No.821669

チョロインワルキューレエナジー第7話

スーサンさん

今年最後のオリジナル小説です!
来年もこの調子で頑張って更新しますよ!

サイトで同じものを上げてます。
良ければ読みに来てください!

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2015-12-30 05:21:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:400   閲覧ユーザー数:400

「うぐぁ……!?」

 吹き飛んだ身体を抱き、美少女・レイは息を深く吐いた。

「な、なんなんだよ、お前は?」

 楽しげに自分を見つめる少女・九十九一にレイは苛立った顔をした。

「わ、私は今、そのスキルマスターと遊んでるの! 邪魔しないで!」

 駄々っ子のように泣き暴れ、レイは立ち上がった。

「うぅぅん!」

 首を振り、一の後ろにいる豪真を見た。

「ねぇ、コイツ邪魔だよね!」

 まるで仲の良い友達のような態度に傷を負っていた豪真の唇の端がつり上がった。

「はぁ……」

 自分を守るように立つ一の横を通り過ぎた。

「きゃはぁ♪」

 レイの顔が嬉しそうに綻んだ。

「やっぱり生きてるんだ!?」

 レイの姿が残像として消えた。

「ッ……!?」

 豪真の目がつり上がりドンッと音が鳴った。

「キャッ……!?」

 レイの身体が後ろに吹き飛びゴロゴロと縦に転がった。

「あれぇ……?」

 地面を背中を叩きつけられ、レイは不思議そうに笑った。

「あははは♪」

 あぐらをかくように起き上がった。

「やっぱり強いんだ♪」

「……」

 豪真の顔が一瞬、クスッと笑った。

「ッ……」

「……!?」

 白虎と一の背筋がゾッとした。

「うん?」

 アラームの音がなった。

「ちょっと待ってね……」

 レイはポケットから携帯電話を取り出し受信ボタンを押した。

「はい、もしもし……」

 豪真も退屈そうに前髪を弄りだした。

「え……?」

 レイの顔が歪んだ。

「もう帰ってこい?」

 豪真に申し訳なさそう顔をした。

「で、でも、わたし……」

 目でコンタクトするように豪真は仕方ないという顔で頷いた。

「……」

 頬を膨らましレイは首を縦に振った。

「わかったよ!」

 電話を切った。

「ねぇ、君!」

「うん……?」

 レイは期待した目を向けた。

「名前を教えてよ!」

「名前?」

「今度、ちゃんとした形で殺しに行くからさ♪」

 一の顔が強張った。

「教えなくっていいわよ!」

 一を無視するように自分を指差した。

「一ノ瀬豪真だ! 豪でも豪真でも好きに呼べ!」

「私は赤城レイ! レイと呼んで、豪真くん!」

 お互い見つめ合い笑った。

「ちょ……」

 一の顔が戸惑った。

「君、相手はテロリスト……」

 レイの顔がウットリした。

「素敵な名前だねぇ♪」

 チュッと投げキッスした。

「今度はもっと楽しい殺し合いをしようね♪」

 レイの空中からホバー浮遊するバイクが折りてきた。

「じゃあね♪」

 バイクに乗ってレイは空を飛んでいった。

「……」

 豪真はホッとした顔をした。

「たすかった……」

 腰を抜かしたように尻もちをついた。

「はぁ……」

 白虎の顔が近づいた。

「だ、大丈夫、豪ちゃん!?」

 慌てて豪真の上着を破られ裸になった身体に触れ、白虎の手が光った。

「白虎……?」

 傷の痛みが癒え豪真は白虎を見た。

 白虎はテレた顔をした。

「ちょ、ちょっと驚いたよ♪」

 えへへと笑った。

「私のワルキューレスキルが回復系だったなんて。もっと攻撃的なものだと思ってた!」

「ワルキューレエナジーは心の中にある本質を露わにするからねぇ……♪」

 一の楽しそうな声が飛んだ。

「初めまして」

 手を伸ばされた。

「ツクヨミ学園ワルキューレ部の九十九一よ♪」

「ツクヨミ学園?」

 一の手を握り立ち上がった。

「こう見えても去年の優勝校よ♪」

 クスッと笑い扇子でニヤける口を隠した。

「今はちょっとワケありで今年の大会には参加できないけどね♪」

「去年の優勝校……ってことは」

 豪真は頭を下げた。

「た、たのむ……オレに稽古を付けてくれ!」

「稽古?」

 キョトンとする一の顔を見るように豪真は顔を上げた。

「オ、オレはワルキューレカップに優勝したい! そのために実力者の稽古を体感したい!」

「え、豪ちゃん?」

 白虎の顔が意外なものになった。

 一もだった。

「き、君……」

 言葉を探すように豪真を見た。。

「さ、さっきのあの娘のことはどうするの?」

「え、あ……ああ」

 思い出したように空を見た。

「赤城レイのことか?」

 ハハッと笑った。

