No.811809

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

疾走のサイクロン




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2015-11-04 15:07:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5340   閲覧ユーザー数:1162

これは、ある日常の中で起きた出来事…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ブォォォォォォォォォォ…-

 

「…うん、悪くない」

 

某国、とある山中の道路。休暇を貰い、車に乗ってドライブを楽しんでいた二百式。この日は楽園(エデン)から支給された白い自動車を運転しつつ、開けている窓から涼しい風を思う存分受けていた彼は、普段の任務のストレスを珍しく発散する事が出来ていた。楽園(エデン)に滞在している間もストレスを発散する方法はあるにはあるのだが、そこだと一部のメンバーが起こす騒ぎに巻き込まれたり、犬猿の仲であるデルタと顔合わせしたりする確率が非常に高い為、そうなるくらいなら外出した方がマシだと判断し、今に至る訳である。

 

(とはいえ、いつまでも気が緩んでるような状況でもいられんな。これから先、管理局との戦いは更に激しくなっていく事だろう……だが関係ない。俺ははやてを守る為に戦い続けるだけだ)

 

はやてを守る為なら、自分は全てを投げ出してでも戦ってやる。旅団に加入した後も管理局に追われ続けていた自分を、特に怪しむ事なく家に居候させてくれた少女―――八神はやて。自分やアリスよりも年下で、とある理由から身体は不自由で…

 

(…そういえば、アリスはどうしてるかな)

 

管理局に所属していた頃の相棒―――ロラン・アルティミットが死んだ後、管理局に追われる身となってからは一度も会っていない幼馴染。当時は勝手に婚約者に指名されて迷惑以外でも何でもないように思っていたが、今の二百式にとってはそれすらも懐かしく感じていた。

 

(だが、あぁなった以上はもう会う事も無い。せめてアイツが、今も海外で幸せに過ごしている事を祈ろう)

 

とにかく、今は次の任務に支障が出る事が無いよう、ストレスを少しでも発散しておこう。そう思い、二百式は運転に集中していたのだが…

 

-プップー!-

 

「…!」

 

彼が運転している自動車。その後ろを走っていた黒いスポーツカーが、突然クラクションを鳴らして来た。いきなり何だと思った二百式はミラーを見てみると、後方を走っていたスポーツカーが前照灯を強く点滅させ、思いきりパッシングをしていた。ギリギリ見える運転席からは、ニヤニヤと小馬鹿にしたような笑みを浮かべているチンピラ染みた男。これが意味している事はただ一つ…

 

(走り屋か。それも、この俺に喧嘩を売って来るとは…)

 

二百式自身、走り屋に遭遇する事自体はこれが初めてではない。過去にドライブをするたびに何度も走り屋に遭遇しているのだが、彼はそういった厄介な走り屋達を全て振り切っている。どの道、やる事は変わらない。

 

(上等だ。俺に喧嘩を売った事、後悔させてやるよ…!!)

 

その瞬間、二台のスピード勝負は始まった。二百式の自動車が加速し、黒いスポーツカーもそれに続く形で一気に加速。二台の車が猛スピードで山中の道路を走り抜けていく。乗っている車の性能としては、二百式が乗っている自動車よりも黒いスポーツカーの方が速度は速いようだ。

 

(単純な速度は確かに速い……だが!!)

 

前方のカーブを、黒いスポーツカーはある程度減速してから曲がったのに対し、二百式が乗る自動車はほとんど減速する事なく一気にカーブを曲がり切ってみせる。その後も行く先々でカーブを通る事になる二台だが、二百式はどのカーブもほとんどスピードを落とす事なく通過しており、逆に黒いスポーツカーは最初に比べてスピードがどんどん下がっており、その運転の仕方にも少しずつ焦りが見え始めていた。その後、黒いスポーツカーは何度か二百式の自動車にわざとぶつけようとしたが、二百式の自動車はそれを余裕でかわしてみせる。

 

そして…

 

「…ッ!? うわっ!!」

 

-ガシャアンッ!!-

 

大きなカーブにて、黒いスポーツカーはとうとうドリフトし切れずにガードレールに突っ込み、ものの見事に大破してしまった。停止したスポーツカーから黒い煙がブスブス上がっている中、それをミラーで見ていた二百式はフンと鼻を鳴らす。

 

(所詮、性能に頼り切っただけの馬鹿だったか。雑魚め…)

