No.796636

艦隊 真・恋姫無双 72話目

いたさん

まだ続いております。 8月17日 22:30 ちょいちょい修正。

2015-08-16 21:08:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1214   閲覧ユーザー数:1057

【 尚書令○○ の件 】

 

〖 洛陽 都城内 練兵場 にて 〗

 

私は──今の現状をジッと眺めている。

 

天の御遣いさまの御活躍により、私達は九死に一生を得る事ができた。

 

御遣いさまは、執金吾の兵達も、上から命令を受けただけだからと仰い、救出を手助けした後、数名で監視を付けながら、手当てを続けている。

 

―――

―――

 

この時、私の頭の中では……様々な想いが渦巻いていた。

 

───後悔と罪の意識

 

───私や銀糸を救ってくれた方たちへの感謝

 

御母様と執金吾の暗躍を、知らずとはいえ………見過ごしていた事! 私という貴種の人形を利用した……漢王朝の絶対支配の確立に手を貸していた事!

 

そして……亡き父の遺命を愚直に守り、私や劉協、眼下の諸侯、仲間を守り、その野望を阻まんと活躍を見せる───天の御遣いの皆様!!

 

御母様の異常なる地位への執着、 執金吾の恐るべし謀略、用兵は、籠の鳥だった私を一瞬で破滅させれる力を持ち合わせ、何度も命を失うかと覚悟した。

 

されど……北郷一刀さま達は、誰も考えが及び付かない方法で反撃したり、天の兵器を繰りだして………その都度……私達を守ってくれたのだ。

 

も、もちろん──諸侯の将たちも、よく動いてくれた。

 

特に陳留刺史『曹孟徳』は、諸侯を纏めて反撃をして、執金吾の軍勢を追い詰めてくれた事。 まだ、皇帝に即位していない私を、皇帝という扱いにしてくれた事、本当に感謝している!

 

全ては、私を中心として起きた出来事。

 

こんな私が──皇帝に即位していいのか───考えてしまう。

 

しかし、執金吾は──私を更に苦しめる!

 

後になり、この行動も執金吾の策だと知り──私は生涯──執金吾を赦す事はしないと決意した!

 

あの男は、自分の力を誇示し、私を苦しめる、御遣いさまの御活躍を嘲笑うかのように──策を実行に移していたのだ!!

 

―――

―――

 

??「────劉辯皇女ぉおおおっ!」

 

劉辯「─────!?」

 

聞きたくも無い声が、耳に入り込む!

 

不安、憂鬱、怠さ、落ち込み……そんな感情が一挙に身体に襲いかかる!

 

私は、その声の持ち主を知っているのだ! 私を邪険に扱う──漢王朝一の忠臣。

 

その者の名は─────!

 

劉辯「────!?!?」

 

比較的元気な兵士達は、休む場所を作るために天幕を張る作業を手伝っていたが、そんなとき、一人の長身の男が……乱暴に作業中の兵達へ割り込む!

 

??「退けぇ! 貴様らぁ! そこを早く退かんかぁ!!」

 

兵士1「な、何だアンタは! ここで天幕を張るところ───」

 

??「ああぁぁぁ~? 下賎の言葉など──聞こえんなぁー!?」ブンッ!

 

兵士1「うわぁあああっ!?」

 

??「劉辯皇女よ! 何処にいらっしゃる! 早く返答をされよ!!」

 

私は……唖然としていたが、あのままだと兵達に迷惑! 声を出す代わりに、両手を頭上まで挙げて、左右に大きく腕を振り回す!!

 

官服を着用した壮年の男が……それに気付き、引き締まった身体を左右に揺らし、無理矢理に集団で固まっている兵士たちを退け、一直線上を進み続け、私へと近付いて来た!

 

既に四十台を越えた身に関わらず、足取りはしっかりと地を踏み締め、私の姿を認めると、更に速度を上げて突進してくる! 白い物が入った髭を手で弄りながら、私を不遜な態度で見下ろす!

