No.840574

艦隊 真・恋姫無双 109話目

いたさん

また続きです。

2016-04-03 16:16:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:823   閲覧ユーザー数:749

【 予想通り の件 】

 

〖 司隷 洛陽付近 洛水 にて 〗

 

16inch三連装砲Bの放った砲弾を難なく遮り、 科(しな)を作りながら歩み寄る一人の艦娘。 上半身を巫女のような服を着こなし、藍色のスカートが風に翻る。 黒色のタイツが……魅惑の絶対領域まで覆い隠す。

 

身体を捻る度に鍛え込まれた大胸筋が動き、ただでさえキツキツの衣服から、悲鳴を上げさせる。 内股で歩み寄る不気味な歩きに、着用している薄い黒のタイツには、ハッキリと蠢く大腿四頭筋の動きが確認できた。  

 

掛けていた眼鏡を五指の指を揃え、軽くフレームを動かし、少し鼻歌交じりで眼鏡の掛け具合を確かめると、艦娘達に話し掛ける。 

 

ーー

 

??「どぅふふふふ………何とかぁ間に合ったよぉねぇ?」 

 

天津風「───ヒィッ!!」

 

龍驤「な、なんやぁあ!? なんやぁあああ──っ!?」

 

「「「「「 (──────!?) 」」」」」

 

ーー

 

??を見て天津風が叫び、龍驤が怯えて後退り(あとずさり)する。 

 

無論……他の艦娘達も、あまりの驚きとキモさで、思わず絶叫を上げるつもりだったのだが、??から向けられる鋭い眼光に身体が縮み上がり、自然に言葉を呑み込んで閉じてしまう。

 

その者の服装は、正しく金剛型姉妹専用の服であり、??の掛けている眼鏡も間違いなく、その末妹の物と同質。 しかし、やって来た人物と知っている仲間との落差が……余りにも掛け離れていた。 

 

周辺を軽く見渡した??は、艦娘達に重大な被害が無い事を確認し、安心するかのように微笑する。 だが、明らかに訝る視線を向け出した艦娘達へ不思議そうに首を傾げた。 まるで、その理由が判らないと言わんばかりの仕種だ。 

 

??は、ほんの少し考えた後、手をポンと叩いて懐よりゴソゴソとマイクを取り出す。 そして、マイクを口許に持っていき満面な笑みを浮かべ……実に男らしい低音の美声を披露しつつ、再び艦娘達へ話し掛けて来た。

 

ーー

 

??『あらぁ~ん、私とした事が……せっかく準備したマイクを調整するのを忘れていたわぁん! じゃあ、ちょっと確認ねぇ? ………マイク音量、大丈夫ぅ……? チェック、1、2……ん、良いわねぇ、うふっ!』

 

「「「「「 ……………………… 」」」」」

 

??『みんなぁ~もう大丈夫よぉん! この私ぃこと『霧島』が来たからには~某イージス艦に乗ってる気分でぇ居てちょうだぁああいっ!』 

 

「「「「「 (────ッ!?) 」」」」」

 

戦艦棲姫「─────!?」

 

ーー

 

自称『霧島』を名乗る人物は、真っ赤に染められた分厚い唇をニッと上げる。 これで完璧………と??は思っているようだが、そうは問屋が卸さない。 この茶番劇に終止符を打つため、一隻の艦娘がツッコミを放った!

