No.816406

北郷一刀と新たな英雄が紡ぐ外史 7話

あなたまさん

白蓮からの餞別、曹孟徳との出会い

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2015-11-30 01:35:16 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:5106   閲覧ユーザー数:3852

 

黄巾党討伐の勅命を携えて来ていた大将軍の公孫讃さんと趙雲さんは、俺との戦いの後すぐさま出立し、次の領主の下に向かった。俺と趙雲さんの私闘が終わった後の居た堪れない空気から逃げたと言うのが正しい表現かもしれないが……

 

一刀「連れて行くのは騎馬隊5千と歩兵2万、兵糧に関しては……今年が豊作で米相場が安くて大量に入手出来たから問題なしと」

 

 

黄巾党が暴れているのは主に冀州・并州・徐州・青州とこの涼州からは遠く離れている為、予想消費量よりも多めに兵糧を用意する必要がある。いざ足りなくなった時に、涼州からの輸送を待っていたら確実に間に合わないと戦にならないもんな

 

一刀「しかし……あそこまで衰えてるとは思わなかったな」

 

趙雲さんにフルボッコにされた後、夜にひっそりと蜻蛉切を構え振るってみたが……我ながら酷かった。今の状態で元居た時代に戻ったら確実に祖父ちゃんに殺されるレベルだよ

 

 

一刀「なんとか暇を見つけて鍛錬したいんだけど、出兵の準備でそれどころじゃないな。米の在庫管理も俺がやってるんだし……」

 

 

はぁ……真面目に文官が欲しい……

それか本職じゃなくてもいいから……少しでもいいから出来る人材が欲しい……

 

 

及川「よぅ!かずぴー!」

 

一刀「なんだよ及川、仕事の邪魔に来たのか?それともボコボコにされた事を笑いに来たのか?」

 

及川「それはもちろん後者に決まっとる!万能人間のかずぴーを笑いもんに出来るチャンスなんて滅多にないやん!かずぴーが弱ってるいまが好機やもんな~!」

 

一刀「気が済んだらさっさと戻れ、仕事の邪魔だ」

 

及川「そう邪険にせんといて~伝言があってきたんよ~」

 

一刀「伝言?誰からだ?」

 

及川「馬超ちゃんから~明命ちゃんからの報告で、この辺りには黄巾党は出没してへんみたいやから、予定よりも多く兵を連れて行くみたいやで」

 

一刀「出陣予定は半月後だろ……今から増員するのか?兵糧はなんとかなるが、武具とかの兵装は間に合うのか?」

 

及川「君主が問題無いと判断したんやから大丈夫とちゃう?流石になんも考えずに兵を増やしたりしないはずや」

 

一刀「それもそうか……それよりも、お前なんか喋り方変じゃないか?なんか訛り?があるみたいな感じなんだが」

 

及川「いつも同じ喋り方やと飽きるとおもてな~少し喋り方変えてみたんよ」

 

一刀「とりあえず止めれ、お前が言うとなんかキモイわ!」

 

及川「ひどい……私との事は遊びだったと言うのね!」

 

一刀「はぁ……なんで今日はそんなに絡んでくるんだよ、何かあったのか?」

 

 

そう聞くと、よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりに勢いよく話しを切り出してきた

 

 

及川「実はな~朝起きたらシャオちゃんがわいの布団に潜り込んでたんよ!馬超ちゃんに続いてシャオちゃんまでわいの魅力にメロメロ……わいって罪な男やろ!」

 

 

あ~真面目に聞いてた俺が馬鹿だった。

つまりあれか?イチャイチャしたから自慢したくてウズウズしてここまで来たと

 

一刀「あ~はいはい、話しは後で聞いてやるから今は仕事させてくれ。速く終らせないと鍛錬できん」

 

及川「あそこで振ったわいが言うのもあれやけど、かずぴーかなり衰えてたな~てっきり鍛錬続けてると思っとったよ」

 

 

あのな~俺だって祖父ちゃんから教えてもらって、一人前だと認めてもらったんだから鍛錬はしたいさ。だけど……だけどな……

 

 

一刀「及川達が事務仕事何もしないのが悪いんだろうがーー!1人で捌くのどれだけ時間かかると思ってたんだー!」

 

 

俺が叫んでから間を置かずに、叫び声を聞いた華侖と香風が俺達の傍に寄ってきていた

 

 

華侖「何騒いでるんすか一刀っち、向こうの方まで声が聞こえたっすよ?」

 

香風「お兄ちゃんの叫び声の内容から察するに、佑が余計な事を言ったに違いない」

 

及川「流石シャンちゃん、わいの事よくわかってるやん!ちょっとして……シャンちゃんもわいの事好きだったり」

 

華侖「あ~それは無いと思うっすね~!」

 

香風「華侖の言うとおり。それはない」

 

及川「つれない態度もまた可愛い!」

 

 

 

翠「お前は何馬鹿な事を大声で言ってるんだ」

 

 

及川・香風・華侖が話していると、いつの間にか翠が話しに加わり始めた。

ところどころ聞く限りだと、伝言を頼んだ及川の戻りが遅いから様子を見に来たらしい。そのついでに兵糧がどれだけ確保できるかを聞きたかったようだ、兵糧に問題は無いと伝えると、及川の首根っこを掴み引きずって連れて帰っていった

 

 

香風「佑は翠の尻にひかれてる」

 

華侖「なんだかんだ仲いいっすよね~あのふたり」

 

一刀「ところでまだ日が高いけど、二人は兵士の訓練終わったのか?」

 

 

華侖・香風「「………………あ」」

 

 

”あ”じゃないよ全く!思い出して慌てて向かったみたいだけど、ずっと待たされてた兵士が可哀想だな……上官が来ないからと言って無断に解散したり、怠けている姿を見られたら罰則もの……かといってずっと気を張って待ってろと言うのも無理な話だ

 

一刀「今度兵士達にこの時代で作れそうな未来の料理作ってやるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後準備は問題なく進み、予定通り騎馬隊と歩兵隊の進軍を開始した。もちろん武威の守将が居なくなるのは問題があるから、事務仕事が出来る鶸・蒼・蒲公英と行きたくないとゴネタ華侖が留守番として残り、武威を出立した俺達は宛・荊州に抜ける武関では無く、潼関を抜け洛陽に向かい、公孫讃さんに道中一度寄って欲しいと言われた為、洛陽にある公孫讃さんの屋敷で一夜お世話になっていた。

 

 

 

 

公孫讃「よく来てくれた、道中問題は無かったか?一応涼州からの街道の整備と治安維持は積極的にさせておいたんだが」

 