 

??「ふん! 劉辯皇女 ──御無事で何よりでしたな!」

 

劉辯「王允、漢王朝之臣名上、否可負傷兵士強引通行!?」

 

(王允、漢王朝の臣ともあろう者が、怪我をしている兵士の集団を、力付くで通り抜けるなど何事ですか!?)」

 

王允「はっ! 何を語っているか分からないが、次期皇帝ゆえに応えよう! 漢王朝存亡に関わる大事な報告があるからだ! 木端兵士などに用は無い! まずは、土台であり大樹の幹である漢王朝が第一ではないか!? それでも気がすまぬなら──謝っておいてやるわ!」

 

この取って付けたような謝罪、不遜な態度を隠す事もせず、私に向けて語る臣は、今の宮廷の中で『直言極諫の士』と言われる硬骨漢。

 

──尚書令『王允』

 

だが……私は……彼を好ましいとは思えなかった。

 

理由は簡単。

 

王允は漢王朝の忠臣。 若き頃より漢王朝に対して、命を捧げてきた老骨であり、非常に頼もしい人材であるが──私を見る目は冷たかった。 まるで……塵を見るかのような目で、幼少より見られてきたのだから。

 

王允に睨まれる度に泣いた私に、父である霊帝は、私を寝台に連れて添い寝してくれながら、よく話をしてくれた。

 

『王允は、漢王朝に対して忠実だが、私たちに対して奴婢と同じような扱いをしてくるのだ。 皇帝とは、漢王朝を生かすための人柱に過ぎないのだよ』

 

王允の狙いは『漢王朝の継続と維持』……永久に王朝を残すという狂気じみた事が目的。 徳の高い王朝は、天に祝福を受けて皆に支持され、永きに渡り大陸を支配できるという考え方があったと……後に人伝に聞いたが。

 

だからこそ、 漢王朝の皇帝は、五体満足の健全な身体で無くていけない。 欠損=徳の欠如と見なされ、即位すれば王朝は短命で終わるのだと!

 

つまり、口調が異常な私は──皇帝になる事を辞退しなければならない──皇帝不適応の者と見なされていた! しかし、御母様や十常侍たちの意向があり、私は皇帝第一候補者に指名され、こうして皇帝直前まで差し迫っている。

 

劉辯「是漢王朝之捨棄命勇有者達! 邪魔呼称是尚書令有罰、即謝罪!」

 

(この者たちは漢王朝の為に命を掛けて戦う勇者! 邪魔者呼ばわりするなら、尚書令と言えど許しません! 謝罪なさい!!)

 

王允「これを聞いてもどうかな? 洛陽の民達が………劉辯皇女の皇帝即位を拒んで、蜂起を各地区で起こしたそうだ! しかも、漢王朝の滅亡まで叫んでおる始末! 御自分の無徳を恥じるべきではないか? 劉辯皇女よ!!」

 

それを聞き───私の目の前が真っ暗になった!

 

 

◆◇◆

 

【 劉辯を救う者 の件 】

 

〖 都城内 練兵場 にて 〗

 

私は、姉上と話をする王允を……睨み付けていた。

 

何時も、何時も姉上に辛く当たり、私には猫なで声で接する気色の悪い臣下! 王允が側に来ると──もう無茶苦茶に腹が立つ!!

 

だけど、今回は……それどころじゃない! 洛陽の民が蜂起!? 姉上の即位を不定しているって!? ──何なの、何なのよ! 一体全体どうしてこうなるの!! それって本当に起こっている出来事!?

 

私達は籠の中の鳥に過ぎないから、その話が本当なのか判断が付かない! 信頼する何進だって、全部を教えてくれる訳じゃないんだから!

 

私が頭を抱えるのと同時に───姉上が崩れ落ちた!

 

昔、父上と見た絡繰り人形が、糸を弛ませると力無く地面に伏せたように、姉上の身体も地面に────!?

 

ほんの少し、手を伸ばせ届く距離なのに、私は自分の事で考えていた為、姉上を助ける動作が遅れてしまった!

 

守るって約束したのに……約束したのにぃ!

 

私は、慌てて片手だけ伸ばすが………後、少しで届かなかった───

 

────ポンッ!

 

急に肩を優しく叩かれた。 暖かみがある大きい手が……『安心して』と言わんばかりに、混乱していた私の心を鎮めてくれた。

 

私が振り向く間に見えたのは、白い服を着用した天の御遣いさまが……姉上を受け止めて抱き抱える。 侍女より聞いた『お姫様抱っこ』という抱き方で。

 

私は安心するのと同時に───僅かに心がざわめいた。

 

それが誰に対して『嫉妬』したのか……理解できなかったの。

 

 

◆◇◆

 

【 王允との約 の件 】

 

〖 都城内 練兵場 にて 〗

 

…………?

 

わ、私は……目の前が暗くなって?