 

ーー

 

龍驤「お、おいっ! なに阿呆ぬかしてぇん! その戯言ほざこく意味、自分は分かってんのかぁ!?」

 

??「あらぁ~ん……もうバレたのぉ~?」

 

龍驤「あのな……いっぺん鏡を見てみいぃ! 違和感ありありやぁっ!!」

 

??「あらあらっ、どんなに上手く変装してもぉ……私の美貌が滲み出てしまうのは仕方ないのかしらぁん。 ああ……この傾国の美……時として罪になるのぉねぇ~? この輝かんばかりの容姿が怖いぃぃぃ!」

 

龍驤「こ、このぉ──阿呆んだらぁあああっ!!」

 

ーー

 

??の正体は、言わずと知れた──外史の管理者『貂蝉』である。

 

敵味方が警戒と唖然とする中で、いち早く龍驤が正気を取り戻しツッコミを入れるが、趙雲にメンマ………じゃない蛙に水と言うように、貂蝉には何も意に介さない。 むしろ、深みに嵌まっていく気が………。

 

そんな混沌の渦中、貂蝉の姿を憎々しげに注視する──戦艦棲姫の姿があった。

 

 

◆◇◆

 

【 混沌 その1 の件 】

 

〖 洛陽付近 洛水 にて 〗

 

戦艦棲姫が、殺気混じりの視線を貂蝉に向けた。 16inch三連装砲達も威嚇するかの如く、低い低音の唸り声を響かせる。 その方向には、正体がバレたのに関わらず霧島の衣装を身に纏う、貂蝉。

 

ーー

 

戦艦棲姫「…………………………」

 

貂蝉「もうぅ、そんなに熱い視線を受けるとぉ……恥ずかしいわぁん」

 

ーー

 

貂蝉は何故か頬を染め、両手を顎に付けながらクネクネと身体を動かす。 

 

その様子を見た艦娘の何隻かが、慌てて口許を遮る。 貂蝉の色香にあてられたか、霧島本人に不味いと思ったのかは……定かではない。 ハッキリ言えるのは、口許を押さえないければならない理由があった。 それだけだ。

 

戦艦棲姫と貂蝉…………双方の思惑に大きな隔たりがあるのは、言うまでもない。 ある意味、判ってやっちゃってる感もあるのだが。

 

───そんな視線と思惑が交錯する中、彼女に宿る関西人の気質からか、二人の間に割って入り健気にも不定の声を上げる──龍驤! 

 

ーー

 

龍驤「ちゃ、ちゃうでぇ! こんなキモいオッサ──」

 

貂蝉「だぁれがぁあああ……キモいと可愛いを掛け合わせたぁハイブリッド種のキモかわいい化け物なんてぇ言うのさぁぁぁっ!?」

 

龍驤「そないなぁ阿呆な事、ウチはぁ言うとらんっ!!」

 

ーー

 

龍驤は、貂蝉の言葉に当然ながら反論するが、その言葉が更なる飛び火となり騒ぎが広がる。

 

ーー

 

貂蝉「ひ……ひどいぃ、ひどいぃわぁ~ん! 私の可憐さと優美を併せた容姿が、まるで『航空戦艦』みたいって難癖付けるのと一緒よぉおんっ!?」

 

龍驤「な、何を突然言いだすって─────あ、あかんっっ!?」

 

ーー

 

山城「ああぁぁぁ───姉さまぁあああっ!  あの者と私達が、まさかの同類発言されてしまいましたぁ! 幾ら欠陥戦艦扱いの私達でも───」

 

扶桑「ねぇ………山城。 空は…………あんなに青いのにね……」

 

山城「姉………さまぁ?」

 

扶桑「………私の袖がねぇ……ぐすん……濡れていくの。 雨なんて一滴も降ってないのに……洛水の水だって全く被ってないのに。 可笑しいわよねぇ? だけど……ぐすぅ……ぐすん……哀しいわ。 私達が……『航空戦艦』が……!」

 

山城「───姉ぇさまぁああああああっ!!!」

 

扶桑「や、山城……ぉぉぉ………!!」

 

ーー

 

互いに抱きしめ、泣き出す扶桑型姉妹。 

 

もし、この場に伊勢や日向が居れば………四隻で号泣、互いの蟠り(わだかまり)も涙ともに流され、仲良くなっていたかも知れない。 同じ航空戦艦の道を辿る艦娘なのだから。 まあ……逆も勿論あり得る………が。

 

ーー

 

愛宕「………………気持ちは判るわぁ~」

 

高雄「……………面と向かって言わないようにね?」

 

ーー

 

北上「……………ぷっ……くくく………」

 

大井「き、北上さん……こ、声……」

 

ーー

 

龍驤「……………あちゃー!!」

 

イク「…………………」ポッチャン!