一刀「心配り感謝いたします、閣下が手配して頂いてくれたお陰で予定より早く洛陽までたどり着く事が出来ました」

 

公孫讃「前にも話したが、堅苦しい言い方はしないでくれ。いまは私の屋敷で友人を招いているだけだ、これならばお前が気にする公私混同にはならんだろ?」

 

趙雲「そうですぞ北郷殿、白蓮殿に敬う態度を取る時間があるのでしたら私と一献酌み合わせませんか?」

 

公孫讃「星~~!またいきなり出てきて私の事馬鹿にするな!そしていきなり酒を勧めるな!」

 

趙雲「私から酒を取ったら何が残ると言うのですか!」

 

公孫讃「そこで力説するな!」

 

一刀「……わかりました、公孫讃さんの対面を潰す訳にもいけませんし、お言葉に甘えさせていただきます」

 

公孫讃「今は立場などは気にせずにくつろいでくれ。ところで馬超はどこに居るんだ?」

 

趙雲「そういえば姿が見えませんな、本来であれば君主である馬超殿が挨拶する場面だと思いますが」

 

 

やっぱりそこ気になるよね、俺だってなんで自分が挨拶してるのかわからんし……いくら屋敷だからと言っても、大将軍と一領主に仕える軍師が挨拶するなんて普通ないよね。

 

及川はそれの撒き沿い食らって連れて行かれて不在だし、香風は明命と蒼を連れて美味しいご飯が食べられるお店に行っちゃうし……

 

 

一刀「その……馬超が挨拶する予定だったのですが……屋敷に到着する前に孫尚香といつもの喧嘩が起きてしまいまして……香風等は洛陽の街で美味しい飯屋に行ってしまいまして……」

 

公孫讃「香風にとって洛陽は庭のようなものだからな、久しぶりに出歩きたい気持ちもわかる。馬超と孫尚香は良く喧嘩すると聞いたが、そんなに仲が悪いのか?」

 

一刀「仲が悪いと言いますか……悪戯っ子の孫尚香にとって、馬超はいじりやすい対象のようで」

 

公孫讃「そうか、まぁここに立ち寄るのは強制じゃないからな、不在でも咎めはしないさ。むしろ元気でやっているようで何よりだ」

 

本当に言い人だな公孫讃さんって。

ここまで無礼な事されてるのに笑って流せるんだもんな~

俺が言うのもなんだけど、ここは怒ってもいい場面だし……あとで説教しておかないと

 

 

趙雲「馬超殿は推測するに脳筋ですからな、脳筋は乗せたり弄るのが簡単ですからそれが面白いのかもしれません。それと及川殿を取り合う恋敵だから余計に突っかかるかもしれませんな」

 

公孫讃「馬超と孫尚香が及川の事を恋慕してるというのは本当なのか?馬超は及川の実力は認めているが、恋慕はしてないと見ていたんだが」

 

趙雲「だから白蓮殿は人を見る目が甘いのです、それと地味で影が薄いのと威厳が無いのと能力がすべて普通なのと、それから」

 

一刀「趙雲さん、もうそこらへんで……公孫讃さん白目向いて呆然としてます!」

 

趙雲「ふむ……まだまだ言い足りないのだが、北郷殿に免じてこの辺りで止めておこう」

 

 

止めてくれたのはいいんだけど、オーバーキル喰らった後で止めてもあまり意味なかったよね、公孫讃さん哀れ

 

 

趙雲「白蓮殿がこうなってしまっては意識が戻るのは朝方だろう。北郷殿どうだろう、先ほど言った通り私に一献付き合ってもらえぬか?」

 

公孫讃さんを再起不能にした張本人なのに……この人神経図太いな~

こんな所も度胸の塊って言われる所以なのかな?

 

一刀「酒もいいんだけど……今夜は俺の鍛錬に付き合ってもらえないかな?公孫讃さん、趙雲さんが帰った後もその……鍛錬再開出来てなくて」

 

趙雲「付き合うのは構いませぬが、そこまで鍛錬する暇がないのでしたらいっその事武に関しては馬超殿・及川殿らが控えているゆえ、軍師業に専念してはいかがですか?前鍛錬しないとと言った私が言うのもあれですが」

 

一刀「確かに馬超軍は軍を率いる将は君主の馬超をはじめ、及川・徐晃・曹仁・周泰・馬休・馬岱・馬鉄と揃っている。欠けているのは戦術・戦略を組み立てて味方を勝利に導く軍師の存在。俺がその存在に成りえれば軍の欠点は解決する」

 

趙雲「そこまでわかっているのにも関わらず、なぜ武の道に戻ろうとするのですかな?今のまま激務を続けたうえに鍛錬までしていては確実に体を壊しますぞ」

 

一刀「俺と及川の武は俺の祖父ちゃんから教えてもらったんだ。孫だろうが関係無くかなり厳しい指導だったよ。でも折れること無く祖父ちゃんに挑み続けてようやく儂を超えたと認めてくれたんだ。及川に渡してある小豆長光と蜻蛉切はその証として譲り受けた物なんだ」

 

 

俺を一人前と認めてくれて祖父ちゃんが大切にしてた小豆長光と蜻蛉切を渡してくれたんだ。俺の武が鈍った原因の一つに内政仕事に追われてるのもあるけど、半年間効率を上げられずにいた自分の責任でもある。甘えを捨てて自己研鑽しろって言われ続けてきたのに、その教えをずっと怠ってたんだもんな。これじゃあ環境を言い訳になんて出来るはずない

 

 

趙雲「祖父から受け継いだ武を錆びさせたままにしたくないと言う事ですか……私でよろしければお相手いたしましょう。ただし、手加減はしませんぞ?」

 

一刀「ありがとう趙雲さん、全力で頼むよ!」

 

 

一夜限りではあるが、三國志屈指の名将に手解きを受けられるんだ。落ちた腕を戻すと同時に、趙雲さんの槍捌き・体術など盗めるものはどんどん盗まないとな!