「また逢えるよ!」

「いや、逢っちゃダメでしょう!」

 また頭を下げた。

「オレに稽古を付けてくれ!」

「呆れた……」

 さっきまで命がけの勝負をしていた男が急に話を変えてスポーツ大会の優勝に頭が一杯になってるのだ。

 一歩間違えば狂気にとりつかれてると思われてもおかしくない思考回路だ。

「でも」

 一はニコッと笑った。

「そういうところ、私は好きよ♪」

「てこと!?」

 チョンと人差し指で額を小突かれた。

「さっきの赤城レイのことを考えるとアナタは強くなったほうが良さそうだしね……♪」

 腰に手を当てた。

「私の稽古は厳しいわよ!」

「あ、ありがとう!」

 顔を輝かせる豪真に白虎の顔が複雑になった。

「でも、ヴァルキリーエナジーって?」

「知りたい?」

 一は意味深に顔を染めた。

「……」

 豪真も考えるように頷いた。

「知りたい」

「……」

 一は考えるようにアゴを上げた。

「ここじゃダメね」

 でも首を横に振った。

「他の人が聞いたら騒ぎにする可能性もあるし」

 会場の裏で自分たちを見ている偽物のスキルマスター達を見た。

(商売にされたらたまったものじゃないし……)

 豪真を見た。

「アナタ、ワルキューレ学園の子よね?」

「え、ああ……」

「なら、零王という娘は知ってるかしら?」

「先輩だ」

「なら話は早いわ」

 ニッコリ笑った。

「あの人に聞いてみて。私より詳しく説明してくれるから」

 背を向けた。

「近いうちに学園に寄るからそれまでに基礎を憶えておきなさい」

 足を前に出した。

「生き残りたいなら……」

 ボソッと最後の声がギリギリ聞こえた。

「九十九一……か?」

 背中から感じる強烈なオーラに豪真は胸が高鳴った。

(あの人からも感じる……)

 未だに身体の残る痛みの記憶が心地よく心臓を高鳴らせた。

(レイが言っていたヴァルキリーエナジーと……)

 自分でも敵わなかった赤城レイを赤子のように倒した少女の後ろ姿に豪真は言いしれない興奮とエクスタシーを覚えた。

「あれ、これいつものコインか?」

 地面に落ちていたワルキューレコインを拾った。

 

 

 零魔の部屋。

「なるほど……?」

 一連の事件を聞き零魔は豪真の身体をチェックしていた。

「ヴァルキリーエナジーか……私も噂程度しか聞いたことないけど実在したのねぇ」

 楽しそうに微笑んだ。

「でも、その未知のエネルギーと出会えるなんて豪真ちゃん、相当運がいいわねぇ♪」

 ケラケラと笑った。

「そのことですけど……」

 豪真の目が真剣に鳴った。

「ワルキューレエナジーと似てる気がしたんです。アレはいったい……?」

 豪真の腕をマッサージするように掴んだ。

「見てみないとわからないけど私でわかる程度に説明してあげるわぁ♪」

 豪真の熱い胸板を頬ずりした。

「ヴァルキリーエナジーとはワルキューレが個人でワルキューレエナジーをリンクして発動する力のことよん♪」

「個人でワルキューレエナジーをリンクする?」

 頬擦りされた胸から顔を離させた。

「ようするに自分一人でエナジーを放出し自分一人でエナジーの力を同調する。一人でワルキューレとスキルマスター両方を兼任した存在よ」

「ってことは……」

 以前、ニ三が言っていた「女子の進化した姿」を思い出した。

「でも、神話の中のものだとばかり思っていたわ」

 豪真の右目を広げ医者の目で見た。

「実際ワルキューレエナジーならシカクちゃんやレイナちゃんも使えるでしょう」

 豪真の口の中も見た。

「でも威力はアナタとリンクした時とは比べ物にならないくらい弱いでしょう」

「確かに……」

 何度か二人が放つ技を受けたことがあるのでそこは理解できた。

「でも、アイツの力は……」

 別種といえるほど強く一度だけ死の感覚を実感させられた。

 それだけ鮮明に力の差があった。

「そこがわからないの」

 零魔も豪真の指を開き、ギュッと握った。

「たった一人の力で何人分ものエナジーを開放できるなんて常識的じゃないわ」

 手を離し、ふふっと笑った。

「出来ればその子に会って確かめたいくらいねぇ……♪」

「すぐに逢えますよ」

「え……?」

「アイツとはすぐに逢える。オレも逢いたいですからね……」

 血の流れるような痛みを思い出した。

「アイツとはまたどこかで遊べますよ……♪」

「……」

 零魔の顔が複雑に曇った。

(豪真ちゃんって私以上に狂ってるのかも……)

 ほんの少しだが豪真の人生に歪んだ気がした。

 そして零魔は気づいていなかった。

 豪真の変調が今、世界を変えた瞬間だと……

 ワルキューレコイン所字数×3


 
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