 

冷たく硬い地面に倒れている……と想定していたのに、身体の周りに痛みは無い。 寧ろ、柔らかく暖かい物に包まれて、先程の不安が嘘のように軽くなる。

 

少し顔を横に向けると、銀糸(劉協の真名)が頬を膨らませて、あの王允が苦虫を噛みしめたような顔を向ける。 視線は私では無く、もう少し頭の上?

 

───はっ?

 

私は、この時になり……ようやく自分の身体が、誰かに抱えられている事に気付き……慌てて顔を上げて、その顔を拝見して赤面する!

 

私を軽々抱き抱えながら、何時も笑顔を見せてくれた御遣いさまが、端正な御顔を険しくさせ、あの王允に向かい対峙しているのだ!

 

一刀「──劉辯皇女に無礼を働く、貴公を誰何したいところですが止めておきます。 今、必要なのは的確な情報収集、洛陽の民が蜂起したと言う事は、本当なのですか?」

 

王允「天の御遣い風情か! そもそもの要因は、貴様等にも原因があるのだぞ!? 貴様等が騒ぎを起こさなければぁ、このような事になどぉおおお!!」

 

王允は激昂しながらも、繊細的確に御遣いさまに報告する。 つまり、王允にも打つ手は無い。 いや、逆に私の皇帝即位を阻む材料が出来た事で、内心ほくそ笑みを浮かべているかも知れない。

 

私は、ついつい御遣いさまの胸元の衣服を掴む。

 

………不思議な手触り、サラサラとした肌触りの良い服。 服を通して感じるは固い逞しい身体、ふと感じる御遣いさまの汗の香り。 あぁ……もう少し、このままで居たい。

 

一刀「事態は掴めました。 それなら、洛陽だけでも事態を収集しましょう! 俺がこの騒動を鎮めてみます!」

 

王允「ば、馬鹿な! 貴様等の人数は精々二十名前後、この広大な洛陽の蜂起を鎮圧できる訳が!! それに、この事態は……劉辯皇女の徳の不足が成せる業、皇帝即位を劉協皇女に変えれば済む事ではないか!?」

 

一刀「貴公は───大事な事を忘れていますよ? 皇帝は天の代理人、即ち天に認められし者。 だから………俺たち『天の御遣い』が認めた事により、天命は定まっています。 劉辯皇女こそ──次の皇帝に即位される身だと!!」

 

王允「────!! し、しかしだな、洛陽の民が蜂起した事も事実! 天の御遣いを称するのならやって見せるがいい! 鎮圧できれば、劉辯皇女の即位、認めて文句を言わず協力してやるわ!!!」

 

一刀「では、言質を頂きました。 劉辯皇女、劉協皇女……お聴きになれましたでしょうか? 貴女方が証人ですから、覚えていて下さい!」

 

劉辯「───!? 是!!」

 

劉協「はい! 確かに!!」

 

こうして、天の御遣いさまは……洛陽の蜂起鎮圧を条件に、私の即位を王允に認めさせた。 王允は、私の皇帝即位を反対する一派の代表。 王允を降せば私の即位を阻む者は居なくなる。 でも……また御遣いさまに御負担が………

 

王允と話が終わると、御遣いさまは私を抱っこしていた事を謝罪して、皆の下に向かわれた。

 

………そういえば、いつ私が目を覚めた事に気付いていたのだろうか?

─────あっ!?

 

わ、私は………何を!?!?

 

私の顔は、首筋まで真っ赤だったと、少々不機嫌な銀糸より指摘された。

 

皆が皆、大変な時期なのに────私は最初に悩んでいた以上に自己嫌悪するハメになった。

 

 

……………口元に笑みを浮かべながら。

 

 

◆◇◆

 

【 再会……そして驚愕の事実 の件 】

 

〖 都城内 練兵場 孫権軍陣営 にて 〗

 

思春「───と言う事でした! これが、北郷と尚書令様とで交わした約の内容でございます!」

 

冥琳「……既に私の思考範囲を越えている。 北郷が……この広大な洛陽の街で……散発的に発生する民衆蜂起を、どう鎮めるのか……全く見当が付かない!」

 

思春「明命には、洛陽の情報を収集させるように手配しました。 直に戻って報告してくれると思います!」

 

冥琳「うむ、分かった。引き続き情報収集を頼む!」

 

思春「………はっ!」

 

冥琳「────さて、お待たせした。 ここに集まって貰った諸侯の名軍師『荀文若』殿、『賈文和』殿だったな? よく当方の頼みを聞き及んで頂き……感謝する!」

 

