No.806442

リリカルなのはZ

たかbさん

第二十話 魔女の采配

2015-10-05 21:35:04 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1846   閲覧ユーザー数:1681

 

戦闘時よりも戦闘後の後片付けの方が割を食う場合が多い。

 

使徒殲滅後から二日たった今でもガンレオンは操者である高志が休んでいる時はフル稼働をしてぶっ壊れたビルの立て直しを行っており、細かいところはチビレオン達がちょこまかと動き回って補正をしている。そのお蔭で通常の業者が行うよりも何倍も早く上部且つ頑丈な建物が作られることになり、被害を受けた中の人には壊されてよかったと思っている人間もいる。だがいくらガンレオンでも細々とした家具までは作れない。それでも会談といった基本的構造が単純なものが作ることが出来る。ガンレオンを通して修復作業をしている高志にとってそれはまるで泥遊びやプラモ作り感覚でやってのける。おかげさまでこの町に住む人間でガンレオンを知らない人間はいない。グランツ研究所の動く宣伝カーもといロボットが修復作業三日目に一休みを入れようとする頃には日本どころか世界中からのマスコミが詰め寄って来た。ガンレオンは機動兵器ではないのかといってくる輩もいるがこっちが本業だと高志はヒートスマイルで追っ払った。どちらかといえば外見的にも美人のアリシアの方にインタビューが向かったがそんな彼女は高志にべったりとくっつきながらそれに答えた。

これには二つの要因がある。一つはアリシアの趣味。もう一つは『傷だらけの獅子』のスフィアの様子見である。

 戦闘による一時的な活性化でアリシアは幼女から二十代前半の体に戻っているが、体にそれを宿しているからこそリアクターである高志やガンレオンからしばらく離れると小さくなると感じ取った。

 フェイトやはやての傍にいるアルフやザフィーラも小型化することで主である彼女達からの魔力供給を節約できる。それと似たような現象が起こっているのではないかというのが娘といちゃつく高志にアイアンクローを喰らわせながら出したプレシアの見解だ。

 使徒が来る前までは余計なエネルギーを喰わずに大人モードを維持できたが、使徒襲来のおかげ省エネモード。高志やガンレオンと一緒にいる間は充電モードといった具合だ。

 

 

 

つまり、アリシアが気絶したのもガンレオンの維持にエネルギーを回したためである。アリシアに回すエネルギーが無くなれば彼女の容態に何かあってもおかしくない。最悪、そのエネルギーを使い果たし消滅。

 

 ・・・っ。いつ思い出してもその想定にぞっとする。

 

 ガンレオンが、いやアリシアの中にあるのが『傷だらけの獅子』のスフィアでなかったらそうなってもおかしくはない。ダメージを受けることでエネルギーを奪われてもその特性上、ダメージを受けた瞬間に『傷だらけの獅子』のスフィアが発動してエネルギーを生みだす。

 だが、これまでの使徒との対戦でのエネルギーのプラスマイナスを考えると辛うじてプラスが上回っている。だが、それもギリギリ。マグナモードを使うと確実にマイナスだ。もしこれからも使徒と戦うのならこちらはマグナモード無しで使徒と戦うことになる。

 エヴァに乗るなといった以上ガンレオンで出撃するのは必至。だが、これ以上使徒が出なければ出撃はない。だが・・・。

 

 (使徒は近いうちまた出てくる。しかもより厄介な奴が)

 

 二度目の使徒撃退の時から記憶に靄のような物がかかりその既知とも勘ともいえないものが消えない。まるで誰かに記憶のフィルターをかけられたような嫌な基地感を覚えながらガンレオンでの作業をしていると連絡が届いた。

 

 「・・・ああ。ちびっこ向けのガンレオンの歌を歌う日だったか」

 

 今から歌いに行く歌の内容を考えると力が抜けてくる。この歌はライオンになることを拒んでかばに憧れた男の歌を替え歌にしたものだ。強い力を持ちながらもそれで周りの人達が怖がり遠ざかっていくことを恐れられたライオン。だけど、今はその歌で少しでも今を生きる子供たちが元気になってくれれば喜んで歌えるだろう。

