No.82276

EPISODE ~想い~

龍威旋さん

ども、作者の龍です。
ちょっとした思い付きから、何やらな長々と書いてしまいました。
バトル表現が難しいです。
やたらと効果音入れても思って、省きました。
宜しければ、どうぞ。

2009-07-03 18:08:58 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:347   閲覧ユーザー数:326

 

 

                  終わらない未来を……

 

 

                  ずっと夢に見てきた……

 

 

              けれど、それは突然に終わりを告げた……

 

 

                 どうしてなのか分からない……

 

 

             ずっと続くと思っていた平穏な日々は……

 

 

                  襲来者達によって……

 

 

                 音を立てて崩れていった……

 

 

空高く聳え立つ塔のようなシルエットは、突如地上に光臨した天使の軍勢が集まったものである。

出現した天使の軍勢は、その力の差を世界中に力を示し、絶対的恐怖を人々の記憶に与える。

彼等の目的は、かつて自分達を敗北へと追い込んだ『四大真皇』の命を差し出せという要件を言った。

“四大真皇”とは、かつて天魔人大戦における人間界の英雄の名であり、現代まで続く正式な皇家であり、平和と幸福の象徴とも言える存在。

彼等、天使軍は再び地上に降立ち、自分達の理想郷を創る為には真皇という存在は邪魔だったのだ。

 

「世界が邪悪に歪み、争いも絶えぬのも奴等がいるからである!!我等、神の子等が!この世界の支配者なのだ!!」

 

一人の天使は大声で演説を始め、世界に真皇という存在が秩序を乱していると叫び、人々の洗脳を試みているように語りかけ、いかにも自分達こそが正義だと言わんばかりだった。

一方、同じ頃、別の場所でこの中継を見ていた青年は首を傾げ疑問を呟いていた。

青年は中継を観て周囲に聞こえない程度で小言を呟き、頭の中で、これからの事を予測していた。

 

「でっち上げもいい所だよねぇ」

 

間延びした声で非難の声を上げていると、ふいに後ろから肩を叩かれ振り向くと、そこには懐かしい顔ぶれがあった。

 

「無事のようだね」

「そっちこそ」

「しばらくは家には帰れませんわ」

「仕方ないとは思うがな」

 

お互いの無事を確認しあうと椅子に腰掛け、まるで会議のような会話が飛び交ったが、その会話の中で現在“力”が使えるのは現役の青年だけらしく彼等には家庭や家族があるのが初めて分かると、何かを納得するように青年は頷いた。

 

「もう、時間の問題だな」

「でも、現代には真皇は存在しないって言えば……」

「それは恐らく無理だと思われます」

「仮に説明しても、それをどうやって証明するかも問題がある。奴等の事だから、すぐに感付かれるよ」

 

大戦が起こったのは昔の事、現在の自分達の面子が相手に知られている訳ではないが“力”の存在がある限りは避けられない戦いだと分かる。

しかし、3人は力が使えなくなり、使役出来るのは一人だけで、それでは真皇ではないと意見も出た。

 

「一人でも、血脈であるのは確かな訳だし、そんな理由が通用するはずがないよ。この血が流れてる限り、戦いは避けられないし、このままだと余計な犠牲が出るばかりだ。なら一人でも戦うしかない」

 

しかし、そんな意見も青年の言葉で却下されてしまう。

自分達が戦わない代わりに、彼一人だけに戦わせるのには酷く胸が痛む事だった。

まだ、このような不思議な力が否定的だった時代に、周りからは化け物扱いをされ、両親にも、友人のどちらにも石を投げられた自分達に手を差し伸べてくれ、本当の家族のように接してもらえた事が嬉しかった。

だから彼等は、青年だけは傷つけさせないと努力し、守ってきたのだったが、今の現状はその逆とも言える。

 

「いつも守ってると思っていたのに」

「本当に守られていたのは私達だったのですね」

 

悲しい空気が漂い、自分達が如何に無力だったのかを痛感すると、自然と涙が溢れ、感謝と申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになっていく。

青年は、どこか寂しげな笑顔してみせて、守るべきモノの為に戦うだけと台詞を残し席から立ち上がり、自分が向かうべき場所へと表向いた。

この時、もしかしたら、これが最後になるかもしれないと、心の何処かでそう悟っていた。

 

日本・某所

その頃、外では、欲望に駆られた人々が“真皇狩り”を開始していた。

自分達が助かるためには、諸悪の根源たる彼等を差し出せば良いなどと本気で考え、手に武器を持ち殺気立っている。

空から人々を見下してする天使は、自分の術中にはまった人間をみて笑っていた。

 

「最早、日本は混乱の渦に巻き込まれようとしています!」

 

一人の女性リポーターは、現地の荒れようを実況中継し、各地で起こっている現状を必死に伝えていた。

悲惨な現状をリポートしている最中に、一人の青年が空を見上げて立っているに気付きインタビューを試みる。

 

「こ、この現状を―」

 

