No.793100

九番目の熾天使・外伝 ~短編⑲~

竜神丸さん

幻想郷の番犬 中編3

2015-07-30 17:52:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1574   閲覧ユーザー数:1082

スキマ空間。

 

それは、謎の目玉模様が無数に浮かんでいる不気味な空間…

 

「……」

 

その空間に彼女―――八雲紫は留まっていた。時間がどれだけ経過しようと彼女はただその空間に留まり、ひたすら考え事を続けるばかりだった。

 

(あの男の言葉が真実なら、非常に最悪な状況だわ……あの力(・・・)の前では、幻想郷なんて簡単に滅ぼされると言っても決して過言とは言えない…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に、裕也の身を旅団に置いて良いんでしょうね…?』

 

『少なくとも君と彼、そして幻想郷の平穏は保たれると言って良いだろう』

 

一週間前に繰り広げられた、あの戦いの後。着ていた服がボロボロになっていた事からクライシスの魔法で元通り服を修復して貰う事になった紫は、自身の服が少しずつ直されていくのを見ながら彼に問い続ける。

 

『仮に旅団と敵対するような事になった場合は、幻想郷ごと君や彼を滅ぼす事になっていただろう。早い内に君達と接触が出来て良かった』

 

『よく言うわね……拒否権なんてまるで無いじゃないの。理不尽も良いところだわ』

 

『どれだけそれが理不尽であろうと、時にはその理不尽を貫き通さなければならない時もある。今回の件も、その例外ではない』

 

『そこまでして、あなたは何とも思わないの? 他人の自由を奪っておいて、それが正しい事だとでも思ってるのかしら?』

 

『うむ、間違いなく正しいとは言えないだろう』

 

『へ?』

 

『我々も、このやり方が間違っている事だという自覚はある。だがそれでも結局は誰かがやらなければ、何も守れないまま終わってしまう。たとえ、どのような報いが我々を待ち構えていようとも…』

 

『……』

 

紫は呆気に取られた。目の前にいる男は、自分や旅団の仲間達が何かしら報いを受ける事も承知の上で、こんな事を続けている。そんな彼の目に迷いは微塵も無かった。ただ、一つの覚悟は感じ取れた。

 

『…虚しいわね。あなたを心配してくれる人はいないの?』

 

その問いかけに、クライシスは答えた。

 

『今の私にはいない。そしてそういった者が、今後も私の前に現れる事は無い……それだけは確かだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…色々と、謎だらけな男だったわね」

 

空間内を漂いながら、彼女は思い続ける。今現在、仲間と共に旅を続けている一人の青年の事を。

 

(本当にこれ以外、打開の術は何も無いというの…?)

 

「私は、一体どうすれば良いのかしら? ねぇ、裕也…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その裕也が滞在中の、アスガルズの森…

 

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!! 燃えろ燃えろぉっ!!」

 

「おいおい、逃げてんじゃねぇよ妖精ちゃん達よぉ!!」

 

『『『ッ…!?』』』

 

時空管理局非正規部隊から派遣された魔導師達は、燃え盛る森の中を逃げ惑う動物達や妖精達を火炎魔法で容赦なく焼却して回っていた。鹿や猪の死体がそこら中に転がり、小鳥の巣は呆気なく燃え尽き、火炎魔法を受けた妖精達は光の粒子となって跡形も無く消滅していく。

 

「おいおい、あんまやり過ぎんなよ? 神殿まで燃えたらどうする気だ」

 

「あぁん? 別に良いだろ、どうなったって。こんな辺鄙な森に、そんな遠慮をする必要があるかっての」

 

「…ま、確かになぁ」

 

「「「ギャハハハハハハハ!!」」」

 

魔導師達の心は、歪みに歪み切っていた。彼等の目的は神殿に眠る“森羅の宝玉”のみ。他はどれだけ燃えてしまおうと、どれだけ犠牲になろうと、彼等の知った事ではない。

 

だが…

 

 

 

 

-ザシュウッ!!-

 