 

ーー

 

那珂「凄い………今日の霧島さん、何だか輝いてるっ!」 

 

天津風「アンタ………目は大丈夫?」

 

那珂「もちろん、何時もと違う霧島さんだって……那珂ちゃんにも判るよっ! だけど、気になるの……あのボイス! 荒々しいけど……力強く、そのくせあたたかい……!  気持ち悪いのに……神秘さが漂うなんてぇ! 」

 

天津風「はあ? ねぇ…………判る?」

 

重巡棲姫「………………ワカラナイ………」

 

ーー

 

貂蝉の起こした衝撃は、艦娘や深海棲艦に──大きな影響を与えるのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 混沌 その2 の件 】

 

〖 洛陽付近 洛水 にて 〗

 

高雄、愛宕が哀しげに扶桑姉妹を眺め、北上と大井は後ろを向いて肩を震わす。 龍驤は頭を抱え、イクも苦笑しながら洛水に潜った。

 

そして、別方向では……貂蝉の声を初めて聞いた那珂の目が輝き、天津風は……重巡棲姫と共に頷いた。 戦っていた深海棲艦と艦娘が、意思統合する珍しい光景が見れるのも、貂蝉の起こした事象であろう。

 

ーー

 

戦艦棲姫「黙レェ………ッ!!」

 

「「「「「 ──────!? 」」」」」

 

ーー

 

そんな大騒ぎとなった場所で、強烈な殺気を乗せて大音声を放つ戦艦棲姫! 

 

艦娘は当然の事、天津風と仲良く頷いていた重巡棲姫も、ビクッと身体を震わせながら距離をおき、その推移を黙って見つめた。

 

しかし、貂蝉だけは、眼鏡を指でクイッと動かして位置を直し、戦艦棲姫に対峙する。 戦艦棲姫と貂蝉が近付くと、周りの空気が集束するかのように、風と化して動きだした。

 

ーー

 

貂蝉「……何か御用ようかしらぁん?」

 

戦艦棲姫「貴様ガァ………霧島………!?」

 

貂蝉「そんな大きな声を出さなくてもぉ聞こえるわよ。 私は『金剛型 4番艦 戦艦 霧島(の偽者)』……この服装、この眼鏡に見覚えないかしらぁん?」

 

戦艦棲姫「記憶ニアル……姿ト………違ウッ!!」

 

『 (∥゚Д゚)∥。_。)∥゚Д゚)∥。_。) 』コクコク

 

ーー

 

艦娘全員が、一斉に頷いた。

 

『どう考えても──霧島と貂蝉、似ている訳が無い! って言うか、無理がありすぎる!!』と考えた結果である。 

 

実際、衣装や小物以外に貂蝉と霧島に共通する場所など無い。 だが、貂蝉にとっては予想範囲だったのだろう。 直ぐに反論を唱える。

 

ーー

 

貂蝉「うふっ! これこそぉ………近代化改修の賜物なのよぉん!」

 

戦艦棲姫「────ナ、何ダトォオオオッ!?」

 

「「「「「 (────えぇえええっ!?) 」」」」」

 

ーー

 

貂蝉の答えに唖然とする艦娘だが……有り得ない事は無い。 改二になると、前の状態から急に成長、そして強く美しく変じる者が居るのだから。 

 

だが、貂蝉の言う劇的な容姿と口調の変化をする者は、あまり居ない。 

 

作者の把握している限りでは、似ているような変化では『ボートIXC型 潜水艦』ぐらいだろうか。

 

ーー

 

貂蝉「より強い火力ぅ、より軽快な速力ぅ、そして──より美しい魅惑のボディィィィッ!! どおぉ~う? 羨ましいでしょぉぉぉう!?」

 

戦艦棲姫「………何ヲ……ホザクカト……思エバァ! ダガァ………痩セ衰エタ豚ヲ……喰ラウヨリ……肥エタ豚ヲ喰ラウ方ガ……遥カニ……食イ気ガアル!」ニヤッ!

