【 驚愕する華琳 の件 】
〖 洛陽 都城内 大広場 にて 〗
『ブロロロォォォォォォ───!』
*
私の頭上を、神経に障る騒音を靡かせながら………
疾風の如く飛んで行く!!
*
────あれほど、金切り声を上げていた何皇后。
私たちの苦渋の様子を、楽しそうに眺めていた執金吾。
春蘭や他の軍閥の将に、襲い掛かろうとしていた兵士どもが、口を大きく開けて間抜けな顔で、頭上を眺めた!
*
いえ、彼らばかりでは無いわ!
……その様子を眺める私でさえ、他の者が見れば……かなり滑稽な顔をしている事だと思う。 そう、その様に思う自覚があるのだけど……目が、顔が、視線が飛び交う物から離せられない!
空を飛び回る物は……まさに……そのような絡繰りだった。
**
私は……正直……信じて居なかった。
陳留で報告を受けた『飛行物』を……
実際この目で……確認するまでは……!
**
前方に……水車より回転が早く、休まず回り続ける物を。
身体は、大空を凧のように浮かびせながら、風も必要としない。
しかし、その動きは……鳥のように自由に飛び交うほど。
羽に当たる場所には『赤色の大きな丸』『○に☆』等の模様。
推測するに、多分……牙門旗のように重要な意味を持つのだろう。
それらは……それぞれ組んで、左右に別れては、また合流を繰り返す!
自分たちの上空を飛ぶ……未知なる飛行物体。
***
あれが、あれこそが───天の御遣いの力!
しかも……あの力が……ほんの片鱗にしか過ぎないなんて………!
もし、万が一……私たちの敵に回られば……
……私は……いえ、私たちは……勝てるの……かしら?
★☆☆
桂花「華琳さま! 華琳さまぁ!!」ユサユサ!
春蘭「華琳さまッ!!」
華琳「───け、桂花!? 春蘭まで!! 私は……何を?」
桂花「華琳さま、御安心下さい! アレは味方です! ……一刀が呼び寄せた『何か』だと思われます! ですので……どうかお心休まれますように!」
華琳「何故──そのように思うの?」
桂花「はい、空飛ぶ絡繰りは、誰一人攻撃しません! 左右に広がったり集結したりするだけ。 即ち、敵対する者を混乱させる為と思われます。 しかし、今見渡す限りで……混乱しない勢力はあるでしょうか!?」
華琳「………驚いたわね。 私たちと敵対する兵は元より、あの何皇后や執金吾まで唖然としているわ。 寧ろ……諸侯の将たちの方が動揺が少ない。 これじゃ……何皇后側の策謀へ水を刺す結果に……」
桂花「華琳さま! これは、天の御遣い側の策です! 一刀に……何か考えがあって行動したんだ思われます!」
華琳「─────!」
春蘭「あの馬鹿者は……いつもそうだ! 大事な事を隠して、隠して隠しまくって……最後に消えてから……ようやく知らされる! くそぉおッ! 何が別人だ! 行動が全く同じではないか! 私たちを何だと思っている!!」
華琳「………分かったわ。 これが陽動なら、本命の攻撃がどこからか来る。春蘭、混乱した状態を装いながら……隙あらば敵兵より武器を奪取なさい。 桂花は何皇后側を注視、私は全体の様子を確認して各自指示する!」
「「 ───はっ! 」」
華琳「皆にも……気付かれないよう伝えなさい。 上手く流れに乗り、御遣いたちの策に合わせるの。 私たちを虚仮にしてくれた……何皇后と執金吾! 彼の者共へ───目に物見せてあげなさい!」
◆◇◆
【 続く動き の件 】
〖 都城内 大広場 西涼陣営 にて 〗
恋「ご主人さま……すごい……。 ねね、詠、月……しっかりする!」
ねね「ふしゃぁぁぁ──!! っと……れ、恋殿!?」
詠「あ、あぁぁ………恋! はっ! ゆ、月! しっかり!」
月「へぅううう~!!」
恋「月……大丈夫。 恋が……此処にいる!」
月「あ、ありがとうございます。 え、詠ちゃん! あの……天を駆け回る乗り物って………!」
詠「ボ、ボクに聞いても分かんないわよ! ただ、こんな『物』を用意するのは、アイツしか居ないでしょ? 天の御遣いだか何だか知らないけど……ボクたちの常識を超える物は、大概アイツが関係! これは真理よ!」
恋「ご主人さま……心配………」
月「えっ? あっ……詠ちゃん! ご主人さまの姿が──!!」
詠「………ふ~ん、読めたわ。 ねね……時期を見計らい恋と共に高台に向かいなさい! 多分、あの馬鹿……何か仕出かすわ! ここは、華雄と霞に任せていいから!」
ねね「────なるほど! 恋殿!!?」
恋「───行くっ!」ダッ!
