No.827999

恋姫英雄譚 鎮魂の修羅22の2

Seigouさん

冀州拠点(パート2)

2016-02-01 09:36:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2243   閲覧ユーザー数:1280

拠点・斗詩、猪々子

 

 

 

 

一刀「よし、こんな所かな」

 

斗詩「お疲れ様です、一刀様♪」

 

真直「ようやく終わりましたね」

 

ただいま、真直の執務室にて幽冀州の条約精査が終わっていた

 

用いられるのは、主にお互いの領土の不可侵、貿易の自由化、通行税の廃止

 

もちろん、これらの内容はすぐには適用されない、色々な下準備の後に施行される予定である

 

いきなり関所や通行税を廃止してしまったら民衆のいらぬ混乱を招きかねない為である

 

時間を見て徐々に浸透させていく予定である

 

真直「それにしても、北郷殿の出す案はどれもこれも画期的ですね」

 

斗詩「はい、幽州での施行結果を見ても採用すれば色々な得点があると分かります♪」

 

二人の手には、一刀が幽州から持って来た幽州で一刀が施行した法や制度、施設を敷いた後の結果が記された資料があった

 

この時代の価値観から見ても、その成果は目を疑うものである

 

特に政の効率化、経済の活性化、治安情勢の改善が突出していた

 

真直「色々と勉強になりました、こんなに充実した時間を送ったのは初めてかもしれません♪」

 

斗詩「一刀様がこの冀州に来てくれて本当に良かったです♪」

 

一刀「そう言ってくれると、こっちも嬉しいよ・・・・・これからは、お互い協力し合っていこう」

 

斗詩「はい、もちろんです♪」

 

真直「これだけ世話になったのです・・・・・約束します、私の目が黒い内は、冀州と幽州が争い合う事は無い事を」

 

一刀「こっちとしては未来永劫無くしたいけどな」

 

ようやく仕事が一段落し、お茶を一杯飲もうとしたその時

 

猪々子「いよ~~~~~♪終わったか~~~~♪」

 

突然、トラブルメーカーが殴り込んできた

 

真直「猪々子、もう少し静かに出来ないの?」

 

斗詩「そうだよ~、今ようやく終わって一服しようと思っていたのに~・・・・・」

 

猪々子「そりゃ良かった♪アニキ、ちょっとあたいに付き合ってくれよ♪」

 

一刀「別にいいけど、どこにいくんだ?」

 

猪々子「ちょっとした運試しさ♪」

 

右手の親指と人差し指を繋げて輪っかを造り、歯を見せて笑う猪々子に斗詩と真直は呆れていた

 

真直「またなの?相変わらず懲りないわね・・・・・」

 

斗詩「もう止めときなよ、文ちゃ~~ん、あんなのお金の浪費にしかならないよ~・・・・・」

 

猪々子「二人とも分かんね~かな~~、あの爽快感が良いんじゃないか~~~♪」

 

一刀「・・・・・その言い分だと、これから行く所は賭博関係の所と考えていいのか?」

 

猪々子「おうよ♪運試しにはもってこいだぜ♪」

 

一刀「関心はしないな、そう言ったものは大抵運営側が勝つ仕組みになっているんだぞ」

 

斗詩「一刀様の言う通りだよ~、じゃないと賭博場が潰れちゃうんだから~」

 

猪々子「な~~に言ってんだ、そういった所から勝つのが面白いんじゃんか~~♪」

 

真直「下らない、そんなもので勝ったって、何の自慢にもならないわよ、私は絶対に行かないわよ」

 

そう言って、執務室から退席する真直

 

猪々子「ちぇっ、相変わらず付き合い悪いな・・・・・あんな堅物真直は放っといて、さっそく行こうぜ~♪」

 

そして、一刀と斗詩の手を取り気分良く部屋を飛び出す猪々子

 

一刀「おいおい!俺は行くと言った訳じゃ・・・・・」

 

猪々子「はい、今言った~♪」

 

一刀「今のも入るのかよ!!?」

 

斗詩「文ちゃん、一刀様に迷惑掛けちゃ駄目~~!!」

 

