No.847038

真・恋影無想

月神さん

3話です。とりあえずもうちょっと書き溜め分を投稿します。

2016-05-10 18:49:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1315   閲覧ユーザー数:1213

3話 継承・旅立ち

 

 

 

 

左慈と華佗と話をしてから半年。今日〝紅い満月〟が満ちる。紅い満月ってのは1年の中で1番正史と外史の空間が同調しやすくなる合図らしくその日に行くのが危険もなくベストだそうだ。

 

昨日になって華佗から手紙が届いた。

 

〝こちらから持っていけるものは多くない。小喬が書いた持っていけるもののリストを入れてある。持っていきたいものがあればダンボール箱1つまででまとめておいてくれ。では明日な。〟

 

 

 

 

持っていけるもの

・時計 ・本 ・紙 ・筆記用具 ・マッチ ・武器

 

※衣類やお金はこちらから用意し、住居が決まった時に転送します。できるだけバレたりしても言い訳の効く物を選ぶようにお願いします。 小喬より

 

 

うーん、持っていくのは最後の2つってとこか。時計は無くても問題はなし本もあちらで買うだろうし紙は貴重品だし筆記用具も基本的に筆だしなぁ。だからいるのは火を起こす為のマッチと武器……武器!?そういえば俺って武器持ってない!稽古の時の木刀は、折れそうだし真剣もあるけど稽古用の真剣じゃ向こうの本物には勝てないよなぁ。ヤバい出発今日なのに!

 

 

コンコン

 

 

「一刀おるか?」

 

 

 

「じいちゃん?開いてるよ。」

 

 

 

「一刀、今日出発するのか?」

 

じいちゃんは部屋の中で色々なものを整理していた俺を見て尋ねた。今日の夜0時紅い満月と共にこの世界を去る。名残惜しいのは惜しい。生まれ育った世界だから。

 

 

「うん……まぁね。」

 

 

「ちょっとついて来てくれるか?」

 

じいちゃんはそう言うと無言で部屋から出ていく。俺も慌ててその後を追う。

 

「入れ。」

 

 

着いたのは北郷家の庭にある倉庫だった。そこには大掃除用の道具とか色んなものが置いてある。じいちゃんが倉庫の鍵を開け中に入ると中にあるはずの物は全てなく床の真ん中に扉があった。じいちゃんはそこの扉を開け下に降りていく。上から覗くと縄ばしごがかけてあるらしい。俺もそれに伴って降りていく。

 

 

「こんなところが……」

 

 

「知らぬのも無理はない。倉庫の鍵は儂のみが持っておるし、ここの存在を知っておるのも儂とお前の父のみじゃ。それにこの地下は〝継承者〟のみが入れる場所なのじゃ。」

 

 

「継承者?」

 

 

「ようするに免許皆伝を受けた北郷家の男の身内のみが入れる地下という事じゃ。」

 

 

「あー、なるほど」

 

 

「ほれそこじゃ。」

 

 

降りきって少し進むと扉があった。その扉は鉄で出来ておりダイヤル式の金庫のような扉だった。

 

 

「ほれ、お前が開けい」

 

「暗証番号知らないんだけど…?」

 

 

「あぁ、そうか。すまんすまん。暗証番号は左から交互に〝1152704 〟じゃ。」

 

 

ついにボケが入ってきたのか?それとも今のはジョークだったのか?どっちだろ?

 

 

「開いたよ。入っていいの?」

 

言われた通りにダイヤルを回すと鍵が開き中に入る事が出来た。

 

 

「入るのはお前だけじゃ。これは〝掟〟のようなものだから気にするな。中に入ると黒い机がある。その上に巻物が置いてある。それを開きお主の父の名前の横に自分の名前を書いてこい。筆と墨は既に用意してある。それが終わったら机の横に金庫があるから先程の暗証番号で開けその中に巻物を入れろ。巻物を入れたら壁に掛けてある2振りの刀を持って出て来い。儂は外で待っておる。」

 

 

「へ?わ、わかった。行って来る。」

 

俺は中に入ると言われた通りに事をこなし金庫に巻物を入れると壁に掛けてある2つの刀を持って外へ出た。

 

 

「終わったよ。」

 

 

「お疲れ様じゃな。その刀はお主が持って行け。継承者用の刀じゃ。儂は恐れ多くて扱えなかったが今のお主なら使うに足る資格がある。刀を抜いてみろ。」

 

 

そう言われて刀を鞘から抜くと片方は薄い紅、もう片方は薄い蒼色に光っていた。

 

 

「紅が〝紅蘭-コウラン-〟蒼が〝蒼蓮-ソウレン-〟と言う。今のお前ならどちらも使いこなせる。それで身を守り愛するものを守り敵を断て。それがお主の決めた道じゃ。第98代目当主・北郷一刀。」

 

 

「わかりました。俺はたとえ相手を殺めることになったとしても自分の決めた道に従い愛する者達を守り抜く事をこの2振りの刀に誓います。」

 

 

「よし。なら良い。先に言うが死ぬでないぞ。」

 

 

「わかってる。」

 

 

「よし、なら上に戻るか。」

 

 

そう言って2人で上に戻った。その後父さんと会ったが父さんは腰の刀を見て苦笑すると俺の頭を撫で一言〝がんばれよ。女を泣かせるなよ〟とだけ言った。後から知ったが既に外史の事は母さんから聞いていたようだった。妹達も特に反論する訳でもなく〝管理者なんかに負けないでね〟、〝魏の外史を守ってあげてください〟と言っていた。及川は卒業旅行で家族と海外に行ってるようだった。なので及川には詳細を書いた手紙を残す事にした。出発まであと30分。

 

 

「ねぇ、一刀。」

 

 

「なに?母さん」

 

 

「あなたから頼まれていた向こうで使う名前と真名だけど父さんと話し合って決めたわ。」

 

 

「あぁ。性は〝柑-カン-〟名は〝奈-ナ-〟字は〝月-ツキ-〟お前の誕生月から取った。お前を表すにはこれが一番だからな。それから真名だが」

 

 

「真名は優しいという一文字で〝優-ユウ-〟にしたわ。優しいあなたにぴったりでしょ?」

 

 

「ありがとう。父さん、母さん。やっぱり名前と真名は親に決めてもらいたかったから嬉しいよ。」

 

 

「間違って本名を口にしないようにね。」

 

 

「大丈夫…だよ。多分…」

 

 

ピンポーン

家のチャイムが鳴る

迎えが来たのだろう

家族全員で玄関に集まる

 

 

「迎えに来たぞ。一刀。準備はいいか?」

 

 

玄関を開けると華佗がいた。左慈もいるようだ。玄関の先は白い空間が広がっている。一歩踏み出せばこの世界とはお別れになるのだろう。。もしかすると永遠に。それでも、家族と別れてでも俺は行かなければいけない。あちらの家族を守るために。そう決めたから。

 

 

「それじゃ行ってくるね。」

 

 

「えぇ。一刀。気をつけてね」

 

 

「親よりも先に死ぬなよ。」

 

 

「それじゃ兄ちゃんまたね。」

 

 

「兄さん。また会いましょう。」

 

 

「行ってこい。そして役目を全うして来い。」

 

 

 

「お別れは済んだか?」

 

 

「あぁ。」

 

 

「なら行くぞ。」

 

 

 

「それじゃ!行ってきます!」

 

 

「「「「行ってらっしゃい!」」」」

 

こうして俺は新たな1ページを踏み出した。

 

 

 

 

 

3話でした。いよいよ次からは三国編へと。

 

 

 

 

 


 
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