No.78154

恋姫無双 袁術ルート 第九話 終劇

こんばんわファンネルです。

・・・・・・もっと長い、50キロバイトは書いたかもしれない。

題名は最終回っぽいですがまだまだ続きます。

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2009-06-09 20:23:22 投稿 / 全19ページ    総閲覧数:34175   閲覧ユーザー数:23986

第九話 終劇

 

 

「では聞こう、お前の策とやらを。」

 

ここからだ。ここからが本番だ。ここで冥琳たちを納得させられなかったら天和たちは・・・・・

 

「その前に、みんなに確認してもらいたいことがある。なぜに黄巾党は反乱をおこしたのか・・・・・・・・ということに。」

 

慎重に事を運ばなければ冥琳たちを納得させるのは難しい・・・・・・慎重に慎重に

 

「そんな事を聞いてどうするのだ?北郷よ。」

「とても重要なことだ。何せ彼らの行動理由さえわかれば説得するのは簡単だから。」

「・・・・・・・ふむ。彼らの行動理由か・・・・・・・おそらく・・・・・というか間違いなく朝廷に不満を持ったからなのだろう。」

 

冥琳の言っていることは正しい。史実でも朝廷に不満を持った民たちの暴走が黄巾党の乱なのだから。・・・・・・・・・だが、問題はそれじゃない。

 

「冥琳の言っていることは正しいよ。民たちは朝廷に不満を持っていた。行動理由としては間違いないと思う。だけど問題はそこじゃないんだ。」

「・・・・・・・・・というと?」

「なぜ、彼女たちが首謀者として崇められているのか、そしてなぜ彼らは彼女たちに従っているのかという点だよ。」

 

俺の言いたいことは冥琳たちに伝わった。なんせ天和たちには朝廷に対して不満はない。ただ歌を歌っているだけなのだから。

 

「・・・・・・・・・・やつらの歌に希望を見出したからなのか?」

「そうだ。捕虜を尋問してもみんな同じ事を言った。彼女たちの歌を聞くと希望がわいてくる、と」

「ああ、そういえば、あの子たちの歌ってなぜか勇気が出てくるのよね~。」

 

雪蓮が話を結んだ。

 

「奴らの行動理由は分かった。そろそろ話を戻してもらおう。」

「そうだね。じゃあ、話を戻すよ。」

 

 

「結論から言うと、彼女たちに会うことは可能だ。その上で説得を試みる。」

「どうやってあいつらに会うのだ?雪蓮が言ったとおり不審者扱いで殺されるぞ。」

「これを使う。」

「・・・・・・・これは?」

 

俺は冥琳たちに彼女たちのサインを見せた。

 

「これはサインと言って、彼女たちの名前が書かれた物だよ。」

「・・・・・・・こんな紙切れがいったい何の役に立つのだ?」

「これはただの紙切れじゃない。俺たちには関係ないけど、おそらく黄巾党の奴らにとってはものすごい影響力を持っている。」

「・・・・・・こんなものがか?ただ名前が書いてあるだけだろう。」

「サインを甘く見ちゃいけない。たとえば冥琳が帝の名前付きの勅命書をもらったら、ただの紙切れなんて割り切れないだろ?そういうものなんだよ。」

「・・・・・・・・・信じられんな・・・」

「なら試してみるといい。」

 

そうやって俺は冥琳にサインを渡し、捕虜の尋問をしてみろと言った。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・

 

・・・・・

 

 

半刻がたって冥琳は戻ってきた。

 

「にわかに信じられなかったが、お前の言っていることは本当だった・・・・・・・・すさまじい威力だな、これは。今まで口を開けなかった奴らもこれを見せるだけでおとなしく言うことを聞いた。」

「信じてくれたんだね。これがあれば天和たちに会うのも不可能じゃない。」

 

一段階目は成功だ。でも問題はたくさんある。

 

「確かにこれがすべての黄巾党の奴らに有効なら、彼女たちに会うのは不可能ではないだろう。・・・・・・・・しかし、根本的な解決になっていないぞ。」

「・・・・・・・・・・彼女たちに会っても説得は難しい・・・・・・・そう言いたいんでしょ。」

「そうだ。彼女たち・・・・いや、黄巾党の連中を納得させるにはこれだけじゃ足りない。」

 

冥琳はズバズバ痛いところを突いてくる。その通りなのだ。おそらく天和たちは快く俺たちに下ってくれるだろう。しかし、黄巾党の連中はきっとそれを認めない。いや、もしかしたら変に誤解してますます手のつけられない存在になるかも。・・・・・でも

