No.802088

恋姫OROCHI(仮) 参章・壱ノ漆 ~龍虎競食~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
大変長らく間が空いてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、59本目です。

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2015-09-13 23:13:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3652   閲覧ユーザー数:3158

 

剣丞らが連絡を取り合ってから数日後。

呉国内にある噂が流れ始めた。

 

『尚香さまは誘拐されていて、その身は異変内部の蛮族に囚われているらしい』

 

尾ひれ背びれはついているが、大筋はこのような内容だった。

孫呉としても無視できないほど噂が広がったため、偵察隊を派遣。

そして、孫尚香の身柄を確認した。

孫策はこれを、孫呉に対する敵対行為とし、大規模な討伐軍を編成。

僅かな兵と陸遜を留守居に残し、大都督・周瑜が補佐に就いての呉王・孫策による親征と相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

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――

 

 

 

 

 

「はぁ~……これは壮観ね」

 

長尾家の主城・春日山城を取り囲んだ雪蓮は、その威容に感嘆の声を漏らす。

彼女の知る『城塞』というのは、平地にある都市ごと城壁で囲んだものを指していた。

しかし、目の前のそれは違っていた。

 

自然の山を活かしつつ、井楼や砦のようなものを重ねて配置することによって防御力を高めている。

頂上には豪奢な宮殿のような建物も見える。

攻めるに難しい堅牢な城郭であることに加え、民を畏怖せしめる威容と、芸術作品のような美しさまで感じられた。

 

「しっかし、山頂に城なんてねぇ~。水の手とかどうなってるのかしら?」

「以前、北郷に話を聞いたことがあるが、この国、日ノ本は非常に水源が豊かで、山ともなれば至るところで清水が湧いているそうだ」

「それは羨ましい限りね」

 

冥琳の解説に肩を竦める雪蓮。

改めて視線を春日山の城に送る。

 

「…本当に攻めなくて良いってのがありがたいわね」

「なんだ、珍しく弱気じゃないか」

 

冥琳は笑うが、雪蓮がそう言うのも無理はない。

入り口は限られており、それ以外は峻険な山や谷。

設けられた門扉は木製だが、彼らは弩以上の兵器を備えているという。

まともに攻めたら損害がどれほど出るか分からない。

 

「う~ん…『過去』の私は一体どう攻めたのかしらね?」

「……遮二無二突撃している姿が目に浮かぶな」

 

苦笑いを浮かべる冥琳。

 

「ぶ~!じゃあ冥琳には何かいい策でも浮かぶっていうの?」

 

ぶーたれる雪蓮。

 

「…いや、正直浮かばんな。未知の相手であれば、兵を小出しにしつつ相手の出方を窺いつつ策を練るところだろうが、今回は小蓮さまが人質と捕られていることが前提だ。囲むだけで小蓮さまに身の危険が迫ることを考えれば、電光石火で陥とすことが求められる。となれば『過去』の私も、力攻めを支持したであろうな」

 

難しい顔をしながら冥琳は答えた。

寄せられた眉根は、愚策を採用したであろう『過去』の自分の無念だろうか。

そんな冥琳を見て溜飲が下がったのか、パンッと腰に手を当てると気合を一つ。

 

「さって!それじゃ『今』の私たちも、せいぜい遮二無二攻めてみようかしらね」

「あぁ。せいぜい、遮二無二攻めようじゃないか」

 

目を細めて嗤う雪蓮に、同じような表情で応える冥琳。

 

 

 

こうして、孫呉と長尾の戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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――

 

 

 

ドドドド……

 

春日山城の正門に地鳴りが聞こえてくる。

大軍が攻め寄せる音だ。

 

「来たっすよー!撃ち方、準備するっすー!!」

 

正門の守将として、柘榴は櫓の上に立っていた。合図を送るのは鉄砲隊だ。

門の両脇に供えられた狭間からは、大量の銃口が顔を覗かせる。

 

「まだっすよー!もうちょい引き付けるっすー!」

 

相手は飛び道具を持たずに、ただ突撃してくる。

なので柘榴は、火縄銃の射程距離ではなく必中距離にまで敵を引き付けることにした。

 

「撃て~~~ぃっす!!」

 

パパーーン!!パパパパーーン!!

 

乾いた轟音が春日山に木霊する。

ドサドサッと敵軍先手が次々に倒れる。

敵方に動揺が走った。

 

「撤収っ!撤収ーー!!」

 

指揮官の大声で、敵第一陣は波が引くように撤収していった。

 

「鮮やかっすねー」

 

櫓の上からその様子を見ていた柘榴は、思わず呟いた。

敵が退いた地面には、誰一人として倒れていない。

倒れた兵も全員回収して撤収したようだ。

何にしても、第一目標である門の死守はひとまず達せられた。

 

「よーし!じゃあ柘榴たちも次の段階に移るっすよー!!」

 

柘榴も次なる指示を出した。

 

 

 

 

 

 

――――

――

 

 

 

「ふむ……」

 