 

 

 

「「「―――は?」」」

 

そんな彼等の笑い声は、あっさり途切れる事になった。アサシンブレードを装備したokakaに、その首を切断される形で。

 

「これで、まず三人…」

 

フードで顔を隠しながら行動していたokakaは、更に伸縮自在な流体金属剣を取り出し…

 

「ふん!!」

 

「「みぎゃっ!?」」

 

上空を飛んでいた魔導師二人、その胴体を真っ二つに切断。魔導師二人の死体がそのまま燃え盛る森へと落下していく。

 

「お、おい、何人か死んでるぞ!?」

 

「誰の仕業だ!!」

 

(おっと…)

 

他の魔導師達が集まって来た為、okakaはまだ燃えていない草木の中に素早く身を隠す。集まって来た魔導師達は倒れている魔導師の死体を見て動揺している。

 

(どれ、アイツ等もちゃっちゃと仕留め…)

 

-ドゴォォォォォォン!!-

 

「!」

 

okakaが飛び出す前に、別の人物が上空から落下し、魔導師達を纏めて吹き飛ばした。吹き飛ばされた魔導師達の内、何人かは燃えている木々や草木の中へと突っ込み、何人かは地面に叩きつけられて意識を失う。

 

「へぇ、意外と来るのが早かったな…miri」

 

「ん? あぁ、okakaか。本当に見つけ辛いなテメェは……っと」

 

上空から落下して来た人物―――miriはokakaの存在に気付いた後、“天狗兵”の戦闘服を身に纏ったまま構えていたマチェットを順手から逆手に持ち替え、倒れつつも意識を保っていた魔導師に近付いていく。

 

「ぐ……き、貴様は…」

 

「寝てろ、永遠に……それと」

 

意識のあった魔導師の首を刈り、miriはマチェットの返り血をその場で払う。そのまま二本のナイフを取り出し、別方向から向かって来ていた魔導師二人の眉間に命中させる。

 

「「う…!?」」

 

「おぉ。相変わらず、見事な腕前だな」

 

「はん、褒めてんのかよそりゃ…」

 

「…ヤケに機嫌が悪そうだな。どうしたよ?」

 

「なぁokaka……ここに来る前の、俺が担当していた任務を覚えてるか?」

 

「? 確か管理局の支部を一つ潰す為の潜入工作任務で、アン娘さんと一緒に遂行……あっ」

 

そこまで言ったところで、okakaは察した。それと同時に、miriは拳をワナワナ震わせ始める。

 

「miri、まさか…」

 

「あぁそうだよ……その任務の最中、アン娘の野郎がまたやらかしやがったんだよ!! たかが支部を一つ潰す為だけに何でアイツは機体を持ち込みやがるんだよ!? 意味分かんねぇよ!! 内部に潜入してた俺まで危うく巻き添え喰らいかけるわ、その時広まったコジマ粒子の所為でその世界の生態系がまた狂うわで、こちとら散々な目に遭い続けたんだぞ!! 何がコジマヒャッハーだよ、こっちは全然ヒャッハーじゃねぇんだよ、あのコジマ馬鹿の所為で俺がどんだけ始末書を書かされたと思ってんだマジでふざけてんじゃねぇぞボケゴラァッ!!!」

 

「落ち着けmiri、瞳孔開いてんぞ」

 

倒れている魔導師の顔面をマウントポジションで殴り続けるmiriを、okakaはアン娘のコジマ溺愛ぷりに呆れつつも取り敢えず落ち着かせようとする。ちなみに現在のmiriは戦闘服を纏った状態の為、彼に殴られている魔導師の顔はボコボコにされて酷い事になっていく。

 

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……んで、そっちは今どうなんだよ」

 

「(あ、やっと落ち着いたか)…まぁボチボチだな、例のナンバーズ候補については。今のこの非常事態の所為で調査は中断させられたがな」

 

「チッ…やっぱめんどくせぇ事になってんのな。今度は誰が率いてんのよ?」

 