女性リポーターが全てを言い終わる前に、青年の背中から蒼い翼が現れ、そして、周囲から彼に殺気の篭った目が向けられ、気付けば囲まれていた。

しかし、そんな事にも怖気ずに苦笑してみせると空高くへと羽ばたいていった。

あれからどれくらいの高さまで飛んだのだろうかと思ってると、天使の軍勢が襲い掛かってくる。

両手に剣を持ち、襲い来る敵の攻撃を捌き回避していき、ついに敵の待つ場所にまで辿りつく。

そこに居たのは金色の長髪の美しい女天使、彼女は冷笑すると大声で語りかけた。

 

「懐かしいわね、一人で私達を倒せると思っているの?」

「別にお前を知ってる訳じゃないし、馴れ馴れしく“懐かしい”とか言うな!それに倒すから」

 

視線を逸らし返答をする。

突然起こった突風を軽く片手で制し、一閃の電撃が天使軍を直撃した。

これを合図に両者は全力で衝突し、どちらが真に正しいのかを示す為に激戦を繰り広げる。

1対数千億という理不尽と不毛な戦闘行為は次第に激化し、人間界に影響を与え、超常現象を連発していた。

青年の右手の大剣が屠られる度に大気が震え、真空の刃が幾重にも出現し、左手の長細剣から発している青白い光が天使を切り裂き消滅させていく。

遥か上空から放たれる神術すらも弾き、片手を翳すと、紅い炎が現れて天を焦がしていく。

地上には白い羽と紅い雫が雨となって降り注ぎ、大地を紅く染め上げていく。

やがて、海も大地も紅く染まり始めた頃、紫色の閃光が青年を襲い、それが気の緩みを引き起こし、背中から一本の大剣が深く突き刺さり血飛沫が飛び散り、口から大量の血が吐き出された。

 

「っ!?」

 

自分の身体を貫通していく幾つも刃の苦痛に顔が歪み、手にしていた剣を落してしまう。

しまったと気付いた時には既に遅く、トドメと言わんばかりに咽喉笛に大剣が突き刺さった。

青年はしばらく痙攣を起こしてから動かなくなってしまう。

彼に剣を突き立てた女天使は鼻で笑うと、剣を引き抜き鞘へと納めていく。

 

「貴様の力はこの程度かっ!!貴様の意志と誇りはこの程度なのか!起きろ!この軟弱者がぁぁぁ!!」

 

しかし、その女天使は何が気に障ったのか、死者の胸倉を掴み憤怒の限りの声で怒鳴り散らしていた。

そして、彼の首にあるペンダントを怒り任せに毟り取ろうとした瞬間、紅と蒼の光が青年を包み込んだ。

 

「………未だに我等の邪魔をするというのか」

 

彼女は、目の前の光景を忌々しげに睨みつける。

それがかつて、自分達を打ち負かした力と同じ存在である事を気付いていた。

「ここは、どこ?」

 

青年は朦朧とした意識で目を開き確かに自分は死んだはずだと確認するが、先ほどの負った傷は全て治っていた。

ペンダントの効力なのかと思っていてと、どこからか聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。

 

何故、守るのですか?何故、戦うのですか?

「……」

 

語りかけてくる女性の質問に答えられなかった。

いや、答えたくなかったのだろう。

2年前のあの日に、交わされた約束の為だと言ってしまえば全てを失うような気がしていた。

先代真皇が守った世界を壊させたくなかった。

誰よりも人を愛し愛され、信頼し信頼された先代達が残した力と想いを誰にも傷つけさせたくなかった。

だが、青年の口からは何を語られないまま、いくつのも質問が響いた。

 

「自分一人だけが苦しい思いをすれば人の心は善良に変わると御思いですか?」

「苦しいのも、辛いのも俺一人だけじゃない」

「貴方を殺そうとしたり、傷つけようとした世界は守る価値があるのですか?」

「もし、生きる為に犠牲が必要だと言うのなら、躊躇わずに差し出す。一度は捨てた命。そして、助けられた命だから。守る為になら、この命を賭けても構わない」

「いずれは滅びる人間は、自らの手で破滅を選びました。それにも関わらず守っても、それは苦痛な延命処置とも言える自殺行為。そんな事をして何になりますか?それは意味があるものなのですか?貴方が如何に世界を守ろうとしても、同じ過ちを繰り返す人は最早、滅ぶべきなのです。」

 

悲しいような、辛いような声で何かを訴えるような言い方だった。

彼の記憶の中にはこんな事を言う人はたった一人しかいない。

その者は、いつも何処か寂しげで、自分が人間ではない事に泣いていた、だからこそ、そんな不安や悲しみさえ、消し去れるように力強く答えたいと思った。

かけがえのない存在の為に、大切にしていた想いに応える為に、今、全ての感情も時も動き出した。

 

「それは違う」

 

どこか穏やかで優しい口調。

その一言、一言が自分に自信を、後悔ばかりしていた気持ちを静めていく。

 