 

 

趙雲「それでは……行かせていただくぞ北郷殿!」

 

 

先ほどの言葉通り、初手から趙雲さんが放てる最高速度の攻撃を放ってくる。及川との模擬戦で太刀筋は見ていたが、本気の趙雲さんの攻撃はあの時以上に速い。神速とも呼べる連撃を受け続け、捌けずに俺は蜻蛉切を弾き飛ばされてしまう

 

趙雲「どうした北郷殿、もう終りですかな」

 

一刀「なんの、まだまだこれからだ!」

 

弾かれた蜻蛉切を拾い直し、今度は俺から攻撃を仕掛ける。

趙雲さん程の高速な連撃を放つ事は出来ないので幾多にもフェイントを混ぜた攪乱攻撃を主体に行うが

 

趙雲「試みは面白いが私を攪乱するには手数と速さが不足だ!」

 

一刀「っぐは」

 

趙雲さんのカウンター気味の攻撃をもろに喰らってしまい、俺は吹き飛ばされてしまい、地面に強く叩き付かれた。口の中が切れたのか、口内に血の味が充満する

 

一刀「まだまだ……次行くぞ!」

 

 

 

 

 

それから俺が攻めて趙雲さんが守り、趙雲さんが攻めて俺が守り、俺と趙雲さん両者が攻め合うなど色々な戦闘パターンを混ぜ、最後は仕上げとして本気の5本勝負。すべての鍛錬を終えた頃には体力の限界で地面に座りこんでしまった

 

 

一刀「ハァ……ハァ……もう…限界だ」

 

 

趙雲「私も流石にあれだけ続けてやるとなると疲れますな。それにしても見直しましたぞ北郷殿、始める前に比べて動きが格段に良くなっている。あれだけ衰えがあり、疲労も蓄積されてる状態にも関わらず、最後は私の速さに順応し互角に槍を振るうとは驚きです」

 

一刀「そう言ってくれると……少しは自信が戻ってくるよ……」

 

趙雲「このまま怪我を放置する訳には行きませんし、私の部屋で治療を行いましょう」

 

一刀「手合わせから治療まで……何から何までお世話になるね。ありがとう趙雲さん」

 

趙雲「星でよろしい、私はあなたの事を気に入りました」

 

一刀「そっか、なら星と呼ばせてもらうね。俺の事も一刀と呼んでほしいな」

 

星「承知した。では一刀殿、私の部屋に案内するのでついて来てくだされ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翠「一夜世話になりました」

 

公孫讃「こちらの無茶な勅命を受けてくれたんだ、これぐらいするのは当然だ。本来なら私が軍を率いて討伐に行きたいんだが、色々立場があって動くに動けないんだ。朝廷内も一枚岩とは言えないからな」

 

 

翌朝、俺達は公孫讃さんの屋敷の前に立っている。

喧嘩で居なくなった翠達や、食べ歩きをしていた香風等は夜になるとふらりと公孫讃さんの屋敷までやってきた。

喧嘩組みは流石にばつが悪いのか申し訳なさそうにやってきたが、香風組みは特に気にする様子もなく平然とやってきた、それに対しても何も文句を言わず、よく来てくれたと歓迎する公孫讃さん……俺が屋敷に来た時も思ったけどマジで良い人すぎる!

 

翠「賊を討伐するのは、漢の臣である私達の仕事だからきっちり遂行してみせるぜ!」

 

一刀「翠!言葉遣い!」

 

翠「あ、すまん・・いや、すみません公孫讃様」

 

公孫讃「北郷、私の屋敷では気にしないでいいと言っただろ?」

 

一刀「確かに屋敷の中ならば言いませんが、ここはもう屋敷の外です。それに、この会話を第三者に聞かれれば面倒な事にもなりかねません。それに……翠は君主としての言葉遣いをきっちりしてもらはないと駄目です、このままの言葉遣い・態度でしたら外交問題にも影響が出ます」

 

翠「でもよ~今更直すたってな~癖になってそう簡単には直らないし……そうだ!外交の席では北郷に毎回挨拶させれば問題は」

 

一刀「1日椅子に縛り付けてずっと書類仕事をするのと、1日1日少しずつでも話し方を覚えるのどっちがいい?俺的には前者がいいんだけどな」

 

翠「わわわ悪かったって、ちゃんと少しずつ言葉遣い直すから!だからその怖い笑顔と鞭ひっこめて!」

 

 

むー俺的には前者の方がよかったんだけどな~翠が書類仕事出来るようになれば俺の鍛錬時間がかなり確保できるし、外交会話でも君主と軍師なんて構図が無くなる。外交会話に関しては真面目に矯正していかないと

 

 

香風「お兄ちゃん、いま鞭はどっから取り出したの?」

 

一刀「これか?及川の私物だったんだけど、翠が馬鹿発言してる時に借りたんだ」

 

公孫讃「なんで及川は鞭なんて持ち歩いてるんだ……そしてなんで北郷は持ってた事を知ってるんだよ……」

 

香風「佑はその鞭で翠の事叩く予定で持ってたの?それともお兄ちゃんに叩いてもらうの?」

 

 

お~い香風さん~?何を言っているのかな?

俺がそっち系の趣味を持ってると勘違いさせれるでしょー?実際に翠や公孫讃さんが少し離れたし!

 

及川「かずぴーに叩かれるのも充分魅力的やけど、ここはやっぱり……翠ちゃんに叩いてもらいたいー!むしろ叩いてー今すぐに!」

 

翠「こええよ!なんでそんなに嬉々とした態度で迫ってくるんだよ!?そういうのは小蓮にしてもらえ!」

 

及川「わかっとらんな~こういうのは普段やらなそうな馬超ちゃんがやるから萌えてくるんやないか!」

 

香風「シャン知ってる……そういうのをぎゃぷ萌えって言うの」

 

 

香風惜しいな、ぎゃぷじゃなくてぎゃっぷが正解だったな。でも、そんなのは俺と及川しか知らない言葉だし、周りの子達が聞き慣れない言葉の意味を知りたがるのもまあ当然かな。というか、どんだけ香風の語録が増えるんだ……あいつの教える未来語の基準が萌え系統に集中してるのは気のせいか?

 

公孫讃「なんだそのぎゃぷ萌え?っていうのは」

 

一刀「正確にはギャップ萌えですね。孫尚香は小悪魔な性格をしてますから、普段から及川を鞭で叩いていても……おかしなことですが違和感はありません。対する馬超はそのような事をしない。そんな普段堅物の馬超が自分の事を鞭で叩いてくる、そんな状況に興奮するって感じですね~言葉の意味は理解出来ても、及川の趣味趣向は俺には理解出来ませんよ」

 

 

鞭打ち、罵声、放置プレイと、女子からの仕打ちならなんでも喜んで受けちゃうもんな~ドMの精神はやっぱり理解できん。

それを面白がって女子達も及川を囲んでたりもしてるが……あいつ意外と学校の女子からモテてたのか嫌われてたのか全くわからないんだよな

 

 

公孫讃「それはなんというか……個性的だな」

 

趙雲「いやいや、及川殿はかなりいい趣味をお持ちのようだ、もちろん私は叩く側ですがな」

 

公孫讃「お前も話しに乗っかるなまったく……話しが逸れたが、こちらか支援という形で星をそちらの軍に組み入れて欲しいのだがどうだろうか」

 

星「白蓮殿、そのような話し私も聞いてはおらぬが」

 

自分の右腕的存在の星を俺達に貸してくれるの!?