 

「彼らの行動理由を思い返してほしい。」

「行動理由だと。」

「そうだ。彼らは歌で希望を見出し、そして反乱なんて行動を起こした。」

「・・・・・・・・・何が言いたいのだ?」

 

腹の探り合いでこの人に勝てるわけがない。ここは単刀直入に・・・

 

「じゃあ、単刀直入に言うよ。つまりこの策は・・・・・・・」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・

 

 

 

数日後・・・・・・・

 

「建業よ、私は帰ってきた!」

「そうですね、蓮華さま。ようやく帰ってこれましたね。」

 

蓮華という少女はソ●モンの悪夢のようなセリフを吐いたが、御供の方は何にも突っ込まない。

 

「姉さまは袁術の客将になったみたいだけど、この時期に私たちを呼び出すってことは独立する時期が近いてことね。」

「そうかもしれません。ここももうすぐ取り戻すこともできましょう。」

「思春、その時は頑張って、私たちを助けてね。」

「はっ!」

 

思春という少女と共に蓮華は建業の街へと足を運んだ。

 

「それにしてもずいぶんと賑わっているわね。本当に袁術が治めているのかしら?」

「はい。他の人間に聞いてみたところ、天の御遣いなる者が悪政を繰り返していた袁術を諌め、この近隣の街を助けた。という話でした。」

「何者なのだろうか、その天の御遣いという奴は。」

「分かりませぬが、袁術の側近になっているようです。今から袁術に挨拶に行くのですからもしかしたら会えるかもしれませんね。」

「そうね。もし、孫呉の脅威になるのだったらその時は・・・・・・・分かっているわね、思春。」

「はっ!」

 

その時、後ろから馬車がものすごいスピードで彼女たちの脇を通過した。

 

「きゃあ!!」

 

彼女は、飛ばされそうになり、バランスを崩し地面に倒れ込んだ。

 

「大丈夫ですか、蓮華さま!・・・・・・おのれ!」

「大丈夫よ思春。脇を見ながら歩いていた私にも責任はあるわ。・・・・・・痛!」

「蓮華さま!」

 

彼女の膝からは赤い液体が流れていた。おそらく、先ほど倒れた時にすりむいたのだろう。

 

「あの・・・・・・・大丈夫ですか?」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・

 

 

 

一刀side

 

一刀は普段、美羽の御守りだけをしているわけではない。時々、市に出て警邏の仕事をしたりする。悪人が出てきたら対処は出来ないけど、街の様子や困っている人を探すのにはちょうどいいからだ。

 

(さて、冥琳たちの説得は成功した。あとはもうすぐ来るであろう、雪蓮の妹たちを説得するだけなんだけど・・・・・)

 

「確か今日あたりだったな・・・・・」

 

どうやって説得しようかな、と考えているときに前からものすごい速さで馬が走ってきた。その前を歩いている女の子たちは気づいていない。

 

(危ない!)

 

馬は彼女たちの脇を通り過ぎたが、一人の女の子は地面に倒れてしまった。

 

「あの、・・・・・・大丈夫ですか?」

「ん?なんだ、お前は?」

 

俺を知らないってことはこの街の人間じゃないな。天の御遣いなんて言ったらなんか面倒なことになりそうだから警邏隊でいいか・・・・・・

 

「この街の警邏隊のものです。この先に医者がいますので案内しますよ。化膿したら大変ですし・・・・」

「助かる。蓮華さま、歩けますか?」

「あ、ああ、だいじょう・・・・・痛!」

「蓮華さま!」

 

結構ひどそうだ。さっきから血が止まらないし・・・・・よし!

 

「俺が運びますよ。掴まってください。よっと!」

「・・・・え?ちょ、きゃあ!」

 

俺は彼女は抱えて抱き上げた。いわゆるお姫様だっこだ。ふつうは恥ずかしいんだけど緊急事態ってことで許してね。

 

「ちょ、ちょっとあなた・・・・・」

「歩けないんだから仕方ないでしょ。あまり暴れないでもらえる?」

「うっ!わ、分かったわ。」

 

そうやって女の子は少し落ち着いた。でも後ろにいる子からはなぜか殺気を感じる・・・・なぜ?