 

ーー

 

龍驤「……………ペタッ、ペタッ───ハッ! ウ、ウチ、何してんっ!?」

 

ーー

 

貂蝉は、戦艦棲姫に身体を向けて胸を張る。 逆に貂蝉を見ていた戦艦棲姫は──口角を上げて笑う。 さぞ面白い物を見たと言わんばかりに。

 

因みに、様子を横目で見ていた龍驤が、無意識の内に思わず自分の胸に手を当てる。 そして、その直後に我へと返り、慌てて首を横に強く振る。 

 

『───なんぼウチの胸が俎板やって言うても………貂蝉を羨ましいって思うなんてぇ! ウチィ……惨めやぁぁぁ!!(龍驤 心の叫び)』

 

一時の気の迷いとはいえ、あまりにも自分のとった行動に悍ましい(おぞましい)と感じた龍驤は、心の中で絶叫し絶望した。 

 

そして、当分の間……落ち込む事になったのである。

 

 

◆◇◆

 

【 支援艦隊 の件 】

 

〖 洛陽付近 洛水 にて 〗

 

戦艦棲姫は凄味のある笑顔で、貂蝉(霧島コスプレ中)に向かい、背後の艤装へ指示を示す。 各々首をもたげた艤装は、貂蝉と洛陽に再度向けた。

 

ーー

 

戦艦棲姫「………………クククッ! 流石ダァ………コウデナケレバ………面白味ガ無イィ!! 私ノ恨ミハ……山ヨリモ高ク……深海ヨリモ深イノダァ! 貴様ヲ……コノ世界デ……轟沈サセテヤルゥッ!!!」

 

貂蝉「あらぁ~ん………私だけに艤装を向けるなんてぇ大盤振る舞いねぇ? そんな事で大丈夫ぅ? 私の仲間はぁ───」

 

戦艦棲姫「心配無用ゥ………洛陽ヲ人質ニ取レバァ………オ前達ナド……恐ルルニ足リズゥ! 動ケバ……洛陽ニ砲弾ガ………飛ブマデダァ!!」

 

ーー

 

戦艦棲姫は、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。

 

漢王朝最大にして首都になる『洛陽』……これを丸々人質に取るように進言したのは、鬼灯こと『南方棲戦鬼』と『楊奉』である。

 

白波賊が集めた情報に拠れば、あそこには皇帝と皇帝に忠義を尽くす諸侯が集うという。 つまり、今の洛陽は『宝箱』──無限の可能性を秘めた宝石類が、詰め込まれているのだ。

 

そこさえ抑えれば──人質の価値としても、命を尊ぶ艦娘としても、無視する事はできない。 幾ら艦娘が大勢居ても烏合の衆、何とでもなるのだ。 

 

事実、その行動もあった為、愛宕達は強気に出れずジリ貧に陥った! 要である扶桑型姉妹は大破、龍驤(精神的に)大破。 那珂、天津風も小破となり、無傷の者は………愛宕、高雄、イク、そして貂蝉である。

 

これだけ見ても………艦娘側の被害は甚大! 戦艦棲姫の火力も伴い、壊滅まで首の皮一枚。 勝利も目前である!

 

これで、霧島(貂蝉)を轟沈させて長年の恨みを晴らし、残りの艦娘を撃破! そして───その後で、洛陽に砲弾を撃ち込み壊滅!

 

『クククッ! ナント楽シミナァ……憂晴ラシダァ! コレデ……長年ニ渡ル……霧島ヘノ溜飲……ヤット……下ガルゥ………!』

 

戦艦棲姫の心は、嬉しそうに躍動する!