馬三姉妹と華侖が留守番で戦力が万全とは言えない状況だから、星が助っ人で来てくれるのは正直かなりありがたい。俺達全員が寝耳に水だったので、みんな『え?』と戸惑っているようだ。しかも星にも話してなかったみたいで、彼女が事情を聞きたがるような表情を浮かべている

 

公孫讃「どうしたみんな黙りこくって、もしかして余計なお世話だったか?」

 

一刀「い、いえ!こちらとしては大変嬉しい申し出なのですが、閣下の護衛役を派遣しても大丈夫なのですが?」

 

公孫讃「あぁ、それの心配をしていたのか。星を派遣するぐらいで私の安全が脅かされたりしないさ、星の他にも腕の立つ豪傑はいるからな」

 

星「それは遠まわしに私の事は不要と仰っておりますな?それならばこの趙子龍、香風同様新たな主探しの旅に行かせていただく」

 

公孫讃「ちょっと待て!なんでそうなるんだよ!誰も不要なんて言ってないだろ!?」

 

 

あ~こういう風にツッコミを入れるから星に色々いじられるんだろうな~

星は悪い笑顔浮かべて、どういじってやろうかっていうのを即座に考えてるし……

頭の回転速いのに使う所間違ってるよねこの人は……また始まったら長くなりそうだし、助け舟を出しておくか

 

 

香風「じゃあシャン達の所に来ない?星が来てくれたらシャン嬉しい」

 

 

香風がポロっともらした言葉に及川・明命も賛成だー!と声をあげ、翠も『趙雲が来れば先陣が厚みを増す』と呟いて加入に反対してない様子だった。香風達はノリノリで星を迎える段取りを組み始め、公孫讃さんは勝手に話しがどんどん進んでいく事にアタフタし、話題に上がっている張本人は、仲の良かった香風からの誘いが嬉しかったのか満更でもなさそうだった。

 

 

一刀「はいはい、この話はもう終り!兵士達が待機してるんだからそろそろ出立するよ!」

 

俺の言葉を聞いて香風達は『は~い』と返事をして先ほどまで話していた段取りを切り上げ、公孫讃さんに一言挨拶をしてから自分の部隊に戻っていった。当面はこの話をうやむやにする事が出来た公孫讃さんは安堵の表情を浮かべると同時に、次同じ話題が出たらどうしようかと頭を抱えて悩み始めていた

 

公孫讃「星~大丈夫だよな~?私の所から居なくなったりしないよな~?」

 

星「さて、この大陸は広いですからな。雲のゆくままにふらふら旅に出るのも一興かもしれませんな」

 

 

うぅ~星~見捨てないで~とすがり付いてる姿を見ると……今にも家を飛び出していく妻、それを必死に止める夫みたいな図が浮かんでくるよ。それにしても、星は素直じゃないと言うか……出て行くつもりなんてないくせに。まぁ、これも一種の主従の形なのかもな、星もツンデレで天邪鬼なのを覚えておこう

 

 

一刀「公孫讃殿、それでは私もそろそろ出立させていただきます」

 

公孫讃「討伐は任せっぱなしになるが、物資が足りなくなったら輸送を行うから遠慮なく言ってくれ。それと星の事をよろしく頼むぞ」

 

一刀「何から何までお世話になります、賊討伐はお任せ下さい。それでは星行くよ」

 

星「承知した。では白蓮殿、しばらく行って参りますが、くれぐれも注意してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして俺達は討伐軍に星という心強い味方を加え、最初の討伐地である并州・上党に向かう。星の実力は及川との模擬戦で証明しており、みな星に対して友好的に接していた。各自仲良くなり真名交換をして交流を深めていた。

 

まず討伐軍は勢いが弱い部分を叩き領地を奪還し、その場で戦っている官軍を結集させて最も勢いのある青州・北海の黄巾党を討つ手筈となっている。

 

向かっている上党には史実で曹操軍も苦戦させた堅牢な関・壺関が存在する。黄巾党の兵達は壺関に立て篭もり、官軍を待ち受けていると先行して視察に向かわした明命からの情報が入った

 

 

及川「要害の壺関に立て篭もられとるのはちと厄介やな」

 

翠「壺関に攻め入るなら騎馬隊は役に立たないからな、野戦に引っ張りたいところだが」

 

及川「かずぴーなんか策思いつかへんか?」

 

一刀「とりあえず無防備のまま話すのは危険だし陣を築いて落ち着こう、このまま居ても事態は好転しないからな」

 

 

一刀の言葉に諸将は頷き、各部隊に陣を築く指示を飛ばす。

兵士達が陣造りを行っている間に、主要の将は本営に集まり対策案を検討し始めている

 

 

一刀「明命の報告では壺関に立て篭もる黄巾党は約5千、俺達の総数2万5千と比べたら1/5の兵力だが、俺達の主力は騎馬隊。お世辞にも攻城が得意と言える編成ではない」

 

及川「2万五千の内訳が2万の騎馬隊と4千の歩兵隊と1千の弓兵隊やもんな~ホンマに編成偏りすぎやでこれ」

 

星「涼州の騎馬隊の精強さは大陸に鳴り響いておりますが、なぜこんなにも偏った編成にしたのですかな?一刀殿ならばこの状況も予測できたはずでは」

 

 

星の指摘はもっともだ、確かに高い攻撃力と機動力を兼ね備える騎馬隊ならば賊相手ならば殲滅するのは可能だ。しかしいくら野戦が強かろうと城・砦・関で官軍を待ち受ける黄巾党が必ず居る。そんな相手を想定していない思わせる程偏った編成なのは一目瞭然だった

 

一刀「俺も歩兵隊・弓兵隊の数を増やすべきだと言ったんだけどね……」

 

一刀は力無くうな垂れ、この偏った編成になった元凶に指を向けていた。指された方にはもちろん脳筋の翠がわ、私のせいか?とアタフタしながら諸将の視線に晒されている

 

シャオ「なんだ、そこの脳筋女のせいみたいね、なら責任を取らせて一人で壺関を取らせましょう!」

 

香風「流石翠、脳筋具合が凄い。シャンでももう少しマトモな編成組める」

 

翠「な、なんだよ!だって所詮農民から身を落とした賊だろ?なら騎馬隊で速攻片付けたらいいと思って……」

 

 

シャオは恋敵?である翠にこの編成を組んだ責任を取らせようと発言し、香風は翠より自分の方が編成上手いとドヤ顔をし、二人の追及を受けた翠は段々声が小さくなりながらも弁解をする

