 周りも同じような表情をしていた。

 

「あの、雪蓮?」

 

「ナンデモナイワ」

 

「ソ、ソウヨ」

 

「オイシソウデスヨ」

 

 ぎこちない発音をしながら三人は乾いた笑いをする。

 

「と、とにかくこれから食べてみなさい」

 

 雪蓮がそう言って取り上げたのは春蘭達が作った炒飯だった。

 

 レンゲに一口分をのせて一刀の口の前に持っていく。

 

「どう?」

 

「少し変な匂いがするけど?」

 

「なんだと!」

 

 春蘭が大声を上げるが、華琳によって抑えられた。

 

「さあどうぞ、旦那様♪」

 

 愛妻にそう言われ、口を開けて炒飯を食べていく。

 

 目隠しをされているので、感触で判断するしかなかった一刀は噛んでいくうちに変な味に気づいた。

 

「なに、これ?」

 

「炒飯よ?」

 

「本当に?」

 

「本当よ」

 

 普段と少しも変わらない口調だが、一刀は何となく疑問に思っていた。

 

「なんだか血生臭いというか、なんというか」

 

「新しい調味料よ、きっと」

 

 

 雪蓮の言葉を信じていないわけではないが、どうしても違和感が取れなかった。

 

「(まったく、稟ったら何を想像したのかしら?)」

 

「(あんなものを食べる一刀が凄いわ)」

 

 華琳と霞は一刀が食べている姿にやや引き気味だった。

 

「はい、これでおしまい」

 雪蓮はそう言って春蘭達の炒飯を置いて、次の炒飯に手を伸ばした。

 

「次はこれにしようかしら」

 

 手にしたのは小蓮達が作った炒飯。

 

「少し甘い匂いがするけど美味しそうだな」

 

 さっきよりも好印象を持つ一刀に雪蓮は同じようにレンゲに一口分のせて食べさせた。

 

「いいな~」

 

 二人のその様子を桃香達は羨ましそうに見ていた。

 

「まったく、見ているほうが恥ずかしいわ」

 

 口ではそう言いながらも華琳は羨ましく思っていた。

 

「私達が勝ったら一月の間、あんなことも出来るんですね」

 

 朱里は自分の作った料理を雪蓮のように食べさせると思う顔を真っ赤にして両手で興奮を抑えようとする。

 

「一刀殿と二人で…………ブハッ」

 

 稟は勢いよく鼻血を噴出し至福に満ちた表情で倒れた。

 

「雪蓮様みたいに私も積極的になれたらどれだけいいことか…………」

 

 自分の性格に落ち込む亞莎。

 

 一刀はそんな彼女達を知らずに炒飯を噛んでいく。

 

 途中まで甘みがあったがさっきよりかは食べられるので安心した矢先。

 

 妙に甘ったるい味と柔らかな感触、それに得体の知れない何かを感じた。

 

「一刀?」

 

 動きを止めた一刀を不思議そうに見る雪蓮。

 

 それに反応するかのように一刀は口の中にあるものを一気に飲み込んだ。

 

 そして一言。

 

「勘弁してくれ」

 

 泣きたくなるのをグッと我慢する一刀。

 

「(あれを飲み込むなんて…………凄いわね)」

 

「(一刀さんなら信じています)」

 

 ゾクゾクする感覚に酔いしれ始める華琳と両手をあわせて祈る桃香。

 

 口直しに酒を少し呑んだ一刀はまだ落ち着かないのか、口元が震えていた。

 

「大丈夫よ。次で最後だから。そう次でね」

 

 最後の炒飯を見返す雪蓮だが、思わず手を口に当ててしまった。

 

(あれが炒飯?冗談でしょう?)

 

 アレを食べろというのであれば雪蓮は喜んで盟友の作った黒炒飯を食べることを選んだ。

 

 それほどまでに蜀の、おもに愛紗が作った炒飯は見た目からして破壊力が満点だった。

 

(一刀、骨は拾ってあげるから素直に逝きなさい)

 

 それは冗談とは思えないものだった。

 本当の地獄が始まった。

 

 手で持つことすら危険を感じさせる蜀の炒飯。

 

 その様子を朱里は今にでも泣き出しそうな表情をしており、蒲公英もさすがにドン引きしていた。

 

 そして蜀将の誰もが頭を抱えたり、自分の所には天の御遣いが絶対に来ないことを思い愕然としていた。

 

(桃香には悪いけど、まだうちのほうがましね)

 

 華琳は必死に祈る桃香に同情しつつも、これで勝負は呉との一騎打ちだと思った。

 

「か、一刀」

 

「なんだよ?」

 

 これまでの二品で少し壊れ始めている一刀。

 

「これが最後だからしっかり味わいなさい」

 

「最後か」

 

 その言葉で理性を取り戻した一刀は手に力を入れた。

 

「よし、こい」

 

 気合を入れて最後の炒飯が来るのを待つ。

 

 レンゲで一口分すくいあげ、ゆっくりと一刀の口の前に持っていく。

 

「一番いい匂いだな」

 

「そ、そうね」

 

 雪蓮は匂いだけで判断している一刀に実物を見せてやろうかと考えたが、今はこの勝負を優先させた。

 

「はい、口を開けて」

 

「あ~~~~~~ん」

 

 口の中に入れられていく炒飯。

 

 誰もがそれに注目する。

 

 そして一口噛んだ瞬間、それが起こった。

 

「ぐはっ」

 

 勢いよく一刀は椅子ごと後ろに倒れた。

 

(一刀、あなたの死は無駄にしないわ)

 

(一刀さん、ごめんね)

 

 心の中で手を合わせる二人。

 

 縄を解かれ、雪蓮に抱き起こされるが泡を吹いていた。

 

「これはダメね」

 