そんな二人の言い分は猪々子の耳には入らず、猪々子は街に繰り出すのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斗詩「文ちゃ~~ん、もう止めとこうよ~、絶対に勝てないんだから~」

 

一刀「その様子だと、相当に負けが込んでいるみたいだな・・・・・ちなみに、いくら負けてるんだ?」

 

斗詩「・・・・・お耳をお貸し下さい・・・・・(こしょこしょ)」

 

一刀「ふむふむ・・・・・い"っ!!!??」

 

耳元で告げられる金額に一刀は度肝を抜かされる

 

一刀「マジか・・・・・」

 

斗詩「はい、私もたまにお金を工面させられているんです・・・・・」

 

一刀「い~~しぇ~~~、いい加減目を覚ました方が良いぞぉ~~・・・・」

 

斗詩「そうだよ~、いい加減止めないと本当に破産しちゃうよ~~・・・・・」

 

猪々子「大丈夫、大丈夫♪負けた分は取り返せばいいんだって♪」

 

はい、取り返すとか言っている時点でアウツ

 

どうしても負けられない金をギャンブルで失い、それを取り返す為にさらなる金をつぎ込み、雪達磨方式に負けた金額が増えていく

 

この時、冷静な判断力があれば自分が底の無い泥沼に足を踏み入れている事に気付くはずだが、大抵は気付かない

 

そんな時は、誰もが熱くなっているからである

 

ある程度負けた時点で、『やっぱりギャンブルは怖い、高い授業料だった、けどまあまあ遊ばせてもらったからいいや』などと言って止める事が出来ればそれでいいのである

 

しかしそれができれば、誰もギャンブルのせいで多額の借金を背負ったり、大事な家庭を崩壊させたり、仕事を辞める羽目になったりしないのであろうが

 

人はギャンブルで儲けようとしてではなく、負けた分を取り返そうとすると、気付けば後戻りできなくなる

 

それまでの日常から遠く離れた地点に連れ去られてしまうのである

 

そこから戻る為には、さらなる金をつぎ込まねばならない

 

まさに泥沼

 

もちろん、戻れる保証はないし、大抵の場合は戻ってくることは無い

 

ギャンブルの魔力、侮るべからず

 

猪々子「次こそは勝つって、次こそは~♪」

 

そんな典型的なキャンブル中毒患者が言う台詞を吐き、ルンルン気分で大通りを進んでいく猪々子

 

その時、大通りの人だかりの中で見知った二人と鉢合わせになった

 

華雄「ん?おお、文醜ではないか」

 

梨晏「やっほ~、猪々子♪」

 

猪々子「よう、華雄と梨晏じゃん♪」

 

どうやらこの二人は真名を預け合ったようだ

 

元が似た者同士なので、意気投合する要素が多々あったようである

 

華雄「北郷と顔良もいるのか、何処に行くのだ?」

 

斗詩「文ちゃんに付き合わされてるんです・・・・・」

 

一刀「何でも、なにかの賭博に行くそうだぞ」

 

華雄「賭博だと?」

 

梨晏「わぁ~~、面白そう♪ついて行っていい?」

 

猪々子「おう♪大歓迎だぜ♪」

 

そして、二人を道連れにし、裏通りを進んでいき辿り着いたのは

 

「今度は俺の番だ!!うりゃあ!!」

 

ちゃり~~~ん

 

「くっそ~~~、てめ~~の総取りかよ!!?」

 

「へへっ、悪いなてめえら♪」

 

「も~~、なんで今日はこんなについてないのよ!!」

 

「今日は調子良いわよ~~♪」

 

チャリチャリ~~ン

 

「くっそ~~、また目なしかよ!!」

 

「ちっくしょ~~、ついてないぜ・・・・・」

 

「きゃ~~~、また勝っちゃった♪」

 

「ちっ、しけてるぜ・・・・・」

 

「今日は撤退だな・・・・・」

 

「え~~~、帰っちゃうの~~、これからが良いところなのに~~~」

 

「てめーが良くても俺達にとっちゃ厄日なんだよ!!」

 