 

 

及川「まぁ、ここまで来たんやし細かい事は気にせんと行こうやないか」

 

翠「及川……お前私の事を庇ってくれるのか」

 

 

及川はもちろんやbと笑顔でサムズアップ(肯定の意味)を行い、それを見た翠がパアァ!と表情が明るくなる。翠は内心で変態なところもあるけど、案外いい奴だなと思おうとしたその時

 

 

及川「馬超ちゃんが阿呆・脳筋やなくなりよったら……そんなの馬超ちゃんやない!馬超ちゃんの姿をした別人や!」

 

翠「私の感動を今すぐ返せー!」

 

 

せっかく上げた株を速攻で落す、台無しであった。

おかしいな?慰めたはずなんやけどな~?と首を傾げる及川は演技なのだと信じたい……

 

 

一刀「翠が馬鹿なのは置いておいて、簡易な砦ならまだしも、要害の壺関に攻め入るのは正直自殺行為。だから力押しは行わない」

 

香風「じゃあどうやって攻めるの?」

 

 

一刀「答える前に質問だ、黄巾党に入るのはなぜだと思う?」

 

一刀はその場にいる将一人一人と目を合わせて問いかける。

その問いに対して漢王朝に対する不満や、領主が助けてくれないからとの意見が上がる。確かにそれらの原因もあるだろうが、最も根本的な問題は……餓えに苦しむ民が生きるために賊に身を落とした者が大半だ。漢王朝の腐敗を正し、民を救うという志を持った黄巾兵も居るだろうが、肥沃化した組織で統率が執れずに、暴徒や生きる糧を失った民が暴走してるのが今の黄巾党の姿だ

 

翠「北郷の言う事はわかったが、それが壺関攻略とどう繋がるんだ?」

 

いまこの場で翠と同じようにわからない香風とシャオ、それに対して一刀が言わんとする事に察しが付いた及川と星に別れてた

 

及川「かずぴーが言いたいことはあれやろ?渋々賊に身を落とした元民を懐柔して内応させるのが目的やろ」

 

一刀「その通りだ、よくわかったな及川。大人しく降伏するならば命と餓えさせない事を条件にして内応に応じさせて、関の門を開かせる」

 

星「大人しく降伏した者達の処遇はどうするおつもりですかな?いくら生きる為とはいえ、必死に生き抜こうとしている無実の民を襲って略奪してるのもまた事実。これを正さない事には兵士達や民も納得しないと思われますが」

 

 

一刀「その懸念もある、だから降伏を受け入れた後は期間を決めて労働に従事させる。もちろんその期間の給金は与えられないが衣食住を保証する。そしてその期間を終えたら一般の民として扱い、希望者が居るなら軍に組み入れも視野に入れてる」

 

星「罪を清算すれば今回の事は追及しない、これならば悪い条件ではありませんな」

 

翠「でもよ、兵士に取り立てる者以外はどうするんだ?そんなに養える余裕うちにあったか?」

 

 

シャオ「ちょっとあんたね……流石に自分の領地の状況を把握してないのは不味いんじゃないの?」

 

及川「馬岱ちゃん(蒲公英)と馬休ちゃん(鶸)が手伝ってくれとるとはいえ、内政はほぼかずぴーが一人で運営してるようなものやからな」

 

一刀「鍛冶屋や警備隊、馬の飼育や調教、羅馬から来る商人が行き来しやすいように街道の整備や未開の地の開拓。行いたい事業はたくさんあるから人手は多いに越した事は無い。その為の資金も既に確保してあるから」

 

 

星は改めて翠の脳筋具合と内政の人材不足を再確認し、よくこれで国が保ってられてるなと、一刀の内政手腕に驚きを隠せない様子だった。それと同時に気に入っている一刀の負担を軽減できるような人材を紹介できればいいが、都勤めとはいえ護衛が主な任務の為人脈があまり形成出来ずに紹介できる人材が居ないのを歯がゆく思っている

 

 

一刀「それともう一つ思惑がある。この緒戦で寛大な処置を施せば、これから先の戦いでも俺達に降伏してくる者が現れるかもしれない。その中には才能豊かな人材が埋もれるかもしれない、仮に発掘できなくても国力の向上・軍備増強と俺たちにはかなりの得があるんだよ。それに……戦とは無駄に血を流すのは好まないからね」

 

及川「なんやかんだええつつも、最後のが本音なんやろ?」

 

一刀「さぁ……どうだろうな」

 

香風「それでお兄ちゃん、思惑はわかったけど、どう行動するの?」

 

一刀「俺達は壺関から5里(約2キロ)の地点で全軍を待機いつでも攻め込めるぞと威圧させる、その上で矢文を関内に放ち様子見かな。もし反応が無かったら別の手段を用いるよ」

 

翠「北郷の策に反対の者は……居ないようだな。よし、全軍出陣だ!壺関に立て篭もる賊共に涼州騎馬隊の姿を見せ付けてやれ!」

 

 

それから涼州軍の行動は素早かった、陣造りを終え待機していた兵達にすぐ号令を掛け進軍を開始し、予定いていた関から5里の地点に軍を展開する。壺関に篭る黄巾党はろくに偵察・監視を行っていなかったようで、突如現れた涼州騎馬隊の存在に動揺が広まっていた。

 

 

明命「一刀さん!敵はかなり混乱してるみたいです!どうやら指揮系統も上手くいってないと見てもいいかと!」

 

及川「この距離でよぉ見れるもんやな~明命ちゃんの目はどうなってるんや」

 

明命「えへへ、これも取り得の一つですから!」

 

 

褒められなれてないのか、少しくすぐったそうにしていたが、嬉しそうに笑っている明命を見て周りがホッコリしたのは言うまでもない

 

一刀「和んでばかりもいられないな、星頼む」

 

星「心得た」

 

 

一刀から矢文を受け取った星は壺関に護衛を引き連れて向かい始め、今だ混乱が続く敵兵に向けて矢文を放った。星は敵が矢文を手に取って読み始めたのを見届け悠々と自軍の下へ戻っていった。

 

 

 

一刀の発案で送り込まれた矢文。送った側の涼州軍は警戒しつつも待機をしているだけなので心境的にはゆとりがあるが、送り込まれた側にとってはたまった物ではない。ただでさえ突如現れた官軍に加え、自分達を討伐しに来た官軍からこれまた突如言い渡された降伏勧告。

 

一刀の読み通りここに集まった5千の内約8割ほどは生きる糧を失った元農民、そんな彼らにとって手紙の内容が真実ならば今すぐにでも門を開けて投降したいという者が1人、また1人とその数を増やしていく。