ねね「ちょーっと待つのですぅ! 何故、ねねの名前が抜けているのです? ねねは、名軍師の枠に入る余地がない、ただの軍師とでも言うのですか!?」

 

詠「あのねぇ……諸侯より一人ずつ軍師が出て居るのに、董卓軍で二人も出したら可笑しいじゃない。 だから、軍師であるボクが……」

 

ねね「何時、何処で、誰が、そんな大事な事を決めやがったのですかっ!?」

 

詠「此処に来る前、アンタが居なかったから恋に承諾を得たのよ。 ねねに出て貰おうと思ったら居ないし、恋に聞いても知らないって言うから……」

 

ねね「恋殿がお腹を空かせていたので、食べる物を探しに行ったのです!」

 

詠「仕方ないから、恋に『ボクが出るから、ねねに伝えておいて』と頼んできたんじゃない!」

 

ねね「恋どのぉ! 聞いておりませんぞぉおおおお───っ!!」

 

冥琳「いや、出来れば頭数は多い方が良い。 今後の事を見据えて置きたい事もあるが………風、稟、星、此方に来てくれ!」

 

「「「 ─────!? 」」」

 

★☆☆

 

桂花「───ア、アンタ達ぃ!?」

 

風「いやぁ~お久し振りでぇすー! 桂花ちゃん! 」

 

稟「………あれから何十年、会わなかったのでしょうかね? 今は、互いに息災で再会できた事を……素直に喜びましょう! 桂花殿!」

 

桂花「ちょ、ちょっと! 記憶があるのなら何で華琳さまの下へ来ないの!? 稟や風が来てくれれば、私の負担が……大分軽くなるのにぃ!!」

 

宝譿「チッチッチッ……甘いぜ、猫耳のネェチャン。 この二人が、曹孟徳の傍に参加し覇道への手助けをしても、あの兄チャンの運命は変わらねぇかも知れねぇぜぇ? もしかすると、今度は人知れず……消える運命になるかも………」

 

桂花「誰が……誰がぁ! あんな悲しみを……二度も味わいたいと思うのよ!? 一刀を愛し、共に過ごした仲間たちが……櫛の歯が抜けるように居なくなり、思い出を語り合う事も出来なくなる日々! あんな悲しくも寂しい事、私や他の誰かにだって……させたくないわ!」

 

宝譿「フッ──だろぉ? だから、コイツら違う道を選んだのさ! 曹孟徳の下では無く『天の御遣い 北郷一刀』の下に付こうとな!」

 

桂花「じゃあ! 何でぇ………そこに仕えているのよ!? 一刀のところと殆ど関係ないじゃない!!」

 

稟「簡単な話を言えば……路銀が心細くなりました。 それと同時に、私達は、今の状況で問われば無名の士。 実力はあっても、付属する名声などありません。 ですから、何らかの名声を携えて、益州へと考えていた訳です!」

 

風「………それにぃ、名声が流布すれば、稟ちゃんや風の噂が陳留へ何時か届くんじゃないかなぁ……と思っていたんですよー?」

 

桂花「…………私の諜報網に、アンタ達の話が引っ掛かるのを気長に待たせる気だったの? 手紙とか使って連絡………ハッ!?」

 

風「……気が付きましたかー? 手紙を出すのって、結構お金が掛かりますし、風も稟ちゃんも、持ち合わせがありませんー」

 

桂花「…………だ、だけど……人が心配して……」

 

風「うふふ……心配してくれるそうですよー?」

 

稟「そうですか……嬉しいですね!」

 

桂花「────!?」

 

風「ついでに言いますとぉ……桂花ちゃんは重臣の身、風たちは客将ですよねー。 下手にやり取りすれば、双方に疑いが掛かってしまうんですよー? だから、安全確実な生存報告が、これだったのですー」

 

桂花「…………この………馬鹿ぁ! 馬鹿ぁ!! 馬鹿ぁああああああっ!!!」

 

風「おぉおおお──っ! 相変わらずツンツンしてますねー? あの頃より全然変わっていなくて、風は大満足ですー!」

 

稟「ふふふ……まさか、こんなに早く会えると……グスン……思っても見なかったのですがね? 冥琳殿、感謝致します!!」

 

★★☆

 

星「──久しいな! 元気そうで何よりだ。 月や恋は元気か? 遠目で翠と蒲公英が居たが、相変わらず騒々しいな。 変わりが無くて良かった!」

 