「データは調べ終えた。リーダーはブルゼルク二等陸尉、率いてる魔導師は五百人ってところだ」

 

「うげ、ブルゼルクかよ。確かあのオッサンって…」

 

「あぁ。ちょっとばかし、面倒な奴が敵として現れたって事だな」

 

「「貴様等、ここで何をしてる!!」」

 

「「おっと」」

 

そこにまた、男性魔導師と女性魔導師の二人が襲い掛かって来た。二人が臨戦態勢に入ったその直後…

 

「ふん!!」

 

「そぉい!!」

 

「キャア!?」

 

「ぶぎゃっ!?」

 

真横から飛び出して来た二百式の居合い斬りで女性魔導師が、miriのように真上から落ちて来た蒼崎の大型ハンマーの一撃で男性魔導師が捻り潰された。

 

「あ、結構可愛い娘ちゃんだ。勿体ない事するなぁ二百式」

 

「ふん、雑魚に興味は無い」

 

「蒼崎と……よぉ、二百式。お前も早かったな」

 

「非正規部隊にまた動きがあったからな……それに、こういった面倒事は長引くと更に面倒だ。さっさと管理局の魔導師共を潰して帰りたい」

 

「あぁ……と言っても俺達は結構楽になれそうだ」

 

「? どういう事だ―――」

 

 

 

 

 

 

-ドガァァァァァァァァァァァァァァンッ!!-

 

「「「「「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

「あぁいう事だ。分かった?」

 

「…あぁ、取り敢えず理解は出来た」

 

別方向では、また複数の魔導師が吹き飛ばされていた。okakaが指差すその光景を見て、二百式は一瞬だけ呆然とするがすぐに理解が追いついた。

 

「okakaが調査中の、例のナンバーズ候補か…」

 

「二百式から見てどうよ? あの感じなら、旅団にとって結構な戦力になってくれそうだぜ」

 

「そんな事までは知らん。候補者の調査任務は俺の管轄外だ」

 

「ありゃ、連れないな」

 

「とにかく、無駄話をしてる時間も惜しい。さっさと分かれて行動するぞ」

 

「「「了解」」」

 

okaka、蒼崎、miri、二百式は一斉に分かれ、再び魔導師部隊の殲滅に移るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェーンバインド」

 

「な、何だ!?」

 

「動けない…!!」

 

「神徳『五穀豊穣ライスシャワー』」

 

「御柱『メテオリックオンバシラ』」

 

「「「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」

 

「おりゃあ!!」

 

「ごふ…!?」

 

裕也達もまた、同じように行動を開始していた。リッカがチェーンバインドで魔導師達を拘束し、そこに早苗のバラ撒くように張った弾幕と、裕也の発生させた巨大な御柱を勢い良く叩き込む。辛うじて二人の攻撃から逃れた魔導師は、ガルムが投げつけた斧で叩き割られ絶命する。

 

「くそ、もうここまで燃やされるとはな」

 

「急いで全滅させよう……アイツ等は絶対に許さない…!!」

 

「気持ちは分かるがガルム、さっき言った事を忘れるなよ?」

 

「…分かってるよ。分かった上で、無理をしない程度にアイツ等を潰す!!」

 

「よく言った、俺達にもそれを手伝わせてくれ」

 

「私も手伝います!!」

 

「この緑豊かな森を燃やそうだなんて、ガルムさんじゃなくても許せませんしね」

 

「…ありがとう、三人共」

 

そんな会話をしながらも、四人は向かって来る魔導師をそれぞれの能力や武器で次々と薙ぎ倒していく。しかしその途中、早苗の真上から何かが飛び掛かって来た。それにいち早く気付いた裕也は、早苗を自身の傍まで素早く抱き寄せる。

 

「早苗!!」

 

「え…きゃあ!?」

 

『フンッ!!』

 

早苗が裕也に抱き寄せられた瞬間、早苗が立っていた地面に大きなクレーターが出来上がった。全身が機械で出来ている人形―――機械兵士が、地面を思いきり殴りつけたからだ。