ねね「れ、恋殿っ! お待ち下されぇ! まだぁ! まだ早いですぞぉぉぉぉ!!!」
…………
…………
月「………詠ちゃん」
ねね「ふ、ふん! べ、べべ別に心配じゃないわよ! ア、アイツが死んじゃうと月が悲しむと思って。 ほ、ほらっ! ここも、しっかりしなきゃ! ボクたちが傷ついたって………アイツが悲しんだら何もならない───」
月「詠ちゃん………ありがとぉ」
★☆☆
七乃「美羽さま! どうか後ろに御隠れ下さい! 私が前に出ます!」
美羽「………七乃!」
ーー
翠「いやぁ───すげぇよなぁ!? 蒲公英!! ご主人さまの力ってはよ? あ~んな、見た目は鳥に近い格好の物が……あっちこっち飛び回ってるなんて、帰ったら西涼の皆に自慢してやろうぜぇ!?」
蒲公英「お、お姉様! あの変なのが、全部が全部……ご主人さまの仲間から分からないんだよ!? もし、敵の仲間だったらどうするのッッッ!?!?」
翠「大丈夫だって! アイツら飛び交うだけで何もしないじゃないか! もし敵だったら、悠長に飛び回らず、あたしたちへ真っ先に危害を加えるぞ!」
蒲公英「それは……そうなんだけどさぁ…………」
翠「あんまり考え過ぎると、攻撃する時機を失っちまう! ほらっ! あたしに付いて来い! 今が絶好の機会だぁ───ッ!!」
蒲公英「もうっ! お姉様! もう少し様子を周りの様子を見てよ! ほらっほらぁ! 曹操軍だって、まだ動かないんだよ?」
翠「あぁ!? そ、そうだな! だが……この機会を、みすみす逃せば!!」
蒲公英「だけどぉ……今、動いたらね? お姉様……春蘭より脳筋扱いされるの間違いないんだよ?」
翠「な、何ぃぃぃぃッ!? ア、アイツより脳筋……だと?」
蒲公英「うんッ! 脳筋の中の脳筋! 『失禁猪』呼ばわり確実だよ?」
翠「わ、分かった! 曹操軍の様子を見てからにするよ……!!」
蒲公英「……ホッ」
◆◇◆
【 第三次攻撃 開始! の件 】
〖 都城内 大広場 艦娘陣営 にて 〗
━━━━━!
━━━━!
ーーーーーギュュュュ──ッンンン!!
万雷響く───『砲撃音』
初めて見る事になるだろう───『未確認飛行物体』
全く聞いた事も見た事もない『次元の超える兵器』に、動揺する色を隠せない執金吾配下の兵!
だが───この恐怖は、更に深まった!
ーーー
暁「暁の出番ね? 見てなさい!!」
響「さて、やりますか! Ураааааー!」
雷「逃げるなら今のうちだよ!?」
電「───なのです!」
雪風「艦隊をお守りします!!」
ーーー
『第四艦隊 艦旗 暁』を先頭に《水を掛けた手拭い》をそれぞれが持ち、東側より突っ込む!
時代劇を見られた方なら、ご存知だろう。
かの『暴れん坊将○』や『名奉行』が、悪漢に対して行った戦闘術。
水を含ませた手拭いを、一方を掴み、片一方を前方に投げて急に引く! すると『慣性の法則』で手拭いの重みが急に戻れず、相手にダメージを加える──『打撃』!
ーーー
電「あ、当たって下さぁい!」バシィ!
兵「ぶべらぁ───!」ドコッ!
ーー
雷「そんな危ない物、没収するわよ!」シュルルル!
兵「はっ!? あぁ──ッ!」パッ!
ーー
雪風「両方に重しを付けてぇ、足元に照準を定めながら──えぇ~いッ!!」
兵「あ、足が!? 絡ま──」ズデェーン
ーーー
スチュワート「え~と、このTowelの真ん中に石を入れて………」
兵「うおぉおおおーッ!!」
スチュワート「振り回して───ぇ!!」グルッ!