 

事態を重く見た壺関を護る賊の大将がようやく城壁に現れ沈静を図るが時既に遅し。元農民達は制止を聞かずに関門を開き我先にと涼州軍に向かい走り始めた。

 

 

香風「お兄ちゃん、関から人がいっぱい逃げてきた」

 

星「一刀殿の予想より早く出て参りましたな」

 

一刀「彼らは正規の訓練を受けてないから、脅したりしたら逃げ腰になるのもわかる気もするけどね。及川とシャオは騎兵隊2千を率いて逃げてくる者を保護しろ、決して手荒に扱うなよ」

 

及川「了解や!」

 

シャオ「了解!」

 

一刀「翠は騎馬隊で関内に進入し、刃向かうものだけを蹂躙せよ」

 

翠「おうよ!行くぜお前等!」

 

一刀「香風は弓兵隊を率いて城門から妨害してくる輩を一掃しろ。抵抗が無ければその場で待機、無駄に矢を消費する必要は無い」

 

香風「うん、任せてお兄ちゃん」

 

一刀「明命は翠がなだれ込んだら歩兵隊を率いて残兵を掃討しつつ関内を掌握しろ」

 

明命「わかりました!みなさん行きますよー!」

 

 

星「私はどう動きますかな」

 

一刀「星の今回のお役目は終り、働きは次回……かな?」

 

星「ふむ、ならばみなの活躍を肴にして酒を飲みますかな」

 

一刀「随分あっさりしてるね、武人だから手柄を挙げたい!って言い出すかと思ったよ」

 

星「私はそこまで戦闘狂ではござらん、休める時に休んでおかなければいざと言うときに戦えない、だから私はそこまで手柄にがっついたりしないのですよ。強者との戦いには胸が躍りますがな」

 

 

それを最後に俺と星の会話は終り、いまだ戦う味方を見守り始めた。

結果を言えば涼州軍の完勝。賊軍は逃亡兵の多さに戦意喪失し離散、わが軍は怪我人こそ出したものの死者は0で、降伏してきた予想通り四千の元民は約束通りの処置を行う為、騎馬隊から2千を割り振って涼州まで移動させた。

 

 

一足速く関に攻め込んだ翠や明命、両者の補助をしていた香風は速やかに関の掌握と残党狩りを済ませ、一同は一番広い部屋に集まっていた

 

 

翠「ここまで大勝できるとは思ってなかったよ」

 

シャオ「降伏してきた人達もほぼ予想通りの人数だったんもんね!」

 

一刀「今回の敵がまともに組織されてなかったから取れた策だよ、次も使えるかわからないが、これで風評を得る事が出来るかもな」

 

 

一刀の指示でこの戦の噂を流すために席を外していた明命が慌てて戦後の話しをしている一同の下へ慌てて駆け込んできた。明命がもたらした情報に諸将に緊張が走る

 

 

明命「一刀さん~みなさん~大変です!壺関に向けて軍が速度を緩めずに進軍中です!」

 

翠「なんだと!旗は確認できたか!?」

 

明命「旗は幽と大将旗で曹を確認してます!」

 

香風「幽と曹?」

 

 

一刀「幽はわからんが曹……及川!すぐに門を閉じて護りを固めろ!俺は城門に向かう!」

 

及川「任せとき!固めたらすぐにわいも城門に向かう!」

 

 

曹の旗印を聞いてすぐに一刀と及川はすぐに動き出した。残された翠達はいったい何事かと不思議そうにしているが、一刀と及川の様子が只事では無いと感じ取ったのか、一刀の後に続いて城壁に向かう。

 

一刀と及川にとって曹の旗印を掲げる軍の出現はかなり衝撃を与えた。三國志の主役とも言われる乱世の奸雄・曹孟徳が来たとなれば油断は出来ない。官軍所属だとしても、速度を緩めずに進軍してくるなら防備を固めておかないと何が起こるかわからないと二人は思っている

 

 

一刀「何事も無ければいいんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

及川が関の門を閉じて防備を固め終えた頃、曹の旗を掲げていた軍も壺関の様子がおかしい事に気が付き、進軍を停止させて様子を伺い始めた

 

 

曹操「これはどういう事かしら?この関に立て篭もる賊は5千と聞いていたのだけど、軽く見積もって2万はいるわね」

 

夏侯淵「っは、どうやら壺関に立て篭もっているのは黄巾党では無く、官軍のようです」

 

曹操「官軍?愚鈍で全く役に立たない官軍がこの要害・壺関を落としたと言うの?所属はどこだ」

 

夏侯淵「いま姉者が確認しに行っていると所です。それにしても、我々以外の官軍がこうも簡単に奪取できるとは驚きです」

 

曹操「我等が渤海から出てそれほど日は立っていない、にむ関わらず私たちが到着する前にこの地の黄巾党を滅ぼした……興味出てきたわね」

 

夏侯淵「華琳様……まだ悪い癖が出てます」

 

曹操「もしかしてあなた、焼いてるの?」

 

夏侯淵「お戯れを。それは私ではなく、いま戻ってくる姉者に言ってあげてください」

 

 

 

夏侯惇「華琳様~!壺関に翻る旗を確認して参りましたー!」

 

曹操「ご苦労様春蘭。それでいったいどこの軍なの」

 

夏侯惇「涼と馬の旗印でした、恐らく涼州連合の馬超軍だと思われます」

 

曹操「馬超軍が壺関を攻略した?」

 

夏侯淵「涼州の馬超軍にまで勅命が下っていたようですね」

 

曹操「別に馬超軍に勅命が下ろうがどうでも良いのよ。問題は春蘭並の脳筋しか居ないはずの馬超軍がこんな短時間でこの壺関を落せたのが知りたいよ」

 

夏侯惇「あの華琳様……いまさりげなく私の事を馬鹿にしませんでしたか?」

 

曹操「あら、馬鹿にされてると気が付くなんて成長したじゃない」

 

夏侯惇「そんな!褒められたら照れちゃいます」

 

夏侯淵「馬鹿な姉者は置いておきまして、これから我等はどう動きましょうか。相手が官軍なら攻撃を開始する訳には行きませんし」

 

曹操「馬超軍に使者を送りなさい、会いに行くわよ。春蘭・秋蘭は3人を呼んできなさい」

 

夏侯淵「御意」

 

華琳「さぁ……正面から乗り込むわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

先に城門に登っていた一刀と少し遅れた来た翠達、それと門を固めた及川が曹操軍の動向を見守り、壺関からおそよ10里(約4キロ)の地点で進軍を中止する姿を見て一刀と及川安堵の表情を浮かべた。しかし

そんな安堵も束の間、少数で姿を現した6人の少女。その少女達からは今まで感じ取った事のない覇気をかもし出していた

 

 

夏侯惇「聞けえ!壺関を護る涼州の馬超軍の者達よ!我等は黄巾党討伐の勅命を受けた幽州刺史の曹孟徳!貴殿らと対話がしたく参上した、すぐに開門せよ!」

 

 

いきなりやってきて開門せよって随分上からの物言いだなおい、せめて開門願いたいとかって言えないものか?

