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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第10話

長らくお待たせしました漸く今年初投稿です。

何とかペースを上げたいところですが今一つ上がらず申し訳ありません。

そしていつもながら戦闘シーンは苦手ですが、それでも良ければ読んで下さい、では第10話どうぞ

2016-02-14 00:15:01 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:6436   閲覧ユーザー数:4896

官軍は洛陽で準備を整えると涼州へ向け出陣した。

 

途中で天水において董卓軍と合流したが、太守である董卓は恩人でもある馬騰に刃を向けたくなかったが朝廷の命にも逆らう訳にもいかず軍師であり親友の買駆の言に従い病気を理由に出陣せず、その代わりに張遼を出陣させた。

 

その後官軍は西へと兵を進めそして韓遂の本拠地である涼州金城郡に到着したのであった。

 

だが官軍が到着した時には韓遂が支配する金城郡を除いて涼州は一刀たちの支配下であった。

 

これは長年、涼州が異民族と戦い侵攻を押さえてきたがその褒賞などは雀の涙程度しか貰えず、そして長い間都の官人からは辺境の地として蔑視され続け、その結果漢王朝への恨み辛みが高まっていたところ一刀の檄文を聞いた各豪族も味方に付いた。

 

だがそれでも兵の数は官軍10万に対し維新軍はおよそ見積もっても5万程度である。

 

涼州の殆どが一刀側に付いたことに流石の韓遂も驚いたが、逆にこれで一刀たちを倒せば自分の取り分が増えると皮算用を弾くと大将である皇甫嵩に早期の決戦を主張。皇甫嵩も乱を長引かせる訳にもいかなかったが、兵たちの休息も必要であったため決戦を3日後とした。

 

その間に皇甫嵩らは物見などを出して一刀たちの動きを探ると一刀たちは既に金城郡と武威郡の境界で陣を構えていた。

 

そして休息を経た官軍は出陣したところ、既に西涼軍(維新軍)は二重に張り巡らされた馬防柵を構えて陣を左右二手に構えていた。そしてその両方の陣には今まで見慣れぬ牙門旗が掲げられていた。

 

それは一刀の家紋でもある丸に十文字の旗が堂々と掲げられ、既に臨戦態勢に入っている様に見えるが陣の規模はせいぜい1万程度のものであった。

 

維新軍の陣構えを見て総大将の皇甫嵩は勿論孫堅、曹操そして張遼も怪訝な表情をしていた。元々西涼は騎馬の民と呼ばれその戦い方も騎馬中心であるのにも関わらず何故一刀らはその長所を敢えて捨てて陣を構えているのか、諸将はその真意を量り兼ねていた。

 

「総大将自ら陣頭を切るなんて…」

 

「余程、あの陣で俺たちを食い止める自信があるのか?」

 

「しかし見た限りでは少しの間防げても何れは破られるわ」

 

「あの兄ちゃん、無茶苦茶しよるな」

 

張遼の言葉に曹操が反応した。

 

「あら張遼、貴女天の御遣いに会った事あるの?」

 

張遼は自分の不用意な言葉にしまったと思ったがここで今更言葉を変える訳にもいかず

 

「ああそうや。討伐の始まる以前に武威へ用事で行った時にたまたま天の御遣いと知り合って挨拶した程度やけどな」

 

張遼は一刀と会ったのは董卓が一刀たちの説得の為に動き回った時だったので、もし正直に話せば董卓にあらぬ嫌疑が掛けられる可能性があったのでとっさに私用で一刀に会った事にした。

 

「それで貴女の目に天の御遣いはどう見えたかしら」

 

「見た目はそんな強そうに見えへんかったけど、今までウチが見た男の中では骨がありそうに見えたわ。でもまさかこうやって敵になるとは思わんかったけどな」

 

「ほう…神速の張遼にそこまで言わせるとは天の御遣いの噂もあながち嘘ではなさそうだな」

 

孫堅がまだ見ぬ一刀を褒めると張遼は取りあえずいらぬ失敗を何とか誤魔化せたと思っていると

 

「ワハハハハ!あのような虚仮脅しの陣や偽物の天の御遣いを見て都の将兵どもは皆、弱腰ばかりじゃのう!」

 

