No.798498

孤高の御遣い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 22

Seigouさん

廻る運命(後編)

2015-08-26 14:37:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9356   閲覧ユーザー数:5414

春蘭「ふぅ~~~~、今日も身の入った稽古が出来たな♪」

 

愛紗「ああ、おじい様と稽古をしていると日に日に感覚が研ぎ澄まされていくことを実感する♪」

 

純夏「ええ、強くなってるって実感が湧いてくるわ♪」

 

嵐「これなら、恋に勝てる日もそう遠くないような気がするぞ♪」

 

悠「うをぉ~~~、久々の一から基礎作りって言うのは、想像を超えてきついな~~・・・・・」

 

音々音「なぜ軍師のねねまでやらなければならないのですか~~・・・・・」

 

途中参加の悠と音々音は、既に心神喪失といった様子だった

 

左慈が水鏡女学院を襲う5分ほど前の天角、先程まで行われていた鍛錬の成果をお互いに批評し合う乙女達の姿があった

 

雪蓮「ありがとうございます、おじい様、おじい様のおかげでここまで研鑚を積む事が出来ました」

 

鈴々「もう誰にも負ける気がしないのだ♪」

 

凪「はい、私もこれまでにないくらい氣の練度が上がりました、これもおじい様のご指導ご鞭撻のおかげです、ありがとうございます♪」

 

葵「いやぁ~~~、俺はこれ以上強くなっても仕様がないと思っていたけど、刀誠と打ち合っていると新しい事が次々と分かって来るから楽しいぞ♪」

 

刀誠「いやいや、むしろ驚いとるのはこちらの方じゃ、まさかワシの扱きにここまで付いてこれるとはのう、流石は三国志にその名を馳せる英傑達じゃ、逆に頭が下がるわい♪」

 

焔耶「いえ、そんな・・・・・滅相もないです・・・・・」

 

星「ええ、むしろ感謝しているくらいですぞ」

 

明命「はい、私達の我儘に付き合ってもらっているのですから・・・・・」

 

思春「ああ、刀誠殿はもうお休みになられてください」

 

霞「せやな、後はこっちで自主的にやっておくから、もう休んでーな」

 

時雨「おじい様は、残りの時間はお休みになられてください」

 

百合「はい、此度のお礼をさせて下さい~」

 

璃々「うん、璃々、おじい様にい~~~っぱいご飯作ってあげるから~~」

 

刀誠「おお、それは楽しみじゃのう♪璃々ちゃんの作る料理はどれも絶品じゃからのう♪」

 

璃々「そんな事ないよ~♪流琉お姉ちゃんの方が璃々より美味しいんだから~♪」

 

そう、璃々は刀誠の期間限定専属コック長となっていた

 

もちろん刀誠だけではなく、皆の分も作っているが、時雨や百合、天角に属している侍女も手伝っているので、それほど大変という訳でもない

 

蓮華「皆、迷惑を掛けたわね」

 

その時、腰に南海覇王を携えた蓮華が玉座の間に入って来た

 

思春「蓮華様、もうお加減はよろしいのですか?」

 

蓮華「ええ、もう大丈夫、二日間たっぷり休ませてもらったから」

 

雪蓮「こっちもさっき稽古が終わった所よ」

 

星「それでこれから食事を取るところなのだが、蓮華殿もいかがですかな?」

 

蓮華「ええ、私もお腹が空いているからいただくわ」

 

璃々「もう出来てるから、皆で食べよ~~♪」

 

龍奈「あ、ご飯なの?だったら私も食べるわ♪」

 

杏奈「私も御相伴に与ります」

 

さらに、龍族の本家とその末裔が玉座の間に入って来た

 

凪「・・・・・杏奈さん、またヴリトラさんとお話をしていたんですか?」

 

明命「なんだかここ数日、杏奈さんとヴリトラさん、かなり話し込んでいるみたいですけど、一体どんなお話をしているんですか?」

 

春蘭「ああ、興味があるな、龍族の本家とその末裔の話というのは」

 

龍奈「別に、こいつが龍族の事について散々に質問してきてね、こっちもまいっているわよ」

 

杏奈「私も自分の事について知っておきたいですから・・・・・それに、もしかしたらこの龍族の血が今回の事で何か役に立つのではと思いまして」

 

雪蓮「ふ~~~ん・・・・・で、何か役に立ちそうな事は見つかったの?」

 

杏奈「・・・・・それが、これといった事は」

 

龍奈「いかに龍族の眷属と言っても、長い年月で人間の血が濃くなっているから大した事は出来ないわよ、ただ単に普通の人間よりも目と耳が良くて、寿命が長いという長所があるだけよ」

 

杏奈「申し訳ありません皆さん、皆さんにご迷惑をお掛けしてしまったのに、お役に立てなくて・・・・・」

 

聖「何も言わないで、杏奈・・・・・」

 

霞「せや、役に立てんかったんはウチらも同じや・・・・・」

 

嵐「そうだな、一刀には本当に申し訳ないとしか言いようがない・・・・・」

 

雪蓮「起こってしまった事をいくら悔やんでも何もならないわ・・・・・それよりこれからどうするかを考えましょう、その為にも腹ごしらえしなきゃ♪」

 

恋「(コク)・・・・・おじいちゃん、一緒に食べる♪」

 

そして、一同は玉座の間から食堂へと移動しようとする

 

刀誠「っ!・・・・・待て」

 

凪「?・・・・・どうしたんですか?」

 

純夏「どうしたの?おじいさん」

 

いきなり歩みを止め、玉座の間に設置されている柱に視線を移す刀誠に一同は何事かと思う

 

刀誠「・・・・・左慈か于吉か、どちらかは分からぬが、いるのであろう、出て来たらどうじゃ?」

 

「!!!!???」

 

その言葉に一同は刀誠が見据える柱を睨み付ける

 

于吉「・・・・・これはこれは、流石はあのチート北郷の祖父兼師匠ですね」

 

そして、柱の影から彼女達の怨敵が現れる

 

雪蓮「于吉ぅ!」

 

愛紗「貴様ぁ、殺されに来たようだなぁ!」

 

于吉「しかし、こうも短い間に我らの術を看破されてしまうとは、神仙としてのプライドはズタズタですね、そうは思いませんか?管輅・・・・・」

 

管輅「この北郷の祖父に頼まれて何回か転移の術を見せてあげたのよ、そうしたら程なく見破られてしまったわ」

 

于吉「それでも驚異的と言わざるを得ないでしょう、その順応力は」

 

管輅「その意見には同意だけど、貴方もなかなかに器用ね、私が張り巡らせた結界をすり抜けて来るなんて」

 

于吉「私も、これまで数々の修羅場を潜っていますからね、これくらいは出来なければ・・・・・」

 

雪蓮「ちょっと、私達を無視して何くっちゃべってんのよ!!!?」

 

霞「せや!!!よくものこのことウチらの前に顔出せたな、于吉!!!」

 

蓮華「ええ、自ら殺されに来たようね!!!」

 

于吉「おやおや、せっかく貴重な朗報を持って来て上げたというのに、つれないですね」

 

思春「朗報だと!!!?貴様のいう事を誰が信じる!!!」

 

于吉「北郷一刀を見つけた、と言ってもですか?」

 

「!!!!???」

 

管輅「っ!!」

 

その言葉に反射的に管輅は千里眼を発動する

 

管輅「・・・・・どうやら本当のようね、すでに左慈が北郷一刀に接触しているわ」

 

明命「はうあ!!!?本当ですか!!!?」

 

春蘭「それで、一刀の体はどうなんだ!!!?傷は治っているのか!!!?」

 

管輅「ええ、ほぼ完治しているわ、左慈の攻撃をはね返している」

 

百合「ほっ、良かった~」

 

時雨「本当に良かったです、旦那様ぁ」

 

村長「ああ、一刀殿ぉ・・・・・」

 

龍奈「それで、一刀は何処にいるの!!!?」

 

于吉「おっと、そこまで情報提供する義理はありませんよ」

 

龍奈「っ!!管輅、一刀は何処、何処にいるの!!!?」

 

管輅「彼は・・・・・」

 

于吉「っ!!」

 

刀誠「っ!!?いかん!!!」

 

管輅「しまった!!」

 

彼女達にとって一番弱い心の隙を突き于吉は転移の術を発動する

 

確実に人質確を確保する為に、最も武を持っていない人物を狙う

 

転移したのは、時雨と百合の後ろだった

 

于吉「操!!」

 

時雨「は?」

 

百合「え?」

 

そして、間髪入れずに操の術式を発動する

 

しかし

 

バチィッッッ!!!!

