No.814093

15話「雪国の騎士王」

騎士王ランスロットは典型的な美形キャラ

2015-11-16 23:36:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:215   閲覧ユーザー数:215

ケインを仲間に加え4人となったパーティー。プントを出発し再度ストリームバレーを抜ける事となる。もうオーガはいないため気をつけるべきは通常の魔物だけだった。内部の洞窟を通り時折外外周の谷へ出たりを数回繰り返すとやがて前方に崖と崖を繋いだ一本の不安定そうな吊り橋が見えた。

「よかった…オーガの出現でこの吊り橋が切られていないか心配だったけど…」

このいつ切れてもおかしくなさそうな吊り橋を見ても尚顔色一つ変えないケインに対してガイは苦笑しながらも流石は地元の人間、と感心すらしていた。

「おい何平然としてんだよ!!この橋大丈夫なのか!?渡ってる最中に切れたりしねぇか!?」

ジェリーダは猛吹雪にゆられるこの吊り橋を指差し若干青い顔で危険性を訴えたが、ケインは相変わらず落ち着いたままだった。

「確かに見た目は危なっかしいですけどね。この橋は王都側の人達が年に数回安全の確認作業に来るんです。危なそうだったら補強もするし、そんなに危険ではないと思いますよ」

「それに、下は深い雪でしょうから案外クッションになるんじゃない?こないだみたく」

「落ちる前提で話を進めないでくれる?」

レイナの態度もまた淡々としていて、ガイは突っ込みを入れずにいられなかった。

橋を渡り始める4人。先頭を普通にスタスタと歩くケインに続き、同じくレイナ、慎重に一歩一歩緊張した面持ちで進むガイと彼の背中にしがみつくジェリーダ。

「おい…そっと…そーっとだぞ!」

「落ちたくねぇなら離れろ!一箇所に2人分の体重がかかるのは危険だ!!」

「あの…そこまで警戒しなくても大丈夫ですよ…?」

ケインが苦笑しながら振り返る。確かに慣れた人間にとってはそうかもしれないがガイにとってもジェリーダにとってもこんな不安定な吊り橋など生まれて初めてなため(レイナもそうなのだが)言葉で危険が少ない事を説かれても不安は消えなかった。

ケインの言う通り、吊り橋は切れる事なく4人は全員無事に渡りきった。吊り橋の先―東側もまた先程までと似たような構造になっており、洞窟や足場の悪い外周を渡ってようやく谷を下る事ができ平地が見えてきた。

相も変わらずというべきか、やはりというべきか、雪原の寒さに最初に音を上げるのはジェリーダである。

「うぅ~…ガチガチガチガチ……」

長時間寒い所を歩いているせいか、やたらと歯を鳴らしていた。

「ガチガチうるせぇよ。寒いのはお前だけじゃねーんだぞ?」

その音がガイを苛立たせているようだ。

「寒いもんは寒いんだよ!足の指先なんかもう寧ろ痛い!!」

「それは大変ですね。でも谷を下りれば王都はもう目と鼻の先……」

とケインが言いかけた時か

「うっぎゃああああああ!!!!!」

ジェリーダの足元の雪から青い触手が現れ、その足を掴んで姿を現す。砂漠で遭遇した目玉を頭にいくつもの触手を持つ柱型の魔物、ゲイザーによく似ていた。違う所とえば色くらいだろうか。砂漠にいたゲイザーが赤かったのに対しこの魔物は身体が青い。

「また…か……」

「ええ、またね」

片手で顔半分に手を当て深いため息をつくガイと落ち着き払ったままのレイナ。

「ちょっと2人共!!何呑気に構えてるんですか!!!ジェリーダさん今助けます!!!」

いきなり出てきた魔物がジェリーダを捕獲するのは新しい地に足を踏み入れれば必ず起こるお約束展開だったが新参者のケインにとっては初めての事態で普通に危機感を持っていた。

「あーもうしょうがねぇなぁ…」

青いゲイザーに飛びかかろうとするケインを見てガイはやれやれといわんばかりに剣を抜きその刀身に炎を宿す。

「はあああっ!!!!」

掛け声と共にケインはゲイザーの目玉に素早い乱舞を繰り出す。両手につけている鉄製の爪でひっかき、無数の蹴りを入れた。青いゲイザーの動きが鈍くなる。

「おいおいケイン、あんま俺の見せ場取るんじゃねーぞ?」

余裕たっぷりの表情のガイがジェリーダを拘束している触手を斬り落とす。

「わっ!!」

ジェリーダは触手から解放されそのまま落下するも下に回り込んでいたケインに抱きとめられ無傷で救出された。

「大丈夫ですか?」

「俺の味方はお前だけだぁ~…!!」

もうこの展開に対して危機感を覚えないガイやレイナと違い真っ先に自分を助けるために動いてくれたケインはジェリーダにとって一瞬神のように映った。彼が女性のような顔つきであるせいか寧ろ女神に見えたいった方が正しいのかもしれないが。