皆の会話を横で聞いて大声で笑うのは今回の戦の原因を作ったとも言える韓遂であった。

 

「ほう…韓遂。テメェこの俺様に喧嘩売ってるか?」

 

「はぁ!?何やておっさん!誰が弱腰やねん!!」

 

孫堅や張遼は自分の兵を弱兵呼ばわりした韓遂に敵意剥き出しにして今にも殴り掛かりそうな殺気を出すが韓遂もこう見えても異民族と戦ってきた将、二人の言葉や殺気を無視して言葉を続け

 

「あのような陣、儂の部隊で襲えば一捻りよ。さあ皇甫嵩殿、攻撃命令を出して下され」

 

「では……韓遂殿、貴方に先陣は任せます」

 

皇甫嵩はこれ以上陣内での不協和音を避ける為、韓遂に先陣を任せることにした。

 

「次この陣に帰ってくる時は天の御遣いの首を持って帰ってくるからな。ハハハハハ!」

 

韓遂は先陣を任せると意気揚々とこの場を去ったが、残された孫堅や張遼の表情は憮然としたままで曹操は面白くなさそうにこの様子を横で見ているだけであった。

 

一方、一刀の陣頭に立つ事については最初璃々や翠などは猛反対し、一刀の作戦の内容を予め聞いていた紫苑も一刀に危険が及ぶ作戦に良い顔しなかったものの、作戦成功した場合の効果や軍師不在の現状では一刀が提案した作戦以上の提案を出す者がいない事や

 

「戦場に安全な場所などあるものか、作戦が失敗すれば遅かれ早かれ皆死ぬ運命だ。それだったら少しでも勝利を掴む率を選ぶのが当然の事だろうが、翠アンタは小難しい事を考えずに旦那の指示に従いそして勝つ為にしっかりとアンタ自慢の槍を振り回したらいいんだよ」

 

歴戦の雄である碧から言われると翠たちもそれ以上の事が言えず、紫苑も一騎打ちをしない事を条件に陣頭に立つ事を認めた。

 

一刀の心中は

 

前の世界では、俺は戦場の一番安全な場所で皆の戦う姿を見ていることしかできなかった。

大好きな皆が戦場で戦っているのに、自分だけ何もできなかったのがただ悔しかった。

もう、そんな思いはしたくない。今度は俺も皆と剣を持って一緒に戦う!

 

ようやく条件付きではあるが陣頭に立って戦う事は認められたが、本当の戦いはここから始まるのだと気を引き締めるのであった。

「お前たち!男の天の御遣いは殺しても構わぬが女の御遣いと馬一族の女共はできるだけ生きて捕らえろ!!」

 

(フフフ…男の御遣いを殺し、女の御遣いとそして今まで涼州の盟主と威張っていた馬騰やその娘たちを捕まえて儂の前に平伏して手籠めにしてくれるわ!)

 

韓遂は一刀を殺した後に紫苑たちを手籠めにしようと卑猥な考えを浮かべていた

 

そして官軍は先陣である韓遂軍3万は騎馬隊を全面に押し出し一刀たちの陣に突撃を開始する。

 

一刀の陣にいる璃々は緊張して表情を隠せずに突撃してくる官軍を見つめながら

 

「まだだよ…まだだよ」

 

兵たちに合図をするタイミングを計っていた。

 

今回の戦いで璃々は一刀の副将に務め、そして紫苑はもう一つの陣側の大将となっていた。その理由はまだ璃々には一軍の将として経験が浅いのもあるがもう一つの理由として一刀のお目付役を含んでいた。

 

今回の一刀は前回の外史では前線で戦えなかった後悔の念があるのか気が競っている節を感じた紫苑が敢えて璃々をお目付役として残し、余程の事がない限り一刀を前線に出せない璃々に監視を命じていた。

 

璃々もそれは承知で一刀には

 

「ご主人様、もし言いつけを破ったらただじゃおかないからね!」

 

約束を破った場合、璃々から何らかの制裁を予告された一刀は渋々承諾するしかなかった。

 