そうやって、彼女を医者に見せ、治療させた。

 

「大したことがなくてよかったよ。じゃあ、俺は仕事に戻るから。」

 

そうやって俺はその場を後にした。まだ仕事が残っているからな。

 

(それにしても彼女の名前ってどっかで聞いたことあるような・・・・・・ま、いっか。)

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・・・・・

 

 

・・・・

 

蓮華side

 

「全く、蓮華さまに対して何と無礼な・・・・・しかし、なかなか思いやりのある男でしたな。」

「そうね。袁術の部下にもあんなのがいるなんて思ってもみなかった。」

 

蓮華は顔を少し赤めていた。あのように異性に抱かれたのは父親以外にいないからだ。

 

「もう、平気よ。痛みも和らいだし、そろそろ行きましょうか。」

「はっ!分かりました。」

 

城についた蓮華たちは袁術に挨拶に行った。謁見の間には袁術と彼女の姉、雪蓮がいた。

 

「お姉さま!」

「久しぶりね、蓮華。元気にしていた?」

「はい!お姉さまもお変わりないようで何よりです。」

 

久しぶりの兄弟の再会である。美羽も空気を読んで黙って・・・・・・くれなかった。

 

「おお、お主が雪蓮の妹の孫権じゃな?」

「な、貴様!何ゆえお姉さまの真名を口にするか!?」

「ひえ!・・・・・な、なぜじゃ・・・・・?」

 

蓮華の声に美羽は思わず雪蓮の後ろに隠れた。

 

「はいはい、そこまで。ごめんね、美羽ちゃん。あの子にはきつ~く言っておくから。」

「う、うむ。」

「なっ!」

 

蓮華は驚いた。なんと袁術だけではなく自分の姉も真名で呼び合っているなんて・・・

 

「ちょっと蓮華、だめじゃない。一応こんなのでも私たちの君主なんだから。」

「お姉さま!?」

「くぉら雪蓮!こんなのとはなんじゃ!こんなのとは!」

「はいはい、・・・・・・じゃ、私はこの子と話があるからまたあとでね~♪」

「な、こら~!雪蓮~!」

 

そうやって謁見の間には美羽が一人ポツンと置いてかれた。

 

 

 

 

「お姉さま、どういうつもりなんですか!?あのような者に神聖な真名を呼ばせるなど!」

 

蓮華は怒っていた。自分たちの土地を奪ったものに真名を授けるなど、完全に飼い犬状態ではないか。

 

「あの子を少しは見直したからよ。結構可愛いのよ。」

「そんな・・・・・」

 

姉は時々無茶苦茶な行動に出るが、真名に関しては自分の認めた相手にしか与えないことを知っている。その姉が真名を認めるなんて・・・・

 

「そんな顔しないで。別に孫呉の夢まで忘れたわけじゃないわ。いつかは美羽ちゃんを私たちに屈服させてみせるわ。」

「お姉さま。」

 

蓮華は安心した。やはり姉は飼い犬などではなかった。ちゃんと孫呉の夢も覚えてくれていたのだから・・・・

 

「あなたたちを呼び出したのは黄巾党の本拠地に対して、ある作戦を実行するためなの。でもこれは表側の作戦だけど、これとは別に美羽ちゃんに内緒での極秘の任務があるわ。これは孫呉の未来がかかっている作戦と言っても過言じゃないわ。」

 

雪蓮はかなり真面目な顔つきで言った。『孫呉の未来』という言葉は蓮華にとってとても重く聞こえた。しかし、同時にうれしかった。そんな大切な作戦に参加させてもらえるなんて、姉についに認めてもらえた、と思ったからだ。

 

「分かりました。私に出来る事なら何でもします!」

「その言葉、忘れちゃ駄目よ。」

「はい!」

 

蓮華は覚悟を決めた。孫呉のために自分に出来ることをやろうと・・・・

 

「蓮華は、天の御遣いのことを知っているわね。」

「はい。この街でもよく噂を聞きます。」

「そうなの。でね、その人と結婚してほしいの。」

 

・・・・・・・・・・・は!?

 

「あ、あのお姉さま・・・・・どういうことなのでしょう?」

「あら、聞こえなかった?その噂の御使いさまと結婚しろと言ったのよ。」

 

蓮華は頭が真っ白のなった。・・・・・・・結婚?なぜ!?