 ガンレオンは復興作業を一時止め、港へと向かう。予めその復興リサイタルは隣で作業している関係者には承諾済みなので気にせず向かう。このリサイタルで儲かったお金の殆どは今回被害あった人達の復興支援に使われるので自分にはあまり収入はない。それでも今の億劫な気分を晴らすには丁度いいだろう。会場に行きながらその途中で今は大人モードを保てているアリシアと紫天娘達をここの世界のなのは達が通う中学校で拾っていくことにしよう。きっとにぎやかになるはずだ。元々二人乗りのガンレオンに六人も入るとなるとかなり窮屈だが我慢してもらう。

 

 「じゃあ、いこうか。『無敵ガンレオン』」

 

 自分の相棒にこれからの願掛けを行いがら高志はガンレオンを走らせた。

 

 

 さて、高志が復興支援からリサイタル会場がある港に行こうとしている時、プレシアはグランツを連れて世界中の首脳が選抜した格好の代表者とガンレオンとD・エクストラクターについての説明を再度する為にとある大使館にやってきた。正直に言うならグランツは完全にとばっちりだが最高責任者として顔を出さない訳にはいかない。ただそれだけではなくこの後は管理局サイドにもそれを伝えないといけない。まったく胃痛が収まりそうにない彼だがプレシアのおかげで様々な業界にシェアを持つことが出来た。何より人の感情を動力にするD・エクストラクターから生み出されるエネルギーを得ることが出来るのは嬉しい。それでも兵器としてではなくあくまでチビレオンやチヴィット達のような子ども達に笑顔を与える物でなくてはいけない。

 

 「そう言う訳で先程も離したようにガンレオンは重機です。人型を取っているのもその証。あなた達がいう荷電粒子砲というものはD・エクストラクター七号機はただのエンジンをブースターに作り替えただけです」

 

 「あんな物騒なブースターがあってたまるか!」

 

 「あなた達の宇宙船。スペースシャトルを打ち上げる時にブースターを使うでしょ。私達は地球の大気圏どころか文字通り次元を超える為のエンジンよ。出力が違いすぎて兵器に見えてもおかしくはないけれど」

 

 いけしゃあしゃあと言い放つプレシアにグランツは冷や汗を流す。

 あの七号機。元は四号機だが、彼女達の世界でガンレオンとの相互ブーストで衛星を一つ粉々に吹き飛ばした事があるらしい。この世界に来ては彼女の言う通りガンレオンが生み出すエネルギーでは元の世界に戻る事は出来ない。文字通りブースターとして使う予定だったらしい。だが、使徒の出現により四号の時と同じように強力な砲撃をぶっ放すものに作り直した。あれで対人兵装だというのだから驚きだ。どんな奴に対して作り出したのか聞くのが怖いからグランツもそれ以上は聞かないでいる。

 

 「とにかくあの力はあの機動兵器。あれは一民間企業が持つには強力過ぎる!故に我々国連が管理する!」

 

 「断るわ。私が言うのもなんだけどあの力は強力過ぎる。あなた達のような技術力がお粗末すぎる輩に渡せば悲劇しか待っていないでしょう」

 

 「それに私達は子ども達の笑顔の為にその力を行使したまでだ。使徒のような強大な外敵が出ない限りそれを振るう事はないと断言します」

 

 グランツもプレシアに続いて言う。

 チビレオンやチヴィット達には量産型の小型D・エクストラクターが積み込まれているがそれはあくまで小動物並の動力しか持っていない。だが、それを抜きにしてもあれだけの自立行動が出来る人工知能を兵器として転用されたらたまった物じゃない。そして、D・エクストラクターはプレシアとリニス。アリシアの三人が一つずつ作り上げた物でこの世界にそれを解析できる人間はいないとは思うが万が一それを解明。暴走させられたりでもしたら最悪、セカンドインパクトの二の舞だ。

 

 「それを判断するのはあなた方でしょう。そのあなた達が間違っていると自覚しないまま使ったらどうするおつもりですか!」

 

 「そうなる前にこの地球からガンレオンを含めて私達はここから。地球から撤退するわ。今すぐにでも退去してもいいけど・・・。あなた達にあの使徒。そしてあのドラゴンを相手出来るかしら?」