 

于吉「なにっ!!!??」

 

管輅「えっ!?」

 

しかし、操の術式は何かの力に弾かれ、于吉は後ろに後退した

 

純夏「百合、時雨、大丈夫!!!??」

 

百合「あ、はい、大丈夫です!」

 

時雨「今、何が・・・・・」

 

于吉「そんな、どうして、一体何が・・・・・っ!!!」

 

結界、八門遁甲が反応し身を翻そうとするが

 

于吉「うぐっ!!!!??」

 

その時、一瞬于吉の視界がブレる

 

背中腰から腹にかけて訪れる激痛に、ゆっくりと視線を下げる

 

すると自分の腹から、頭が三つに分かれた血みどろの刃が顔を出していた

 

なんとか首を後ろに捻ると、そこには一つのお団子頭が見えた

 

彩「ちっ、急所を外したか、これで仕留めるつもりだったんだがな」

 

そこには、元袁術軍大将軍、紀霊こと彩が三尖刀、袁術親衛隊正式採用槍を于吉の背中に突き立てていた

 

于吉「こ、これはぁ・・・・・予想外な事が、立て続けに・・・・・」

 

彼女達にとっての心の隙が一刀であれば、于吉の心の隙は自身の術式が彼女達に通用しなかった事であろう

 

彩「何か騒がしいと思って来てみれば、とんでもない大物が転がり込んできたものだ・・・・・年貢の納め時だな于吉、これまでのツケ、全てを清算してもらおう!!」

 

ズシャアアア!!!

 

于吉「がふあああああ!!!!」

 

三尖刀を横に滑らせ、右脇腹を両断された于吉はその場に蹲った

 

純夏「よくやったわ、彩!!!」

 

雪蓮「覚悟しなさい于吉!!!」

 

愛紗「貴様の命運、ここで尽きたと知れ!!!」

 

凪「一刀様を陥れた報いを受けろ!!!」

 

恋「絶対に許さない!!」

 

于吉「ぅ、ぁ・・・・・ぁぁぁぁ・・・・・」

 

そして、この場に居る一同が于吉を八つ裂きにしようと迫る

 

何とか道術で傷の応急処置をし、転移の術で撤退しようと試みるが、想像を絶する激痛で術を発動する事は出来なかった

 

いくらなんでも今回は駄目かと覚悟を決める于吉だったが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                         「やれやれ、世話が掛かるのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴヲアッッッッ!!!!

 

彩「なに!!!?」

 

雪蓮「きゃああああ!!!?」

 

春蘭「なにぃっ!!!?」

 

星「くっ!!!?」

 

龍奈「なに!!!?」

 

刀誠「ぬうっ!!?」

 

その時、いきなり発生した突風に一同は後退させられる

 

彩「くっ!!一体何だ!!?」

 

恋「・・・・・誰?」

 

葵「な、何だこいつは・・・・・」

 

目の前に現れたのは、白髪の髪と髭を腰回りにまで伸ばした老人だった

 

???「情けないのう、于吉よ、それでは神仙落第もはなはなしいぞ」

 

于吉「くぅぅ・・・・・面目次第も・・・・・ありません・・・・・」

 

その老人が片手を于吉の真上に翳すと、まるで磁石のように于吉は老人に手に吸い寄せられていった

 

管輅「っ!!!??・・・・・まさか、そんな・・・・・どうしてここに、貴方様が・・・・・」

 

葵「っ!!?貴方様だと!?一体誰なんだ!!?」

 

管理者である管輅が様付けで呼ぶという事は、それくらいの存在だという事は明白である

 

刀誠「・・・・・これはいかんのう、皆、離れてくれるか?」

 

愛紗「お、おじい様、何を!!?」

 

刀誠「こやつは、お主達がどうこう出来る相手ではない、下がるのじゃ」

 

愛紗「・・・・・はい」

 

そして、刀誠の言葉に従い一同は後ろに下がった

 

???「ほほう、流石あの北郷一刀の師匠だけある、瞬時にワシの力を見定めるとはのう」

 

刀誠「ワシも過去に幾分か修羅場を潜っておるからのう・・・・・して、お主は何者じゃ?」

 

???「ふむ、ワシだけ一方的に知っているのは聊か不公平と言えるかのう・・・・・ワシは神農、この于吉を含めた外史管理者の長の一人じゃ」

 

葵「し、神農だって!!?」

 

聖「それって、神農大帝のこと!!?」

 

春蘭「そんな馬鹿な、そのような大昔の人間が今生きているはずがない!!!」

 

純夏「春蘭、いちいち真に受けるんじゃないわよ、神農という名前はただの呼称かもしれないし・・・・・それに、こいつらは神仙、神農本人だったとしても何も不思議じゃないわ」

 

春蘭「むぅぅ・・・・・」

 

神農は、古代中国の伝承に登場する三皇五帝の一人、諸人に医療と農耕の術を教えたという

 

中国における初めての部落連盟の名前ともなり、七十世代に渡って古代中国を治めたという

 

霞「ちょい待ち!!それじゃああんたは、五斗米道の開祖っちゅうんか!!?」

 

嵐「ああ、かつて華佗から聞いた事がある、五斗米道の始祖が神農だと」

 

神農「おお、五斗米道か、懐かしいのう♪あれはワシが暇潰しに作った一流派じゃ、本来は氣を用いて人を滅却する事を目的として作られたものじゃが、それがいつの間にか医療に使われておるようじゃな」

 

聖「滅却ですって!!?神農大帝は、医薬と農を司る神のはずよ!!」

 

神農「古の時代に戦が無かったとでも思うのか?お主達は、勝手にワシを神として祭り上げておるようじゃが、太古からの神々がお主達の想像通りのものであるとするなら、それは滑稽じゃぞ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

刀誠「なるほどのう、それで管理者の長が直々に出張って来たという事は、お主もこの世界の破壊をもくろんでいる、という認識で良いのかのう?」

 

神農「それは、この于吉、そして左慈の働き次第じゃ、こやつ等がこの外史の破壊に成功したのなら、それはそれ、失敗して存続するのであれば、それもまた一興というものじゃ」

 

刀誠「・・・・・嘘じゃな」

 

神農「ほう、どうしてそう思うのかのう?」

 

刀誠「破壊されようと存続しようと関係が無いというのであれば、傍観者を決め込んでいればよいだけなのじゃからな・・・・・しかし、お主はここに居てこうして左慈と于吉に手を貸しておる、それは何かしらの理由があってしかりじゃ」

 

神農「ふむ、なかなかに良い洞察力を持っておるようじゃが、ただの暇潰しという可能性も否めんのではないか?」

 

刀誠「・・・・・どうやら、タダで吐く気は無いようじゃな、なれば腕ずくという手段もあるぞ」

 

神農「ほほう、面白いのう、あの北郷一刀の師匠に手合せをせがまれるとはのう♪・・・・・しかし止めておけい、全盛期のうぬでも難しいというのに、衰えたうぬではワシには勝てぬ」

 

刀誠「お互い同じ老人であろう・・・・・ふんっ!!!」

 

全身に氣を纏い、縮地法で一気に接近し、重厚な正拳突きを繰り出す刀誠

 

神農「ほっ」

 

バチイイイイイイイイイイイイ!!!!

 

刀誠「ぬうう!!!?」

 

しかし、その思い切り力を乗せた拳は、神農の氣の壁に阻まれる

 

神農「お主の実力は、この中でも抜きん出ておる、それでもワシには遠く及ばぬ」

 

刀誠「ぬうう!!!・・・・・なればこれでどうじゃ!!!」

 

ヴオオオオオオオオオオオ!!!!