中央でひときわ大きい覇気を出してる者が覇王・曹孟徳か。となると両脇に控えているのが恐らく夏侯惇と夏侯淵、その3人から一歩下がって控えてる3人はわからないが、曹孟徳が供に選ぶほどだ、見た目だけで判断すると痛い目に合うな

 

 

星「馬超殿いかがいたす、あの無礼者達を追い払いますか?」

 

シャオ「シャオもなんかあいつ等嫌い~何様って感じだよ」

 

香風「香風があいつ等全員追い払う」

 

翠「でもさ、あいつらは仮にも幽州刺史なんだろ?官軍で争ってる場合じゃないんだし、ここは門を開けて話すべきじゃないか?あいつら6人だけなんだから争う事もなさそうだし」

 

 

一刀「それならば門前で会おう、この関内で対話を行うにもまだ部屋という部屋は荒れたまま、この状態で通すとこちらが難癖つけられるかもしれないから」

 

翠「北郷が言うならばそれに従おう、みな付いて来てくれ」

 

 

 

 

 

夏侯惇「遅い!華琳様を待たせるとはなんて無礼な!」

 

夏侯淵「確かに何も反応がありません、もう一度叫んだほうがよろしいでしょうか」

 

曹操「その必要は無いわ、奴らは必ず私に会いに来る。もう少し待ってなさい」

 

翠達が対話に応じるため城門から移動を開始した頃、曹操達は何の反応も得られずにジッと待たされている為、夏侯惇や夏侯淵が少しざわめき始めるが、曹操は必ず来ると言う確信でもあるのか身動きせずにその場に凛として佇む。

 

そして門が開かれ、翠や一刀等が曹操の前に到着する

 

 

翠「私が涼州連合盟主・馬孟起だ。まだ関内が荒れてるからこの場で対面させてもらうぜ」

 

曹操「それぐらい構わないわよ。逆に気を使わせたみたいで悪いわね、私が幽州刺史の曹孟徳よ」

 

翠「そんで、私は腹の探り合いは苦手だから単刀直入に聞かせてもらうが、用件はなんだ」

 

曹操「貴方達も勅命を受けて賊を討伐していたのでしょ?私達も各地の黄巾党を討ちながらここまで進軍してきた。そして次の標的はここだった、それを私たちより速く陥落させた軍に興味を持つのは自然じゃないかしら」

 

翠「ふーん、それは別にいいんだけどよ、実際会ってみてどうなんだよ」

 

曹操「いまいちわからないわね」

 

翠「わからない?何のことだ」

 

曹操「ここに居る兵を見る限り貴方達の編成は7~8割は騎馬隊、そんな騎馬隊が中心の馬超軍がどうやって私が来る前に陥落させる事が可能だった……さて、ここから先は私の優秀な頭脳に予測してもらいましょう、朱里、雛里いいわね?」

 

諸葛亮「はわわ!がんばりましゅ!」

 

龐統「あわわ!が、がんばりましゅ」

 

曹操「紹介させてもらうわね、こっちの金色の髪の子が諸葛孔明。水色の髪の子が龐士元よ」

 

 

 

…………は?

 

いま曹操は目の前の二人をなんと紹介した……?

 

 

 

 

なぜ……なぜ……

 

 

 

「なぜ曹操の下に伏龍と鳳雛が居るんだ……」

 

 

それは声に出しだとわからないほど小さく呟いた言葉だった。一刀の周りに控えている将もよく聞き取れず、なんと言ったのかと首をかしげていたが、それを聞き取っていたのが1人だけいた。そしてすぐさま声を発した方に指を向ける

 

 

曹操「そこの貴方」

 

及川「わ、わい?」

 

曹操「貴方みたいなブ男じゃないわ、ブ男の隣にいる男よ。貴方名は何と言うの」

 

 

初対面の曹操にブ男呼ばわりされた及川はショックの余り膝から崩れ落ち、シャオや翠がすぐに駆け寄るが……当の及川はなじられて嬉しそうな表情で倒れこんでいた。

 

一刀「私は北郷一刀と申します、涼州連合盟主・馬超様の下で軍師を勤めさせていただいています。お見知りおき下さい」

 

 

曹操「覚えるかどうかはこれからの返答次第ね。まず貴方がこの要害である壺関を奪取する為の策を考えたのかしら?」

 

一刀「作戦の立案などは私が考えたものです」

 

曹操「やはり貴方なのね。それじゃあ朱里と雛里はこの男が考えた策を見抜いてみせなさい」

 

 

諸葛亮「事前の情報では壺関に篭っていた賊の兵力は5千と聞いていました。そして馬超さんの軍の編成は騎馬隊が主で歩兵隊・弓兵隊の数は少ないと見受けられます」

 

龐統「そんな馬超軍は野戦で力を発揮する一方で、攻城戦に不向きです。騎馬隊を抜いた歩兵隊・弓兵隊の数だけで短時間陥落、それも死者を出さずに実行するのは不可能です」

 

諸葛亮「それならば北郷さんの取る手は敵の心を攻めたのでしょ。古来より城を攻めるのは下策、心服させるのが上策と申しますから」

 

龐統「この地の賊は主に農民が生きる糧を失って止むを得ずに盗賊に身を落した者が大半。黄巾党の実態を冷静に分析した上で味方に被害を出さずに制圧する。よい策だと思います」

 

曹操「ちなみに私も公明・士元と同じ意見よ。それでどうかしら、答えは合ってるかしら?」

 

一刀「参りました、全部その大軍師が言っていた通りです」

 

 

この曹操の問いに一刀は内心焦っていた。

一刀達の背後に控える兵達を見て編成を見抜き、敵方の情報と照らし合わせた上で用いる策を瞬時に提示した。これだけでも恐ろしく頭の回転が速いのが理解できる。しかも小さな大軍師だけで無く、それを率いる曹孟徳にも見抜かれている。

 

 

一刀が考えた策を完璧に看破した曹操・諸葛亮・龐統の3人を馬超陣営は唖然とする事しか出来なかった。自分達の中で一番の知恵者が考えた策の内容を暴かれた事で誰も声を発する事が出来ずにいた。

 

 

 

??「あ~もう!朱里さんと雛里さんは本当に可愛らしいですわ~!お姉さま、まだお話は終わりませんの?朱里ちゃん達に新しい衣装姿を見られる……ああ……なんて幸せな状況ですの……!」

 

 

曹操の後ろに控えていたそんな重い空気を読まず、むしろぶち壊す発言を聞いて、更に馬超陣営の将はぽかーんとなってしまう

 

曹操「やれやれ、もう我慢できないの?紹介が遅れたわね、こちらは私の従妹の曹供字を子廉よ」

 

曹供「ご紹介にあずかった曹子廉と申しますわ。小さい女の子が大好きなので、邪魔するようなら……わかってますわよね?」

 

 

こやつロリコン……か?