 

期待外れだったなと、二百式はつまらなさそうな表情で普通のドライブを再開しようとしたその時…

 

 

 

 

 

 

-ブォォォォォォォォォォォンッ!!-

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

彼が運転している自動車の横を突然、後部に大型のブースターらしき物が付けられたオープンカーが猛スピードで通り過ぎて来た。驚いた二百式がそのオープンカーを見ると、オープンカーに乗っていたサングラスの青年は一瞬だけ二百式の方を見た後、ニヤリと笑ってからすぐにオープンカーを加速させていく。

 

「またか……望むところだ!!」

 

それを挑発と受け取った二百式は加速し、オープンカーの後ろを続くように走る。どうせまたさっきの走り屋と変わらないだろう。そう思った二百式は先程と同じように、このオープンカーもさっさと振り切ってしまおうとしか考えてはいなかった。

 

しかし…

 

(!? 馬鹿な、速い…!!)

 

二百式の予想は、大きく裏切られる事となった。

 

先程の無様な醜態を晒した黒いスポーツカーと、こちらの現在競っているオープンカーでは、運転手の運転技術がまるで違っていた。カーブがある道でも全くスピードを落とさず、二百式の自動車は追い抜こうとしても逆にどんどん引き離されていっているのだ。

 

(ただ車の性能が良いだけじゃない!! あの男、かなりのドライビングテクニックの持ち主だ……くそ、この自動車じゃ性能で追いつけない…!!)

 

一方的に実力差を見せつけられ、焦りと苛立ちを露わにした二百式はアクセルを踏んで更に加速する。しかし…

 

「!? く、しまった…!!」

 

トンネルを抜けた先の広い道で、二百式が運転していた自動車の後部でパスンという音が鳴った。自動車の後輪がパンクしたのだ。二百式は止むを得ず停車し、それに気付いたオープンカーも減速し、二百式の自動車の前方で停車した。

 

「!」

 

オープンカーからサングラスの男が降りて来たのを見て、二百式も自動車から降りる。サングラスの男は二百式が乗っていた自動車を見て「ふむ」と呟き、何かに納得したかのような表情を見せる。

 

「貴様、何者だ?」

 

「…ただのしがないドライバーさ……お前、良い腕をしているな。だが車の性能がそれに追いつけていない」

 

「…何が言いたい」

 

「恐らくだが……その車、お前が普段乗っているような車ではないんじゃないか? ドリフトをする際、多少無理して曲がっているように思えたのだが」

 

「!!」

 

二百式は目を見開いた。今の短い時間の運転だけで、相手の事がそこまで分かるのかと。サングラスの青年は面白そうに笑みを浮かべながら、自分が乗っていたオープンカーに再び乗り込む。

 

「いずれまた、出会う時が来るかも知れない。その時はお互い、運転し慣れている車で勝負しよう」

 

そのまま、サングラスの青年が乗ったオープンカーは走り去って行ってしまった。一人残された二百式は、ただその走り去っていくオープンカーを見ている事しか出来なかった。

 

「何なんだ一体…………いや、待てよ」

 

ここで、二百式はある事に気付いた。

 

(奴が乗っていたオープンカー……げんぶが変身していた“仮面ライダー”のバイクと、カラーリングが何となく似ていたような…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのオープンカーを運転していたサングラスの青年は、楽しそうな表情でドライブを続けていた。

 

「消滅したかと思えば、こんな知らない世界にやって来て、腕の良いドライバーと出くわした…………これはただの出来事に過ぎないか、それとも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オープンカーが過ぎ去る道路に、一枚の白い羽が落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、イルヴィーナでは…

 

 

 

 

 

「「「―――あれ?」」」

 

ディアーリーズ、ハルト、美空の三人が再び墓参りにやって来ていた。そんな彼等が目にしたのは、雲雀を始めとしたイルヴィーナの住人達の墓に複数添えられている、白いユリの花だった。

 

「まただ、白いユリの花……ハルトさん、何か知りませんか?」

 

「いや、俺も知らねぇな。アキちゃん達もここに来る時は、いつも違う花を用意してたぞ」

 

「じゃあ、誰が…この花を…?」

 

 

 

 

 

 

未だに正体が知れない、白いユリの花を添えた人物。

 

 

 

 

 

 

彼等がその人物の正体を知る時、刻一刻と迫って来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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