「美味しい所を持って行ってごめんなさいね」

レイナは男子3人が青いゲイザーから離れるのを確認すると杖に自分の身長くらいはあるだろう炎を宿しそれを横に振った。炎が燃え移ったゲイザーはやがて消し炭と化しその場に消えた。

「すみません、言い忘れていましたね」

ケインが抱きかかえていたジェリーダをそっと下ろすと3人の方に向き直る。

「さっきのは『スノーゲイザー』といって雪に潜んで足元から人間を襲う魔物です。王都周辺では遭遇しやすいから気をつけて下さいと言うべきでした」

「まぁ全員無事だったし、結果オーライだよ」

「おめーが言うな!」

完全に自分が捕まった時呆れ顔をしていたガイの頭をジェリーダが思い切り叩く。ちょっとは心配しろ!と心の中で突っ込みながら。

「いってぇなこら。でもさ、ケインお前流石は自警団の隊長やってただけあるな。あのスピードは誰にでもできる事じゃねぇぞ」

「そ、そうですか?俺はガイさんやレイナさんのように魔法が使えるわけではないので敵の弱点によって攻撃属性を変える事はできません。ので代わりに敵の身体的な弱点を見極め素早く入り込んでそこを突く、という戦法を心がけてはいますけどね」

「身体的な弱点?」

「ええ。例えば身体が硬い魔物なんかは魔法で攻撃しないと致命傷を与えるのは難しいですよね。でもそんな魔物でも必ず弱い箇所があるんです。そこを見極めさえできればあとは強力な一撃を叩き込むだけです。俺に武術を教えてくれた師はこれを『点穴』と呼んでましたけどね」

「点穴…ねぇ」

ガイは『点穴』という言葉とケインに武術を教えた師の事を心の片隅に入れる事にした。

 

クローナの王都にたどり着いた時は既に夜更けだった。プントより遥かに規模の大きい町の奥に見える暗くてはっきり見えないが雪をかぶった大きな居城がそびえている。

「すっかり遅くなってしまったわね」

「まーたこいつが我儘王子発動したからじゃね?」

ガイが悪戯っぽく笑いながら左腕でジェリーダの首を捕まえ右手で頭をくしゃくしゃと掻き回す。

「いってーよ!!放せこの馬鹿力クソ力~!!!」

「まぁまぁ…無事着いたからいいじゃないですか」

ケインは苦笑しながら喧嘩するガイとジェリーダを宥めた。

「じゃあ今日はもう宿屋に泊まって王様への謁見は明日にしましょうか」

何事もなかったのように振舞うレイナ。この喧嘩が勃発した時はスルーが一番、完全に対処法を心得ているようだった。

町の宿屋は流石は王都というべきか、寧ろホテルと呼んだ方がいい程の規模だった。部屋の数が多いだけではなくエコノミーからロイヤルスイートまでクラスがあり、レストランや大浴場などの施設も充実している。

4人はわざわざお金をかけてまでいい部屋に泊まる必要はないと考え(ジェリーダだけは少し残念そうにしているが)エコノミーを2部屋借りる事にした。当然男女で分けられる事になる。

「あのさぁ…お前毎回何の躊躇いもなく男部屋に入って来るよな…」

そしてこれもお約束なのか、レイナは自分の寝る時間までは必ずガイ達の部屋に訪れるのだ。

「少しお話するくらいいいでしょ?」

しかも悪びれる様子も恥じらう様子も一切ない。まぁジェリーダやケインが一緒なら問題はないが、かつてサウスリーラでガイとレイナが2人きりだった時にもこんな事があった事を思い出すガイが若干頬を赤く染める。コイツ、俺の事安全な男だと思ってんだろーか…と疑問を抱きながら。

