No.78339

~真・恋姫✝無双 魏after to after~side真桜、沙和

kanadeさん

after to afterの二作品目です。
今回は真桜と沙和です。
でも読んでいただけたら幸いです。
またまたコメントや感想を待ってます。
それではどうぞ!

2009-06-10 23:15:24 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21273   閲覧ユーザー数:15409

 

 ~真・恋姫✝無双 魏after to after~side真桜・沙和

 

 

 

 ――凪と一刀を逢引させてから二日ほど過ぎたある日、真桜と沙和の警備隊の仕事の休憩の合間に二人は凪を交え食事をしながら事情徴収をしていた。

 「んで?あれからどないやってん?」

 「どうしても・・・は、話さなければならないのか?」

 「当たり前なの。沙和たちも凪ちゃんと隊長と一緒に〝でぇと〟したかったのを譲ってあげたんだから~、当然聞く権利くらいあるなの」

 「当然なのかっ!?」

 見るからに狼狽している凪を、シシシシっと悪戯が成功した時の悪ガキのような笑い方をしながら真桜は見ていた。補足ではあるが、今凪が着ている服はいつもの服であり、沙和が見立てたものでもなければ、デートの折に一刀が見立てたものでもない。

 凪に言わせれば、その二着はデートや・・・・・・これは二人が彼女を半泣きにまで追い込んで聞き出した事ではあるが閨を共にするときだけ身に着けるものらしい。

 ――この後、半泣きになった凪を見た一刀によって内容こそ彼には話さなかったが、こっぴどく叱られてしまい、二人は深く反省したそうだ。

 「まあ、細かく話せ言うとるわけとちゃうんやし・・・・・・な?大まかなとこだけでも教えて~な」

 「・・・そう言ったからには、大まかにしか話さんぞ」

 こうして凪の白状タイムが始まった。

 

 その後、三人は割り振られた担当区画の警備に戻ったのだが、仕事中真桜と沙和はずっとボーっとしていたというのは二人の部下の談であった。

 「あかん・・・・・・まだ頭くらくらしとる。刺激が強すぎたわ」

 「沙和もなの~。まさか凪ちゃんがそこまで大胆になってたなんてびっくりなの」

 真桜の部屋で二人は談話していた。

 「そんだけ隊長のこと好きやってんねやろ?こればっかりはしゃあない気ぃするわ」

 そう、凪を一番近くで一番長く一緒にいた二人には、凪の苦悩を誰よりも知っていたのだ。

 だからこそ、先日のデートに二人は加わらなかった。

 一番の友達だから、一番悲しんでいた娘だったから、だからこそ最初に笑ってほしいと願った故のものだった。

 「でもよかったで、ホンマに・・・・・・凪が前みたいに笑うようになったしな」

 「うんなの。やっぱり凪ちゃんを元気にするには、もう沙和たち二人だけじゃ無理なの」

 「せやけど凪はありがとう言うとったで。凪は嘘つけるほど器用な性格してへんからな、あれは凪の本心やゆうことくらいウチにもわかるで」

 「それは、沙和にもわかってるなの」

 成都での一件以来の凪の笑顔には、哀しさが全くと言っていいほどなかった。このことからも、 凪の中で一刀の存在がいかに大きいものだったかがわかるというものだ。

 「せやけど、ウチたちも似たようなもんやったしな」

 「あのときは凪ちゃんが落ち込んでいてくれたおかげで、沙和たちはなんとかなってたの」

 「せやな・・・凪は〝ありがとう〟て言うとったけど、ありがとうはこっちのセリフやもんな。凪に先こされてもうたから、まだ言えてへんけどな」

 二人は顔を見合わせて苦笑するのだった。

 当たり前のことでだが、一刀がいなくなったことで悲しんだのは何も凪だけではなかったのだ。

 それでもどうにかなっていたのは、この二人に関しては落ち込みっぱなしだった凪を元気づけることでどうにか気を紛らわしていたのだ。

 「でも、隊長が戻ってきてくれてよかったで・・・・・・」

 そう言った真桜の声は、微かに震えていた。

 「真桜ちゃん、泣いてるの」

 「そんなん、沙和もやろ。お互い様や」

 二人の頬を涙が伝っていた。

 「アカンなぁ・・・気持ちはめっちゃ嬉しいんやけど、涙が勝手に流れてまうわ」

 「真桜ちゃん・・・」

 「これは、隊長に責任とってもらわんとあかんな」

 いつの間にか涙が止まっていた真桜が目配りで「なっ?」と沙和に聞いていた。それを察した沙和も涙を拭って頷く。

 「ほな、さっそく行動開始や。凪の部屋に行くで」

 「了解なの」

 二人の企みは翌日に実行されるのであった。

 