 

 プレシアは見下しているような表情で代表たちを見る。いや、実際に見下しているのかもしれない。

 

 「・・・脅迫するつもりか」

 

 「私達の元の世界に帰る手段であるブースター。それを調整するためのガンレオンを取り上げようとしたあなた達。さて、先に脅迫したのはどちらかしら?」

 

 「・・・ぐっ。揚げ足を取るな!あの力は危険すぎる!だから我々が」

 

 「使徒やドラゴンに撃退する?それとも私達が地球から出ていく?」

 

 どっちかしら?と、試すように彼等の言葉を遮り、彼等が苦虫を噛んでいるような顔を見て愉悦に浸っている表情を見せるプレシアはまさにサディスティックだろう。苦しむ代表たちの顔を見て満足したのかプレシアはこれからの予定を話す。

 

 「まあ、どちらにせよ。私達はこれから使徒の迎撃には参加しないわ。勿論、あの怪物や未確認機動兵器対策。これは一民間企業(・・・・・)では荷が重いですしね」

 

 使徒。応龍皇。メディウス。

 あれだけ強力な存在を国連が対処できるだろうか。

 有効的な攻撃力。速さ。防御力。その全てを担えるのはガンレオンとエヴァのみ。国連が持つ戦闘機や戦艦の砲撃や爆撃では足りない。N2地雷も足止めになるかならないかぐらいだ。それの準備する時間も足りない。緊急的に、迅速的に対処できるのは常に待機しているNERV.そして、グランツ研究所のガンレオンだけだ。

 NERVは何故か格好の上層部が探る事を禁止している。代表達が手を出せるのはグランツ研究所においてあるガンレオンとDエクストラクターのみだ。

 

 「ぐっ。だ、だが、機動兵器!あれは貴様達の遊具の中に出てくるキャラクターと似ているらしいな!それはどう説明する!」

 

 「ただの偶然でしょう。もしくは私達のゲームのデータを見てその姿形を似せたかもしれないわね」

 

 「そんな偶然」

 

 「あなた達の神話やゲームの中にもあのドラゴンに類似したのが沢山ありますね。それにあの黒騎士も」

 

 「ぐぐっ」

 

 「貴方達がどうしようと私達からガンレオンを。Dエクストラクターを取り上げようと。取り組もうと、その技術をかすめ取ろうとしたら、そんな気配を見せたのなら私達は即座にこの地球から出ていくわ。幸い、少し前にその準備が整ったから」

 

 「ま、待ってくれ!そんな事をされたら誰があの化け物を相手にするんだ!」

 

 「貴方達でしょう?あなた達は世界の代表なんでしょう?世界の脅威にどう対抗するかをその代表が決めるんじゃないのかしら」

 

 「うぐっ」

 

 「あと、後から違う人間を寄こして私達に取り入ろうとしても誰も受け入れないわよ。だって、貴方達は世界の代表なんでしょう。それはつまりこの世界中の意図という事。つまり、この世界の重鎮たちは私達から技術と自由を奪おうとしている」

 

 「・・・ま、待て。それは我が国では」

 

 「貴方達の国の人かしら?研究所の人間や私の可愛い娘の周りを突け狙い、更には連れさろうしたわよね」

 

 「ち、違う。それは国籍が同じなだけで」

 

 「あら、あなたの国の国籍。私は知らないわよ?それなのによく同じ国籍だといえるのは何故?」

 

 情報を出したと思えばさらに溝沼に引きずり込む。

 プレシアの挑発的な態度に冷静さを無くした彼等のボロを引きだし、更に泥沼に追い込む。チビレオンの性能とその時の映像をモニターに映し出しながら説明するプレシアに誰もが口を抑える。これ以上何かを喋れば自分達が不利になる。

 

 「それじゃあ、これで私達の話は以上よ。私達はこれ以上あなた達の世界に関与しない。すぐにでもこの地球を離れる。ガンレオンとD・エクストラクターの全てを持ってね」

 

 それはつまり彼等を守る盾を。鎧を。剣を取り上げるという事だ。エヴァに対しては手を出せない以上彼等は焦った。

 