 

「ど、どうしてですか!?お姉さま!」

「彼の風評と知識、他にも政治力などが欲しいからよ。・・・・・・この婚姻が孫呉にとってどれほどの利益をもたらすか・・・・・・まさか分からないわけ無いわよね?」

「・・・・そんな・・・・・・・です・・・」

「ん、な~に?」

「いやです!私、そんな結婚したくありません!」

 

蓮華はその場を逃げ出した。

 

「蓮華さま!」

 

後を追いかけようとした思春に対し、雪蓮は・・・・・

 

「待ちなさい!思春。」

 

止めた。

 

「なぜですか!?雪蓮さま!」

「あの子も孫家の子。この婚姻がいかに大切なことか分かるはずよ。」

「・・・・・・・し、しかし!」

「思春、これは命令よ。」

「くっ!・・・・・・・はっ・・・・申し訳ありませんでした。」

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・

 

 

 

蓮華は城を飛び出し、どこに向かうでもなく走り出した。走って走って、とにかくこの現実から逃げ出したかった。

しかし、彼女の意志とは無関係に体が悲鳴を出し始めた。ようやく止まり、息を整え始めた。体は熱くなっていたが、頭の方はすごく冷めていた。・・・・・恐怖によるものだ。

 

(・・・・結婚・・・・見も知らぬ男と結婚・・・・・)

 

蓮華はこれが政略結婚だということを理解した。彼女ぐらいの年頃なら『政略結婚』なんて言葉にマイナスイメージを持つのも仕方ないかもしれない。嫁入りといえば聞こえはいいが、その実体はこちらが裏切らないという保障を示すための人質、そこには花も恥らう乙女が憧れるような恋も愛もないのだ。

 

そう思うと蓮華は人知れず、涙を流してしまった。

 

 

一刀side

 

(さてと、見回りも終わったし、もう帰るか。)

 

一刀はいつもと変わらない平和な街を見て安心していた。しかし、外の街や村では今も黄巾の魔の手がかかろうとしている。それを防ぐためには例の作戦を必ず成功させなくてなならない。そう決意した。

 

一刀は城に帰るとき、いつものルートを使わず、裏道と呼べるような道を使って帰った。理由なんてない。ただそんな気分だっただけである。その道は人もいなければ家もないような道だった。そんな中、うずくまっている女の子を見つけた。

 

(うん?どうしたんだろあの子?)

 

一刀はうずくまっている少女に近づいて声をかけてみた。

 

「あの、どうかしたんですか?」

 

女の子はこっちを向いた。でも、その顔には見覚えがある。昼間に見た女の子だった。

 

「あ、君はあの時の・・・・・何で泣いているの?」

 

蓮華は急に泣きやんだ。王たるものが無闇に涙を見せるものではないと自覚していたからだ。

 

「な、泣いてなんかないわよ!私のことは放っておいて!」

「え、・・・・でも・・・・」

「いいから放っておいてよ!」

 

正直、彼女は自暴自棄になっているように見えた。なんだか危ないような気がしてきたので彼女が落ち着くようになだめてあげた。

 

「君に何があったか分からないけど、困っている人をそのままなんてできないよ。だから放って置くなんて出来ない!」

 

一刀がそう言うと、蓮華は何も言わなかった。しばらく経って蓮華はかなり落ち着いた。

 

「・・・・・ごめんなさい。少し落ち着いたわ・・・・・・あっ!あなたは昼間の・・・・」

 

どうやら俺に気付いたようだ。俺は彼女の話を聞くためにとりあえず近くの茶店に連れて行った。

 

一刀は、彼女の話を聞かせてもらった。家の都合で好きでもない男と政略結婚させられるのだと。一刀はかなり怒った。自由恋愛の世界で育った一刀にとって政略結婚なんて人権無視の何物でもない非道なもの。そういう考えを持っていた。この世界にきて、『その世界にはその世界のルールがある』と学んだはずなのに色恋事は別問題と解釈していた。

さすが一刀である。

 

蓮華side

 

(思わずこの人にしゃべっちゃったけど・・・・・・・どうしてかしら・・・・・)

 

蓮華は悩んでいた。昼間に助けてもらった男とお茶をしている。周りが見ればどういう関係に見えるだろう、と。なんだかんだ言って蓮華もいいお年頃。色恋事に興味を覚えるのは当然といえた。

 

「はぁ、あなたに話したら少し楽になったわ。聞いてくれてありがとう。・・・・・でもこれは私の問題。私がどんなに我がままを言ってもどうにもならないわ。」

「そんな・・・・・まだ話し合えばきっと君のお姉さんも分かってくれるよ!あきらめちゃだめだ!」

 

この男の真剣な眼差し、そして本当に自分のことを心配してくれているという思いを感じ、蓮華は心が温かくなるのを感じた。

 

「でも、私が嫌だと言っても。お姉さまはきっと・・・・・」

「大丈夫、俺が絶対に君を助けて見せるよ。なんたって俺は天の御遣いなんだから!」

 

・・・・・・・・・・・・え?