多くのむさくるしい男達や、姉御肌の女性達が三つの賽を落し、銭を賭け合っている場だった

 

猪々子「やっぱ勝負と言えば、賽子三つで一発勝負っしょ♪」

 

要するに、チンチロリンである

 

しかしおかしい、チンチロリンと言えば日本が発祥の大衆的かつ伝統的な賭博の一つのはずである

 

なぜに中国でこんなものがあるのか、一刀は不思議でしょうがなかった

 

猪々子「よう、今日も投げに来たぜ♪」

 

「おお~、文醜将軍じゃないですかい♪」

 

「どうぞどうぞ、ここに座って下さい♪」

 

どうやら、猪々子は相当な常連でここの殆どの人間に顔を覚えられているようだ

 

将軍という事もあって、賭場にも上下関係があるらしく、子役の二人が猪々子が座る所を空け、猪々子がその間に座る

 

「あれ?今日は顔良将軍だけじゃないんですね」

 

猪々子「ああ、こいつらも仲間に入れてやってくれ♪」

 

斗詩「言っておくけど、私は絶対にやらないよ、文ちゃん」

 

華雄「私も遠慮しておこう、このような下らない遊戯、時間の無駄だ」

 

梨晏「う~~~ん、私も決まり事が分からないから、見学ってことで」

 

猪々子「おいおい、どいつもこいつも度胸ね~な~・・・・・アニキはどうだ?」

 

一刀「やってもいいけど、俺も暫く様子見をさせてもらう」

 

「なんですか?連れてきた割には煮え切らないみたいですね」

 

猪々子「気にすんなって、まずはあたいがこいつらに見本を見せてやるからよ♪」

 

「負ける見本ですか~♪」

 

「文醜将軍にはしこたま儲けさせてもらってますからね~♪」

 

猪々子「ざ~~んねんだったな~~♪今日こそはお前らをギャフンと言わせてやるぜ♪」

 

「何かいつも似たような台詞を言って、その度に負けて帰ってるじゃないですか~♪」

 

「そうですよ~、私達は懐が温まって万々歳なんですけど♪」

 

猪々子「そう言っていられるのも今の内だぜ~♪何せ今日のあたいには天が味方してくれているからな♪」

 

「は?天ですって?」

 

「将軍、負けが込み過ぎてどうにかなっちまったんですかい?」

 

猪々子「精々ほざいてるがいいぜ♪な~、アニキ~♪」

 

一刀「おいおい、俺が付いているから必ず勝てるとか、おめでたい事を考えてるんじゃないだろうな?」

 

梨晏「ちょっと、大丈夫なの?」

 

華雄「なんだか不安になって来たぞ」

 

斗詩「文ちゃ~~ん、一刀様は福の神じゃないんだよ~」

 

猪々子「今日こそは大丈夫だって~♪なにせあたいは昨日の夜の練習で、あと一賽で四ゾロだった程の女だぜ♪」

 

華雄「それは負けたという事だろう?」

 

猪々子「あと一賽ってことは、上り調子ってことじゃ~~ん♪」

 

斗詩「ここまで自分本位に考えられたら、私ももっと楽出来るのかなぁ・・・・・」

 

一刀「斗詩、お前の苦労には泣かされるよ・・・・・」

 

ここのチンチロリンは、親役が5回賽を振って目が出ればそれを採用し子役に順番を回す

 

子役は3回振るう権利が与えられ目が出れば次の子役に順番を回すというルールである

 

ちなみに、賽が入れられるのはラーメンのどんぶりである

 

そして、いざ、勝負!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                       ざわざわ

 

          ざわざわ

 

               ざわざわざわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「あ゛~~~~~!!!ちっくしょ~~~~!!!あと少しで2ゾロだったのに~~~~!!!」

 

二周回っていきなり雲行きが怪しくなってくる

 

一周目は、二の目が揃うものの、親が三の目を出していたのでもちろん負け

 

チャリチャリ~~~ン

 

猪々子「だあああああああ!!!また目無しかよ!!!」

 