 

「!? コイツは…」

 

「人……ではありませんね。生体反応が感じられません」

 

「なるほど、機械で出来た兵士か…」

 

『『『『『ハァッ!!』』』』』

 

「おっと!!」

 

更に複数の機械兵士が参戦。一体の機械兵士が両手の指先から弾丸を乱射し、それに続いて他の機械兵士達も一斉掃射を開始し、裕也達はそれを回避しながら機械兵士達に魔力弾を命中させていく。

 

「これだと神殿の宝玉が心配だし、フェンも危ない!! 私は小屋に一度戻るよ!!」

 

「俺も同行しよう。早苗、リッカ、この場は任せても良いか?」

 

「お任せ下さい!!」

 

「この程度であれば、特に問題ありませんよ」

 

「頼んだぞ。ガルム、行こう」

 

「うん、サポートお願い!」

 

裕也とガルムは“森羅の宝玉”の守護とフェンの保護をこなすべく、機械兵士達を無視してその場を後にする。二人の後を追おうとした機械兵士達だったが、そこにリッカの形成した魔力弾の雨が降り注ぎ、機械兵士達を一度に複数破壊する。

 

「あなた達の相手は、私達が務めさせて貰います」

 

「久しぶりな気がしますね。リッカさんとこうしてペアを組むのも」

 

「サポートしますよ。先程は裕也さんに引っ張られなかったら危なかった早苗さん?」

 

「うぐ!? そ、その事は言わないで下さい…!!」

 

『『『『『ヌン…!!』』』』』

 

「おっと、来ましたよ…!!」

 

「さぁ、奇跡の力を思い知りなさい!!」

 

機械兵士達に取り囲まれる中、早苗とリッカは背中合わせになる。彼女になら背中を任せられる。二人の間には、言葉も不要と言えるような信頼が確かに存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、巨大樹の小屋の前…

 

 

 

 

 

 

「ガルルルルァッ!!!」

 

「な、コイツ…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「痛でぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

「ひぃ!? や、やめろ!! 来るな…がふぅ!?」

 

既に戦闘態勢に入っていたらしく、フェンは持ち前のパワーと走力を活かして魔導師達を倒し続けていた。フェンは元々強力な種の熊に分類される為、相手がバリアジャケットを纏った魔導師だろうと、フェンの前ではその魔法による防御は無意味に等しかった。

 

だが…

 

「ふん、だらしない連中め」

 

「!!」

 

大暴れしていたフェンの前に、フードを被ったブルゼルクが姿を現した。フェンが物凄い形相で唸り声を上げている中、ブルゼルクは足元に倒れている魔導師に目を向ける。傷付いていた魔導師は、ブルゼルクの足を掴んで助けを求める。

 

「ゲホ、ゴホ……ブ、ブル…ゼルク、さん…助…けて…下、さ…」

 

-グシャアッ!!-

 

「触れるな、使えないゴミの分際で」

 

ブルゼルクはゴミを見るかのような目を向けたまま、その魔導師の頭を容赦なく踏み潰した。魔導師は頭が果物のようにグシャリと潰れたまま絶命し、ピクリとも動かなくなる。

 

「ふん……のう、そこの熊さんや。随分と面倒なマネをしてくれたようじゃの」

 

「グルルルルルルル…!!」

 

「…そこをどく気は無さそうじゃな」

 

ブルゼルクと対峙し、フェンはより一層警戒を強める。ブルゼルクはやれやれと呟きながら、懐から灰色の水晶玉らしき石―――“竜石(りゅうせき)”を取り出した。

 

「消え失せい、雑魚が」

 

「ッ!!」

 

そして、ブルゼルクの身体が光り出し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 

『『『ガァッ!?』』』

 

「もうこんな所まで機械共が来てんのか…!!」

 

「急ごう、フェンだけじゃかなりキツいかも知れない!!」

 

