No.84862

涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”1章2話

hiroyukiさん

第2話です。今回一刀君の初仕事として騎馬隊につき物のアレが出てきます。

2009-07-16 23:36:44 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:13283   閲覧ユーザー数:9500

1章 2話 一刀の初仕事

 

次の日の朝、朝食を済ませた一刀は馬超と連れ立って厩へと歩いていた。

 

一刀の知識を役立てるといってもこれといって思い浮かぶものがなかったため、とりあえずあちこちを見て回ることにしたのである。

 

「なあ、馬超。ちょっと気になってることがあるんだがいいか?」

 

「んっ、なんだ?」

 

「名前のことなんだけど、性名が馬超で字が孟起だよな。でも昨日、馬騰さんがす…」

 

「こらっ!人の真名を勝手に呼ぶんじゃない。首が飛ぶぞ!」

 

馬超に首が飛ぶと真剣な顔で脅され驚愕する一刀だが、また聞きなれない言葉が出てきて頭に?が浮かぶ。

 

「くっ首って…真名って…なに?」

 

「なにーーー、お前真名を知らないのか。」

 

「知らないよ、俺の世界にそんなものなかったし。」

 

「へえ~、お前のとこには真名はないのかよ。まあいいや、真名ってのは自分の誇りや生き様を表した神聖な名のことで認めた者以外が口にしたら首を飛ばされても文句言えないくらいのものなんだ。」

 

「はぁ~、そんな風習があったんだ。(でもそんな話聞いたこと無いぞ?やっぱりパラレルワールドなのかな?)」

 

っと話てる内に厩に到着する。

 

「着いたぞ。馬は乗れるんだろうな?」

 

「まあ、そこそこは。」

 

厩の前には馬が二頭用意されていた。

 

「北郷はこっちの奴を使いな。あたしの馬の中でも一番おとなしい奴だから大丈夫だろ。」

 

「うん、ありがとう。」

 

一刀は馬の傍に行き、鞍に手をかけ馬に乗ろうとして動きが止まった。

 

「んっ、どうした?」

 

「なあ、馬超。この鞍、鐙が付いてないぞ。これじゃあ乗れないよ。」

 

「?、あぶみ?なんだそれ?」

 

今度は馬超の方が聞いたことに無い言葉に?を浮かべながら小首を傾げる。

 

「(おお、かわいい)あれ?鐙ってこの時代にはまだないんだっけ?じゃあ馬超、さっそく役に立ちそうだよ。」

 

「どういうことだ?」

 

「まあいいから、馬具を作る職人さんってここに居る?」

 

「まあ、城だから職人はいるけど呼ぶのか?」

 

「ああ、たのむよ。」

 

馬超は近くに居た兵を呼ぶと職人を呼んでくるよう伝えた。

 

しばらくすると兵に連れられて職人がやって来た。

 

「馬超様、御用でしょうか。」

 

「ああ、あたしじゃない。こいつが用があるらしいんだ。」

 

「おじさん、急に呼んでごめん。ちょっと頼みがあるんだ。鞍の両側のこの辺りにこういうものを付けてもらいたいんだ。」

 

鞍の真ん中辺りを指差し地面に絵を書き出した。

 

「鞍を固定している帯でいいんだけど…大体このくらいの長さでその先端に半月の形の金具を付けるんだ。とりあえず馬超にどんなものか感触を掴んでもらう為のものだからつま先が入れられれば形は問わないよ。どうかな?すぐできる?」

 

地面に書いた絵を使って説明する一刀とその話を聞き考え込む職人。

 

「う~ん、帯はあるからいいですけどそのような金具がちょっとないですな。」

 

「じゃあ、帯の先端を折り返して輪にしよう。これならどう?」

 

「へい、これならすぐできますな。じゃあ、帯と道具と取ってまいります。」

 

職人はそういうと駆け出していった。

 

「なあ、そのあぶみ?ってのを付けるとどうなるんだ?」

 

「馬上での安定がすごく増すんだ。馬上で武器を扱うのってすごく難しいだろ?」

 

「ああ、小さい時から鍛錬しないと無理だよ。」

 

「それがけっこう容易にできるようになるって代物さ。」

 

「へえ~、そんなものがあるなんてお前の住んでた所ってすごいんだな。」

 

と話していると職人が帯やら道具やらを持って戻ってきた。

 

…………………

「よっしゃ、できやしたぜ。」

 