「はい、全額払い~~♪」

 

「ご馳走様です、文醜将軍~~♪」

 

「これで明日も楽できますよ♪」

 

猪々子「あ~~も~~、なんでなんだ~~~!!!?あたいに何が足りないんだ~~~!!!?」

 

これは、ギャンブルなどで不ヅキが続いている時、誰もが陥る思考パターンの一つである

 

猪々子「大丈夫だ、三度は転ばないぜ!!」

 

そんな、『これ以上、不運は続かない』とかいう思想は、何の根拠もない希望的観測に過ぎない

 

9回連続で丁が出たからといって、10回目に半が出るとは限らないのだ

 

ギャンブルを嗜む人なら知っての通り、不運なんてものは続く時はいつまでも続くものである

 

そして、この『続くはずがない』という希望的観測、願望が外れると人は

 

猪々子「どうしてなんだよ~~~!!!こんな馬鹿な、あってはならないことが、どうして!!!?なんでこんな、こんな理不尽なことがあたいにばっかり!!!」

 

と、ひたすら嘆く

 

しかし、ギャンブルというのはこの『あってはならないこと』『こんな理不尽なこと』が続くから面白いのであり、かつ怖いのだ

 

負けている時、自分の希望的観測に振り回される事なきよう、常に冷静さを忘れてはならないのである

 

その冷静さが勝利への第一歩となるのであるが

 

猪々子「どうなってるんだよアニキ~~~~!!!」

 

華雄「文醜よ、そういう問題ではなかろう」

 

梨晏「そうだよ~、こんなのどう転んだって運否天賦なんだから~」

 

斗詩「いい加減それくらいにしときなよ、文ちゃ~~ん」

 

猪々子「ええ~~い、止めてくれるな!!!三度目の正直だ!!!あたいの全財産張った~~~!!!」

 

そうほざきながら、財布の中身を全部引っ張り出す猪々子

 

最早冷静さの欠片も無い

 

そんなヤケクソの自暴自棄状態の猪々子を見て

 

一刀「ったく、もう見ていられないな」

 

ようやく一刀が重い腰を上げる

 

一刀「交代だ、猪々子」

 

猪々子「え?アニキ?」

 

一刀「ここからは、俺が賽子を振るう」

 

そして、猪々子と交替し子役として出番を待つ一刀

 

親役が四の目を出し、次々に子役が賽を投げ、目無しが続き最高の目が二の目と続いていく

 

そして、とうとう一刀の出番がやって来た

 

梨晏「大丈夫なの?一刀」

 

華雄「北郷が投げたからといって変わりがあるとは思えないが」

 

斗詩「私もそう思いますけど」

 

猪々子「頼むアニキ~~~!!!こいつらに目にもの見せてやってくれ~~~!!!」

 

一刀「なに運試しに期待してるんだよ」

 

そして、手の平で数回賽を放り、どんぶりの中に無造作に放る一刀

 

      ざわざわ

 

                           ざわ

 

           ざわざわざわ

 

チャリチャリ~~~ン

 

「なな、何ぃ~~~~!!!??」

 

「いきなり五の目だと~~~!!!??」

 

斗詩「うわっ!!凄い!!」

 

梨晏「これって、かなり良いってことだよね!」

 

華雄「ああ、六が一番強い目だから、二番目に強い目という事だ!」

 

猪々子「すげ~~ぜアニキ!!!あたいもこんな目なかなか出せないのに!!!」

 

そして、三周目は文句無に一刀が勝ち、親を含めた子役達から賭けた金額をそのままかっさらう

 

                          ざわざわざわ

 

      ざわざわざわざわ

 

              ざわざわざわ

 

そこから一刀の大進撃が続いていく

 

次々と、親役子役を上回る目を捻り出し、殆んど一人勝ちの形を作っていく

 

そして、五周して、一刀に親役が回って来た

 

「ちっくしょ~~~、なんでこんな良い目が揃うんだよ・・・・・」

 

「まさか今度も・・・・・」

 

「いや、流石にそれは無いだろう・・・・・」

 