曹操もかなりの女好きと有名だが、曹一族は総じてそうなのか?

でも華侖はそういう性癖は聞いた事が……俺が知らないだけで華侖もこういう性癖持ってるのかな?

 

 

曹操「この子が我慢できないようだから最後の本題に入るわね、今の漢王朝を貴方はどう見る」

 

 

今の漢王朝を……か、曹孟徳は保守派ではなく改革派。それに野心と自信と才能の塊でもある。曹操が目指すは漢王朝の統治ではなく新たな国を築く事。私が答えたのだからならば、俺にも本音言えって事か……ならば

 

 

一刀「漢王朝は既に死に体の龍、次代を築く新たな龍が出現するだろう」

 

曹操「貴方はその新たな龍を誰だと推測する」

 

一刀「天下に英雄は数え切れないほど居ますからな、あなた1人とは言いませんよ”覇王曹孟徳”」

 

そう言うと曹操は猛禽類のような鋭い視線を向け、獰猛な笑みを浮かべて楽しそうにしていた

 

 

曹操「私から貴方達に提案よ、既に晋陽の黄巾党は打ち破っている。これからは東進して冀州に出没する黄巾党を討つ。だから貴方達は私達と連合してはどうかしら」

 

 

 

これは思いがけない提案だな。俺達にとっては騎馬隊で先陣を切り、露払いは曹操軍に任せる事も出来る上に、曹操・諸葛亮・龐統と稀代の智謀の持ち主と呼ばれた采配を間近で見る事が出来る。

 

一刀「こちらとしてはその提案に乗りたいのですが、この連合で曹操さん達の利はなんでしょうか」

 

曹操「それは自分で答えを導くものよ、”軍師・北郷一刀”」

 

一刀「!」

 

曹操「後日使者を送らせてもらうわ。その時に詳細を決めましょう」

 

翠「わかった、こちらもそのつもりで準備を進めておく」

 

曹操「よろしい、春蘭!秋蘭!陣に戻るわよ!」

 

夏侯惇・夏侯淵「「御意」」

 

 

曹操一行が自軍の下へ戻って行き、姿が完全に見えなくなってからようやく馬超陣営の将達が口を開いた

 

明命「なんというか……かなり凄いお方でした」

 

星「私も噂は耳にしていが、あれほどの傑物とは予想外すぎる」

 

シャオ「あんなに自信満々な人居るのは雪蓮お姉ちゃんだけだと思ってた」

 

及川「あれは規格外すぎるでホンマに……才気煥発って言葉がこんなにしっくりくる人物は初めて見るで」

 

香風「曹操の両脇に控えてた将もかなり強い。シャン勝てるかな」

 

 

流石史実でもチート軍団と言われただけはあるな、まだ黄巾の乱なのにあの人材の宝庫……

 

 

 

本当に……参ったなこれは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏侯淵「楽しそうですね華琳様」

 

曹操「えぇ、こんなに楽しいのは久しぶりね。退屈だと思ってた賊討伐がこんなに楽しい出来事があるとは思ってなかったわ」

 

 

北郷一刀は私が名乗っていない”操”と名と朱里や雛里の二つ名・伏龍と鳳雛と言う名まで知っていた。なぜ知っているのかはあえて問わなかったが、漢王朝を死に体の龍と言ったことや、覇王と呼んだ事も曹操に興味を持たせるには充分だった

 

曹供「それにしても……なんであれほどの男が馬超の下で働いてるでしょうか。あの男はそこら辺の凡愚とは各が違いすぎますわ」

 

曹操「男嫌いの栄華がここまで褒めるなんて珍しいわね」

 

曹供「お姉様、あの男は危険ですわ。今すぐ処分するべきですわ」

 

曹操「私はね栄華、障害無き覇道を進むつもりはないの。立ちはだかる敵が強大な程楽しくなるし、屈服させたいと思ってるのよ」

 

諸葛亮「その為に私達と同行させて成長を促すつもりですね」

 

龐統「そしてその育ちきった強敵と雌雄を決し勝利する。華琳様らしい考え方です」

 

夏侯惇「私は北郷?以外の奴らと戦いです!特に馬超と斧を持っていた奴とブ男はかなり腕が立つます!」

 

夏侯淵「姉者が腕を認める程か、それは確かに楽しみだ」

 

 

 

この子達も馬超軍と戦うのが楽しみになってるみたいね、いい傾向だわ。懸念は北郷一刀以外に智謀の士が居ないところか……その辺りも含めて乗り越えられないようじゃ私には勝てないわよ。それにしても……栄華じゃないけど、この私が男を気にする日が来るなんてね

 

 

曹操「私の所まで上り詰めてきなさい北郷一刀、私を失望させたら後が怖いわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PCが突然フリーズしてCドライブ初期化する羽目になり、執筆中だった寂しがり屋外伝を含めデータ全部消えてorz……状態になってました。。

 

また書き直しだああああ><

 

 

 

 

 

華琳様を出してみたんですがどうでしたかね?

ついでに栄華も初登場です!口調があやふやなので英雄譚2開きつつ執筆してます

 

 

涼州軍の遠征組みは一刀・及川・翠・香風・明命・シャオ

留守組みは鶸・蒲公英・蒼となってます

 

 

後はいま判明してる各陣営の将は以下の通り

 

公孫讃軍:白蓮・星

 

孫策軍:雪蓮・冥琳・蓮華

 

曹操軍:華琳・栄華・春蘭・秋蘭・朱里・雛里

 

 

曹操軍は既にチート、覇王・伏龍・鳳雛が同じ陣営は敵からすれば悪夢すぎですね……

 

 

 

話し変わりますが、DMM提供の恋姫夢想~英雄列伝やってる方いましたら教えてください~ワンコ隊って同盟作りましたので、よかったら一緒にやりましょ!

 

 

 


 
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