────バッキン!
兵「け、剣の刃が折れた………」
スチュワート「そして、放───」
兵「い、命だけは……お助け下さい!!」
スチュワート「は……?」
ーーー
他にも、手拭いの両端に重しを縛り付け、相手に向かい投げる『投擲』
手拭いの真ん中に石を入れて振り回し、遠心力で勢いを付かせて放つ『射撃』
水を浸した手拭いを、剣に巻き付けて相手の武器を絡み取る『長柄』
濡れた手拭いを、低い屋根等に叩きつけると……摩擦の関係で滑り止めとなり、一時的ながら身体を浮かせて攻撃を避けれる『防御』
ーー
響「この手拭いを両手に巻き付ければ、攻撃力は二倍! そして、回転とジャンプを加えれば──今の私のパワーは十二倍! そうすれば───」
暁「馬鹿ぁ止めなさいッ! 相手が普通に死んじゃうでしょ!?!? 」
響「Господи!!(なんてこった!!)」
ーー
………拳に巻き付けて威力を上げる『格闘』
これらを利用して、第四艦隊は暴れまくった。
★☆☆
天龍「オラオラッ! 怖いかッ! 怖いかッ!!(半分ヤケ)」
ーー
兵「ぬわぁ───!?!?」
兵「「「「 ーーーーーーー!!? 」」」」
ーー
龍田「キャァァァ~天龍ちゃん! 怖ぁ~いぃぃぃww!!」
木曾「おぅ……よくあんな物があったな……」
龍田「こんなこともあろうかと~ね~?」ニコッ!
木曾「んぐぅ……了解だ!!」ゴクリッ!
西側より───頭をパーマ、黒のセーラー服、口を手拭いで覆った『昭和のスケバン姿』の天龍が、一㍍ぐらいの棒を振り回しながら乱入!
一応……第二艦隊艦旗なんだけど………
丈の長いスカートを振り乱し、赤色のスカーフがマブイ(眩しい)……妙に似合う格好に兵たちへ更なる動揺が走る!
服のチョイスも準備も……全てが龍田の仕業。
後に皆が皆、その理由を問い質したが……『こんなこともあろうかと~』の台詞と素敵な笑顔で、煙に巻いて語らなかったという。
ーーー
龍田「さぁて~天龍ちゃんばかりに活躍させちゃうと~涙目で怒鳴られちゃう。 私たちも行きましょう? 操作方法は~分かった?」
木曾「基本はな……。 だが、これは面白いぞ! この一本の棒から、数々の異なる戦闘術が秘められているとは……!」
龍田「でもねぇ~『神武不殺』の武術よ~?」
木曾「そう言っていたな。 つまり………」
龍田「『死なない程度までにしておきなさい』という意味ね~」
木曾「いいぜ! なら……この俺に『殺してくれ』って頼んでくるぐらいの攻撃を与えてやろう!!」
龍田「うふふふ……でも、流血も禁止よぉ~?」
木曾「………分かっているさ!」
ーーー
杖術……『突けば槍 払えば長刀 持てば太刀 杖はかくにも外れざりけり』
と謳われし万能な武術。
持ち手を変えれば、間合いが変わる。
長刀、太刀のように斬る事は出来ないけど、その用法の応用は再現できる。
人に傷を付ける刃を持たないため、捕縛には最適。
そのため、艤装が長刀のようになっている龍田が選んだ物。 姉である天龍が刀の艤装を使うため、共通する物を探した結果でもある。
ーーー
この後、龍田と木曾も加わり……攻撃を開始するのだが、戦闘描写は省略。
余りにも惨くて哀れで……作者が同情した為である。
どういう意味合いかと言うと……この戦いで、龍田と木曾に対峙した者は、その後『宦官』を希望したと言えば……お分かりになるだろう。
ある意味……この兵たちにとっては『サイオー・ホース』と言えるのかも知れないが……
◆◇◆
【 逆転の逆転 の件 】
〖 都城内 大広場 高台 にて 〗
…………
…………
………!