そして官軍が馬防柵に近づいたところ

 

「撃て――――!」

 

璃々が号令を掛けると一斉に弓矢が放たれる。すると反対の陣を指揮している紫苑も時を同じくして号令を掛ける。

 

そして左右の陣から放たれた弓矢は敵兵に次々に当たり騎兵などは落馬する。

 

弓隊は小集団がかわるがわる寸断することなく放たれ、そして現代でいうクロスファイア(十字砲火)を韓遂軍に叩き付ける。

 

十字砲火は元々防御において大きな効果を発揮する戦法で、相互に支援しあうことで攻撃側が防御側陣地へ到達することを困難にしており、更に土塁や堀、柵、逆茂木と組み合わせることで防御力は飛躍的に高まる。 前面からだけでなく側面からもが飛んでくるので、知らずに射程内へ入った場合、回避の難しい戦法でもある。

 

「何をやっているのか!前線に使いに行き部隊を左右二手に分けさせろ!!」

 

それを知らずに突撃した韓遂軍は益々犠牲者が増えるのを見て韓遂はこれ以上の損害を嫌い兵に部隊を散開させるよう指示を出す。

 

「璃々、鏑矢を放ってくれ」

 

部隊を二手に分かれるのを確認した一刀は璃々に指示を出す。

 

璃々は天に向け鏑矢を放つと鏑矢独特の音を出して合図を送る。

その合図を見た翠が崖から韓遂軍を見下ろし、その後ろにいるのが自分の隊から選び抜かれた精鋭500騎の騎馬隊。

 

「ば…馬超様、本当にこの崖から降りるのですか?」

 

兵の一人が崖の高さを見て疑問の声を上げるが翠は

 

「ああ、怖いのならこの場から帰っても構わないぞ」

 

元々一刀は横合いからの奇襲攻撃を想定して皆から提案を求めていたが、翠が何となく一言

 

「普通に奇襲かけるよりこの崖から奇襲した方が効果的じゃないか?」

 

「翠お姉さま…それは無茶だよ」

 

「それはちょっとありえないと思うな」

 

「もう少し頭使おうよ」

 

鶸や蒼、蒲公英は翠の思い付きに呆れた声を上げたが一刀や紫苑、璃々は翠の意見を聞いて源平合戦の源義経の逆落としを思い出し一瞬これが使えるのではないか頭を過ったがあまりにも危険だと考え却下しようと考えた。

 

「翠、これはあまりにも危険だ。確かに崖からの奇襲は効果はでかいが危険も多い。今まで馬から崖で降りる奇襲なんて俺が知る限りたった1例しかない」

 

「へぇ……ご主人様、その成功例を教えてくれよ」

 

翠は興味を持ったのか一刀に説明を求めると一刀は先ほど頭に浮かんだ一の谷の戦いについて簡単に説明すると翠はこれを聞いて逆に闘志を燃やすと同時に先に碧が言った「旦那の指示に従いそして勝つ為にしっかりとアンタ自慢の槍を振り回すこと」に当てはまることになると考えた翠は

 

「馬について他の国にできる事がこの西涼にできない訳がない!ご主人様、その役私にさせてくれ!!」

 

血相を変えながら崖からの奇襲を主張し、その熱意に一刀も折れ渋々認めたのであった。

 

だから翠は一刀の為にそして自分の名誉の為にもこの奇襲を何としても成功させたかった。

 

「小難しいこと考えんな!!私の背中を見ろ!!自分の腕を信じろ!!怯むな!!逃げるな!!皆、私について来い!!」

 

「はああああああああっ!」

 

気合いを入れて翠は愛馬黄鵬と共に崖を馬で下りる。

 

「ええ――い!!馬超様だけ行かせては西涼の男が廃るぞ!!下りるぞ!!」

 

「おお――!!」

 

翠が兵士たちの返事を聞かず先に崖から下りるとようやく兵士たちも覚悟を決めて翠に続く。

 

「な、何っ!?あの崖を下りてきただと!?」

 

韓遂軍の兵士たちは翠が近くに来て漸く気付いたが時既に遅く

 