 

恋「くっ!!」

 

葵「うおっ!!?こりゃすげえ!!」

 

凪「す、凄い!!」

 

氣を限界まで絞り込み北郷流三大禁忌が一つ回天丹田を発動する刀誠

 

一刀と同じ羽の様な氣の粒子を撒き散らしながら神農の氣の壁を押していく

 

神農「ほう、頑張るのう♪しかし、温い・・・・・ふんっ!」

 

ズガアアアアアアアアア!!!!

 

刀誠「ぬおおおおおおおおおお!!!!??」

 

回天丹田を使った刀誠をもろともせず、氣の壁を炸裂させた神農は刀誠を吹っ飛ばし壁に背中から叩き付けた

 

時雨「おじい様!!!!??」

 

百合「大丈夫ですか、おじい様!!!!??」

 

神農「確かにうぬは、ワシら管理者の術の及ばぬ所に居るためワシらの術は通じぬ・・・・・それでも、経験の差というものは覆らん」

 

刀誠「ぐぅぅ・・・・・この老体では敵わぬか・・・・・」

 

傍に時雨と百合が寄り添うが、背中からの衝撃によって回天丹田を掻き消され、その場を動けなかった

 

凪「そんな、今の刀誠様の氣は私を遥かに凌駕していたのに・・・・・」

 

愛紗「おじい様でも、敵わないなんて・・・・・」

 

雪蓮「文字通りの化け物という事ね・・・・・」

 

恋「・・・・・・・・・」

 

葵「こりゃ分が悪過ぎるか・・・・・」

 

圧倒的な神農との力の差を感じ、後ずさる一同はこの場を切り抜ける方法を考えていたが、どう足掻こうと最悪の結末しか想像できなかった

 

しかし

 

神農「安心せい、ワシは気まぐれでこやつ等に手を貸したにすぎん、お主達をどうこうする気など微塵もないわい」

 

「・・・・・・・・・・」

 

その言葉に、一同は心の中に安堵を抱くが

 

神農「・・・・・しかし、さっき興味深い事が起きたのう、于吉の術式がお主らに通じなかった事じゃ、これはどういった原理かのう?」

 

百合「え?術式?」

 

時雨「そういえばさっき、私の中から何かが湧き出して来て・・・・・」

 

神農「・・・・・ほう、お主らの中に別の氣を感じるのう」

 

雪蓮「え、なになに?何の事?」

 

鈴々「一体何を言っているのだ?」

 

神農「ワシからそこまで説明する義理は無い・・・・・管輅よ、後でこやつ等に説明してやるのじゃ」

 

管輅「あ、はい・・・・・・・・・・あの、神農様、なぜ神農様が御自らこの外史に」

 

神農「知らずともよい、お主はこれまで通り、お主の思うように行動すればよい」

 

管輅「・・・・・はい、承りました」

 

神仙にも格というものが存在するのであろう、神農がちょっと視線を管輅に向けただけで、管輅は恭しく引き下がった

 

神農「さて、このまま帰ったのでは聊か芸が無いのう」

 

そう言いながら于吉を担いだ神農は玉座の間を見渡した

 

神農「于吉は、お主達の誰かを人質として使い、北郷一刀との戦いを優位に進めようとしていたようじゃし、もう一つ世話を焼いてみるか・・・・・二人ほど、一緒に来てもらおうかのう」

 

星「な、なんだと!!!?」

 

思春「ふざけるな!!!誰がそのような辱めを受けるか!!!」

 

彩「一刀殿の枷になるくらいなら、死んだ方がマシだ!!!」

 

神農「面倒じゃ、適当に選ばせてもらうわい・・・・・っ」

 

ヴォン

 

蓮華「え?きゃああああああああああ!!!!!」

 

杏奈「いやああああああああああああ!!!!!」

 

雪蓮「え!!?蓮華!!!?」

 

明命「はうあ!!?蓮華様!!?」

 

龍奈「な、なに!!!?」

 

愛紗「杏奈!!!?」

 

神農が手を振るうと、空間が二箇所割け、蓮華と杏奈がその中に引きずり込まれてしまった

 

神農「さて、これでお暇させていただく事にするわい」

 

そして、転移の術式で神農も于吉と共に消えていった

 

雪蓮「待ちなさい!!!蓮華、蓮華あああああああああああ!!!!!」

 

思春「蓮華様ああああああああああ!!!!!」

 

星「何処だ杏奈!!!!返事をしろ!!!!」

 

鈴々「杏奈お姉ちゃん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアア!!!!

 

左慈「ぐはあっ!!!!」

 

女学院の中庭では、左慈が一刀に痛めつけられていた

 

左慈「ぐううううう、くそっ!!!」

 

一刀「まだ立つのか、いい加減にしとかないとこないだの二の舞だぞ」

 

左慈「うるさい!!今頃、于吉がお前の作った都で人形を2,3体確保している所だ、この勝負、俺の勝ちは最初から決まっていたんだよ!!」

 

一刀「人質かよ、よくもそこまで卑劣な事が出来るもんだな」

 

左慈「ふん、偉そうに!!多くの人命を奪った貴様が俺に説教をするか!!?」

 

一刀「お互い様だろ?お前こそ、この世界の人達の事を消しゴムの粕程度にしか見ていない癖に」

 

左慈「ちぃっ!!」

 

精神的に揺さぶりをかけようとするも、左慈がどんな存在かを知っている一刀には通じなかった

 

一刀「なんだ、もっと痛い目に合わないと分からないのか?だったら・・・・・っ!!」

 

左慈「なっ!!!??」

 

ズシュッ!!

 

左慈「ぐうあああああああああああ!!!!!」

 

全身に氣を纏い縮地で接近し、その勢いのまま一刀は右手の人差し指を左慈の左肩に突き込んだ

 

空手における貫手、北郷流無刀術では指戒と呼ばれる技

 

拳よりも力を一点に集中させる事が出来るため、鳩尾、脇腹、喉、目などの急所を攻撃する際、非常に大きなダメージを与えることが出来る

 

ただし、指と握力を極限まで鍛え抜かなければ出来ない妙技であり、しかも一刀が使ったのは一本貫手

 

しかもそれが人体を貫くというのであれば、相当に鍛えなければ出来ない荒業である

 

左慈「ぐがああああ・・・・・く、くそう」

 

左肩を貫かれているというのに、左慈は一刀の腕を掴み、無理矢理引き抜いた

 

動脈に達しないように手を抜いたが致命傷には違いない、左肩から流れ出す血が法衣を赤く染めていく

 

一刀「おいおい、人体急所の一つを貫いているのに無茶するなよ、下手をしたら腕が一生使い物にならないんだぞ」

 

左慈「黙れ!俺達神仙の体を常人と一緒に考えるな、これくらいの傷くらい数日で治る!」

 

一刀「こっちは心配して言ってやってるのに・・・・・なぁ、左慈、俺はさ、まだお前と友達になるのを諦めていないぞ」

 

左慈「はあ!?貴様まだそんな戯言をほざいてやがるのか!?」

 

一刀「言っておくけど、俺は本気だぞ、俺は本気でお前と友達になりたいんだ」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

真っ直ぐにこちらを見てくる一刀の目は本気である事を物語る

 

だからこそ、左慈は理解できない、この一刀を殺す為に仕掛けた計略の数々を考えれば、とても口に出せるも出は無いはずのものだからだ

 

これまでも別の外史で北郷一刀を排除しようと画策してきた事はこの一刀も知っているのにだ

 

余りに不可解な一刀の言動に、左慈は疑わしくも警戒する目で一刀を睨み付ける

 

左慈「貴様、何を企んでいる?」

 

一刀「別に、俺は純粋にお前と友達になりたいと思っているだけだ」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

言葉を紡ぎながら一刀は左慈に手を差し出し握手を求めるが、左慈はやはり理解できないと言いたげな目で一刀を見つめる

 

左慈「・・・・・ふん」

 

そして、差し出された手にそっと自分の手を合わせる

 

一刀「お、分かってくれたか?・・・・・っ!」

 