「おっ、できたか。うんよさそうだ。おじさんありがとう。じゃあさっそく馬につけてっと。」

 

一刀は職人から鞍を受け取ると馬に鞍を付け、馬超の方を向いて言った。

 

「よし、できた。馬超、乗ってみてくれないか。」

 

「うっし、試してみるか。」

 

馬超が馬に乗ると一刀が帯の先の輪っかを広げつま先を入れてやる。

 

「これでよしっと。つま先に体重をかけるようにして腰を鞍から浮かすような感じで騎乗してみてくれ。」

 

「おっしゃ、こんな感じかな?おっ、なんだこりゃ。すげー安定する。ちょっと動かして見るぜ。」

 

「いいけど、それとりあえずって奴だから余り無茶するなよ。」

 

「大丈夫だって……よっ……はっ……どうどう。」

 

馬超は急旋回したり急停止したりといろいろと試していた。

 

「いや~、こりゃほんとすげーな。おい、あたしの槍ちょっと取ってくれ。」

 

「言うこと聞かない奴だな。言っておくがそれはとりあえずの奴だから余り強度はないぞ。力入れすぎると壊れるからな。」

 

一刀が馬超に槍を手渡すと馬超は槍を振り回したり突いたりと馬上戦闘の真似事をし出した。

 

「ふんっ……ふんっ……すげーな今まで馬上では難しかったことがいとも簡単にできるぜ。……たあー(ブチッ)へっ?わあああ!」

 

帯の輪にしてた所が切れてバランスを崩した馬超は落馬した。

 

「いててて……」

 

「大丈夫か!だから言ったろ、強度がないから余り力入れるなって。怪我はないか?」

 

「この程度で怪我なんかするか。しかし鐙だっけ?すげーな。これ家の騎馬隊に装備すれば相当戦力が上がるぞ。さっそく母様に言って装備してもらおうぜ。」

 

「まあ待て待て。町やその他の場所を回ってからにしよう。その方が効率がいい。」

 

「うー、じゃあさっさと行くぞ。おやじさんありがとう。ここはもういいよ。北郷ぐずぐずするな。」

 

「はあっ、わかったよ。おじさんありがとう。……馬超ちょっと待て。俺これじゃあ乗れねえって言っただろ。乗るの手伝ってくれ。」

 

「めんどくさい奴だな。」

 

馬超は一刀が馬に乗るのを手伝うと自分の馬に飛び乗り町へと繰り出していった。

 

…………………

夕方になり2人は城へと帰ってきた。

 

「ふー、馬超。お疲れさん。」

 

「ああ、そっちもお疲れ。それで成果はあったのか?」

 

「まあとりあえずはな」

 

とそこへ

 

「おねーさまー、おかえりなさ~い♪」

 

と馬超ほど長くはないがポニーテールの活発そうな少女が元気良く声をかけてきた。

 

「おっ、蒲公英。出迎えか?」

 

「もう~、おねえさまったらお出かけするなら呼んでくれたらよかったのに。」

 

「ばか、遊びに行ったんじゃねえよ。仕事だ、仕事。こいつと町や村を回ってきたんだ。」

 

そこで初めて一刀に気付いたようでしげしげと見ていた。

 

「ねえ、お姉さま。この人だれ?…あっ伯母様が言ってた天の御使いってこの人のこと?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「ふ~ん、(きゃっ、けっこういい男じゃない!ちょっと弱そうだけどやさしそうだしいっか。)ねえねえ、お姉さま。蒲公英にも紹介してよ。」

 

「?ああ、おい北郷。こいつ馬岱ってんだ。ほら、蒲公英自己紹介しろ。」

 

「は~い、馬岱っていいま~す。お姉さまの従妹なの。よろしくね、お兄様♪」

 

「おっお兄様?はは、元気な子だね。北郷一刀って言います。こちらこそよろしく。」

 

「蒲公英、母様は執務室か?」

 

「うふふ、お姉さま、2人でだなんて逢引?」

 

「あ、あい…ななななに言ってんだ!蒲公英。」

 

「お姉さまったら、真っ赤になっちゃって。か~わいい。」

 

「こっこら!」

 

脱兎の勢いで逃げる馬岱、真っ赤な顔で追いかける馬超、そして・・取り残される一刀。

 

「俺……どうすりゃいいんだ?」

 

…………………

「まったく蒲公英の奴!!……」

 