詠「星!? ア、アンタ、何で孫呉に仕えているの? 少なくとも白蓮に仕えているかと思っていたのに!?」

 

星「私も……初めは主に仕えんと、稟や風と共に益州を目指したのだ。 ところが当の主には、私達の記憶が無いと聞いてな? それに、主に与する(くみする)配下の者共は、敵を無傷で撃退する高潔な武人の集団と聞いた!」

 

詠「ボクも報告で知っているわ。 万の軍勢で攻め寄せる劉焉勢を、謀略、妖術、天の国の機巧を使い、二度に渡り迎撃して壊滅させたとね。 お蔭で益州の成都やら漢中に向かう者が多くて、税の集まりが昨年より遥かに多いわよ 」

 

ねね「れ、恋殿が……ある時、警戒しておりました。 益州に向かう際、恋殿より強い者が居ると……!」

 

星「やはり……益州に隣接する詠達も知っていたか。 こちらは、思春が片目の将に会い、そのお蔭で主と話をしたようだな。 蓮華殿、冥琳殿も……先日の登城で話をされた。 なのに……私は、主が近くに居ても会話を交わす事さえ出来ぬ。 客将の身は……辛い……」

 

詠「………ボクも……話をしたわよ? 月の付き添いだけど……」

 

星「そうか! それで──どうだったのだ!? 主は、主は──私達の事を……本当に覚えていなかったのか!?」

 

詠「ちょ、ちょっと痛いわよ! 」

 

星「す、すまん! どうも……主の事となると……」

 

詠「………一部の記憶だけを語るけどね。 でも、アイツはアイツじゃないわよ?」

 

星「………知っているさ。 思春たちより教えて貰っている。 しかし、あの者は……私の主で間違いない! この我が槍『龍牙』と共に忠誠を誓った主にな!!」

 

詠「星……アンタは、桃香達が人質になったとき、助けに向かわなかったの? 愛紗や鈴々が囚われていたのに、何も動かなかったようだけど?」

 

星「──あの主の顔を見て、全てを任せようと思ったのだ。 前の世で……我が武を過信し、黄巾賊に一人で突っ込み、無様に散りそうな私を救ってくれた主の顔に……重なったのだ。 目の前に死に行く者を、必ず助けようと手を伸ばす主にな………」

 

ねね「冷や冷やものでしたが……何とかなりましたからな~」

 

星「そうか……? その割には、余りにも都合良く道具が揃ったと思わないか? 全部が全部、主が準備したとは言わん。 だが、当たらなくても外れないぐらいの精度で皆が皆で準備したのではないかな?」

 

詠「詮索は無駄よ! まずアイツは、ボク達の知っている北郷一刀じゃない事! 本人曰く『自分は別の世界の北郷一刀だ』と。 だから、考え方はアイツを基準にすると───痛い目を見るわよ! 」

 

ねね「それに、配下の者共の機巧は………正直、ねねの頭脳を持ってしても、どうしようもないですぞ!? あんなに高く、あんなに早く飛ぶ物は、初めて見ましたのです! あれでは、恋殿の攻撃さえも届かない………」

 

星「………私は『あの方』を信じる! 執金吾が叫んでいたではないか! 主の弱点は『命を尊重過ぎる』だと! 主が別の北郷一刀だろうが関係は無い! 私は、あの北郷一刀殿に主の面影を見た! だから、終生の忠義を誓う!!」

 

詠「そう言えば……記憶も蘇るとか言っていたわ。 え~と、于吉とか左慈とか漢女とか……。 確か、白蓮だけはアイツ、普通に覚えていたわね~?」

 

星「─────何だとぉ!? 白蓮殿は、普通の中の普通、きんぐおぶ普通と聞いていたが、とうとう因果率まで超えたというのかぁあああっ!?」

 

ねね「な、何を言ってるのか、さっぱり分からないのですっ!!」

 

星「すまん……余りに驚いたので、主からの受け売りの発言を並べてみた。 天の国だと、このように驚愕の事実を知った際に叫ぶものらしい……」

 

詠「はぁ~。 まぁ……アイツだから仕方ないとこもあるけど、皆が待っているわ。────行きましょう!?」

 

★★★

 

冥琳「久々の再会、楽しんでいただけたかな?」

 

桂花「ええ……そりゃもう……腸が煮えくり返るほどね!」

 