『───ど、どういうワケだ!?』
始め感じたのは《疑問》だった。
『──あの『黒い筒』が報告を受けた物だろうがッ!?』
『──何故、攻撃ができる! いや──破裂したような場所はない! ま、まさか……アレは弾無しで……放てるのか……!!』
次に感じたのは──自分の思惑を外す《困惑》であり
『───例の空を飛び交う者も出て来た! 伏兵の隊は何をしている! このままでは、此方が危なくなるだろうがぁッ!?』
『───な、何だぁ! 窓際に誰も居ないだと!? どういう事だぁ!!?』
それと───《現実》
『──馬鹿なぁ! な、何故……俺の対応策が全部……裏目に出る! それに──あの者共は何だぁぁぁ──!?』
そして、暁や天龍たちの挟撃を受けて《驚愕》を示した。
ーーー
ーーー
一部始終の様子を見ていた楊奉は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
何皇后「………………………」プルプルプルプル
横を見れば……何皇后の顔も赤みが失せ、白い横顔を更に白く際立たせながら、右人差し指の背を口に当て、ワナワナと震えている。
傲慢不遜の塊のような彼女でも、楊奉の不利を理解している様子! このままでは……自分は失脚、楊奉も捕縛される運命になるのだと!
しかし、楊奉は───諦めていなかった。
楊奉「まだだ! まだ……あったではないか! とっておきのがな!!」
自分の思惑が全て外された……そう考えた時、一つだけ切り札が残っていた事を思い出す!
楊奉の近くにあるで縛られて、処刑の準備をされた三人の哀れな恋姫たちを!!
眼下の諸侯を一瞥した後、一刀の顔を見据えた!!
ーーー
楊奉「天の御遣い! これが──貴様の策か!?」
一刀「……俺の立案じゃない! 仲間の軍師が、必死に思案して講じてくれた策だ! 如何にアンタたちが皆に危害を与えるか、如何に防げばいいか……知謀の限りを尽くし、アンタたちの行動を防いでくれたのさ!」
楊奉「すると……その軍師は、余程『無能』とみえる……」
一刀「何だと───!?」
楊奉「俺が用意した策を尽く(ことごとく)潰したのは褒めてやる! ──だが、そいつの策は最後の詰めが甘い! コイツらを人質に取る事を想定していなかったようだぜ!!」
楊奉が広場に向かい大声を上げ、指で指し示す!!
楊奉が指し示すは、人質となった桃香たち三人。
しかも、御丁寧に一人ずつ処刑人を配置している。
楊奉「天の御遣いの軍勢に次ぐ! 二度とは言わん! お前たちが、これ以上……我らに刃向かうのであれば、この将たちを斬首の刑とする!」
ーー
雷「あぁ──ッ! 桃香さんたち!」
暁「───攻撃中止! 中止ぃいいいッ!!」
ーー
天龍「やっぱ、やりやがったな……!」
龍田「油断せずに小休止ね~!」
ーー
金剛「Stop! 空砲、Stopデース!」
榛名「………!」
ーー
翔鶴「全艦載機! 順次着艦せよ! 繰り返す、順次着艦せよ!」
瑞鶴「提督さん………」
ーーー
優勢に進めていた連合艦隊が……攻撃を中止!
一時の休戦に安堵するのは、楊奉の配下の兵士たち! かなり危ないところだった。 傷付いた仲間を引き上げ……城内に送り届けて戻ってくる!
その様子を見届けた楊奉は、鷹揚に頷き一刀に語り掛ける。
ーーー
楊奉「やはりな……! 天の御遣い……お前らの軍は無敵だ! だがな、どんな軍にも弱点がある! 貴様の戦い方は、益州の戦跡を確認して分かった! それは──『命を尊重過ぎる』ことだ!」
一刀「──────!」
楊奉「お前は策を配下に任せて……此処に来たそうだな。 即ち人質ありの報告は、策の準備が整った後に判明した筈! 残念だろう? もっと早く人質の事が報告に上っていれば、こんな不様な状態にならなかったのに!!」
ーーー
桃香「皆……ごめんなさい! ごめんなさい!!」
愛紗「ご主人様……申し訳ありません! 私が、私が付いていながら──!」
鈴々「~~~~~~~~!!」
ーーー
桃香たち三人は……涙を流して悔しがった。 自分たちが居なければ、一刀の足を引っ張らずに済んだのに……と。
一刀は押し黙り、楊奉は高笑いしながら、この様子を眺めている!