先陣の指揮官から敵軍の説明を受けた冥琳。

緒戦は一方的な負けだった。

大量の怪我人は全て、救護班の天幕内に搬入済みだ。

 

「なかなかに難しいな」

 

春日山の威容を見上げる冥琳。

 

「ねぇ、冥琳」

「なんだ、雪蓮」

 

一応、総大将として傍らで話を聞いていた雪蓮が口を開く。

 

「もう、決死隊を作って突撃するしかないんじゃない?」

「…………」

「さっきの指揮官、火薬の匂いがしたって言ってたわよね。火薬を使った兵器なら、そんなに何発も打てるわけないわ。

 弩だって連射は利かないんだし、敵の兵器もそうだと思うな、私。」

「ふむ……」

 

敵を知らずして憶測で動くのは下の下なのだが、雪蓮の戦に関しての勘は往々にして当たる。

時が限られていることを考えれば、今は雪蓮に賭ける時か…

そんな冥琳の苦悩を表情から汲み取り、雪蓮は南海覇王を手に歩を進める。

 

「それじゃ、行ってくるわね」

 

あえて冥琳の口から、愚策を口にさせることはない。

自分の独断で動く、とばかりに冥琳の返事を待たずに幔幕を出ようとする。

 

「……気をつけてね、雪蓮」

 

雪蓮の背中に掛けられる言葉。

それだけで充分だった。

雪蓮は何も言わずに立ち去る。

 

自らの手で救うのだ。

 

妹の身も…

愛しき人の心も…

 

 

 

 

 

 

――――――

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――

 

 

 

ドドドド……ッ!

 

孫呉の第二派。

心なしか先ほどより地鳴りが大きくなっている。

 

「今度もさっき位まで引き付けてから撃つっすよー!鉛玉でぶち抜いてやるっすー!」

 

ドドドドッ!!

 

見えくる敵は、やはり先ほどより数が多い。

破城槌用の丸太を抱えている一団もある。

しかし、火縄銃に対する備えは全くない。

柘榴の作戦通りにすれば、勝利は間違いない。

はずだったのだが…

 

パァーーン!!

 

と、一発の銃声がどこからか響いた。

すると反射的に…

 

パーン!パパーーン!!

 

周りも引き金を引いてしまう。

 

「あぁっ!誰っすかー!?柘榴が合図出す前に撃ったのはー!!」

 

火縄銃は強力だが、速射が利かない。

またよっぽど腕のある射手でもない限り、命中精度はかなり低い。

なので、数を並べての一斉射撃による『射線』にしなければ、その威力を充分に発揮できない。

案の定、敵には一発も当たっていないようだ。

 

「早く!早く弾込めるっすよ~!!」

 

しかし、弾込めもそう簡単ではない。

二発目を撃つまでには、約三十秒かかる。

そして三十秒もあれば…

 

「「「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!!」」」

 

ドーンッ!!!

 

敵の魔の手は門に届く。

極太の丸太が門に勢いよく叩きつけられると、たった一撃で閂が悲鳴をあげる。

 

「やべっす!全員撤退!撤退っするっすよー!!」

 

この門を守りきることが不可能と判断した柘榴は、撤退命令を出す。

呉軍は守人がいなくなった門に、もう一発丸太を叩き込む。

閂は粉砕され、孫呉の軍は第一の門を突破した。

 

「伏勢に注意しながら制圧を急げ!」

 

自ら陣頭指揮を執る雪蓮。

しかし伏兵はなく、正門一帯は制圧できたのだが…

 

「これは…面倒な城ね」

 

柘榴がいた櫓に登った雪蓮は思わず呟いた。

堀・門・櫓…

城の中にも起伏があるので全ては見えないが、この先も様々な防御施設が文字通り、山のように見える。

敵がいつ小蓮を手にかけるか分からない状態で、これ以上時間は掛けられない。

こうなった以上、手段は一つ。

 

「火だ!火をかけろ!!我らが孫呉の怒りを紅蓮の炎で晴らすのだ!!」

「「「はっ!!」」」

 

雪蓮の指示で、兵たちは松明を手に手に取った。

鏃には布を巻き、油を染み込ませる。

この先、抵抗する全てのものを焼き払う。

そのような覚悟で、呉軍はまさに烈火の如く、春日山城の奥へと進軍した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

春日山から煙が立ち上るのを、遠くから見ている男がいた。

 

「城攻めもそろそろ佳境ですかね」

 

その男、干吉は静かにほくそ笑んだ。

 

「やはり勝者は孫呉でしたか。まぁどちらでも構わなかったのですがね。

 越後の龍と江東の小覇王が本気でやりあえば、勝った方もただでは済まない…

 私は悠々とそこを叩けばよい。あぁ……我ながら美しい策ですね」

 

そう言いながら、一人悦にいる于吉。

 

「さて、それでは傀儡の皆さん、進軍です」

 

自分の眼下にある、万の白装束に指示を出した。

彼らは音もなくゆっくりと、歩を進めた。

 

 

 

 

 

 


 
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