No.791071

二人の物語~新しい貴女~

雨泉洋悠さん

にこちゃん誕生日記念、2期5話、紅と桜、二人の物語、ここからは構成はフリーダムに。

2015-07-22 01:24:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:794   閲覧ユーザー数:793

   二人の物語~新しい貴女~

              雨泉 洋悠

 

 貴女は私にこれから、どれだけ沢山の、色んな貴女を、見せてくれるのかな。

 そんな貴女に私も、色んな私を見せてあげられているのかな。

 

 昼間のイベントは、大成功で、凛の可愛さも十分にアピールする事が出来たし、それに、何よりもその、何て言うか。

「どうしたのにこちゃん?」

 昼間のその姿を余り変えずに、いつもと違う姿で私の目の前で揺れる。

「なんでもないわよ」

 それは、ふわふわと、流れ落ちた、彼女の赤髪の房。

 真姫ちゃんは、こう言う時の自分の姿に、自覚はあるのかな。

 何て言うかその、いつもは私の中で、可愛い真姫ちゃん。

 そんな気持ちが出て来ないとおかしいんだけど。

 その赤髪を、昼間の形に結んでいる真姫ちゃんの手は、やっぱりとても綺麗で、私が絶対に届かない鍵盤と鍵盤の間を、当たり前のように駆け抜けられるぐらいには、私の手よりもずっと大きい。

「にこちゃん、なんかいつもよりちょっと顔赤いけど?」

 不意にそんな風にその手で、私の頬に触れてくるものだから、突然過ぎて動けなくなる。

 私の温度が、いつもよりも上がっていることが、真姫ちゃんにはきっとバレてしまう。

「にこちゃん、ほっぺたいつもよりちょっと熱いわね、大丈夫?」

 ううん、大丈夫じゃない、今日の真姫ちゃんには私、大丈夫じゃない。

「うん、真姫ちゃんの手は、いつもと同じで温かいね」

 精一杯の勇気でもって、頬に触れる真姫ちゃんの手に、自分の手を重ねる。

 自分の手が、じわじわと温度を上げていくのが解る。

 真姫ちゃんに、いつも以上に早くなってしまった鼓動、自分の手から伝わっちゃわないかな。

 真姫ちゃんは、いつもの様に嬉しそうに笑ってくれるけれども、その表情と彼女が纏う、少しいつもと違う雰囲気に、言葉を飲まれる。

 こんな真姫ちゃんを見ていると、らしくない自分、本来のらしい自分を、無防備に引き出されてしまいそうになる。

「真姫ちゃん、もう寝よっか」

 何とか引き止める、このままで居ると、私きっと、とんでも無い事をしてしまう。

「うん、今日のにこちゃん、ちょっと熱っぽい感じがするから、大人しく寝ましょう」

 そう言って、顔を近づけて来たかと思うと、私の額に、自分の額を重ねる。

 こんな真姫ちゃん、とても皆に見せられない、それ以上にこんな私、とても皆に見せられない。

 目の前にある、真姫ちゃんの顔は優しくて、それでもやっぱり今日の真姫ちゃんは、いつも以上に凛々しかった。

 いつもの様に、二人で布団の中に潜り込むと、真姫ちゃんは直ぐに目を閉じる。

「おやすみなさい、にこちゃん」

 いつもと違う、その赤髪の房が、私の眼の前を、流れ落ちる様に舞う。

 その向こう側に見える、いつもの真姫ちゃんの顔。

 いつもと同じな筈なのに、少しいつもと違う、凛々しく見えてしまう、真姫ちゃんの横顔。

 同時に伝わって来る、彼女の香り。

 ああ、良いな、こんな、いつもと少し違う真姫ちゃんでも、いつもと変わらない、私と同じ香りがする。

 それが何だか、とても嬉しかった。

「ふふっ」

 思わず漏れた声に、真姫ちゃんが目を開けて、こちらを向いて微笑む。

「どうしたの?思い出し笑い?」

 そう言って、私を見つめる瞳が、向けてくれる深い優しさ。

 ああ、もう、ママと一緒に寝ている時みたい。

 こんないつもと違う、格好良い真姫ちゃんに見つめられていると、らしくない私を、見せてしまう。

「あのね、真姫ちゃん。お願いしても良い?」

 今の私、真姫ちゃんの瞳には、どう映っているのかな。

「うん?なあに?」

 真姫ちゃんが、私と二人だけの時にだけ見せてくれる、優しい笑顔を向けてくれる。

 ああ、今日の私のせいで、普段の二人の立場まで影響受けちゃったら、どうしようか。

「あのね、真姫ちゃんに、もっとくっつきたい」

 もう駄目、今しか言えない事、言っちゃった。

 あ、久々に暗がりの中で、真姫ちゃんの顔が赤くなっていくのが、解る。

「にこちゃん……本当に今日のにこちゃんはもう……」

 天井の方を向いて、目を瞑ると、そんな風に、口元を抑えながら、何かを呟いている。

 何だろ、とにかく喜んで貰えている感は伝わる。

「ダメ?」

 やっぱりこう言う時はいつもの如く、追い込んでみるのが良いかな。

 真姫ちゃんは、私の言葉に、天上を向いたまま、大きく首を振る。

「ダメなわけ、無いじゃないの」

 そう言うと真姫ちゃんは、私の顔を、体ごと胸元まで引き寄せてくれる。

 いつもと同じく、私と同じ匂いがする。

 伝わって来る真姫ちゃんの音、ああそっか真姫ちゃんも、今日もドキドキしてくれてたんだ。

 嬉しくなって、ママと寝る時みたいに、真姫ちゃんの身体にしがみついた。

「ありがと、真姫ちゃん」

 私の今の凄く嬉しい気持ち、真姫ちゃんに伝わったかな。

 真姫ちゃんの体温、私よりも高いから、暖かい。

 私は体温低いから、真姫ちゃんの体温奪っちゃうばっかりで、何だか申し訳ないな。

「にこちゃん、明日もまた、一緒に頑張ろうね」

 真姫ちゃん、私の事を抱き締めてくれた。

「うん、また明日。お休みなさい」

 何だか、いつも以上に安心出来てしまって、今日は直ぐに眠れそう。

「お休みなさい、甘えん坊なにこちゃん」

 やっぱり今日みたいな私は、真姫ちゃん以外には、とても見せられない。

 

次回

 

新しい

 


 
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