巨大樹の下まで、大急ぎで駆け抜けていく裕也とガルム。槍のように変化した赤い弾丸で待ち構えていた機械兵士達を纏めて貫いて粉砕し、二人は何とか巨大樹の前まで到着する。

 

「「!!」」

 

その時、二人は見てしまった。

 

巨大樹の前で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ? また妙な連中が来たな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全身ズタボロの状態で倒れているフェンの背中に、ブルゼルクが堂々と座り込んでいる姿を。

 

「アイツ…!?」

 

「ッ…貴様、フェンから離れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「…やれやれ」

 

その光景を見たガルムが猛スピードでブルゼルクに接近し、裕也もすぐにその後を追う。ガルムは構えた斧を何度も振り回し、ブルゼルクはそれをヒラリヒラリと連続でかわし続ける。

 

「この熊はお前さんのペットか? 躾がなっとらんのぉ」

 

「鬼符『怪力乱神』!!」

 

「!? ぬぅ…!!」

 

直後、ブルゼルクは飛んで来た無数の光弾をローブで防ぎ、更に裕也の飛び蹴りを受けて吹き飛ばされる。その間にガルムはフェンの下に駆け寄る。

 

「フェン、しっかりして!! フェン!!」

 

しかし…

 

「…ねぇ、嘘でしょ…? ねぇフェン……起きてよぉ、フェン…!!」

 

「…マジ、かよ…」

 

フェンは呼吸をしていなかった。瞼も、口も、ピクリとも動かない。フェンの命は既に、この世を去ってしまった後だったのだ。涙を流しているガルムがどれだけフェンの身体を揺すっても、フェンがその目を開く事は無い。その様子を後ろで見ていた裕也も、動かないフェンを見て呆然とする事しか出来ない。

 

「そいつは儂の邪魔をした」

 

「!!」

 

先程吹き飛ばされた筈のブルゼルクが、二人の前に再び姿を現す。

 

「儂の目的は“森羅の宝玉”ただ一つ、それさえ手に入ればこんな森に用は無い筈じゃった……が、その熊はどうしても儂の邪魔をしたかったようなのでな。少し手荒い手段を使わせて貰った」

 

「…貴様が…」

 

「?」

 

「…貴様がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「おい、待てガルム!!」

 

フェンを失った怒りか。完全に冷静さを失ったガルムは一瞬でブルゼルクの目の前に接近し、手に持っていた斧を高く振り上げる。裕也が慌てて続く中、ブルゼルクは右手をスッと前に出す。

 

「愚かなガキ共じゃ…」

 

「「!?」」

 

ガルムが振り下ろした斧は、ブルゼルクの右手で白刃取りされた。しかも掴まれた斧はそのままバキバキ音を立てながら握り砕かれ、ガルムと裕也は驚愕の表情を浮かべる。

 

「そんなに死に急ぎたいのならば、面倒を見てやろう…………“魔竜族(まりゅうぞく)”の末裔である、この儂が直々になぁ!!!」

 

「ッ…ガルム、下がれ!!」

 

竜石を取り出したブルゼルクは、全身が光に包まれる。裕也がガルムの首元を掴んで引き戻すと同時にブルゼルクを包んでいた光が収まり、そこには…

 

「ッ……コイツ、人間じゃなかったのか…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――グギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銀色のボディ。

 

 

 

 

 

 

二枚の竜の羽。

 

 

 

 

 

 

長い尻尾。

 

 

 

 

 

 

 

鋭い爪に牙。

 

 

 

 

 

 

巨大な魔竜となったブルゼルクの咆哮が、森全体に大きく響き渡った。

 

「魔砲『ファイナルマスタースパーク』!!!」

 

巨大な魔竜となったブルゼルクを前に裕也はすかさず両手に魔力を集中させ、ブルゼルクに向かっていきなり大技を発動する。しかし発射した巨大光線は、ブルゼルクの身体に命中すると同時に勢いが弱まり、大したダメージも与えられないまま消滅してしまう。

 

「!? 効いてない…!?」

 