一刀「……………………」
楊奉「ふっ、はーっははははっ! あれ程に優勢に展開していた状況が、こうも容易く劣勢になったんだ!! いや、笑えるよ! 最高に愉快だ!!」
一刀「………俺は、如何なる理由があれ、仲間を見捨てない! 最後まで守り抜くと誓っている! どうしても駄目なら……死なば諸共に……だ!」
ーー
桃香「ご主人さまぁー! うぅぅぅぅーッ!!」
愛紗「この関雲長……慙愧に堪えません!!」
鈴々「ごめんなのだ、お兄ちゃーん!」
ーー
楊奉「ほぅ……面白い事を……」
何皇后「楊奉! なんをしいやおるッ! 人質と御遣いの素っ首、遠慮やらなんやらせずとも、サッサと打ち落とすんほな! わらわに刃向かいし輩の末路と知らしめよ!!」
一刀「……………!!」
一刀の言葉に……桃香たちは滂沱の涙を流し後悔をし、楊奉は目を細める。
しかし、何皇后だけは憤激し、一刀と桃香たちの処刑を促す!
色々と煮え湯を飲まされたのだ。 それに、自分の野望を潰した男! 一刻も早く──この世から消したかったのであろう。
だが……この男……楊奉は違った。
楊奉「何皇后さまが……こう仰っている! だがな……俺の考えは少し違う! 天の御遣い──北郷よ! 俺に力を貸せ!! 何皇后さまの下に来い! ならば……この将も諸侯も配下も──全員助けてやる!!」
何皇后「───な、なんを申す!? 楊奉よ!!」
楊奉「恐れながら何皇后さま! この男──『北郷』は途轍もない男でございます! 我が配下の兵の報告に寄れば……数々の奇跡を起こすのは無論の事、諸侯からの慕われ方が、余りに異常すぎます!」
何皇后「どういう………!?」
楊奉「大陸は四方に幅広く、高い山地、広大な河川と起伏に富んだ地形! 無論……移動する場合もかなりの日数が必要になるかと。 しかも、北郷は僅か数ヶ月前に益州入りした天の御遣い! これで……お分かりでしょうか?」
何皇后「…………あっ!」
楊奉「はい……北郷を慕う将が大陸を南北を問わず、しかも官位に限らず多数に存在する事! その理由は、如何なる故か不明です。 ただ、この事実からすれば、北郷を引き入れば……大陸支配もより早く収束する事に!!」
何皇后「し、しかし……何進が………」
楊奉「………それも、北郷を餌にすれば………ククククッ!」
何進「─────!」
劉辯、劉協を守って傍にいた何進は、驚き楊奉に詰め寄る!!
何進「だ、だだ……誰がぁぁぁぁ!!」
楊奉「お前が、北郷に『だ、黙れぇ!!!』……と、このような事で丸め込む事も簡単ですよ?」
何進「─────」チャッ!
楊奉「おっと、俺を殺そうとしても無駄だ! あの『女』がな、教えてくれたのだ。 鬼灯と言ったか? アイツがな………」
何進「───────!」
ーーー ーーーー
一刀の命令で動いた連合艦隊!
艦娘たちが己の持つ力を使い、何皇后側の勢力を迎撃するため動きだした!
後漢朝時代の兵器より、遥かに卓越した兵器、奇抜な策を繰り出し、後一歩のところまで追い込んだ。
しかし、何皇后側には人質となっている桃香たちの存在があった!
何皇后側の楊奉は、人質を楯に取り艦娘たちの攻撃を封じ、逆転に次ぐ逆転に持ち込んだ! しかも……一刀の『力』を看破し、それを利用して大陸支配の礎にしようと目論見、一刀を味方に引き込む為に誘いを掛ける。
このまま……八百い……じゃなく、何皇后側に付くしかない状況に持ち込まれた一刀!
このまま──何皇后側の思惑に、飲み込まれるかと思われたが───
◆◇◆
【 立ち上がる恋姫たち! の件 】
〖 都城内 大広場 にて 〗
桂花「華琳さま! 一刀が! 天の御遣いがッ!!!」
華琳「ちょうどいいわ! ───春蘭、準備は大丈夫?」
春蘭「───はっ! 皆にも武器が行き渡っています!」
華琳「じゃあ……私からの返礼を、執金吾と何皇后に受け取らせるわ!」
春蘭「では、華琳さま!」
華琳「春蘭! 場が整え次第──貴女は御遣いの下へ向かいなさい!」
春蘭「はいっ!!」
★☆☆
一刀の様子を見た曹孟徳は、大音声で全体に呼び掛ける!!