「あの…」

そんな沈黙を破り申し訳なさそうに挙手するのはケインだった。

「皆さんは、ドゥルのクルティス皇子と戦った事があると仰っていましたよね?」

3人が同時に頷く。プントの町でケインに事情を話した時にルピアでの戦いの事も一緒に話していたのだった。

「これは俺の見解なんですけど…クルティス皇子は自国の民には優しいと聞いた事があるんです」

マルクのチェリカという記者の女性から同じ事を聞いた事を思い出すガイ、皇子以上に怪しい態度を見せる参謀のクローチェを思い出すレイナ、そして一気に目つきが険しくなるジェリーダと三者三様の反応を見せた。

「俺は皇子の顔を見た事はありませんから憶測でしか物は言えませんが…そんな噂が立つような人が何故そんな殺戮を繰り返すのか…疑問なんです。それに加えてレイナさんの仰る参謀の『クローチェ』という男が一枚かんでいるのではないかという話…本当に悪いのはクルティス皇子なのでしょうか…?」

「そんなの…あいつが悪いに決まってんじゃん……」

拳を震わせながら俯くジェリーダ。

「ですが『クローチェ』が皇子に何かをしたせいかもしれないと…もしかしたら皇子はそこまで悪い人間ではないのかも…」

「違うっ!!!あいつが俺達に何をしたと思ってんだよ!!!!」

尚も食い下がるケインにジェリーダは怒りを露に椅子から立ち上がりテーブルを思い切り叩いた。その青い瞳には涙がたまり出す。

「あいつは父上と母上をその手で殺したんだぞ!!?ユーリスだってあいつに攫われた!!!あんな簡単に人を殺せる奴が悪い奴じゃないわけねぇだろ!!!!わかったらもう二度とそんな事言うんじゃねえぞ!!!!」

「す、すみません……」

ケインが俯きながらも素直に謝るとジェリーダはどかっと椅子に腰を下ろしそっぽを向いた。

「ジェリーダ?ケインはちゃんと謝ったでしょう?貴方が取るべき態度は違うんじゃなくて?」

「うっ…」

レイナが諭すとジェリーダはバツの悪い顔をしながらケインに向き直った。

「…ごめん、言いすぎた」

「そんな、悪いのは俺の方ですから!…でも、ドゥルがそんな魔物を操っているのなら『守護神』だけじゃクローナを守りきるなんてできない…」

「そういや、ルピアでもちょっと聞いたけどその『守護神』ってのは何だい?」

ずっと沈黙を守っていたガイが口を開く。

「クローナを海から守る海竜『アレクサンダー』…騎士王ランスロット様の友達…です」

「友達?」

「この都市の南に軍専用の港があるんですが…ランスロット様が昔近海の哨戒に出ていた事があって、その時に仲良くなったと聞きます」

「ってぇ事は、クローナと無事協定が結べたら海竜も力になってくれるかもしれねぇな!」

ガイは決してクローナ王を説得する事に対して楽観視しているわけではなかった。だが少しでもプラスな発想を持たなければできる事もできないとそう考えている。

「そう…ですね」

その場はお開きとなり、レイナが自分の部屋に戻りジェリーダが一足先にベッドで休むとしばらくは沈黙が続いた。

「……はぁ」

その沈黙の中、ケインが椅子に座ったまま深いため息をつく。

「さっきの事、気にしてんのか?」

窓の外をずっと眺めていたガイがそんなケインの方を振り返る。

「コイツ、ホンット口の悪い奴でさ…旅を始めた時なんざ今以上に疲れたとか喚いてたし助けてやっても『遅いぞ』の一言だけで礼の一言も言いやがらねぇ…自己中で我儘で生意気なクソガキだったわけよ」

ガイはマルク到着以前のジェリーダとのやり取りを思い出し苦笑した。

「は…はぁ」

「だけどさ、あれでも成長したんだ…。色々面倒かもしれねぇが勘弁してやってくれな」

「いえ、ジェリーダさんのお怒りは最もだと思います。事情はちゃんと聞いていた筈なのに…軽率でした」

ケインはあどけない寝顔で静かに寝息を立てるジェリーダの顔を申し訳なさそうに見つめた。そして次の瞬間、微笑ましげにガイの方に向き直る。

「な…何だ?」

「ふふふっ、ガイさんとジェリーダさんって何だか兄弟みたいだなって思ったものですから…」

「き、兄弟ぃ?」

心外だ、と言いたげなガイだが内心はまんざらでもなかった。そしてあのクルティスが実兄である事実を考えるとジェリーダが弟である方が百倍はマシだな、とも思った。

 