『無駄だ……我が魔竜の力は、魔法の力を容易く防ぐ!! そして…』

 

「ッ…くそ!!」

 

裕也はすぐにブルゼルクの身体に拳を叩き込み、そのまま連続パンチを繰り出す。それでも魔竜となったブルゼルクが怯む様子は無かった。

 

『そんな腑抜けた拳で、儂を倒せると思うなぁ!!!』

 

「がはっ!?」

 

「裕也!!」

 

「ぐ、が、ぶふ…!?」

 

ブルゼルクの長い尻尾が、裕也の腹部に叩き込まれる。嗚咽を吐きながら倒れる裕也に、ブルゼルクは何度も尻尾を叩きつけ、彼に連続でダメージを与える。そこへブルゼルクは追い打ちとして、毒々しい紫色のブレスを勢い良く吹きつけた。

 

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』

 

「!? ゲホ、ゴホ……しまった…!!」

 

毒のブレスを真正面から受けてしまった裕也。ブレスの毒の症状なのか、視界がグニャリと歪み、手足の感覚が少しずつ鈍って来るなど、裕也の全身が毒の効果に蝕まれていく。

 

(マズい、視界が鈍って奴が見えない!! おまけに、身体の感覚もおかしくなって―――)

 

『人間なんぞが竜族に対抗するなど……百年どころか、千年早いわぁ!!!』

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「裕也ぁっ!!!」

 

ブルゼルクの尻尾が再び叩きつけられ、上手く動かない裕也の身体が吹き飛ばされる。吹き飛んだ裕也が吹き飛んだ先の木々を次々と薙ぎ倒していき、遂には姿が見えなくなってしまう。

 

『まずは一人……次はお前じゃ、小娘』

 

「ッ!!」

 

ブルゼルクの鋭い目がガルムを見下ろす。見下ろされたガルムは思わずビクッと震えたが、震える身体を何とか立たせ、ブルゼルクに向かってナイフを突きつける。

 

『ほぉ…?』

 

「許、さない……森を荒らした貴様等を……裕也を傷つけた貴様を……フェンを殺した貴様を…!!」

 

『ふん……許さないなら、どうするつもりじゃ?』

 

「…倒す!!!」

 

『!?』

 

ガルムは右太腿に付けていたホルスターから長刀を抜き、高い跳躍力で一気にブルゼルクの眼前まで飛ぶ。これには流石のブルゼルクも驚くき、ガルムが繰り出す攻撃に対する反応が遅れてしまった。

 

『ヌグゥ…!?』

 

(よし、効いてる!!)

 

ブルゼルクの鼻先、そして下顎部分を長刀で斬りつけたガルム。怯んだブルゼルクが後退してズシンズシンと地響きを鳴らす中、ガルムは地面に着地してから再び跳躍し、ブルゼルクの下顎目掛けて斬りかかる。

 

(点滴は石を穿つ……どれだけ硬くても、同じ箇所を何度も攻撃すれば、可能性は見えて来る筈…!!)

 

同じ箇所を何度も攻撃し、その硬い防御を切り裂く。その作戦で攻める事にしたガルムは左手にナイフも構え、二刀流でブルゼルクに攻撃を仕掛ける。ブルゼルクは近付いて来たガルムを薙ぎ払おうと前足を振るうが、ガルムはそれを素早く回避し再びブルゼルクの下顎を×字に切り裂く。その後も彼女はそのヒットアンドアウェイ戦法をひたすら繰り返す。

 

『グォウッ!? この、小癪な…!!』

 

(よし、行ける!!)