左慈「うおおおおおおおおおおお!!!!」

 

一刀「おっと!」

 

趨凜「ご主人様!!?」

 

渚「一刀様!!」

 

やはりというかなんというか、左慈は一刀の肘の関節を極め逆一本背負いで思い切り投げに転じた

 

しかし、こういった技は無刀術の中にいくらでもあるので、一刀は体全体を捻り込み綺麗に受け身を取った

 

一刀「やっぱり、簡単には分かってもらえないか・・・・・」

 

左慈「当たり前だ!!!俺は貴様という存在を排除する為にこれまで行動してきた!!!その日々を否定されてたまるか!!!」

 

渚「どうしてなんですか!!?どうして一刀様があそこまで言っているのに、なぜ貴方は分からないんですか!!?」

 

趨凜「いくら私でも穏やかではいられませんよ、ご主人様のご好意をここまで無下にするなんて」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

左慈「やかましい!!!今回はこれで退いてやる、だが次も同じだと思うなよ!!!」

 

そして、散々に悪態を吐き散らし、左慈は転移の術で消えていった

 

一刀「・・・・・左慈、どうしてなんだ、どうしたら分かってくれるんだ」

 

三日月に光る月を見上げる一刀の顔は、悲壮に満ちていた

 

渚「一刀様、大丈夫ですか!!?」

 

一刀「・・・・・ああ、大丈夫だ」

 

心配しながら駆け寄る渚に、一刀は儚げな笑顔で返した

 

趨凜「・・・・・ご主人様、今の人物は一体」

 

渚「そうです、何者なんですか!!?」

 

一刀「・・・・・あいつは・・・・・っ」

 

またもや独特な空気の歪みを感じ、一刀は振り返る

 

管輅「久しぶりね、北郷一刀」

 

一刀「・・・・・管輅」

 

渚「次々と・・・・・一体誰なんですか、貴方達は、いい加減にしてください!!!」

 

趨凜「待って下さい、渚さん・・・・・ご主人様が、たった今呼ばれましたね・・・・・管輅さん」

 

渚「え、管輅って・・・・・」

 

管輅「ええ、天の御遣いの予言者、星読みの管輅よ・・・・・北郷一刀、重大な事を伝えないといけなくなったわ」

 

一刀「・・・・・誰かが、攫われたのか」

 

管輅「ええ、孫権仲謀に法正孝直が」

 

一刀「・・・・・そうか」

 

そして、一刀は再び月を見上げる

 

趨凜「・・・・・一刀さん、そろそろ、潮時ですか?」

 

一刀「・・・・・ええ、どうやら長居し過ぎたみたいですね」

 

渚「え!!?」

 

趨凜「分かりました、出発は明日の朝でよろしいですか?」

 

一刀「ええ、色々とお世話になりました」

 

渚「待って下さい、勝手に話を進めないで下さい、この人達は誰なんですか、何がどうなっているんですか!!?それに潮時って・・・・・」

 

趨凜「渚さん、今の会話の通りです、一刀さんがここを離れる時が来たのです」

 

渚「そんな、いきなり過ぎます!!!どうかしっかりと説明してください!!!」

 

管輅「下手な説明よりも、こっちの方が分かり易いでしょ」

 

懐から水晶玉を取出し、力を集中させる

 

水晶玉から放たれる光は、二人の記憶の霧を吹き飛ばしていった

 

趨凜「・・・・・なるほど、こうゆうことですか」

 

渚「そんな、本当に一刀様が、御遣い様、英雄王様・・・・・」

 

師は手を顎に沿え納得し、弟子は驚きの余りその場にへたり込んだ

 

一刀「そういう事だ、渚・・・・・すまない」

 

渚「・・・・・~~~~~~~っ!!」

 

この謝罪の言葉は、渚の心を貫く事しか出来なかった

 

これが、はっきりとした別れの言葉だという事を渚は理解した、してしまったのだ

 

両手を顔に沿え、嗚咽し出す渚を、趨凜が優しく起こしてあげた

 

趨凜「一刀さん、今宵はゆっくり休んでくださいませ、私達は自分の部屋に戻りますから」

 

一刀「・・・・・すみません、趨凜さん」

 

趨凜「いいえ、遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていましたから」

 

そして、趨凜は渚を連れ庵の中に入っていった

 

一刀「・・・・・管輅、二人は何処に連れていかれたんだ?」

 

管輅「泰山の頂にある神殿の中よ、直に向かうの?」

 

一刀「いや、その前にやっておかないといけない事がある」

 

管輅「祖父の事?」

 

一刀「それもだけど・・・・・なぁ、蓮華と杏奈は術を掛けられて連れていかれたのか?」

 

管輅「いいえ、最初に術を掛けられそうになったのは、諸葛瑾と舜琴という侍女よ」

 

一刀「百合さんと時雨が・・・・・という事はあの二人も・・・・・」

 

管輅「ええ、于吉の術式を弾いたわ」

 

一刀「一体どうなってるんだ?どうして趨凜さんや渚にも左慈の術が効かなかったんだ?」

 

管輅「それは、天の御遣いである貴方と契りを交わした事によって、貴方の氣が彼女達の中に残り、その氣が于吉の術式をはね返したのよ」

 

一刀「それなら、どうして皆、俺の記憶を無くしてしまったんだ?」

 

管輅「どうやら、彼女達の中に蓄積された貴方の氣はそれ相応の道術にしか反応しないようね、さっきの私の術もあっさり通ったし、自分に害を及ぼす術式にのみ反応するようね」

 

一刀「ということは、皆が操られる心配は無いという事か?」

 

管輅「ええ、彼女達の中の貴方の氣が無くならない限りは」

 

一刀「・・・・・分かった、ありがとう」

 

管輅「?・・・・・何処に行くの?何も言わずに去るつもり?」

 

部屋に戻らず、正門に向かう一刀に管輅は何事かと思った

 

一刀「流石にこのままにはしておけないさ、最低限の事はしないとな・・・・・管輅も天角に戻って皆を守ってあげてくれ」

 

そして、一刀は正門に向かって走り出す

 

管輅「・・・・・北郷一刀!」

 

一刀「っ!?なんだ、まだ何かあるのか?」

 

管輅「この外史に来ているのは、左慈と于吉だけじゃない、もう一人とんでもない人が来ているわ、気を付けなさい・・・・・それと、貴方の祖父は、元気でやっているわよ」

 

一刀「・・・・・本当に、ありがとう」

 

そして、一刀は正門を抜け、森の中へと消えていった

 

管輅「・・・・・しっかりね、北郷一刀」

 

この言葉を残し、管輅も消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌朝

 

朝日が眩しく山の間から顔を覘かせる中で、別れの時はやってくる

 

一刀「趨凜さん、渚、長い間ありがとうございました」

 

趨凜「何を仰るのですか、一刀さん、むしろお世話になったのはこちらの方ですよ」

 

渚「うう、ぐすっ、えっぐ//////////」

 

正門にて一刀を送り出す趨凜と渚だったが、渚は顔を赤くし子供の様に泣きじゃくっていた

 

趨凜「渚さん、別れ際の涙は不吉を招くだけですよ」

 

渚「ぐっす、だって、ひっく/////////」

 

一刀「渚、泣かないでくれ」

 

渚「ううぅ、一刀様ぁ//////////」

 

一刀「渚がそんなに泣き虫じゃあ、俺も安心して行けない、最後くらい渚の笑顔を見ておきたいんだ」

 

渚「ぐっす・・・・・はい、私は大丈夫です、ですから安心して行って来てください/////////」

 

無理矢理笑顔を作るも、声は震え悲壮感が拭えない渚は一刀と同じくらいに不器用としかいえなかった

 

一刀「よし、元気でな、渚♪」

 

その不器用な笑顔に対して一刀も精一杯の笑顔で返し、頭を撫でてあげた

 

一刀「趨凜さん、俺の部屋にこの前置いたお金に加えてさらに追加しておきましたので、使って下さい」

 

そう、昨晩一刀が女学院を一旦離れた理由はこれである

 

森の中に隠しておいた大金入りの袋をもう二つ机の横に置いていたのだった

 