「初めから必要とされない命がないように、望まれずに生まれてくる人はいない。それは、俺等、真皇も同じ。人が世界が必要としたから生まれた。例え、悪魔だと化け物だと蔑まれても、自分達が守るべきもの、大切なものの為に、今まで戦ってきた。確かに人は破滅の道を選んでしまったのかもしれない。でもね、どこからか聞こえるんだ。希望を願う人の声が、まだ死にたくないと泣く人の声が、辛いのは自分だけじゃないと教えてくれる。だからこそ守ってあげなくちゃって思うんだ」

「……………」

 

自分に言い聞かせるように、そして目の前で心配してくれる人の為に、閉じていた瞳を少しずつ見開き、微笑んでみせる。

 

「今の俺には愛する人がいる訳でもない。それでも本当に守りたいと思うのは、誰よりもこの気持ちを信じているから。傷つけるんじゃなくて、守ってあげたいと思うから出来る事。だからそんなに悲しまないで、“レクシス”」

 

青年が“彼女”の名を言葉にした瞬間、眩い光と共に一人の女性が姿を現す。

緋色の瞳をした女性は彼へと歩み寄り、酷い事を言ってしまった事をただ謝っていた。

信じ切れなかった事を詫び続けた。

 

「レクシス」

 

彼女の温もりを懐かしむように、ブロンドの髪を軽く梳り、優しく抱きしめた。

今一番会いたかった人が目の前に居るという、その気持ちで彼の胸はいっぱいだった。

二人だけの空間、少しずつではあるものの自分の心の中に渦巻いていた激情も憎悪の気持ちは、なくなっていた。

そして、ゆっくり口を開く。

 

「もう会えないって思ってた。けど、また会えた……今度は守るから」

「ゼノアス…貴方が戦友(とも)でホントに良かった」

 

彼女はゼノアスと呼んだ彼に、全てを委ねるように身体を預けると、やがて、二人は光となって一つになっていく。

まるで、全ての運命が動き出したかのように。

二色の光は一つとって、収縮を始める。

そして、ドレスアップしたゼノアスが姿を露にし、緋色に煌く瞳には蒼犀の紋章が浮き上がっていた。

両手持ちの剣を思い切り振り下ろす。

蒼い閃光が、数千億という軍勢を切り裂き蹴散らしていく。

 

「たいしたパワーアップだ!待っていたぞ、この時を!!」

「今度こそ、真にどちらが正しいのか、決着をつけよう」

 

互いに構え、集中力を高めていく。

金色のオーラと深紫色のオーラがぶつかり合い、幻想的な空間を作り出す。

一滴の雫が二人の間を落ちていくと同時に両者の激しい剣閃が交わり、幾つもの閃光が飛び交う。

大気が震える度に空間を切り裂き、お互いの神経を刺激する。

より強く、より高みへと上り続けた両者の剣閃と神術は絶え間なく衝突を繰り返し、誰も入れない領域へと変わっていく。

刀身がぶつかり合う甲高い音が辺りを支配していたかと思うと、今度は爆煙と轟音が鳴り響く。

雷が走り、炎が舞い踊り、風が荒れ狂う。

激しさ増していき、やがて二人は全神経を研ぎ澄まし詠唱を始めた。

まるで歌っているようにも聞こえるが、辺りの空気は震えている。

 

「“心力”及び“蒼力”」

「“神力”並びに“炎力”」

「「最大顕現!!」」

 

互いの武器と身体からオーラが大量に放出される。

おそらく、この一閃で全てが決まる。

張り詰めた空気、緊張が走る。

ふわりと風が吹くと、それが合図となり同時に動く。

 

「これ以上、誰も傷つけさせはしない」

「勝つのは我々、天使軍だ」

 

二人の大声が天に響く。

 

「今、守るべきモノ全ての為に!」

「正義の鉄槌を今こそ人間に与えんが為に!」

 

振り下ろされる剣、振り上げられる剣。

鍔迫り合いをし、己の力を極限にまで高めていく。

そして、目を開けていられないほどの光が世界を覆い尽くした。

やがて、光は消えて行き、一人のシルエットが見えてくる。

そこに佇んでいるのは……

蒼い翼、緋色の瞳、蒼犀の紋章。

間違いなくゼノアスだったが、様子がおかしい。

彼の身体は光へと変わり始めた。

 

「「「ゼノアス(さん)」」」

 

空を見上げていた、仲間達の声が空に虚しく響いた。

彼は優しく微笑むと、大きな声で仲間達に別れを告げた。

ただ一言“ありがとう”と……

 

 

                描いた未来はなかった……

 

 

             しかし、世界は平和へと導かれ……

 

 

               地上では多くの笑顔が溢れ……

 

 

              幸せと、平穏な時が流れ続けた……

 

 

                  きっとそれは……

 

 

                 憎悪だけが風化し……

 

 

             人々に新たなる道を示したからだろう……

 

 

                誰よりも何者よりも世界を愛し……

 

 

                  信じて守の続けた……

 

 

                  真皇という存在が……

 

 

                  いたからであろう……

 

 

 
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