「ああ、こんな事がそうそう何度も続くはずがない」

 

「そうだ、これでまた良い目が出たら、俺は天を呪うぜ・・・・・」

 

猪々子「頼むぜアニキ~~~、親が目無しを出しちまったらそこで終わりなんだからなぁ~~~」

 

斗詩「文ちゃん、あまり期待し過ぎると酷い目に合うよ~」

 

梨晏「でもでも、もしかするかもよ♪」

 

華雄「ああ、ここまで来ると運命的なものを感じる」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

そして、眼前にやって来たどんぶりと向かい合う一刀

 

掌の上で、チャッチャと賽を放り、どんぶりの中に落す

 

                      ざわざわざわ

 

     ざわざわ

 

                                 ざわざわざわざわ

 

ちゃりちゃり~~~~~ん

 

猪々子「あちゃ~~~~、目無しか~~~」

 

「ほっ、よかったぜぇ~~~~」

 

「そうだよなぁ、そんな事がいつまでも続いてたまるかってんだ」

 

「いくら天の御遣い様でもね~~」

 

遊戯を続けていく間に、周りは一刀が天の御遣いという事に気付いていた

 

この前の武闘大会の事もあり、ここ冀州では一刀の顔はかなり知れ渡っているようだ

 

梨晏「でも、まだ4回あるんだから」

 

華雄「ああ、ここからが本番だ」

 

そして、再度賽を落とす

 

                ざわざわ

 

      ざわ                          ざわ

 

            ざわざわ

 

チャリリ~~~ン

 

梨晏「あ~~~~、また揃わないか~~」

 

猪々子「おいおい、頼むぜアニキ~~~、目が出なきゃ無条件で負けが決まっちまうんだからな~~~」

 

一刀「分かってるさ、最後まで話し掛けるな」

 

そして、続いて振るっていくが、4度続けて目が出ない

 

「ふぅ~~~、心臓が縮む思いだぜ・・・・・」

 

「御遣い様が賽を振るう度に手が震えるわ・・・・・」

 

「でもあと一回だ、これで何とかなるだろう♪」

 

「ええ、あと一回で良い目が出るなんて、流石に無いわよ♪」

 

猪々子「ア~ニ~キ~~~~!」

 

まさに天に祈る気持ちで、一刀の背中にしがみ付いてくる猪々子

 

一刀「ああもう、振れないだろうが、離れろ」

 

斗詩「そうだよ文ちゃ~~ん」

 

梨晏「ここまで来たらジタバタしないの!」

 

華雄「ああ、後は運を天に任せろ!」

 

そして、梨晏と華雄が猪々子を一刀から引き剥がす

 

猪々子「頼むぜアニキ~~~!これを外しちまったら、あたいは文字通り破産なんだからな~~~!」

 

一刀「破産する様な行いばかりしているからだろう、まったく」

 

そして、掌で賽を転がしどんぶりの真上に手を持っていく

 

ごくっ

 

そして、誰しもが唾を飲み込む気持ちで最後の一投の如く、三つの賽が一刀の手から落された

 

        ざわざわざわ

 

     ざわ

 

                             ざわざわ

 

             ざわざわざわざわ

 

チャリチャリ~~~~ン

 

そして、恐る恐るどんぶりの中を覗き込む一同

 

「なななな、なにぃ~~~~~!!!!??」

 

「そんな馬鹿な~~~~~!!!!」

 

「こんなの無いわよ~~~~!!!!」

 

どんぶりの中の賽は、四五六(シゴロ)の数字を示していた

 

これは一見目無しに見えるが、この場合は別である

 

其々が賭けた金額の二倍払を強いられ、しかも親役がこの目を出せば、無条件で勝ちが確定するのだ

 

猪々子「すげーぜアニキ~~~♪♪♪こんな馬鹿勝ちしたの初めてだ~~~♪♪♪」

 

斗詩「これなら、これまで負けた分は取り返せてます、ありがとうございます一刀様♪これで文ちゃんは破産しなくて済みます♪」

 

梨晏「さっすが一刀だね~~♪」

 