 審査員自身が判断不能になってしまったために、どこが優勝か決めることはできなくなった。

 

「わ、私の炒飯がそれほどまでに美味しかったのでしょうか?」

 

 なぜか一人歓喜きわまっている愛紗。

 

(((((それは違うから)))))

 

 誰もが口には出さなかった。

 夜中。

 

 一刀がようやく意識を取り戻した時、目の前にには雪蓮が眠っていた。

 

「俺…………いったいどうしたんだ?」

 

 最後の炒飯を食べた後の記憶がまったくなかった一刀。

 

「起きた?」

 

 瞼を閉じたままの雪蓮。

 

「みんなは?」

 

「もう夜中よ。みんな寝ているわ」

 

 それぞれの用意された屋敷で床についているため、静けさが漂っていた。

 

「紹は?」

 

「月達と一緒に寝ているわ。紹は見ていますからって言われてその言葉に甘えたの♪」

 

 久しぶりの独占に雪蓮は嬉しそうだった。

 

「で、どこが優勝したの?」

 

「あなたが倒れたおかげで勝者はなしよ。だから私がこうして独占しているの♪」

 

 つまりこういう結果になれば必然的に雪蓮が得をすることになるようになっていた。

 

「もしかして始めからこうなると予想していたの?」

 

「してないわよ。でも、一刀を誰かに取られるのは嫌だなあっては思っていたわ」

 

 一月も他国に送ることは本当はしたくなかった。

 

 その意味では最後の炒飯に救われた雪蓮だった。

 

「一刀は私達の大切な旦那様だもん♪」

 

 その大切な旦那様を危険に晒したのはどこの誰だと一刀は思った。

 

 だが、今は彼女に包まれる温もりが心地よく、それを許していた。

 

「雪蓮」

 

「どうしたの?」

 

「取り合いはもう勘弁してくれ」

 

 今日のことは面白半分のところがあったが、それが大きく発展していき国家間での争いの元になることを一刀は心配していた。

 

「大丈夫よ。こんなことはもうしないわ」

 

「本当か?」

 

「本当よ。なんだったら証拠を見せてあげるわ」

 

 そう言って一刀を抱きしめ、口付けをした。

 

 一刀も久しぶりの雪蓮に抑えるつもりもなく彼女を抱きしめていく。

 

「今日はたくさん愛してくれる?」

 

「もちろん」

 

「♪」

 

 雪蓮は幸せな笑みを浮かべ、一刀と朝まで交わった。

 後日、一刀が食べた三つの炒飯を見た。

 

 春蘭が流琉の助言を無視した結果焦げたうえに、一刀と過ごすことを想像した稟が噴出した鼻血で赤く染まった炒飯。

 

 具材がなぜか亞莎が得意なゴマ団子と小蓮が南蛮で手に入れた獣の燻製焼きが入った炒飯。

 

 極めつけは愛紗が事実上一人で作ったなんだか訳のわからない物が米の中から出ている炒飯。

 

(こんなの食ったのか俺は…………)

 

 よく生きていたなあと自分の運の良さに感謝した。

 

 そして今回のことを詠から聞いた蓮華は雪蓮に文句を一通り言った後、一刀のために自分一人で炒飯を作り、一刀を本気で泣かせ勘弁して欲しいと懇願されたという。

(座談)

 

水無月:リクエストSS第三弾をお届けしました!

 

一刀 :おい。

 

水無月:なんですか?

 

一刀 :どこが修羅場だ?

 

水無月:…………あれ!

 

一刀 :お前な…………。

 

水無月:と、とりあえず争奪戦にはなりました。(と思います)

 

雪蓮 :炒飯なんて誰でも作れると思うけど、意外と難しいみたいね。

 

華琳 :春蘭と愛紗はいい勝負よ。

 

桃香 :愛紗ちゃん、ごめんね。庇えないよ。

 

水無月:しかし一刀がもう少しで昇天しかけましたね。(残念です!)

 

一刀 :お前にも食わせてやろうか?

 

水無月:全力でお断りします。

 

雪蓮 :まぁこういう楽しい遊びでの景品で一刀を賭けるなら今度またしてみたいわね。

 

一刀 :勘弁してくれよ…………。

 

水無月:さて、一刀は放っておいて、ここで皆様にお知らせです。

 

雪蓮 :現在、書かれているSSは江東の花嫁達(壱四話)の座談で出されたクイズに正解した人のリクエストなのよね?

 

水無月:そうです。ですからコメントにいつも書いてくださる方々のリクエストに関しましてはその正解した方々のリクエストが終わり次第書かせていただきたいと思っております。

 

雪蓮 :えっと、蓮華(病華)に明命、亞莎に穏、それにシャオってところかしら。

 

水無月:これだけのリクエストをいただいたので感謝感激です。個々にリクエストを下さる方々には申し訳ございませんが、もうしばらくお待ちください。

 

一刀 :本当に書くんだな?

 

水無月:もちろんです。皆様あってのこの作品ですから。

 

雪蓮 :というわけだから、もう少し待っててあげてね♪

(お知らせ)

 

いつも「江東の花嫁達」を読んでいただきありがとうございます。

 

リクエストの方もいろいろときており、大変嬉しく思っています。

 

座談でもあがりましたがクイズ(江東の花嫁達 壱四話 座談内)で正解された方々のリクエストが終わり次第、個々にリクエストされておりますものを書かせていただきたいと思っています。

 

蓮華に明命、亞莎に穏、それにシャオといった呉にはまだまだ魅力的な女の子がいます。

 

私といたしましても書いてみたいなあと思っていたところにコメントを見て驚きつつも感謝感激です。

 

つきましてはもうしばらくお待ちください。

 

最後になりましたが今後とも皆様が楽しんでいただけるよう頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

 


 
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