趨凜「もう、そこまで気を遣わなくてもいいのですよ、一刀さん、そんなもの無くても私達はこれまでずっとやってこれたのですから」

 

一刀「何を言っているんですか、学院の運営にお金は必ずいりますよ、生徒達の筆記用具も揃えないといけないんですから、無くなってしまったら授業が滞ってしまいますよ、新しいものを買ってあげてください」

 

趨凜「それもそうですね、では遠慮なく使わせてもらうとして・・・・・一刀さん、最後に一つだけお願いがあります」

 

一刀「いいですよ、この際なんでも聞きます」

 

この人が『最後に』と言う事は、よほど切実な願いなんだろうと思っていたが、予想の斜め上の願いが飛び出した

 

趨凜「抱いてくださいませ♪///////」

 

一刀「は、え!!?」

 

渚「先生!!?/////////」

 

いきなりこの場での最後の睦み合いの申し出かと思い二人は戸惑う

 

趨凜「いえ、そういう意味ではなく!前に渚さんにしていたあれをまだしてもらっていなかったので/////////」

 

一刀「・・・・・あ、そういえば約束していましたね」

 

渚「ああ、そういうことですか・・・・・びっくりしました/////////」

 

そう、最初に契りを交わした時に渚にお姫様抱っこをしてあげた時に、近いうちに自分もして欲しいと言っていたのを思い出した

 

一刀「それじゃあ、失礼します・・・・・よっと」

 

趨凜「ああん♥・・・・・うふふふ♪このような満足感、味わった事がありません♪雫さん達にもして差し上げたのですか♪/////////」

 

一刀「まあ、一通りは」

 

趨凜「んふふふふ♪ずっとこうしていたい気分になってしまいます♪//////////」

 

人生初のお姫様抱っこの抱擁感に趨凜は酔いしれ、一刀の首に腕を回し抱き付いてきた

 

既に孔雀色の瞳を見開き、真っ直ぐに一刀の顔を見つめる趨凜

 

そこには、一人の男に惚れた一人の女としての趨凜の姿が確かにあった

 

渚「(ああ、先生羨ましいです、もう一度私もしてほしいです)////////」

 

お姫様抱っこされている趨凜の姿に何とも言えぬ願望が湧き上がってくるが、一度やってもらっている身なので心の中に留める

 

自分もやってもらうと切が無くなるのが分かり切っているためだ

 

趨凜「最初は、味わう側になるつもりだったのですが、完全に味わわれる側になってしまいましたね♪///////////」

 

一刀「はは、趨凜さんって意外と苛められ好きでしたからね♪」

 

趨凜「もう、意地悪ですね♥・・・・・一刀さん、私は一つだけ残念でしょうがない事がございます」

 

一刀「何がですか?」

 

趨凜「私の操を一刀さんに捧げることが出来なかったことです」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

趨凜「一刀さんに抱かれた時、私は、自分の操を無下に散らしてしまった事を心底後悔しました・・・・・渚さんが羨ましいです、貴方様のような千年に一人と言える素敵な殿方に操を捧げた渚さんが///////////」

 

渚「そんな、趨凜先生/////////」

 

一刀「気にしなくていいですよ」

 

趨凜「一刀さん////////」

 

一刀「そこまで俺の事を慕ってくれるのは嬉しいです・・・・・・けど、趨凜さんが過去にいろんな経験をしたからこそ俺達はあそこまで愛し合えたというのも事実じゃないかと思いますよ」

 

趨凜「・・・・・・・・・・」

 

一刀「趨凜さんが初めてだったとしたら、きっとあそこまで濃密な時間は過ごせなかったと思います、ですからきっとそれで良かったんですよ」

 

趨凜「・・・・・うふふふ♥物は言いようですね、ではそれで良かったと思う事にします♥・・・・・んちゅちゅ、ちゅばぁっ、んふぅ♥♥♥//////////」

 

一刀「ちゅっ、むちゅちゅ、んん////////」

 

いきなり、渾身の力を込めて趨凜は唇を重ねてきた

 

まるでこれが最後だといわんばかりの、思い残すことが無いようにと唇を求めてくる

 

渚「ああ、狡いです先生!!一刀様ぁ、私もぉ/////////」

 

一刀「っはぁ・・・・・趨凜さん、そろそろ」

 

趨凜「んっふぅ♥♥・・・・・ええ、名残惜しいですけど、ここまでですね、渚さんにもしてあげてください/////////」

 

一刀「ええ」

 

そして、趨凜を降ろし背中に抱き付いている渚に振り向く

 

渚「一刀様、一刀様ぁんふんんん、ちゅちゅ、むちゅる、んん、ちゅばぁ♥♥♥//////////」

 

一刀「ちゅる、むちゅう、ちゅぶ」

 

優しく抱きしめ、唇を啄む一刀に対して、渚は思い残す事が無い様にと思い切り一刀にしがみ付き、唇を押し付ける

 

一刀「っ・・・・・もういいだろ、渚」

 

渚「もう少しだけ、あと少しだけ、このままでいさせてください!/////////」

 

一刀「・・・・・分かったよ」

 

大粒の涙を流しながらしがみ付いてくる渚を、一刀は優しく包み込んであげた

 

趨凜「・・・・・一刀さん////////」

 

ギュウ

 

一刀「・・・・・趨凜さん」

 

今度は趨凜が後ろから抱き付いてきた

 

趨凜「私も、暫くこのままにさせて下さいませ////////」

 

一刀「・・・・・分かりました」

 

それから三十分ほど二人は一刀にしがみ付いて離れなかった

 

そして、全てを絞り出すように、趨凜が言葉を紡ぎだす

 

趨凜「・・・・・一刀さん、私の愛しい人、私が初めて思慕を抱いた人//////////」

 

渚「私も、お慕いしてます、一刀様ぁ、お慕いしています/////////」

 

趨凜「ですから一刀さん・・・・・いいえ、ご主人様、どうか無事に帰って来て下さいませ////////」

 

渚「約束して下さい、一刀様ぁ、全てが終わったら必ず戻って来ると/////////」

 

同時に抱き付いてくる二人の体は震えていた

 

これがこの二人の本音である、どんなに笑顔を作ろうとも、心の中は不安で一杯なのだ

 

もしかしたら、このまま一刀が帰ってこないのではないかと思うと、胸が締め付けられる思いである

 

しかし、そんな二人の希う、純粋な気持ちを一刀は汲み取る事が出来なかった

 

一刀「趨凜、渚・・・・・約束は出来ない・・・・・」

 

趨凜「ご主人様ぁ・・・・・」

 

渚「一刀様ぁ・・・・・」

 

一刀「俺も、今回は覚悟しているんだ、自分が死ぬことを・・・・・」

 

二人を宥めながら抱擁を解き、一刀は背を向ける

 

一刀「さようなら・・・・・ありがとう・・・・・趨凜、渚・・・・・・・・・・っ!」

 

そして、一度も振り返らずに、一刀は水鏡女学院を走り去って行った

 

趨凜「うう・・・・・ぐっす・・・・・ご主人様ぁ////////」

 

渚「一刀様・・・・・一刀様ぁ・・・・・ひっく/////////」

 

湧き上がる感情を抑えきれず、二人は大粒の泪を流しながらその後ろ姿を見送ることしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雫「これで全部ですか!!?」

 

零「ええ、もう一枚たりとも無いわ!!」

 

朱里「はぁ~~~、疲れましたぁ・・・・・」

 

雛里「途中で華琳さんと詠さん達が合流してくれましたから、予定より早く終わらせることが出来ました」

 

桃香「うん、物凄く助かったよぉ~~・・・・・」

 

紫苑「ええ、でなければもう三日は掛かっていたと思います」

 

徐栄「もう三日も同じ事を続けていたら、きっと死んでいたと思います・・・・・」

 

張済「ほぼ休み無しでしたから、きつかったです・・・・・」

 

華琳「これくらいならなんて事ないわ」

 

桂花「ふん、華琳様のお手を煩わせるなんて、もうちょっと何とかならなかったの?」

 