 

────だが、そんな戦艦棲姫に向かい……貂蝉が優しく微笑みながらも、水を差した。 

 

ーー

 

貂蝉「うふっ、嬉しそうねぇ~ん?」

 

戦艦棲姫「当然ダァ! 私ノ……積年ニ渡ル屈辱ヲ……晴ラセルゥ! ソノ祝イニ……貴様ラヲ血祭リニシテ……感謝シナケレバァ!!」

 

貂蝉「そぉう? じゃあ……私から祝福の言葉を贈ってア・ゲ・ル! 『相手が勝ち誇ったときぃ、そいつは既に敗北しているのよぉ』ってねぇ──」

 

戦艦棲姫「ナニィッ! 戯言ヲ───『グゥガァアアア!』──!?」

 

ーー

 

洛陽側に向いていた──16inch三連装砲Aの顔が砲撃される! 

 

砲撃を受けた顔を片方の手で押さえ、受けていない顔で辺りを警戒。 戦艦棲姫も浮かれた心を鎮め、艦娘側や周辺を探る。

 

すると──砲撃された方向に──彼女達は居た。 洛陽側とは反対の対岸に──だ! 

 

ーー

 

夕立「お待たせしました~! 駆逐艦夕立、参戦します!!」

 

不知火「期待に応えてみせましょう! 第十八駆逐隊、不知火、出る!」

 

吹雪「皆さん、司令官の策は成りました! 『特型駆逐艦の1番艦 吹雪』これより皆さんと共に──反撃を開始します!!」

 

ーー

 

そこには、三隻の艦娘が名乗りを上げて洛水へと着水した!

 

 

◆◇◆

 

【 洛水の悪夢 の件 】

 

〖 洛陽付近 洛水 にて 〗

 

珍しく、非常に珍しく……戦艦棲姫が驚愕の声を上げた! いつもは余裕に溢れ、如何なる策も──力押しで通るような気構えを見せていたのに! 何故か、この時ばかり狼狽したのだ!

 

ーー

 

戦艦棲姫「バ、バカナッ!? 貴様等ハ───部屋ヘ向カッタ筈!!」

 

夕立「お腹の痛みは、お薬を貰って直ぐに治ったよ! もう、磯風の料理なんかぁ~絶対に食べないっっっぽいっ!!」

 

不知火「………病人が治れば、付き添いなんて要りません。 普通に任務へ戻るまでですよ。 不知火に落度など……ありませんので………」

 

ーー

 

二隻の艦娘は、対岸より洛水に入り、戦艦棲姫に果敢に向かって行く。 無論、戦艦棲姫もそのままにせず、16inch三連装砲Bに砲撃を命じる!

 

ーー

 

戦艦棲姫「………邪魔ナド………スルナァァァァ!」

 

16inch三連装砲B「────グガァアアアアッ!!」

 

ーー

 

二隻の進行方向に放った砲弾は、二隻の手前に落ちるが──その前に互いの両手を一瞬押して左右に別れ、攻撃を避けた。 大きな水柱から大量の水を浴びる事になるため、その地点から更に速度を上げて突っ込む!

 

ーー

 

夕立「おっと、と、とととっ! 危なかったぁ! だけど、お腹が痛くて大人しくしてた分、いっぱいぃ、いっぱぁいっ! ──暴れるっぽいっ!!!」

 

16inch三連装砲「ガァアアアアッ!!」

 

ーー

 

不知火「おやっ? 不知火達が避けてしまったので、河岸の堤防が破壊されてしまいましたか。 ふむ……これ以上、無闇に攻撃させる訳には行きませんね。 いいでしょう……この不知火が、貴女を沈めて上げます!」

 

戦艦棲姫「ク、駆逐艦如キ………忌マ忌マシイィ………!」

 

ーー

 