 

 「隊長、邪魔するで~!」

 「隊長、おはようなの!」

 ノックなし、ここまで元気に言われるとあんまり気にならないのはこの二人だからだろうか。

 そんなことを考えつつも一刀は笑顔で二人を迎えた。

 「おはよう。今日は二人なの?」

 「安心してや。凪にはちゃんと了承済みや」

 「そうなの、だから隊長・・・・・・沙和たちと〝でぇと〟してほしいなの」

 「いいよ」

 一刀の返事は驚くほど即答だった。あまりにも早すぎたために、二人のリアクションが間髪入れたものではなく間のあいたものとなってしまう。

 「早っ!早すぎてリアクション忘れてもうたわ」

 「沙和もびっくりしちゃったなの」

 「ごめん、ごめん。だけどデートのお誘いは自体は構わないよ。自慢の三羽鳥が頑張ってくれてたおかげで、陳情整理がずいぶん楽になったからね。急ぐような案件は今のところないし・・・」

 「やったら!」

 「うん、出かける準備は出来てるんだよね?」

 「もちろんや、いつでも行けるで」

 「それじゃあ、れっつごーなの」

 「うわっととと・・・・・そんなに引っ張らなくても行くからぁぁぁぁぁぁぁ!」

 何をどうやればこんな力が出るのか、一刀は全く抗うこともできずにそのまま二人に連行されていくのであった。

 

 「また出遅れた・・・ふふ、いいわ。機会は今回限りじゃないものね」

 引きつった笑みとかすかな怒りが滲み出る声をこぼす人物が、三人が去った廊下を見つめていた。

 ――曹孟徳、華琳だった。

 ちなみにこの日、華琳を見かけた兵士や女官が悉く彼女と目を合わせることをを避けたという。

 「今日の華琳様は一騎当千の、まさしく覇王のお顔だった」

 とは春蘭の談である。

 

 

 「ほら、一刀置いてくで~」

 「一刀さん次はあっちのお店に行くなの~」

 この時点で既に一刀は大量の荷物を持たされていた。ほとんどが一刀の奢りである。

 (出かけ始めより財布がずっと軽いよ・・・・・・中身がズッシリだったあのころが懐かしい)

 今更ではあるが、二人とも一刀のことを〝隊長〟ではなく、名前の方で呼んでいた。何でも、いい機会だから名前で呼びたかったらだそうだ。

 ――ちなみに、この件に関しては凪も同じ理由らしい。

 泣いたところで、新しい親元(お店)に羽ばたいて行った鳥(お金)は巣(財布)に帰って来る筈もなく、一刀は三人でのデートを楽しみながらもとほほという顔をしていた。

 (でも、まあいいか)

 そう、決して悪い気分ではなかった。

 こんな風に真桜と沙和に引っ張り廻されて、後ろから凪が困った顔をして付いてきて、生憎と今日は凪がいないが、それでも一刀の心の中には三羽鳥と一緒に見回りをしていたころの思い出がよみがえっていた。

 

 「ふぅ・・・やっと昼か」

 「なんや一刀、もうへばったんか?だらしないで」

 「こんなに可愛い女の子と一緒に〝でぇと〟してるのに疲れた顔するなんてカッコ悪いなの」

 「いや、疲れるだろ・・・・・・一体何十件廻ったと思ってんだ?あんだけ回って途中休憩なしって、そりゃ疲れもするよ」

 廻った先々で買い物をするものだか必然的に荷物は増え、一刀に掛かる重量もまた増加の一途をたどる。

 「せやからこうして休んどるやん。おまけに昼は奢る言うとんのやから、もうちょい嬉しそうな顔せんとあかんで」

 「それくらいしてくれないと割に合わない・・・・・・・沙和さん?我先に注文しようとしてはいけませんよー」

 「奢ってもらってる分際で生意気なの」

 「奢ってんのは真桜だろうに・・・・・・」

 「まぁええやん、一刀もそろそろ何か頼んどき。ウチはいつものでええし」

 「そっか。じゃあ頼むとしようか」

 それから程なくして料理が運ばれ、三人の昼食タイムが始まった。

 