秋蘭「桂花よ、この場に居る全員がそんな事を言える立場だと思うか・・・・・」

 

穏「そうですよ~、此度の私達の大失態は、絶対に揉み消す事は出来ないんですから~」

 

稟「はい、今回の事は、胸の内に深く刻み込まねばなりません・・・・・」

 

季衣「うん、僕達兄ちゃんに物凄い迷惑を掛けちゃったんだから・・・・・」

 

襄陽を重点的に洗っていた雫達に合流する形で、華琳達と南荊州を洗っていた詠達が加勢し、襄陽の手配書はあっという間に集められた

 

風「でも、ある程度雫ちゃんと零ちゃん達が集めてくれていましたから、風達は細かい所を精査するだけで済みました~」

 

亞莎「はい、一から全部集めるよりはずっと楽でした」

 

冥琳「南荊州は、全て洗ったんだな?」

 

詠「ええ、もう手配書の影も形も無いわ」

 

月「はい、南荊州には一枚たりともありません」

 

翠「ふぃ~~~、馬で駆け回る分には荊州はしんどいぜ・・・・・」

 

蒲公英「うん、いくら鐙があっても、森や山が沢山あるから、涼州とは勝手が違うよ・・・・・」

 

柊「とにかく、これで一様を探せます」

 

雛罌粟「うん、こんな紙切れに付き合わなくて済むんだね」

 

斗詩「ようやく、ご主人様の捜索に力を尽くせるんですね!」

 

猪々子「絶対アニキを見つけるぞー!!」

 

麗羽「ええ、きっと一刀さんを見つけて見せますわ!!」

 

菖蒲「一刀様、何処にいるのですか!!?」

 

そして、ようやく次の段階に進む事が出来、一刀の捜索を開始しようとしたその時

 

「あ~!徐庶先輩じゃないですか~!」

 

「諸葛亮先輩に龐統先輩まで、どうしたんですか~!?」

 

「なんだか最近、襄陽が騒がしいと聞いていましたけど、先輩達が来ていたんですか~!」

 

朱里、雛里、雫と似た格好をした、三人の女の子達が声をかけて来た

 

雫「え、あ!貴方達は!」

 

朱里「あ~~、久しぶりですね~~♪」

 

雛里「ざっと五年ぶりですね♪」

 

桃香「?・・・・・この子達、誰?」

 

雫「彼女達は、私達の私塾の後輩です」

 

桂花「雫達の私塾、ということは・・・・・あの難関で有名な水鏡女学院の生徒なの!!?」

 

華琳「ふ~~~ん、将来有望な子達ね♪」

 

雫「三人共、ここで何をしているんですか?」

 

朱里「そうだよね、私塾はどうしたの?」

 

雛里「うん、こんな所で遊んでいたら、趨凜先生に怒られちゃう」

 

「あれ、先輩達にしては珍しいですね、忘れているんですか?」

 

「今日は、水鏡女学院はお休みですよ」

 

「はい、定休日ですから、三人で襄陽に遊びに来たんですけど」

 

雫「え、あ!」

 

朱里「そういえば、今日は休みの日だっけ!?」

 

雛里「ご主人様の手配書を集めるのに必死で、全然気づかなかった」

 

「手配書?徐庶先輩の持っているそれって何ですか?」

 

雫「あ!これは!」

 

まだ手に持っていた一刀の手配書を後輩に見られ隠そうとするも、次に後輩達が発した言葉に一同は度肝を抜かされる

 

「あ~~~!!これって一刀さんじゃないですか!!」

 

「本当だ、一刀さんだ~~♪」

 

雫「え!!!??」

 

桔梗「お主ら、お館様を知っておるのか!!!?」

 

祭「ど、どういうことじゃ!!!?」

 

于吉の術は、この大陸の人間すべてに及んでいるはずなので、何故彼女達が一刀の事を知っているのか訳が分からなかった

 

「知っているも何も、水鏡先生と向郎先輩と一緒に、学院に住んでいるんですよ♪」

 

朱里「えええええええええええ!!!!??」

 

雛里「ご主人様が趨凜先生と渚ちゃんと!!!!??」

 

沙和「本当なのーーーーー!!!??」

 

真桜「マジかいな!!!??」

 

「はい、一緒にお勉強して、とても楽しいです♪」

 

「一刀さん、いろんなことを知っていて、それを全部教えてくれて、凄く優しいです♪/////////」

 

「でも、どうしたんですか皆さん、そんなに驚いて・・・・・」

 

桃香「雫ちゃん、その私塾に案内できる!!?」

 

雫「はい!!ここからさほど遠くはありません!!」

 

朱里「とんでもない盲点だったよ・・・・・」

 

雛里「うん、まさか私達の私塾に居るなんて・・・・・」

 

「え、どうしたんですか、先輩!!??」

 

「一体何があったんですか!!??」

 

「何処に行くんですか!!?どうして一刀さんを探しているんですか!!??」

 

雫「申し訳ありません!!!今は話している暇は無いんです!!!失礼します!!!」

 

そして、お互いに疑問が残るも、雫達は馬をとばし、東の江夏へ向かったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、昼

 

渚「・・・・・・・・・・」

 

趨凜「・・・・・・・・・・」

 

トントントントン グツグツグツグツ

 

女学院内の台所では、師弟二人が昼食の準備をしていた

 

しかし、二人の間に会話は一切なく、ただ機械的に手を動かしているだけだった

 

渚「・・・・・あの、先生」

 

趨凜「何も言わないで下さい、今は、そのような気分ではありませんので・・・・・」

 

渚「・・・・・はい」

 

今朝、一刀と離別した二人は言いようのない虚脱感と空虚感を抱いていた

 

気を紛らわせる為に料理に勤しんでいるが、やはり心の空白を埋める事は出来ない

 

その時

 

趨凜「っ・・・・・何かが近付いてきますね」

 

渚「え?・・・・・あ、蹄の音ですね、それも多数です」

 

遠くから響いてくる蹄鉄の音、紛れも無くこちらに近付いてきている

 

趨凜「どうやら、団体様がいらっしゃったようですね・・・・・火を弱くしてお出迎えしましょうか」

 

渚「あ、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雛里「・・・・・ねぇ、道を間違えたのかな?」

 

朱里「そんなはずないと思うけど・・・・・」

 

雫「いったい、これは・・・・・」

 

桃香「え?え?どうしたの?」

 

華琳「なに?ここじゃないの?」

 

零「ちょっと、しっかりしなさいよ!ここに水鏡女学院って看板が張ってあるじゃない!」

 

朱里「だ、だって!!私達の知っている水鏡女学院は、その・・・・・」

 

雛里「はい、外壁は崩れ庵も所々雨漏りし、学び舎として、とても誇れる所ではなかったのです」

 

雫「この学院は、常に財政難で修理代などとても出せるものではないはずです、ですから前よりも更に酷くなっていると思っていました・・・・・なのに、こんな立派な佇まいに・・・・・」

 

目の前に建つ立派な外壁と綺麗に整備された庵、中庭も綺麗に清掃され、雑草など殆ど生えていない

 

これは、自分達の中の水鏡女学院のイメージとはとても結びつかない、しかし、向かって正門の右側には水鏡女学院の看板がでかでかと掲げられている

 

一体何がどうなっているのか訳が分からない三人を余所に、この学院の学院長が中から現れた

 

趨凜「これはこれは、懐かしいお顔ですね♪」

 

渚「ああ、朱里さん、雛里さん、雫さん、お久しぶりです♪♪」

 

朱里「趨凜先生、渚ちゃん、お久しぶりです♪」

 

雛里「久しぶり、渚ちゃん、元気だった♪」

 

雫「本当にお久しぶりです」

 

華琳「その様子だと、貴方が水鏡と呼ばれる賢人のようね・・・・・私の名は、曹操孟徳と申します」

 

桃香「私は、劉備玄徳と言います♪」

 

趨凜「まあまあ、三国の王様が二人も訪ねて来るなんて、今日は数奇な日ですね♪・・・・・私が、この水鏡女学園の学院長、皆様からは水鏡と呼ばれている司馬徽徳操でございます」

 