華雄「不思議なものだ、お主は真に福の神に愛されし人間なのか?」

 

一刀「そんな訳ないよ、偶然に決まっているじゃないか」

 

猪々子がまるで子供の様にはしゃぎまくっている中で、他の者達は完全に意気消沈していた

 

まるで通夜か葬儀の最中のようである

 

一刀「これで気が済んだろ、もう・・・・・」

 

そして、勝った分の金銭を集め、立ち上がろうとする一刀だったが

 

猪々子「よっしゃ~~~、これを全部賭けるぜ~~~♪」

 

一刀「は、え!!?」

 

斗詩「ちょっと、文ちゃん!!?」

 

これで勝ち逃げしようとしたら、なんと猪々子が勝手に勝った分の金銭を全賭けしてしまった

 

華雄「おいおい、何を考えているんだ!!?」

 

梨晏「そうだよ、次も勝てるとは限らないんだから、それくらいにした方がいいよ!!」

 

猪々子「大丈夫だって、ここまでツイていれば次も必ず勝てるって♪これまでの分を取り返して、さらには儲けることが出来ればそれにこしたことはね~~ぜ、頼むぜアニキ~~♪」

 

一刀「・・・・・もう俺はやらないぞ」

 

猪々子「・・・・・は?」

 

一刀「は?じゃないっての!自分で賭けたんだから、責任を持って自分で振れ!」

 

猪々子「何言ってんだよ!!?アニキが投げてくれないと意味が無いんだよ!!」

 

一刀「俺はもう止めると決めたんだ、勝手に自分で賭けたんだから、最後まで責任を持て!!」

 

斗詩「そうだよ文ちゃん~~」

 

華雄「やったことの責任は自分で取る、それが筋というものだ」

 

梨晏「猪々子は将軍なんでしょ、みっともない事をしないの」

 

猪々子「そんなの無いって!!今の無し、今の無し!!!今の張りは止めた!!!」

 

「将軍、ここの取り決めは知っていますよね♪」

 

猪々子「う・・・・・」

 

「その通りです、一度賭ければ途中で降りられない事は、ご承知ですね♪」

 

猪々子「・・・・・アニキィ~~~~」

 

一刀「絶対にやらないからな」

 

猪々子「分かったよ!!もうアニキには頼まねえ!!あたいの本当の実力を見せてやる!!」

 

そして、完全に拗ねた猪々子は、順番を待つ

 

親役が三の目を出し、次々に子役が賽を振るっていき猪々子に順番が回って来た

 

猪々子「よっしゃ~~、三の目なら楽勝よ~~、今日のあたいは別人だという事を証明してやるぜ~~~♪」

 

ノリノリの気分で勢いよくどんぶりの中に賽を投げ込む猪々子

 

          ざわざわ

 

      ざわ               ざわ

 

              ざわざわ

 

チャリチャリ~~~~ン

 

「・・・・・あ、将軍♪」

 

「ご愁傷様です♪」

 

どんぶりの中の賽は、一二三の数字を示していた

 

猪々子「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ~~~~~~!!!!!」(ぐにゃ~~~~~)

 

一同は、猪々子の顔がぐにゃぐにゃに歪んで見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「ア゛~ニ~ギィ~~~、もう一度だげやろうよ゛ぉ~~~、もう邪魔じないがら゛ぁ~~~!」

 

血の涙を流しながら、一刀の足にしがみ付いて離れない猪々子

 

そんな猪々子を無視し、一刀は猪々子を引き摺りながら城を目指す

 

一刀「駄目だ!!金輪際猪々子の賭博行為には付き合わん!!」

 

猪々子「ゾンナ゛ァ~~~~~~!!」

 

梨晏「猪々子、いくらなんでもあれは無いよ・・・・・」

 

華雄「ああ、自業自得というものだ」

 

斗詩「一刀様があそこまでしてくれたのに、それを全部不意にしたのは文ちゃんじゃない~」

 

猪々子「あんな゛ごとになるなんでおぼわながったんだよ゛ぉ~~~!」

 