ーーー
華琳「ここに集まる将たちよ! よく聞くがいい! 我ら恩義ある漢王朝が、誤った道に踏み込まんと足を上げている! このまま黙秘していれば、漢王朝は滅び、光武帝の再来を待たねばならぬ時に来ているのだ!」
「「「 ──────!! 」」」
華琳「しかし、見よッ! あの天の御遣いを!!」
「「「 ーーーーーー!! 」」」
華琳「余りの佞臣に因る無様な祀り事に怒りを買い、かのような奇跡を現した! それなのに、我ら漢王朝の臣下が……黙秘して良いものか!? 断じて否、否であろう!! 今こそ、立ち上がるべきだと諸侯に論ずる!!」
「「「 ………………!! 」」」
華琳「佞臣の行動に、恐れ多くも臣下の身でありながら、直言極諫(ちょくげんきょっかん)する事は大罪! だが、このまま看過して、漢王朝に長年仕えし我が祖先に顔向けできるものか!!」
「「「 ───────!!! 」」」
華琳「我は、我の忠臣と共に佞臣を斬り、陛下に祀り事を正すように促す! 貴公たちに志あれば賛同されよ! ただ、反逆の罪は逃れないと思え! 黙って看過するのも良し! されど……祖先はどう思われるか?」
「「「 ───────!!!! 」」」
ーーー
この華琳の演説で、諸侯は立ち上がる!
『天の御遣いが、我々の為に戦った! このまま黙って成り行きを見るしかないのか? 我々は、いつの間に臆病者になってしまったのか?』
『この自分たちの行動が───祖先に顔向けできるのか?』
祖先崇拝は大陸の重要な行事。 毎年、漢王朝内でも重大な祀りとして行われている。
そんな重要な儀式に祀られる祖先に、今の自分たちを見て貰えるか?
そのまま看過して、漢を潰して喜ぶと思うのか?
おかしいと思いませんか? 貴女?
ーーー
ーー
ーーー
そうまで言われて、奮起せぬ者は居ない!
天の御遣いの軍勢が、動けなければ……動かせる軍勢を動かす!
例え……少人数の犠牲を出しても多人数を救う!
それが、曹孟徳としての矜持だったのだ!
ーーー
蓮華「江東の虎の血筋は死なず! 漢王朝や一刀を救うため反撃を開始しましょう!」
冥琳「承知致しました! 先ほどの御遣い達の攻撃で、武器を多数所持する事ができます! これらを使い、我らも戦いを挑む所存!!」
ーー
季衣「流琉、これでさぁ……兄ちゃんが昔言ってた『アレェ~』ができるんじゃないかな? ほら、この布を合わせて伸ばすと……」
流琉「ア、アレェ!? あ……う、うん……いい考えだね。 うん……」
ーー
月「わ、私も………」
詠「そうね! ボクも……この棒を持って戦う!」
ーー
蒲公英「お姉様!」
翠「皆まで言うな。 まったく、その通りだ! 名将『馬援』に連なる者が、黙って居られるわけないだろう! コイツらを守りつつ反撃してやらぁ!!」
ーー
霞「おぅおぅおぅ! むちゃ燃えてきたわぁ! 華雄! どちらが多く倒せるか競争せぇへぇんか!?」
華雄「………この戦いは守備が大事だ! 無闇やたら倒すものではない!」
霞「へいへい………」
★★☆
ねね「恋殿! 今ですぞぉ!」
恋「───コクッ!」
ーーー
思春「明命! お前だけでも行けぇ!!」
明命「───はいっ!」
ーーー
桂花「春蘭! ………一刀の事! お願いッ!!!」
春蘭「───任せておけっ!!」
ーーー
防戦一方だった恋姫たちが、今度は漢王朝のため、北郷一刀のため、動き出した! 自分たちの運命を変えるために────!!
ーーーーーーーーー
ーーーーーーー
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
<(_ _)> 結局……続いてしまいました。
登場人数が多い、会話文が多数と理由を言われると
言い訳もできません……
作者も、早く黄巾賊討伐戦……出したいのですが。
次回こそ、この回を終わりにしたいと思います。
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まだ、続きます。