駆逐艦ゆえの俊敏な動きに翻弄、戦艦棲姫の間近まで二隻が接近。 それぞれ標的が定まっているらしく、夕立が16inch三連装砲に、不知火が戦艦棲姫へと攻撃を仕掛けた。

 

★☆☆

 

夕立は、16inch三連装砲に対峙、その圧倒的な体躯を見て改めて息を呑む。 

 

夕立より何倍も差がある巨躯を誇る、戦艦棲姫の独立型艤装。 単純に考えれば、戦艦と駆逐艦……その勝敗はどちらが有利など分かる筈だ。 されど、夕立には気負いはあれど、負ける考えは無い。

 

何しろ……夕立は挑み負けて修練を積んだのだ。 巨躯で戦闘力が高く、些か変だけど憎めない漢女に!

 

ーー

 

16inch三連装砲B「ゴワァ! ゴワァァァァッ!」

 

ー★!

────★☆!

ーー★!

 

 

夕立「あはっ! 今のが攻撃っぽい? そうなんだ、そうなんだねぇ!? ふふ……ふふふ……ふふふふっ! あはははははは───っ!!」

 

ーー

 

16inch三連装砲が、大岩のように固めた拳を振り回し、夕立目掛けて撲殺せんと五月雨の如く連打する。 されど夕立は、16inch三連装砲Bに向かい底冷えする笑顔、笑い声を響かせながら、その連打を掻い潜り片方の顎まで接近。

 

ーー

 

夕立「………アノ時の恐怖に比べればぁぁぁ──ぽぉいっ!!!」カチッ!

 

ーーーー!!

ーー!!

ーーーー!!

 

16inch三連装砲B「ゴッ!? ゴブゥ! ゴギャアアアアッ!!」

 

ーー

 

夕立の片目が紅く光り、手元にある『12.7cm連装砲』を16inch三連装砲の顎下に付けて、引き金を引く! 

 

連続した爆裂音が響き、巨大な顔が強制的に天へ向けられる。 16inch三連装砲Bから聞いた事の無い絶叫が漏れた。 

 

ーー

 

夕立「………さてぇと、次は……」

 

16inch三連装砲A「ガァア───!!」

 

ーー

 

夕立が一息ついてると、夕立に向き狙いを定める……大きな顔の艤装。 夕立が背を向いてる事を狙い、16inch三連装砲Aが大顎を開く。 大顎の中身は、発射が直ぐにも出来るようにと、真っ赤になっている状態だ。

 

『艦娘は水面上に立ったまま、附近には主である戦艦棲姫の姿は居らず。 砲撃を放っても命中すれば良し、例え外れても洛水の中ゆえ水柱が昇り、それに乗じて艦娘と距離を取り直せばいい』 

 

そんな事を直感的に考えた16inch三連装砲Aであるが───急に何かを突っ込まれる衝撃と感覚を味わう! 

 

慌てて前方を見れば──夕立は、その様子に喜色満面な笑みを浮かべ、12.7cm連装砲を大顎に突っ込んでいた!

 

ーー

 

16inch三連装砲A「ゴッ!? ───ゴッフゥウウッ!?!?」

 

夕立「背中を見せれば攻撃……って、単純な反応! っぽい!!」カチッ!

 

16inch三連装砲A「ゴ────」

 

ーー

 

花火が破裂するような轟音がして、16inch三連装砲Aの頭が───吹っ飛ぶ!

 

こうして、16inch三連装砲は………夕立の目の前でユックリと……倒れる。

 

ーー

 

夕立「あれっ? もう終わり……っぽい?」

 

ーー

 

夕立は、倒れ込む16inch三連装砲を横目で見て、可愛く首を傾げるのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

義輝記を投稿した後に作り始めた本作ですが……些か長くなったので、半分にして投稿しました。 もう半分は、手直しして足したり削ったりするので、数日かかる見込みですが、なるべく早めに投稿したいと思います。

 

 


 
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