 「ま、待ってくれ。頼むから待ってくれ!」

 

 「はぁ。私達のガンレオンとD・エクストラクターを取り上げようとして、私達だけでなく助けてくれた研究所の人達まで攫おうとして、助けて欲しいという割には高圧的。・・・貴方達、そんな人を助けたいと信じようとすることは出来るかしら?」

 

 「だ、だから、それは・・・」

 

 「ちなみに私は世界よりも娘を。自分の恩人を大切にするわ。彼等を匿うくらいはギリギリ何とかなるわ。もちろん、貴方達なんかは匿わないわ」

 

 信頼を失い、敵意を生みだした彼等に誰が助勢しようするものか。

 国連という巨大な傘の元にこれだけ多くの味方がいれば言い含めることが出来る。だが、プレシアはこの地球から出ていくという宣言で彼等との関係を完全に絶つことを宣言する。この事で経済的・兵糧的に追い詰めることは出来なくなった。

 彼等に戦闘の代償を払わそうという案もあったが彼等が出した被害はなく、むしろグランツ研究所から出てきた技術で大きく世界に貢献している。そんな彼等の機嫌を損なえばそれも止まる。

 取り押さえればその技術も手に入れることが出来た。そんな欲もあったのだろう。しかし伊達に娘の為に世界を一つ滅ぼしかけたり、その女を守る為に衛星一つを吹き飛ばした胆力を持つプレシア達を言いくるめには知識的にも技術的にも論破力もプレシアの方が数段上だ。

カツアゲをしようとしたら逆に締め上げられるという状況だろう。

 

「き、君達は我々を人類を、見捨てるというのかね・・・」

 

「そんな義理はないわ。むしろ恨みしかないのだけれど」

 

経済的にも人情的に動いても駄目。彼等に出来ることはただひたすらに助けを請うだけだった。

 

「お願いだっ。いや、お願いします。私達を助けてください」

 

正直な所彼等も一杯一杯だった。セカンド・インパクトで巻き起こった人口問題から食糧危機。特にエネルギー問題は深刻なもので、グランツ研究所の技術によって助けられている国は多い。むしろ世話になっていない国を探す方が難しく、特にD・エクストラクターで生み出されたエネルギーは垂涎ものだった。

 

 「・・・土下座」

 

 「え?」

 

 「この国には両膝と両手。額を地面につけて懇願すると聞いているわ。それが最大級の嘆願と私は認知しているわ。・・・貴方達が本当に助けて欲しいのならそれをやってのけることが出来るはずよね」

 

 もはや何も言うまい。ただただ目の前の魔女を満足させよう。そうすれば彼等の助力を得られるのだから。

 悔しさと苛立ちを覚えながらも代表者達はプレシアに見えるように全員が土下座をした。それを御霊所は満足したようにこう言った。

 

 「だが断る」と、

 

 プレシアが断るのは当たり前だ。なにせ、自分の命よりも大事な娘と家族を危ない目に遭わせた輩が土下座したところで許すはずがない。むしろ、殺されていない方が幸運である。だが、それもわからない輩がいる。

 激高した代表達の数人は隠し持っていた銃を手にしてプレシアにその銃口を向けた。と、同時に協力せねば殺すと、あちこちに待機させた工作員達を仕掛けると、そう、脅迫するつもりだった。だが、それは銃を持った手が砕ける音と共に瓦解した。

 

 「「「ぐぅあああああああっ?!」」」

 

 激痛でのたうちまわる代表達を襲う打撃音と遅れて聞こえる風を切る音。

 銃を持たずにただ顔を上げてプレシアを非難しようとした代表達が見ることが出来た。プレシアが懐から取り出したコンパクトが鞭へと変形して銃を持った手を高速で叩き潰す光景を。

 

 「何の準備も無く貴方達みたいな人と会う訳がないでしょう。お勉強になったかしら坊や達」

 

 量産型のD・エクストラクター。五号機と六号機と同じように変形機能を持つそれはプレシアがグランツ研究所の全員に渡している物で肌身は出さず持つことを命令している。特定の場所以外で外すと初規模の爆発を起こすもので、装備者のバイオリズムを感知して異常事態があればそれを察知するとガンレオンを初め、関係者全員にそれがいきわたる。

