No.80595

かがみ様への恋文 #3

mooさん

もしも、かがみが年下の男の子から恋文をもらったら……
というような感じで書きはじめた話です。

2009-06-23 20:03:31 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:656   閲覧ユーザー数:608

「柊せんぱ〜い」

 

そう叫ぶ声が廊下に響いた。

昼休みの喧騒をかき分け、かがみの耳にもしっかりと届いた。

振り返ると向こうから駆け寄ってくる小柄な男子生徒の姿があった。

 

つい先日、かがみ様とお付き合いをさせていただけることになった幸運な一年生、優一だ。

そして、なかなかにドジな子でもあった。

 

そのドジがどれほどのものかと言うと、

何もないはずの廊下でぺしゃりと前のめりに転んでしまうくらいだ。

 

ぺしゃりと言うのは、大切そうに両手で胸の前に抱えていた袋がつぶれてしまった音だ。

 

「あ〜〜〜、ドジっ子だね……。男なのにドジっ子だねぇ……」

 

何やら残念そうにつぶやくこなたの心中など知る由もない優一。

むくりと起き上がると再び駆け寄ってきた。

 

けれどかがみのご機嫌は崩れてしまった。

 

「かがみ〜、呼ばれてるよー。かがみも走って行ってあげないの〜?」

 

などとこなたに冷やかされたのもその一因なのかもしれない。

 

優一に悪気などなく、愛しのかがみ様を見つけた喜びのあまり、

つい叫んでしまっただけにすぎない。

 

ご主人様にとびかかりじゃれつく犬のごとく、優一はかがみのもとへ走ってきた。

 

それなのに、浴びせられた第一声がこれだった。

 

「恥ずかしいんだから、大声で呼ばないでよ!」

 

優一はしゅんとなった。

犬のような耳が付いていれば小さくしおれたことだろう。

旺盛だった尻尾も力なく垂れ下がっているはずだ、仮にそんなものが見えればの話だが。

 

「……すみませんでした」

 

そう言って俯いてしまった。

 

あまりにしおらしくなるものだから、かがみもたじろいでしまった。

 

「しまった……、きつく言い過ぎたかも」

 

と。

 

「気にしなくても大丈夫だよ、かがみは今照れてツンが出てるだけだから」

 

こなたがそうフォローした。

 

「ツン……ってなんですか??」

 

「ツンデレだよ、ツンデレ!

そんなことも分からないとかがみとつき合っていけないんだよ〜」

 

「変なことは教えんでいい!!」

 

かがみはいつもの様に突っ込んだ。

 

「それで、何の用なの?」

 

愛しのかがみ様に会いたくてやってきた少年に向かって何の様かとは、

相変わらずツンツンモードだ。

 

そんなことを知らない優一はひるんでしまった。

 

「あの……これを渡したくて……」

 

今まで胸の前で大切そうに抱えていた大きめの袋を差し出した。

 

残念ながら、ついさっきのドジでつぶれてしまってはいたけれど。

 

「なに、これ? 開けて良い??」

 

優一がうなずいたのを見てから、かがみは袋の中を確認した。

 

両隣にいたこなたとつかさも興味深げに覗き込んでいた。

 

「うぁ〜、おいしそうなマドレーヌだね〜。これ作ったの?」

 

とつかさ。

 

それはつかさと良い勝負ができるほどきれいにラッピングされていた。

 

優一はこくりと頷いた。

 

「かがみよりも上手だね〜」

 

「うるさい!」

 

こなたの言葉はさらにかがみをツンとさせた。

 

「よかったら、食べてください!」

 

それだけ言うと、回れ右をして逃げ出そうとした。

 

まだ、かがみと一緒にいるだけで緊張して、

ドキドキして、いたたまれなくなってしまうらしい。

 

「待ちなさいよ」

 

かがみが呼び止めた。

 

「逢沢くんもいっしょに食べよう」

 

つかさが言った。

 

「僕も……いいんですか?」

 

「当たり前でしょ? あなたが作ったんだから。

……まぁ嫌じゃなければ……だけど」

 

ぷいっと顔を背けながら、かがみがごにょごにょと言った。

かがみも少しは照れていたりしたようだ。

 

それから、優一は喜んで学食まで着いていった。

 

昼休みとは言え、昼食を既に終えた生徒が多く食堂は空席が目立った。

その中のテーブルに四人は腰かけた。

 

優一は水筒を取り出し、コップを四つ並べると紅茶を注いだ。

 

「準備いいのね、いつもこんなの持ってきてるの?」

 

と感心した様子のかがみ。

 

「いいえ。でも今日は柊先輩に食べてもらいたくて」

 

かがみの頬が少しばかり赤く染まった。

 

それを見逃さなかったこなたは、一人にやりとほくそ笑むのであった。

 

「逢沢君って料理が得意なの?」

 

とつかさ。

 

「いえ、別に得意というわけじゃないのですが、このくらいなら……」

 

「じゃあお弁当とか作れる?」

 

今度はこなただ。

 

「はい、簡単なものなら」

 

「じゃあ、明日作ってきてよ〜。かがみみにさ。ついでに私とつかさの分も!」

 

そんなことを言ったのもこなただ。

 

「おい! なんであんたたちの分まで必要なんだ!?」

 

気の弱そうな優一に代わって突っ込んだはかがみだった。

 

「いいじゃん、別に〜。二つ作るのも四つ作るのもいっしょだよ〜」

 

「大丈夫です、僕作ってきますから!」

 

「いいのよ、気にしなくて。こいつはただからかってるだけだから」

 

ところが、翌日優一はしっかりと四人分のお弁当を作ってきた。

 

かがみ様に召しあがっていただけるからと気合いをいれたせいなのだろうか。

いつもつかさが作るお弁当よりもきれいで、

みゆきさんのものよりも豪華だった。

 

「おぉ〜〜!」

 

それを見たこなたが喚声をあげたほどだ。

 

「料理が得意な男の子っていいね〜。かがみにはぴったりだよー」

 

とも言っていた。

 

「え……? これくらい、普通じゃないんですか?」

 

優一は極めて真面目に不思議そうな表情を浮かべていった。

 

その言葉が密かに激しくかがみの心に傷を付けていたとは知らずに。

 

「これくらい普通なんだって〜」

 

こなたはちらりとかがみに目を向けていった。

 

「うるさいっ!!」

 

 

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7/5は陵桜際です

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是非是非足を運んでくださいな。

 

夏コミは二日目、東モ59aです。


 
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