翌日、4人は町の最北にあるクローナ城を目指すのだが、その道中で大きな建物を見つけた。

「なぁ、あのデッカイ建物、何だ?」

ジェリーダがそれを指差しケインに尋ねる。

「あれはクローナの王立図書館です。先々代の王…ランスロット様のお爺様に当たる方が建てたと聞きます。大抵の本は揃ってますよ」

「本ねぇ…枕代わりに使った事くらいしかねぇや。どうも文字の羅列ってのは見てて眠くなるっていうか…」

めんどくさそうに吐き捨てるガイにケインは苦笑した。

「やっぱり?脳筋って決まってそういう事言うよな♪」

ジェリーダが意地悪くにやける。

「何だとこのヤロ!」

ガイは再度ジェリーダの首を左腕で捕まえ右手で頭をくしゃくしゃと掻き回した。

「そういう所が脳筋だって言ってんだよ!」

「図書館か…確かに興味はあるわね。時間ができたら一度寄ってみたいわ」

レイナはじゃれ合う2人を完全に無視していた。まるでそこに空気しかないといわんばかりの無視っぷりにケインは苦笑しかできなかった。

クローナ城の前。城門には白銀に輝く全身鎧を纏った門兵が2人立っている。

「ケイン殿ではありませんか!こちらにいらしていたのですね!?」

驚いた様子でケインに声をかける門兵。プントの自警団隊長の地位に収まっている彼が王都を訪れる機会が減ってしまっていたためか、何の連絡もなしに訪れるとは考えもしなかったのだ。

「お勤めご苦労様です。ランスロット様にお会いしたい方がいるのですが、お通し願えませんか?」

「本来であれば他所者を入城させる事はできないのですが…ケイン殿が一緒であれば王も許して下さるでしょう。どうぞお通り下さい!」

「ありがとうございます」

4人は城内に通して貰える事となった。兵の1人が先行して王に連絡に行っているため入口付近で待たされる事になる。城内には装飾用の鎧がいくつも飾られている、まさに騎士王の城に相応しい光景だった。

「ホントにあっさり通してもらえたな」

ガイが周囲を見回しながら誰に向けるでもなく呟く。

「ケイン、貴方王様とどういう知り合いなの?ただの顔見知り程度じゃ普通通して貰えないと思うんだけど」

「そ、それは…」

不思議に思ったレイナだが、それを問おうとするとケインは戸惑い気味に俯いた。そのタイミングで兵が正面階段からこちらに下りて来る。

「許可が下りました。ランスロット様がお待ちです」

「さぁ、急ぎましょう!」

ケインにとっては有難いタイミングだったのか、若干急かせ気味に3人を促した。

 

謁見の間は3階にあるが、階段はまっすぐ北へ進めばたどり着ける位置づけとなっていた。荘厳な赤い絨毯が王の玉座まで伸びている。その玉座に座るは美しい容貌で長い金髪に赤い毛皮のマントを羽織った若い男性だった。マントの下には城内に並べられていた以上の輝きを持つ白銀の鎧が見え隠れしている。

「お久しぶりです。ランスロット様」

ケインが玉座に座る男性―騎士王ランスロットの前に片膝をつく。

「君が来ていると聞いて驚いた…。君達には本当に申し訳ない事をした…」

どこか陰りのある表情と口調のランスロット。

「いえ…立場上仕方なかった事です。それに姉は幸せだったと思います…」

「なぁ、あの人…ケインの姉ちゃんと何かあったのかな?」

こっそりガイがレイナに耳打ちするが、彼女は特に反応を示さなかった。今考えるべき事は他にあるからだ。

「すまない。今は昔話をしてる場合ではなかったな…」

「単刀直入に言うぜ。俺達の力になってくれ!!」

ジェリーダがケインの前に立ちランスロットに真剣な表情を見せる。この王さえ協力してくれれば三国同盟は実現可能となる。そんな思いを胸に秘めながら。

「いやいや…それは単刀直入すぎだろう……」

呆れた口調でツッコミを入れるガイの頬をレイナが無言で引っ張った。

「お話致します」

レイナはランスロットにこれまでの経緯を説明した。ここまでに様々な事があったため話は長くなってしまったが。

「なるほど…マルク、ルピアと協力してドゥルの脅威に対抗しようという事か…」

「どうかこの方々に力をお貸し願えませんでしょうか?クローナだけでこれからもドゥルの脅威から国を守りきれる保証なんてない筈です」

ケインも一緒になって懇願するがランスロットは首を縦に振ろうとはしなかった。

「確かにケインくんの言う通りなのかもしれない。だが協力はできない」

「は!?何でだよ!!そこまでわかってんなら…!!」

尚も食い下がるジェリーダ。しかしランスロットは首を横に振るだけだった。

「ジェリーダ王子…君の国の事は本当に残念に思う。ご両親の冥福もお祈りしよう。だが君達は3つの勢力を1つにまとめ上げる事を甘く見すぎているのではないか?」

同時に言葉を失う4人。今まで王達から力を貸してもらう事ばかりでその後の事など考えた事がなかったのだ。

「決して簡単ではない筈だ。形ばかりの同盟を結んだ所でまとまらなければ個々で戦っている事と同じ…結局はドゥルに敗れ去る事となるだろう…そんな状況下での協力はできない」