 プレシアが持っていたその量産機もその一つ。グランツも同様。身に纏っている白衣はバリアジャケットであり、ナイフぐらいでは生身の部分も傷つけることが出来ない極薄のバリアが張られている。

 

 「A・B・F・Y・U国の皆さん。あなた達には何が何でも協力はしません。そんな短慮的な人間には決して私達の技術は預けることが出来ませんから。それじゃあ、行きましょうか、所長」

 

 「あ、ああ。そうだね。では僕達はこれで・・・」

 

 「ま、待ってくれ」

 

 プレシアに続いて出て行こうとするグランツ。既に彼はストレスで胃に穴が開きそうだ。

 

 「何かしら、お礼の一つも言えない坊やたちに付き合う時間はないのだけれど・・・」

 

 冷たいまなざし。まるで虫けらを見るような目を向けられたが、唯一文句を言わずただ静観していたJ国の代表は土下座の状態から顔を上げてプレシアとグランツに向かって怯えたように、それでもしっかり二人に届くように言った。

 

 「我が国と国民を助けてくれて本当にありがとう。そして、貴女達に不自由な真似をさせてしまって申し訳ない。それだけが言いたかった」

 

 「・・・ふん。最初からあなたの様に助けてくれたら『ありがとう』。間違ったことをすれば『ごめんなさい』が言えたらよかったのにね」

 

 ようやく聞きたかった言葉を聞けたプレシアはやや不満足実に悶えている代表達以外の数人に一枚ずつ何かを書いたメモ用紙を渡す。

 

 「これは・・・」

 

 彼等へのパイプが繋がったと期待に混じった期待を込めてみたメモ用紙には妙に0が並んでいる。

 

 「前回と前々回の使徒迎撃にかかった費用よ。最初はロハでと思っていたけど、今度からはやっぱり利益の無い(・・・・・)慈善事業をするにはこれぐらいのお金がかかるのよね」

 

 つまりこれだけの金がかかったから払えや。と言っているのだ目の前の魔女は。そして、これからも何らかの援助がしたければそれだけ払えと言っているのだ。

 

 「わ、わかりました。時間はかかりますが」

 

 「三ヶ月以内にしなさい。使徒が出現する期間を考えればそれが妥当よ。それにガンレオンの出撃と復興に対する報酬。今回駄目になった特殊装甲板と人件費。その他もろもろとしてはかなりまけたはずよ。人類を守る機関ならこれぐらいは持っていても不思議じゃないわ。」

 

 「わ、わかりました。必ずお支払いします」

 

 確かに他の国家がそれを行うとしたら彼女が要求している額の五倍はかかるだろう。使徒迎撃の報酬にしてはだいぶ安い。ちなみに高志が持っている借金(身内からの架空請求)をまとめて返済どころか遊んで暮らせえるだけの額であった。

 

 

 信用していい相手の見極めと開発資金の徴収をやりきったプレシアは会議場を後にする。その廊下の所々には横暴的な考えを持った国の工作員がチビレオンやチヴィット達の手によって簀巻きにされていたが敢えて見ないようにした。それは平和な理想を掲げていたグランツも同様だ。

 二人は大使館に来た時に使った自家用車(直開発)の車に乗って次の待ち合わせに無赤う途中で打ち合わせをしていたが、こういう緊迫感のある話し合いが苦手なグランツは泣き言を零していた。

 

 

 「うう、早く家に帰って休みたいよ」

 

 「駄目よ。グランツさん。あなたの仕事はこれからよ」

 

 「ああ、今度は管理局とか言う魔法世界の人達との話し合いだよね。・・・むしろそっちが君の出番じゃないかい?」

 

 「何言っているの。もしあそこの代表者がフェイトだったらどうするのっ。私、自慢じゃないけど、世界は違えどあの子のお願いだったらホイホイ聞いちゃう自信があるわよ」

 

 「本当に自慢にならない自信だね。というか、それは自信というのかな?」

 

 グランツは先程の話し合いとは別のプレッシャーを感じながら次の会議場に向かうのであった。

 


 
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