「うおおおっ―――!!我が白銀の槍の剛撃!!その身に受けてぶっ飛びやがれ!!」

 

先行した翠は韓遂軍の横っ腹に突撃して最初に当たった兵士を振り回した槍の遠心力で吹っ飛ばす。

 

そして吹っ飛ばされた兵士が他の兵をも巻き込み部隊に穴が開くと同時に追いついた兵士たちが突入して部隊を食い破る。

 

まさか来るはずの無い場所からの奇襲、馬に乗って崖を下りるなんて騎乗技術に自信がある自分たちでも出来ない芸当をやってのけた翠たちの横撃に韓遂隊の二分した右翼に動揺が走る。

「よし。翠お姉さまの攻撃が成功したね。私たちも韓遂のクソ親父に一泡吹かせるよ!!突撃――――!!」

 

「うぉぉぉっ―――――!!」

 

伏兵として潜んでいた蒲公英は自分の手勢と翠の残りの部隊を引き連れ、翠の横撃に動揺した韓遂軍右翼部隊に突撃する。

 

そして蒲公英の突撃により韓遂軍右翼は崩れて行き、そして韓遂軍の左翼は一刀たちの激しい弓矢の攻撃を受けて足止めを受けている状態。

 

「えええい!!どいつもこいつも何をしておる!!馬を引け!!この儂自ら出陣して馬超や御遣い共を討ち取ってくれるわ!!」

 

自軍の不甲斐無さを見て韓遂は自ら本隊を率いて出陣する。

 

「蒲公英!ここはお前に任せる!私は韓遂の本隊に掛かる!!」

 

「分かった!翠お姉さま、気を付けてね!!」

 

翠はほぼ崩壊した韓遂軍右翼を蒲公英に任せそして蒲公英に預けていた部隊とも合流し、韓遂軍に突撃を敢行する。

 

「敵の本隊先頭に弓矢を集中させなさい!!」

 

翠の動きを見て紫苑は敵の出鼻を挫くべく敵本隊に弓矢を集中させる。

 

この攻撃により韓遂隊本隊は出鼻を挫かれ翠の突撃をまともに受ける事に後手に回ってしまう。

 

「おのれ馬超!おのれ御遣い!!」

 

翠の勢いに負け味方がじりじり後退するのを見つめながら韓遂は怒りを露わにする。

 

「韓遂様!このままでは味方は総崩れになってしまいます!!一先ず引いて体勢を立て直しては…」

 

「馬鹿者!!この儂に孫堅、張遼に笑われろと言うのか!!」

 

一人の部下が韓遂に撤退の忠告をするが、韓遂は孫堅たちに大見得切った手前このまま無様に退却はできないとこれを拒絶。

 

「それよりも貴様前の部隊に行って反撃に討って出ろと言ってこい!!」

 

韓遂は忠告した部下に命令を下すが、その部下は動こうとはしない。

 

「おい!貴様…な、何っ!?」

 

韓遂はその部下のところへ行くと部下はそのまま前のめりに倒れ、背中には深々と矢が突き刺さり、鏃が胸まで突き抜けて絶命していた。

 

韓遂は一瞬何が起きたか分からず、突然と倒れ込んだ部下を見てはっとなり周囲を見回し矢が飛んで来た方向を見る。

 

飛んで来たと思われる方向を見ると紫苑の陣があり、陣の櫓には紫苑が愛弓である颶鵬(この世界で再び作られた物)を構えており、韓遂は紫苑と目が合った様に感じたが、紫苑の目は獲物を狙うような目で遠くからも殺気を感じ、韓遂はこの場に居たら紫苑に射殺されると思い逃げようとするが体が何故か動かない。

 

そして紫苑から弓矢が放たれ、その矢は吸い込まれるかの様に寸分違わず韓遂の額の真ん中を貫き

 

「ば、馬鹿な……この儂がこのようなところで死ぬとは…」

 

韓遂は驚愕の表情をしながらそのまま意識を闇へと落とし、二度と意識が戻ることがなかった。

 

「手応えあったみたいね」

 

敵将韓遂が倒れた姿を櫓から見た紫苑は微笑を浮かべながらそう言ったのであった。

 

 


 
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