渚「私は、向郎巨達、朱里さんと雛里さんと雫さんの同期生です」

 

冥琳「(このお方が、朱里と雛里、雫の師匠・・・・・)」

 

零「(絶対に只者じゃないわね)」

 

桂花「(理屈とかそういうのを吹っ飛ばして、凄いとしか言いようがないわね)」

 

風「(む~~~、このようなお人がこの世に居るとは~~)」

 

稟「(このお方は、絶対に敵に回したくない一人ですね)」

 

詠「(見た目は飄々としているけど、底知れない凄味を感じるわね)」

 

穏「(この三人のお師匠様という事は、きっと私が想像も付かない事も知っているんでしょうね~♪体が疼いてきてしまいます~♪)」

 

亞莎「(このようなお方に師事する事は、この上ない幸せなのでしょうね、三人が羨ましいです♪)」

 

柊「(うわ~~、大先生だ、大先生がいるよ~♪)」

 

雛罌粟「(朱里様と雛里様と雫さんのお師匠様か~、お話で聞いたことがありますけど、とても風格があります~)」

 

一瞬見ただけで、三国が誇る軍師達は、趨凜がとんでもない化け物である事を見抜いたようだ

 

何故にこのような人物がどこにも仕官せずにこんな山奥に身を寄せているのかと疑問に思うくらいである

 

雫「趨凜先生、渚さん、戻ってきて早々にこのような不躾な物言いをして申し訳ありません・・・・・ここに、先生と渚さん以外にもう一人、男性の方が住んでいらっしゃいますよね?」

 

朱里「そうです、襄陽で後輩に聞きました、ここにご主人様が住んでいると!!」

 

雛里「ご主人様は何処ですか?ご主人様に会わせて下さい」

 

趨凜「それは、一刀さんのことでしょうか?」

 

桃香「その通りです、ご主人様を出してください!!」

 

華琳「一刀、居るのでしょう、お願い出て来て!!!」

 

翠「ご主人様、本当にごめんよ、いくらでも謝るから出て来てくれ!!!」

 

蒲公英「ご主人様、ご主人様!!!」

 

白蓮「頼む一刀、出て来てくれ!!!」

 

月「申し訳ありません、申し訳ありませんでした、ご主人様!!!」

 

小蓮「お願い、戻ってきて、一刀!!!シャオ沢山謝るから!!!」

 

季衣「ごめんね兄ちゃん、追い出しちゃってごめんね!!!」

 

流琉「兄様、もう兄様はご飯を作らなくていいです、私が兄様の分を全部作りますから、だから戻ってきてください!!!」

 

学院内に居るであろう一刀に、大声で呼びかける一同だったが

 

趨凜「皆様、落ち着いてくださいませ・・・・・結論から申しあげますと、一刀さんは、もうここには居ません」

 

「!!!!???」

 

渚「はい、今朝方、ここを発たれました」

 

柊「そんなぁ・・・・・」

 

雛罌粟「一足違いだったなんて・・・・・」

 

その言葉を聞いた途端に、一同はがっくりと項垂れてしまった

 

朱里「・・・・・趨凜先生、渚ちゃん、ご主人様はどのようにしてここに来られたのですか?」

 

雛里「はい、ここに来た時に傷を負っていたはずです、その傷は治られたのですか?」

 

渚「雛里さんの言う通り一刀様は、全身に傷を負い川で流されてきました、その川で洗濯物をしていた私達が、一刀様をここに連れて来たんです」

 

趨凜「一刀さんの傷は完治しました、普通に運動しても差し障りありません」

 

徐栄「ほっ、良かったですぅ・・・・・」

 

張済「ええ、兄上が御無事だと分かっただけでも、生き返った気持ちになります・・・・・」

 

一刀の無事を知り、安堵する一同だったが

 

趨凜「さて、では今度はこちらの質問に答えて頂きましょう・・・・・なぜ、天の御遣い、英雄王、三国の守護神たる一刀さんがあのような目に合われているのですか?」

 

雫「え!!?なぜ趨凜先生が一刀様の事をそこまでご存じなのですか!!?」

 

朱里「この大陸の皆は、全員ご主人様の事を忘れているはずなのに!!」

 

雛里「管理者の術を無効にする妖術があるんですか!!?」

 

趨凜「質問に質問で返すのは感心しませんね、皆さんの質問には答えたのですから、今度はそちらがこちらの質問に答えるべきでしょう」

 

渚「そうです、一方的に質問をしてこちらの質問には答えないなんて、狡いです!」

 

雫「し、失礼しました・・・・・」

 

朱里「実は・・・・・」

 

雛里「はい、ご主人様は・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、三人はありのまま起こった事と、ここに至るまでの経緯を全て包み隠さず趨凜と渚に打ち明けた

 

趨凜「・・・・・なるほど、管理者に道術ですか」

 

渚「あの左慈という人が、皆さんから、そして私達から一刀様の記憶を・・・・・」

 

趨凜「ふむ、これで合点がいきました、なぜ一刀さんが川に流されてきたのか、なぜ私達が一刀さんの事を忘れていたのか」

 

雫「もしやと思いますが、この学院の修繕も・・・・・」

 

渚「はい、一刀様が全額負担してくれました」

 

雫「・・・・・一刀様」

 

朱里「どうしよう、雛里ちゃん・・・・・」

 

雛里「うん・・・・・ご主人様に、全部やらせちゃうなんて・・・・・」

 

そう、この三人は何時か女学院の修繕をして恩師である趨凜に恩返しをしたいと思っていた

 

しかし、それぞれがそれぞれの国に掛かり切りで、とても女学院に戻る時間が無く先送りにする日々が続いてしまっていたのだ

 

ここでも一刀の手を煩わせてしまった事実を噛み締め、女学院卒業生達は意を決して言葉を紡ぎ出す

 

朱里「・・・・・趨凜先生、重ね重ね申し訳ありませんが、私達に協力していただけませんか!?」

 

雛里「ご主人様の為にも、この大陸の為にも、お願いします」

 

雫「はい、どうか先生の知恵を私達に貸して下さい!」

 

趨凜「そうですね・・・・・では、私から皆様に一つ言わせていただきましょう♪」

 

そして、にこやかな笑顔を見せる趨凜だったが、それは只の一瞬だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

趨凜「ごらあああああああああああああ!!!!!一体何していたんだてめえらああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!!???」

 

いきなりの趨凜から放たれる雷の様な怒声に一同は目ん玉を皿にする

 

彼女の目は既に見開かれ綺麗な孔雀色の瞳が晒されるが、その剣幕は彼女達がこれまで見た事の無いものだった

 

まるで目の前に閻魔大王が降臨したようである

 

趨凜「クソボケ朱里にボケナス雛里にアホンダラ雫うううううううううう!!!!!」

 

朱里「ひっ!!!??」

 

雛里「ひゃあっ!!!??」

 

雫「うっ!!!??」

 

そして、その矛先は自らの弟子に集中する

 

趨凜「てめえらこの学院で何を学んでいたんだ!!!!?八百一だけか、下着の選別だけか、それ以外は何も聞いていなかったのかあああああああああ!!!!!?」

 

朱里「あわわぁ・・・・・」

 

雛里「はわわぁ・・・・・」

 

雫「ううぅ・・・・・」

 

趨凜「そのうえ図々しく助けを求めるだ?恥ずかしいと思わないのか!!!!!?何処までこの学院の看板に泥を塗るつもりだ、てめえらああああああああああ!!!!!」

 

朱里「・・・・・・・・・・」

 

雛里「・・・・・・・・・・」

 

雫「・・・・・・・・・・」

 

完全に縮こまってしまう三人だった

 

趨凜「後ろのてめえらもだ、有象無象共!!!!!今すぐお前らの☠☠☠☠に☠☠☠☠をして☠☠☠☠☠で☠☠☠☠☠☠☠にしてやろうか、ごらあああああああああああ!!!!!」

 

沙和「ひぃぃぃぃなのぉぉぉぉ・・・・・」

 

真桜「ぁぁぁぁぁ、あかん、ウチ立っとるのもしんどいでぇぇぇぇ・・・・・」

 

