No.828851

機動戦士ガンダム THE RED WARRIOR #2

古淵工機さん

第1話:http://www.tinami.com/view/828080


お待たせしました。今回はレッドウォーリアの初実戦になります。

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2016-02-05 22:03:49 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:819   閲覧ユーザー数:802

≪U.C.0079 11.15. 地球連邦軍ワルシャワ基地≫

「…馬鹿な!紅い…ガンダム…だと!?」

 

ジオン公国軍のパイロット、イワン・ソコロフは面食らった。

目の前に立っていたMS…それは他の部隊からも伝達されていた連邦軍の試作機『ガンダム』そのものだったからだ。

ただ、そのガンダムは違っていた。全身を赤く塗装されたその機体は、ソコロフの脳裏に鮮烈に焼き付けられたことであろう…。

機動戦士ガンダム THE RED WARRIOR

 

Episode.2 初陣

大破したジム・コマンドのコックピットから身を乗り出し、アラン・バークスが叫ぶ。

「ヤマト!何度も言うがそいつはまだ未完成なんだ!無茶はするな!」

「へへ、わかってますって!」

その機体…HW-78/RW『ガンダム・レッドウォーリア』に乗り込んだ連邦軍パイロットのヤマト・ケンザキは、目の前のドムに狙いを定める。

 

「それじゃあいっちょ…やってやりますか…、どわっ!!」

気合いも十分、いざ足を踏み出そうとしたところで爆風を受け、吹き飛ばされるレッドウォーリア。

何と後ろには伏兵としてザクⅡFZ型が2機、ドムが1機構えていたのである!

「ふん、その様子だとパイロットはその機体の扱いに慣れていないようだな!かかれ!!」

「くそっ!ジムとは流石に勝手が違いすぎるぜ!武器の使い方を…うわ!!」

さらに背後からジャイアント・バズーカの一撃を受ける。

 

「野郎っ…味なマネしやがって!こいつでも喰らえってんだ!!」

ようやく、コンソールの中から使えそうな武器を発見したヤマトは、コックピットのキーを操作して背面のハイパーバズーカを起動させる。

 

「ふん…そんなノロマでは折角のガンダムも形無しだな!」

1機のドムが、レッドウォーリアの右側から迫り、ヒートサーベルを構え突撃を駆ける!!

「くそっ…調子に乗るんじゃねえええぇぇぇぇぇっ!!!」

ヤマトはレッドウォーリアの右腕を大きくドムに向けて振り回す。

右腕部に備え付けられたビームサーベルを使い、反撃を開始したのだ!

 

「ば、馬鹿な…ぐわぁぁぁぁぁ!!」

ドムはコックピットを貫かれ、動きを止める。パイロットを失ったドムはやがて地に膝をつき、そのまま力なく崩れ落ちた。

 

先ほどまでの威勢から一転、動揺するソコロフ。

「馬鹿な…貴様は…貴様は一体、何なんだっ!?」

「へっ、自慢じゃアないが…呑み込みは早いもんでね」

 

すると突然、ヤマトの背後から2機のザクが迫りくる!

「くどいっ!!」

レッドウォーリアが身を翻したその刹那、ザクの胴体装甲は一瞬にして真っ二つに溶断され、こちらも制御を失い沈黙する。

だが、残ったもう1機のザクが、マシンガンをレッドウォーリアめがけ発砲をかける。

 

「…っ!」

瞬間、レッドウォーリアはハイパーバズーカを構え、マシンガンを打ち続けるザクの胴体めがけ直撃を浴びせる!

こちらはコックピットブロックに風穴を開けられた格好で崩れ落ち、沈黙したのであった。

「この…俺の部下たちをよくも…!いい気になるなよ、この若造がぁ!!」

ヒートサーベルを構え、ソコロフのドムが飛びかかる!

ギリギリまで間合いを詰め、ホバージェットのスピードで突撃する戦法だ。

ハイパーバズーカで迎撃を試みるが、ことごとく回避するドム。そうこうしているうち、バズーカの弾数は少なくなっていった。

 

(…くそっ、やっぱ相手もベテランだぜ。どうする!?)

少しずつ焦りの色を見せ始めるヤマトに、アランの声が響く!

「ヤマト!脚だ!脚を狙え!!」

「…ええい!これでどうだぁっ!!」

最後の1発…ヤマトはドムの右足に狙いを定め、トリガーを引いた…!

 

「ぐっっ…しまった!ホバージェットをやられては…」

バランスを崩しスリップするソコロフのドム。間髪入れずにヤマトはビームサーベルを構え突進する!

 

「でやあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「く、来るな…来るなぁっ!!」

それは一瞬だった。

レッドウォーリアの右腕から展開される光の刃が、ドムの胴体を切り裂き、切り離された上半身が宙に舞った。

下半身はその場で力なく崩れ落ち、上半身もやがて重力にひかれて地上へと激突した。

 

「…か…か…、怪物……だ…」

薄れゆく意識の中で最期にソコロフが見たもの。

それは、爆炎の真っ只中にそびえるレッドウォーリア…いや、ソコロフには悪魔か、鬼神か、はたまた死神に見えていたのかもしれない…。

「…どうした、ヤマト?」

ジャブローへの出発を前にして、神妙な面持ちで悩むヤマトに、アランは声をかける。

 

「…いや、ちょっとね…あの機体で初めての実戦を経験したわけなんスけど…」

「?」

「…今になって震えが止まらないんですよ。あの時は無我夢中で目の前の敵を排除するのに精いっぱいだった…生き延びたい、ただ一心でさ」

「ヤマト…」

 

「それが、考えてみたら…あのジオンの兵隊も人間なんだって。あいつらも本当は生きたかったんだろうなって…それ考えちゃうと、なんかこう…ビビっちまってさ…へへ、軍人らしくもねえ」

その話を聞いたアランは、頭を掻きむしりながらこう告げた。

「…ヤマト、それが当たり前なんだ。俺たち軍人ってのは常に死の恐怖と隣り合わせなんだ。戦争ってのは怖いもんだ…俺だって怖い。お前と同じさ。誰だって死ぬのは怖い」

「でも、こんなんでビビるなんて俺…」

 

「それでいいんだ。ビビッて当たり前なんだ。国のためだ正義のためだって言えば聞こえはいいが、最前線で戦う俺らにとってみりゃ話は違う。生き延びることがすべてだ。みんな生き延びたいんだ。死の恐怖を感じない人間なんていやしない」

「…アランさん…」

「…そして、生き延びたいからこそ…俺たちは強くならなくちゃならねえ。逃げちゃいけないってのはそういうことだ」

 

…いつしか、ワルシャワの陽は傾いていた。

基地の片隅にそびえたつレッドウォーリアは、その赤い機体に夕陽の光を映していたのだった…。

かくして、赤き闘士が初陣を飾った一つの戦いが終わった。

だが、それはこれから彼らを取り巻く、数々の厳しい激戦の、ほんの序章にすぎなかったのである…。

 


 
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