 

勝機が見えて来た。ガルムは小さく笑みを浮かべ、ブルゼルクの下顎に長刀とナイフを同時に突き立てる―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『―――残念じゃったな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――事は無かった。

 

「え…?」

 

彼女の突き出した長刀とナイフは、ブルゼルクの下顎に当たったまま貫けてすらいなかった。それどころか、突き立てた二本の刃物の方がバキンと音を立てて折れてしまった。

 

『少し怯んだフリをすれば、人間はそうやって調子づくもの。儂からすれば非常に滑稽じゃな』

 

「そ、そんな…」

 

『ムンッ!!』

 

「ッ…ぶはぁ!?」

 

更にブルゼルクは、至近距離で毒のブレスを放射。ブルゼルクの顔の前まで跳躍していたガルムがそれを避けられる筈も無く、そのまま地面に落下する。

 

『どうじゃ、儂の毒の息吹きは……んむ?』

 

「か、は…ぁ……ッ……く、うぅ…!!」

 

それでも、ガルムは立ち上がった。どれだけ毒で全身が蝕まれようとも、どれだけ身体に力が入らなくとも、彼女は屈しようとしなかった。彼女が見せる目に、ブルゼルクも一瞬だけ気圧されつつも言い放つ。

 

『ッ…まだ立ちよるか。そのしぶとさにおいては、お前さんを認めてやらんでもない…………じゃが小娘よ』

 

「はぁ、はぁ、はぁ…!!」

 

フラフラの状態で折れた長刀を構えるガルムに、ブルゼルクは右前足を振り上げる。

 

『フリとはいえ、さっきから儂の顎ばかりを攻撃しおって……竜の“逆鱗”に触れたら一体どうなるか、お前さんに教えてやらにゃならんようじゃな』

 

「ッ…ぁあ!!」

 

前足が振り下ろされ、ガルムがギリギリ避けると同時に地面が大きく陥没。横に転がったガルムは立ち上がろうとするが、毒の所為で両足に上手く力が入らない。

 

(動け…!! 動け、私の足…!!)

 

『動けないなら、儂が動かしてやろうぞ…!!』

 

「!? うぐぁ、あ…!!」

 

ブルゼルクの尻尾がガルムの胴体に巻きつき、そのまま彼女を絞め上げながら真上に持ち上げる。ただでさえ毒の影響で呼吸困難に陥っているところにこの絞めつけ攻撃だ。既にガルムの身体は限界に迫っていた。

 

『そろそろ、遊びは終わりじゃ』

 

「ッ…!!」

 

尻尾で持ち上げられたガルムの身体が、そのまま宙に放り投げられる。その際に折れた長刀も遂に右手から離れてしまい、そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ガブチィッ!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あ」

 

 

 

 

 

 

毒で手足の感覚が鈍っていたガルムは、その音で気付かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自身の右腕が、ブルゼルクの牙によって噛み千切られている事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私、の……腕…)

 

血飛沫が舞う。

 

左腕、右足、左足も次々と噛み千切られていき、手足を失ったガルムの身体が地面に叩きつけられ、地面に彼女の血が流れて行く。今度は先程と違い、もはや立ち上がろうとする気力すら彼女には残されていなかった。

 

『死ね、小娘』

 

ブルゼルクがガルムを口に咥え、鋭い牙が彼女の胴体にズブリと食い込む。そういった苦痛すらも、ガルムは何も感じ取る事が出来ない。感じ取る事が出来ないほど、彼女の命は灯が消えつつあった。

 

(あぁ…………私、もう……ここで…死んじゃうん、だ…)

 

ガルムの目から涙が零れ、頬の上を流れ落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は何も守れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛する森も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この森に住む妖精達も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相棒として接してきたフェンも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裕也との、結んだばかりの約束も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(裕也…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間前に出会った青年。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼や彼の仲間達と共に過ごした、楽しい時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そればかりが脳内に浮かび上がって来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その思い出も全部、すぐに消え去る事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何せ、自分の命も消えつつあるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二度とあんな無茶はしないでくれ。俺は仲良くなった奴全員、いなくならないで欲しいからさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ごめん、ね……裕也…………私……約、束……守れ……なかった…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな事なら、自分の気持ちを伝えるべきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、もはやそれも無駄な事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、私は最期まで彼を想い続けたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(大好きだよ、裕也―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ズブシャアッ!!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉を噛み千切る音は、無慈悲に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕也さん!? 大丈夫ですか!?」