小連「うわぁ~~~、まるでお母様みたいだよぉ~~~・・・・・」

 

沙和の海兵隊訓練法などカスだと言わんばかりの罵詈雑言の嵐に、この場に居る一同は恐怖に身を震わせていた

 

趨凜「こっちはすぐにご主人様が天の御遣い様だと気付いたんだぞ!!!!!ご主人様のお傍にずっといたくせに、その様は何だ!!!!!? 恥を知れえええええええええええ!!!!!」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

桃香「ひいいいいいい!!!」

 

三国の王の二人も趨凜の剣幕にたじたじであった

 

もしこの場に雪蓮がいたとしても似たような反応を示していたであろう

 

桂花「ちょっと、華琳様にそんな暴言を働くなんて、いくらこの三人の師匠でも許さ「黙れ、この脳味噌☠☠☠☠☠猫耳腐れ☠☠☠☠☠☠娘がああああああああ!!!!!」ひぃぃぃ!!」

 

趨凜「ご主人様がどんな気持ちでいたと思ってんだ!!!!!??要するにてめえらの甘えと驕りが生み出した結果だろうが!!!!!分かってんのか、ごらああああああああああああああ!!!!!」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

紫苑「・・・・・・・・・・」

 

桔梗「・・・・・・・・・・」

 

祭「・・・・・・・・・・」

 

三国を代表する弓の名手達も趨凜の迫力に顔面を青くし黙りこくるしかなかった

 

渚「朱里さん、雛里さん、雫さん、私も先生と同じ気持ちです」

 

朱里「・・・・・渚ちゃん」

 

雛里「はわわぁ・・・・・渚ちゃ~~ん・・・・・」

 

雫「・・・・・渚さん」

 

渚「確かに、こっちは皆さんの手紙があったから気付く事が出来たというのも否めません・・・・・しかし、それでもあんまりだと思います、いかにその道術というものが強力であったとしても、一刀様のお傍にずっといた皆さんがいの一番に気付かないなんて・・・・・とても残念でなりません」

 

「・・・・・・・・・・」

 

柊「・・・・・そういえば、さっきから水鏡大先生は、一様の事を、ご主人様と呼んでいますね」

 

雛罌粟「向郎さんも、ずっと一刀様って・・・・・まさか・・・・・」

 

渚「はい、一刀様、とても優しくて激しくて、壊れてしまうかと思いました♥♥♥/////////」

 

趨凜「私、壊されてしまいました♥♥♥♥//////////」

 

「・・・・・・・・・・」

 

今さっきの剣幕とは打って変わって、頬に手を沿え身を捩じらせる趨凜と、幸せそうな渚に一同は何があったのかすぐに理解した

 

趨凜「もちろん、貴方方の大失態のおかげで私達はご主人様と邂逅でき、ご主人様の寵愛を得られたという事実がある以上、貴方方の行いを完全に否定する事は出来ません」

 

そう、こういった事も一つの真実である以上、それを無視する事など出来はしない

 

この時、普段の趨凜に戻るがそれも束の間だった

 

趨凜「だがそれとこれとは話が別なんだよ!!!!!お前らがご主人様を陥れた事に変わりはねえ、その責任は自分達で取りやがれ、ごらあああああああああああ!!!!!」

 

華琳「・・・・・分かっています、私達の全てを賭して、一刀をきっと助けて見せます、それと・・・・・一刀を慰めてくれたことを、深くお礼を申し上げます」

 

趨凜「どうやら少しは礼儀というものを弁えているようだな、腐っても覇王は覇王ってか・・・・・だったらこんな所に居ないでとっととご主人様を助けに行きやがれ小娘共!!!!!もしご主人様を死なせたりしたら、お前らに☠☠☠☠☠☠を☠☠☠☠☠☠☠して☠☠☠☠☠☠☠☠すっぞ、ごらああああああああああああ!!!!!」

 

桃香「は、はいいいいいいいいいいい!!!!」

 

華琳「わ、分かりました!!!!」

 

そして、趨凜の迫力に完全にビビり、三国の豪傑達は一斉に水鏡女学院を後にした

 

趨凜「待てやスカポンタン三人組!!!!!」

 

朱里「ひ、ひゃい!!!」

 

雛里「ひぅ!!!」

 

雫「は、はい!!!」

 

スカポンタン三人組と言われ、すかさず元女学院生徒が反応する

 

趨凜「百合の表六玉にも伝えておけ!!!!!今度ご主人様に失礼な事をしたら、お前の☠☠☠☠☠に☠☠☠☠を挟んで☠☠☠☠☠☠☠☠☠☠☠にしてやるから覚悟しておけってなああああああああああ!!!!!」

 

朱里「は、はいいいいいいいいいい!!!!」

 

雛里「し、失礼しましたあああああああ!!!!」

 

雫「わ、分かりました!!!!」

 

滅茶苦茶のズタボロに叱責を受けた一同は、逃げるように天角へと帰還していったのだった

 

渚「・・・・・先生、先生の言いたいことも分からなくはありませんが、一刀様の為にも協力すればよかったのではないですか?」

 

趨凜「もちろん、それは私も少なからず考えていました・・・・・しかし、ここで私達が手を貸してしまえば、それこそ意味がありません、彼女達が自身で責任を取らなければ、この先彼女達は決して成長しません」

 

渚「それは、そうでしょうけど・・・・・」

 

趨凜「それに・・・・・ご主人様は私達を巻き込むまいとしてここを去りました、ここで私達が出しゃばればご主人様の意思を捻じ曲げる事になってしまいます・・・・・」

 

渚「・・・・・・・・・・」

 

師弟二人は、青空を見上げ、一刀の無事を心より祈っていた

 

翌日、一刀の旅立ちを知った生徒達は、涙を流し泣き出す者や意気消沈する者など、全てが悲痛に打ち震えていた

 

こうして、彼女達の幸せに満ちた7日間に渡る夢の様な生活は幕を閉じたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百合「ひいぃっ!!!!??ごごごごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!!!」

 

刀誠「?・・・・・どうしたのじゃ?子瑜ちゃんよ」

 

時雨「はい、いきなり謝られて、どうしてしまったんですか?」

 

百合「あいえ、その・・・・・なんだか今、物凄く怒られたような気がしまして・・・・・」

 

刀誠「????」

 

時雨「????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、Seigouです

 

お盆休みは一話も進める事が出来ず申し訳ありません

 

お盆という事もあり、お寺に行ったり墓参りをしたり、その他諸々で忙しくとても執筆に回せる時間がありませんでした

 

連続休暇だというのに仕事より忙しいというのはどういう事なのでしょうね

 

せっかくの休みも疲れが取れなければ意味をなさないのではないのでしょうか?

 

こうやって自分の愚痴を文章で綴るのは良くない事なのでしょうけど

 

前の鎮魂の修羅でもお伝えしていましたが、紀霊こと彩が活躍する場をこの回でお届けする事が出来ました

 

このままでは白蓮以上に空気になってしまいかねなかった彩、せっかく金髪のグゥレイトゥさんからお借りしているのにこのままでは勿体ないと思い、于吉に一矢報いる役を演じてもらいました

 

これで何とかグゥレイトゥさんに御礼が返せたかなと、自分の中で勝手に思っておくことにします、上のレスポンスにも設定しておきましたので、彩の事を少しでも見てあげてください

 

さて、暫く睦み合いが続くと予想されていましたが、かなり強引に終わらせるとしましょう

 

いい加減自分もにゃんにゃんイベントから卒業しなければ本気で皆さんから官能小説家扱いされかねないでしょうし、皆さんもこんなワンパターンばかりではすぐに飽きてしまうのは目に見えていますから

 

そろそろ本格的に阿修羅伝を終わりに近付けるとしますが、長いこと阿修羅伝ばかりをぶっ続けで進め過ぎていますので、次回は鎮魂の修羅を更新したいと思います

 

それと、明日から日曜日まで今度はベトナムに行くことになりました、以前のカナダの時の様な事は言いません、きっちり帰ってきて続きを更新したいと思います・・・・・待て、次回!!!


 
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