「…(はあー、戻ってきてくれて助かったよ。あのまま放置されたら途方にくれるところだった。)」

 

しばらく歩いて馬騰の執務室に着いた。

 

「母様、入るよ。」

 

2人は扉を開けて中に入っていった。

 

「お疲れ様、北郷君どうだった?」

 

「とりあえず2つほどですが、1つは馬具で俺の世界にあった鐙というのを騎馬隊に装備すれば飛躍的に戦力は上がると思います。馬超に少し試してもらいましたがかなりよかったようです。」

 

「そうそう、その鐙。母様、あれはすごいよ。馬上での安定感が全然違うんだ。試しに槍を使ってみたけど、今までは馬上でやりづらかったことが楽にできるんだ。早速装備しようよ。」

 

「へえー、そんなに凄いの?」

 

「まあ、試してもらうのが一番ですが鐙の有りと無しでは全然違いますよ。ちなみなんですが鐙があれば俺でも疾走中に騎射ができます。」

 

「ほんとかよ!あれだけ騎乗があぶなっかしい奴が騎射、それも疾走中に?」

 

「ああ、できるよ。俺が元いた世界で流鏑馬といって疾走させながら的を射抜く競技があってな、それに何度か出たことがあるんだ。」

 

「いいでしょう。鐙に関しては北郷君に任せるから先ずは2つくらい十分使用に耐えられるものを作って。できたら主要な者に試させてその上で全部隊に装備しましょう。」

 

「はい、わかりました。もう1つは作物に関してなんですが……」

 

土壌改善や新しい肥料等について案を出し説明していく。

 

「うん、今日一日としては十分な成果が得られたようね。北郷君これからもよろしく頼むわ。後、北郷君。私の真名は菖蒲、君に私の真名を許すわ。」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「母様、こいつに真名許すのか?」

 

「彼は十分私の期待に応えてくれた、真名を許すだけのことをしてくたわ。翠も鐙では相当喜んでいたじゃない。」

 

「うーー、わかったよ。確かにこいつは天の御使いだ、認めるよ。あたしの真名は翠だ。」

 

「ありがとう。俺には真名ってないから一刀と呼んでくれ。」

 

一刀はにっこりと微笑しながら手を差し出した。

 

だがうれしさの余り今日一日馬に乗って走り回っていた為、足に疲労がきていたのを忘れていた。

 

「(膝がカクッ)おっとと。(フニッ)んっ?(モミモミ)……」

 

お分かりの通り、膝がガクッときた一刀が踏ん張ると同時にバランスを取ろうと手を前に突き出したところ翠の胸を掴んで思わずもんでしまったのである。(ベタですみません。)

 

「なななな……」

 

「あー、あははは」

 

一刀はこの後の運命を悟った。

 

「なにしやがんだ!!。このエロエロ魔神!」

 

右フック一閃。一刀ノックアウト。薄れ行く意識の中一刀は思った。

 

「(エロエロ魔神って…まあいいか、やわらかかったし……)」

 

…………………

<あとがき>

どうもhiroyukiです。

 

先に謝っておきます。

 

一刀の設定を原作と少し変えたのですが言うのを忘れてました。

 

ごめんなさい。

 

原作では一刀は剣道部に所属していることになってますが、本作ではそれに付け足してじいちゃん

による修行の一環として流鏑馬を過去に何度かやらされていることにしています。

 

やっぱり馬超達がメインですから騎馬の話が多くなるはずでそれなのに一刀が馬に関してまったくの素人だとどうもなと思ったのでこのような設定を付け足しました。

 

後、設定というと実は馬超にも特殊な本作だけの設定が成されています。

 

話をドラスティックにする為に付けてみましたが詳細については追々物語の中で明かされていきますのでここでは言わないことにします。

 

今回で出会い編は終わり、次回からは反董卓連合編になります。

 

黄巾の乱はどうしたかって?

 

他の人達が鎮めてしまいました。・・すみません、すみません。

 

でも原作や演義なんかでは涼州での黄巾の乱の影響は殆ど描かれていません。

 

もっとも五胡や異民族にしてみれば黄巾党も獲物に違いない訳ですからそんな危険なところで態々黄巾党が活動するとは思えないので本作ではスルーさせてもらいました。

 

ともかく次回からの反董卓連合編ちょっと工夫を凝らしてみましたのでお楽しみにして頂けたら幸いです。

 

では!


 
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