一刀「こういうのはな、引き際が肝心なんだよ!!お前はそれを見誤った、失う痛みというものを知れ!!」

 

猪々子「あ゛ヴヴゥ~~~~・・・・・」

 

後悔の念に押し潰され、地面に仰向けに横たわる猪々子

 

最後の最後に一二三(ヒフミ)という最悪の目を出してしまってはそうもなるだろう

 

これは、四五六の正反対の目で、出せばその場で負けが確定してしまい、おまけに二倍払を強いられる

 

一刀が儲けた分の二倍払を強いられてしまったため、当然その場で払える筈も無く、分割払いという事で親役の人には納得してもらった

 

これがギャンブルという魔物の恐ろしいところである

 

そして、猪々子は華雄と梨晏に連れられ、城へと戻っていった

 

そんな情けない猪々子を後ろから見守りながら、斗詩は一刀に小声で話し掛ける

 

斗詩「・・・・・でも一刀様、あれはどういう事なんですか?」

 

一刀「どういう事、というと?」

 

斗詩「一刀様が賽子を投げ始めた途端にあんな良い目ばかりが出るなんて、いくらなんでも出来過ぎていると思うんですけど」

 

一刀「その疑問は尤もだな・・・・・言ってもいいけど、絶対に誰にも話さないでくれよ」

 

斗詩「はい、口は堅い方だと思っていますから」

 

一刀「簡単な話だよ、猪々子や他の人達が賽子を投げるのを見て、どんな投げ方をすればどの目が出るかを見極めたんだ」

 

斗詩「え!?そんなことが出来るんですか!?」

 

一刀「俺の場合は、賽子に氣を注ぎ込んで、ある程度賽子の軌道を操作できるからな、あとは投げ方一つで自由に出せるようになる」

 

斗詩「でも、最後はなかなか揃いませんでしたよ」

 

一刀「あまり連続で出し過ぎると、如何様を疑われるからな、それを避ける為にもあの時は敢えて揃えなかったんだ」

 

斗詩「なるほど、流石は天の御遣い様ですね♪」

 

一刀「俺としては、こんな氣の使い方はあまりしたくないんだけどな・・・・・」

 

斗詩「どうしてですか?これを繰り返していけば、いつかは大金持ちになれますよ」

 

一刀「こんなものは反則以外の何ものでもない、それにあまり勝ち過ぎると皆が警戒して勝負してくれなくなってしまうから、儲けられるのは最初だけだ、北郷家の家訓でも氣をそういった賭け事には使うべからずとあるからな」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

一刀「そもそも俺は、賭け事そのものを好まないしな、そんなもので勝ったって、結局他の人の人生を狂わせるだけでなにも意味が無い、もしさっきの最後の勝負で猪々子が勝っていたら他の人達はどんな人生を送るか分かったものじゃないしな」

 

斗詩「・・・・・まさかと思いますけど、最後の文ちゃんの賽子の目も一刀様が」

 

一刀「まさか、あれは猪々子が勝手に挑んで勝手に負けただけだよ、俺は途中で止めようとしたのに」

 

斗詩「そうですよね、ごめんなさい、疑うようなことを聞いてしまって」

 

一刀「いいさ・・・・・それより、この事は絶対に誰にも話さないでくれよ、猪々子が聞いたら意地でも行こうと言い出すからな」

 

斗詩「はい、文ちゃんの事は心得ていますから♪」

 

一刀「流石、袁紹軍の二枚看板だけあるな♪」

 

斗詩「そんなことありませんよ♪」

 

一刀「はは♪・・・・・でも、流石にこれで猪々子も懲りるだろう♪」

 

斗詩「はい、賭け事で儲ける事は出来ないって、流石の文ちゃんも気付いたはずです♪」

 

そして、一同は城へと戻っていく

 

その後、誰しもが猪々子はギャンブルを止めるだろうと思っていたが

 

猪々子「くっそ~~~、今度は負けねーからなーーーーーー!!!!」

 

と、懲りるどころか、ますますギャンブル魂に火が付き自分の部屋でどんぶりを前に賽を手に練習していたのだった


 
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