 「ふー、結構食べたで」

 「お腹がもうパンパンなの」

 「食後に、あれだけ甘点心食べればそうなるさ」

 腹八分目で控えた一刀はお茶を啜りながら苦笑する。

 ふと、そこで聞きなれた声が一刀の耳に入ってきた。

 「ここなのか?凪」

 「はい、ここでしたら春蘭様にも秋蘭様にも満足してもらえるかと・・・・・・って真桜、沙和?それに一刀様も」

 「おおっ!北郷ではないか!」

 「お前達も食事か?」

 「やあ、めずらしい組み合わせだね。で、秋蘭の質問だけど、ついさっき食べ終わったところさ。今は食後の一服中かな?」

 店に入ってきたのは春蘭、秋蘭、凪だった。

 三人は隣の席に着くと、一通り採譜を見たあとにすぐに注文した。ちなみに凪は例によって唐辛子びたびたコースである。

 夏侯姉妹が好奇心に負けないか心配になった三人だった。

 「それで?このめずらしい組み合わせだけど・・・」

 「ああ・・・実はな、凪に頼まれたのだ。『誠に申し訳ないのですが真桜と沙和に暇をあげたいので、今日だけでいいので警備を手伝ってもらえませんでしょうか?』とな」

 「うむ、私も秋蘭も特に急ぐことはなかったのでな。面白そうだったから引き受けたのだ」

 「私からお願いしたことですので、お礼も兼ねてこうしてお昼を御馳走しようと思いまして・・・」

 と、今回の真桜と沙和の抜けた穴をふさいでもらっていたのだ。

 「なんだ、そうだったのか。別の機会でもよかったのに」

 「まあ、そうやってんけど」

 「凪ちゃんに相談したら『私が何とかしよう』て言ってくれたなの」

 一応とはいえ、疑うことに罪悪感を持ちつつ、一刀が凪に確認を取ると首肯でそれに応えてくれた。そして、三人は凪たちに頭を下げて礼を言った。

 ――凪(ちゃん)、春蘭(様)、秋蘭(様)、ありがとう(なの)

と。

 

 「それじゃあ、俺たちは行くけど・・・・・・大丈夫?二人とも」

 心配の声は口元を押さえて震えている夏侯姉妹に向けられていた。

 「にゃにゃにゃんてことはにゃいのりゃ」

 「うむ、心配は・・・ない。もう少しすれば治るだろう」

 二人の震えの原因、それは――。

 「も、申し訳ありません。私がお勧めしたばかりに」

 あたふたと水を差し出す凪がいた。もう、お気付きだろう。

 そう、この二人は好奇心に負け、凪の食す〝唐辛子びたびた〟料理を口にしてしまったのだ。

 そして結果としてこうなってしまったわけである。

 ――ご愁傷様・・・春蘭(様)、秋蘭(様)。

 三人の心が一つとなった瞬間だった。・・・・・・ちなみに、二人が口にしたのは辣子鶏。

 本当にご愁傷様。

 「それじゃあ凪、あとよろしくな」

 「あ、はい。一刀様達もごゆっくり」

 「ありがとう、今度メシ奢るで」

 「沙和もとっておきの甘点心奢っちゃうなの」

 こうして、一刀達三人は店を後にしたのだった。

 

 ――その後、店を後にするまでの間、春蘭も秋蘭も味覚が麻痺して自分の頼んだ料理の味が分からなかったという。

 

 

 「・・・で?次はどこに行くんだ?」

 「ウチの秘密工房や」

 「なの」

 秘密じゃなかったのかと心の中で思ったが、あえて口にしてツッコミを入れるようなまねはしなかった。そんなことをすれば、話が脱線してしまうのを思い出したからである。

 「一刀、心配せんでも大将の許可はちゃんととってあるで」

 「ふっふっふー、真桜ちゃんにぬかりはなしなの」

 「そっか、でも何で秘密なんだ?」

 「それはな、城の方の工房は三国に役立つもんとか作ってんねやけど・・・三国から技術指南を頼まれたりするようになってもうたから、大将とかウチとか・・・まぁ魏の面々の個人的なカラクリ作るんに新しい工房が必要になってな、大将に相談して別の場所に新しく作ったちゅーわけや」

 「ああ、なるほど」

 〝個人的なカラクリ〟の響きの時点で納得である。

 代表格〝お菊ちゃん〟は他の二国の面々の前では確かに作れない。

 ――よくぞ秘密工房を承諾した。華琳!