何故こんな事に気づかなかったのか…ガイ、ジェリーダ、ケインは同じ事を考えていたが…レイナは違った。

「では…裏を返せば陛下は全ての勢力が一丸となる事が証明できれば力を貸して下さる…と解釈しても?」

そして一切の迷いのない満面の笑みを向ける。

「君達にはそれができるのかい…?」

「わかりません。ですが尽力は致しますわ。それができた暁には同盟を結んで下さいますね?」

「…わかった、いいだろう」

渋々ではあるものの、ようやくランスロットは首を縦に振った。

「君達が団結して戦えるというのなら、アレクサンダーと戦って彼を従わせてもらいたい」

「アレクサンダーを!?」

ケインが驚き目を丸くする。ランスロットの友である『守護神』と呼ばれる海竜である。

「彼の事はケインくんから聞いているかもしれないが、アレクサンダーは我が友でこのクローナの海域でドゥルの侵攻から国を守ってくれている。彼は自分より強い者を認め従うという習性を持つ。恐らく一国の力だけでは彼に勝つ事はできないだろう」

「つまり、勝てばそれは力を合わせる事ができるって証明になるって事ですかい?」

ガイがこりゃ大変そうだ…と苦笑しながら問うとランスロットは無言で頷いた。

「承知しました。必ずや証明してご覧に入れましょう」

レイナが一礼すると4人は一旦城の外へと出た。

「どう…しましょうか……」

戸惑い気味のケイン。誰となく尋ねるが、ガイもジェリーダも困った様子で首を横に振るだけだった。

「そうね。ひとまずはこの南の海に全勢力を厚なければならないわね」

唯一冷静なままのレイナが淡々と言っている所に現れる2つの影。

「お、もしかして説得は終わったのかい?」

「ア、アンタら……!?」

ガイがそこに現れた2人を驚きながら指差す。その2人とは今はグルデにいると思われていたグルデ・クルセイドのリーダー、デューマと副リーダーのリズだった。

「元気にしてたかい?レイナちゃんwww」

ウィンクしながらVサインするデューマ。そして…ケインの顔を見るや人とは思えない、まるで疾風のごとくその前に立ち優しく手を握った。

「あの…何か?」

「初めましてお嬢さん…僕はグルデ・クルセイドのデューマと申します。貴女はこの降りしきる白銀の雪より美しい…さぁ、今夜はロイヤルスイートで将来について語り合いませんか?」

完全にケインを女性だと勘違いして今度はその方に手を乗せるデューマ。そんな彼に満面の笑みで手刀を叩き込もうとしたが

「あの…俺…男なんですけど…」

ケインがわなわなと拳を震わせながらぼそりと告げるとデューマはリズのチョップを喰らう前に石化してしまった。

「あら、突っ込みは無用でしたか」

リズはとても残念そうだった…少なくともガイ、レイナ、ジェリーダにはそう見えた。

 

外で長話をするのもなんだという事で6人は王立図書館まで移動した。その間に4人はデューマとリズにクローナ城での出来事お大方説明した。

「そうでしたか…では早速マルクとルピアに書簡を送りましょう。そして皆さんには一度グルデに来て頂きます。それでいいですね、デューマ?」

と、デューマを振り返るリズだが彼は先程のショックか本棚の隅でまだ蹲っていた。その周囲には暗いオーラが漂っている。

「そーね、じゃあプントまで戻るか。アンタ達の船もあそこに停泊してるんだろ?」

ガイは完全に落ち込んでいるデューマをスルーしてリズに聞き返した。彼女もまた無言で頷いた。

「あの…彼は……」

ケインが戸惑いながらガイ達とデューマを交互に見回す。

「アレね…無視していんじゃね?」

ジェリーダはやる気なさそうにデューマを指差した。レイナも無言のまま目を閉じながら俯いた。

一行はクローナを出てプントへ戻って行った。


 
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