 

「しっかりして下さい、すぐに回復させます!!」

 

何本もへし折れている木々の中。機械兵士達を全滅させてきた早苗とリッカは倒れている裕也を発見し、リッカが治癒魔法でガルムの傷を回復させていた。そのおかげで彼の体内に回っていた毒も綺麗に消え去り、裕也の身体に再び力が戻ってきた。

 

「ぐ……すまん、二人共。助かった…」

 

「無理しないで下さい!! 一体何があったんですか!?」

 

「俺は……あのジジイの毒にやられて……ッ!! そうだ、ガルムは!? アイツがまだ戦ってるんだ!!」

 

「ちょ、裕也さん!? 回復したばかりなのに無茶は駄目ですってば!?」

 

「あぁもう!? 早苗、追いかけましょう!!」

 

立ち上がった裕也はすぐに巨大樹の下まで駆け抜けていき、早苗とリッカも慌てて彼の後に続く。裕也は焦っていた。自分をここまで圧倒したブルゼルクに、ガルムが一人で挑んでいる。早く合流しないと彼女の命が危険だ。

 

(くそ、迂闊だった!! 力量差を図れなかった俺の責任だ…!!)

 

巨大樹の前まで急いで戻り、裕也はガルムやブルゼルクを探す。しかし周囲には既にブルゼルクの魔竜族としての巨体は見当たらず、ガルムの姿も見えなかった。

 

「ガルム、何処だ!! 返事をしてくれ!!」

 

声を荒げるも、返事は返って来ない。それどころか血の匂いまで嗅ぎ取れてしまった裕也は、脳裏に最悪のビジョンが浮かび上がる。しかし彼はその可能性を認められず、首を振ってそのビジョンを掻き消す。

 

(駄目だ……そんな事はあっちゃ駄目だ!! そんな事、絶対に…!!)

 

血の匂いを辿り、裕也は巨大樹の裏まで移動し、そして彼はようやく彼女(・・)を発見した…

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手足を失い、全身の肉を引き裂かれたまま息絶えている彼女(・・)を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ガル、ム…?」

 

裕也は受け入れられなかった。

 

目の前に映っている、この悲惨過ぎる光景を。

 

先程思い浮かんだ、最悪のビジョンの通りになってしまった事を。

 

「裕也さ…ッ!?」

 

「ッ……う、嘘……そんな…!!」

 

追いついて来た早苗とリッカも、目の前に映った彼女(・・)を見て顔を青ざめ、口元を押さえる。その彼女達が追いついて来た事すらも頭に入らない裕也は、彼女(・・)の前で膝をつく。

 

「…なぁ……どうしたんだよ、ガルム…? 何、こんな所で寝てんだよ…」

 

「え、裕也さん…?」

 

裕也はボソボソと小さい声で、彼女(・・)に語りかけ始める。

 

「さっさと起きろよ……フェンの奴が、お腹空かせて待ってんだぞ…? 俺達だって、まだ朝食を食べてないんだからさ…」

 

「ゆ、裕也さ…」

 

「リッカさん」

 

「あ…」

 

リッカが声をかけようとするが、早苗がそれを制止して首を横に振る。それを見て、リッカも思い留まる。

 

「まだお前を、幻想郷に連れて行ってないじゃないか……俺から紫に頼めば、すぐに幻想郷に連れて行く事が出来るんだぜ…? お前も楽しみにしてただろ…? だからさぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目ぇ覚ましてくれよ……返事をしてくれよ……なぁ…ガルム、ゥ…ッ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ッ……う、ぅぅ…!!」」

 

裕也は涙を抑え切れず、彼の流した涙が彼女(・・)の顔の上へと落ちていく。それでも彼女(・・)は目覚めない。裕也は彼女(・・)を抱きしめ、子供のように大声で泣き始めた。そんな彼に続き、早苗とリッカも同じように涙を流し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等を慰めてくれる者は、その場には誰もいなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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