 

 時を同じくして。

 「気のせいかしら?今、一刀に褒められた気がしたわ」

 と、華琳が感じたとか何とか。

 

 場所を戻して三人が到着したるは真桜印の秘密工房。

 場所はもちろん非公開である。

 「へぇ・・・結構広いな。でも蒸気とかはどこに逃がしてるんだ?」

 「それやったら、いつぞや入り口を潰した洞窟や」

 「ああ、なるほど。あそこに逃がしてるんだったら、確かに表に煙とかは出ないわな」

 「そういうことや。ちなみに魏の主な面子はみんな知ってるで。滅多なことで来たりせえへんけどな」

 「この場所作るのは、結構大変だったの」

 この秘密工房、洞窟を利用しているのもあるのだが、思いのほか広い造りになっていて、これを秘密裏に造っていたというのだから感心してしまう。

 恐らくは三羽鳥だけでこれを築き上げたのだろうから、もはや脱帽の域である。

 「どっかの誰かさんがいなくなったおかげで、気晴らしにもなったなの」

 「・・・・・・」

 一刀は何も言えない。

 どっかの誰かさんが、言わずもがな自分のことだからだ。

 ここから、三羽鳥の秘密工房建造秘話が始まった。

 

 

 ――一刀がおらんようになってから、うちら北郷隊はひどい有様やった。特に凪の酷さは半端なかったで。

 ――そうなの。一刀さんはもう知ってると思うけど、凪ちゃんは何度も死のうとしていたの・・・沙和たちはそれを食い止めたりするのに必死だったから何とか気が紛らわせることができていたの。

 でもやっぱりそれでも一刀さんがいないのは辛かったの。

 ――せや、せやから・・・ウチが大将に掛け合って秘密工房建造の許可をもろうたんや。

 三羽鳥だけでつくるゆう条件でな。

 「でも、なんで三人だけでなんだ?」

 「そんなん、三人だけで造れば時間がかかるやろ?そんだけ気ぃ紛らわせることが出来るっちゅう訳や」

 「そういうことなの」

 ――話もどすで。

 工房建造にあたって、一番苦労したんは資材調達やな。あくまで秘密裏やったし、おおっぴらに協力頼めるわけないし、初めから三人で作る言うてもうたしな・・・まぁとにかく難儀したわけや。

 で、や。最初に言うたけど凪の無気力っぷりは桁違いやった。せやから戦力外やってんけど、ほっといたら何しでかすかわかったもんやないし、まぁとにかく色々小さい仕事を手伝ってもろうたんよ。

 「そっか・・・・・・凪がああして元気でいられたのは二人のおかげってわけだ。ありがとう、真桜、沙和」

 「何言うとるんや。あないに楽しそうな顔した凪を見るんは、それこそ三年振りや」

 「真桜ちゃんの言う通りなの。ホントに一刀さんは鈍感野郎なの」

 「ごめんなさい」

 ――それじゃあ今度は沙和が話すの。

 真桜ちゃんの工房造りが順調に進んでた時なの。五胡が攻めてきて大変だったのー。

 あの時の凪ちゃんには後退って言葉がなかったの・・・死に場所を求めるみたいに突き進んで連携とか言ってる場合じゃなかったの。

 ――ウチ等が駆け付けた時の凪な、鬼かなんかと間違えそうな感じやってん。

 血まみれで敵兵の首級上げて佇む凪にウチ等は何にも言えへんかった。

 でも。

 『私は・・・いつになったら死ねるのだろうな』

 凪がそう言うた時、ウチは周りにおった五胡兵のこととか頭から吹っ飛んでもうた。

  ただ、感情任せに凪のことどついとった。沙和もびっくりしとったもんな。

 ――そうなの、そのあとすぐに呆然としていた凪ちゃんを引っ張って撤退しようとしてたけど遅かったの。その時にはいっぱいの五胡兵に囲まれちゃってたの。

 ――でもな、ここでホンマに天の助けが来てん。

 呉と蜀が助けに来てくれたんや。

 ま、こっから先の事は凪に聞いてるやろから・・・ま、省くで。

 ちなみに工房が完成したんは五胡との戦が終わって半年くらい経ってからやな。

 

 そうして、真桜と沙和の語る〝秘密工房建造秘話〟は締めくくられた。

 

 

 語り終わって程なくして、二人がキスをしてきた。

 それは・・・両頬に、そっと触れるような優しいキスだった。

 「一刀、ウチ等の事・・・愛してや」

 「一刀さんが欲しい・・・なの」

 「確かにこの前は凪に譲ったで。せやけどな、北郷隊におる鳥は一羽やないねん。三羽おるんやで・・・」

 「真桜ちゃんの言う通りなの・・・・・・」

 そう言って寄り添ってきた二人を一刀はしっかりと抱きしめた。二人の温かさを確かめるように、決して逃がしてしまわないように。

 「んむ・・・・愛してるで一刀」

 「・・・はむ・・・・・・大好きなの、一刀さん」

 「俺もだよ。真桜、沙和」

 三人の時間は温もりを無くすことなく流れた。

 