詠「私達の関係を知ってるって事は、つまり周公瑾……貴女も………?」

 

冥琳「星、風、稟……私の真名を預けても……大丈夫か?」

 

星「こちらは大丈夫。 腹を割って話せる間柄になった!」

 

風「問題ないですぅぅぅ………ぐうぅぅぅ!」

 

稟「寝るなぁあああ──っ!!」

 

風「おぉ────っ!!」

 

冥琳「………ならば紹介……いや、時間の無駄だな。 前の世で孫呉の大都督を務めた周公瑾だ。 私の真名『冥琳』を信頼の証に預けさせて貰う! 」

 

詠「既に預けた身だけど、信頼には信頼で返すわ。 姓は賈、名は駆、字は文和……真名は『詠』よ! 改めて預けさせて貰うわ。 宜しく冥琳! それと、魏の陰険軍師、他の皆にもね?」

 

桂花「仕方ないわね。 姓は荀、名は彧、字は文若。 真名は桂花よ! 私の真名も預けるわ冥琳。 そして……星、ねね、ツンツンツン子!」

 

詠「誰がぁぁぁ──ツンツンツン子よっ!? 姓も名も……真名だって預けたじゃない!?」

 

桂花「何よ! 詠から振ってきたんじゃないの! だから陰険軍師らしく、一刀が呼んでた名前で呼んであげたのよ!! ───フン!」

 

風「あぁぁぁ………悲しいですねぇ。 同類も……時の流れで接する機会を失えば……こうも心が荒んでしまうのでしょうかー?」

 

稟「何時も人をからかう風が言っても、説得力の欠片もありませんよ?」

 

冥琳「………先程でも言ったが、私達には時間が無い! いい加減、喧嘩を止めて貰えないだろか?」

 

「「 ────! 」」

 

冥琳「さて、北郷が何をするか分からないが、劉辯皇女を皇帝に即位させるだろう。 それが、私達の知る歴史の認識たからだ! だが、問題は、この後の黄巾の戦いに突入するだろう……」

 

詠「………そうね。 あの大乱が起こり漢王朝が疲弊、それから、あの忌々しい反董卓連合の戦いに継続するんでしょうね………」

 

冥琳「そこでだ。 この場所に諸侯の軍師が集まったのは、千万一隅の機会と見た。 だから、情報と意見交換をしたいと思った次第だ。 それに、孫呉より確認できた事を……伝えなければならないと思ってな?」

 

桂花「………前の世で、互いに奥の手を知り抜いた相手。 下手な攻撃は千日手となり、兵や兵糧の無駄にしかならない。 そんな時に……別の敵から横槍なんて突かれたら、万事休す事になるわね。 ──── 納得したわよ 」

 

ねね「コホン! それなら、まず第一に黄巾の乱を起こす首謀者、張三姉妹を捕獲すればいいのではぁ? 黄巾の戦は漢王朝滅亡の要因の一つ! 早々に被害を抑えられるかもしれませんぞ!?」

 

桂花「甘いわね。 先月、陳留付近を襲撃した賊を捕縛したけど、奴らは違う賊『白波賊』だったわ。 しかし、頭や腕には、既に黄色の布を付けていたのよ。 黄巾の乱は───既に始まっているわ!」

 

星「私達が各地を廻って見てたが、どこにも歌を生業にする三姉妹の姿は無かった。 噂すらも……掴めなかったんだ!」

 

詠「じゃあ……黄巾の乱は……別の奴?」

 

風「可能性はありますよ。 ……それに桂花ちゃんが言っていた白波賊は、風の前の知識だと『黄巾賊』を名乗っていましたからねぇ」

 

稟「だからと言って……天和達が無関係とは限りらないですよ? あの兵を集める才覚は、到底見過ごされるような物では──!」

 

冥琳「ひとまず……張三姉妹の件は諸侯で調査し、見付け次第に保護する事。 それと……この世界には、北郷と敵対する勢力が存在するらしい。 『深海棲艦』と名乗る集団だ。 しかも……強さは北郷配下の者を遥かに凌駕するとの事!」

 

「「「「 ──────!!! 」」」」

 

 

 

 

 

 

---------

――――――――--

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

来週は、仕事が忙しくて……もしかすると二週間後の更新になるかも知れません。 気長に続きを待っていて下さい。

 

新しく購入したスマホが使いづらい。

 

小説を書く方法が、前のやつと違うから………色々と大変。

 

設定やら使えなくなった記号やら。

 

 


 
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