 「・・・・・・で、これは一体どういうことなのかな?」

 後始末を終え、いろんな気持ちよく解散した筈だ。

 にもかかわらず目の前には先ほどはいなかった凪も加わっているではないか。

 北郷隊の三羽鳥が揃いぶみである。

 「いやな、これで三人が愛してもらったわけやから、今度は三人でいってみよかって凪に言うてみたら即答したもんやからこうして来たっちゅう訳で・・・な?」

 「そうなの」

 「今度は我々を愛して下さい、一刀様」

 一刀は断ることなく三人を寝台に招く。こうして北郷隊の夜は更けるのであった。

 

 

~epilogue~

 

 

 「いやぁ、ウチに子供ができるなんて・・・・・・」

 「なんや?おかん、新しいカラクリできたんか?」

 「いやいやいや、なんでもないで。・・・・・・っと、できたで禎」

 「おおきに!見といてや、おかんやおとんより高く飛ばしたるからな!」

 河原で遊んでいた我が娘に竹で作った玩具――竹トンボを手渡す。

 子供ながらの元気な声で他の二人の娘の元に駆けて行った。

 「ふぅ・・・何言うてんねやろ」

 「真桜ちゃん、迂闊なの」

 ゴマ団子を頬張りながら沙和が、痛いツッコミを入れてきたので思わずたじろぐ真桜。

 しかし、そこで河原で遊んでいた娘が一人足りないことに気付いた。

 「おーい!・・・圭!禎!」

 「せっかく飛ぶようになっとったのに・・・一体何や、おかん」

 「鎮はどこや?」

 「圭が知ってるのー」

 と、沙和の娘である圭が手を上げて元気いっぱいに答えた。

 「お花をもって、お父様と凪お母様のとこに行ったの」

 それに納得して安心したのか、真桜と沙和は顔を見合せて安堵の溜息をついた。

 「それやったら、凪も一刀もじきに来るやろ。沙~和、ゴマ団子食べんの一端中止して飯の準備でもしよか?」

 「おっけーなの~!!」

 それからすぐに凪の娘・鎮が戻ってきて、ほどなく一刀と凪がそろって顔を見せた。

 父親の元に駆けつける娘の姿に幸せを覚える凪、真桜、沙和。

 「おとん、見といてや。ウチな、コツ掴んでん!おとんより竹トンボを高く飛ばしたるからな!」

 「おう、負けないからな~」

 「圭も飛ばすの~」

 「ず、ずるいぞ。私も負けないからな」

 

 「ええ光景やな」

 「幸せそうなの」

 「ああ、本当に・・・・・・。だが、私たちも幸せじゃないか」

 「せやな」

 「そうなの」

 かつては、夫の部下として、そして今は母としての顔で父と娘のふれあいを見守る。

 三人は夫に・・・一刀に出会えたことを、再び巡り合わせてくれたことに心から感謝していた。

 「かーずと!」「一刀さ~ん!」「一刀様!」

 少し離れたところで娘たちと遊んでいた一刀が「な~に~?」と返してきたので、三人は声を揃えて。

 「「「愛してます!」」」

 娘の前で顔を真っ赤にする一刀の姿に思わず笑ってしまった。

 

 ――穏やかな時間が流れる。

 とても大切な、温かく優しい時間。

 

 蒼い空はどこまでも限りなく広がっている。

 

 三羽の鳥は最愛の夫と最愛の娘と共に、この蒼空を羽ばたいていた。

 

 

~あとがき~

 

 ~真・恋姫✝無双 魏after to afte~side真桜、沙和

 After to afterシリーズ二作品目となります今回のお話。

 え~・・・真桜と沙和メインのお話なハズなのに凪が地味に出番が多いです。

 なんでこうなったんだろう?

 答えとしては・・・やっぱり三羽鳥として〆たかった結果です。

 話を作っていく内に、これは凪も出すべきだと思いこうした次第なのです。

 さて、epilogueで娘たちが使っているおもちゃですが、竹が多い国という偏見から竹トンボにしてみましたが・・・。

 自分の中ではいい感じだと思っていますが、如何だったでしょう?

 竹トンボのアイデアを真桜に持ちかけたのはもちろん一刀です。

 元いた世界で祖父に作り方を教わったということにしております。

 

 この辺で次回作のお話を・・・。

 次にスポットライトを当てる人物はある程度決まっているのですが、どんなお話にしようか思案しております。

 なので、誰のお話になるのか?

 といった感じで期待していただけたら嬉しいです。

 それでは次の作品でお会いしましょう。

 Kanadeでした。

 


 
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