 

 

(・・・・・この人は今なんて言ったのかしら?・・・・・天の御使い?・・・・まさかね)

 

「さ、一緒にきて!」

 

そう言ってこの一刀は蓮華の手を握り、走り出した。一刀は城の中に入って行った。蓮華はかなり驚いた。身分を証明することもなく、フリーパスで城門を通過したのだから。

 

長い廊下を渡り、謁見の間にあっという間に到着した。美羽も雪蓮もそこにいた。

 

「蓮華!?」

 

・・・・・・・・・・え?

 

突然、雪蓮が叫んだ。

 

「蓮華、一刀と何やっているの?」

 

雪蓮は何を言っているんだ。俺は美羽の力とこの天の御使いの力を利用して彼女の政略結婚をやめさせようと思っているのに。

 

「一刀。その子は私の妹の孫権よ。」

「・・・・・・・え?」

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

「雪蓮の妹!?」

 

ということはこの子が孫権!?確かに似ているといえば似ているが・・・・・・いや、今はそんなこと言っている場合じゃない。雪蓮の妹なのに政略結婚の道具のするなんて許さない!

 

「雪蓮、どういうつもりだ!こんなかわいい子を政略結婚の道具にするなんて!」

「え!?何で一刀がそれを知っているの?」

「この子から直接聞いたんだよ。・・・・・・雪蓮、いくら孫呉のためとはいえ、あまりにもひどすぎるよ。」

 

一刀は今まで見せたことないような形相で雪蓮を叱りつけた。相当怒っているようだ。

このギスギスした空気の中でもやはり美羽は空気を読まなかった。

 

「七乃~、『せいりゃくけっこん』とはなんじゃ?」

「はい♪好きでもない異性と無理やり結婚させて、その人の財産や権力をネコババするような薄汚い政策です。」

「なんと!雪蓮よ、お主そんなひどい事を妹にさせようとしたのかの!?」

 

相変わらず空気の読めないお姫様である。とりあえずこの人たちは置いておいて・・・

 

雪蓮は少し混乱していた。なぜ、蓮華と一刀が手を繋ぎながらここに現れたのか、そしてどうやって政略結婚のことを蓮華から聞き出したのか・・・・・・・・いや、問題はそこじゃない。今、美羽に一刀との縁談話がばれたら計画は完全に意味を持たなくなる。

 

「相手は一体誰なんだ!?」

 

・・・・・・・・・・・・・え?

 

「か、一刀は聞かなかったの?」

「さすがにそれを聞くのは忍びなかったからね。でもこの子雪蓮の妹だって知ったら相手が誰だか知りたくなったんだ。雪蓮たちはすでに俺たちの客将。もし向こうから提案してきたらそれは美羽に喧嘩を売っていることと同じ事だからな。」

 

雪蓮は大部分のことを理解した。どうやら一刀は相手が自分と分かっていないようだ。これを逃す手はない。

 

「南方の小さな豪族よ。・・・・・ごめんね、蓮華。あなたの気持も確かめないで勝手にこんなことを決めるなんて。先方には断っておくわ!」

「・・・・・え?姉さん。何を「ドス!」ぐは!」

 

(蓮華、ここは私に合わせなさい!)

 

雪蓮は小声で蓮華に命じた。

 

「ぐ、・・・ね、姉さん・・・あ、ありがとうございます。・・・・・あなたのような姉を持てて私は・・・・幸せです・・・・」

「ごめんなさい蓮華!そしてありがとう!」

「姉さん!」

 

二人は熱い抱擁を交わした。この美しい姉妹愛に思わず俺も美羽も感動し、涙を流した。

 

こうして、美羽にも負けず劣らずの奇妙な出会いをした一刀と蓮華であった。

 

 

 

それから何日がたった。俺と蓮華は雪蓮の命令によりお互いを真名で呼び合うようになった。最初はゴチャゴチャな出会いだったけどいつの間にか仲良くなってしまった。

 

そして数日後、彼女の妹の小蓮が明命と共にやってきた。彼女たちとも仲良くなり、真名で呼び合うようになった。

 

俺は彼女たちに黄巾党の本隊との決戦の作戦を話した。みんなはものすごく驚いた。しかし、彼女たちの王さまが乗り気なのだから反論など出来るはずもなかった。

 

「・・・・・一刀、本当にこんな作戦がうまくいくの?」

「もちろんだよ。黄巾党の連中にはもってこいの作戦だ。」

 

蓮華はかなり不安がっていた。なんせ、この作戦がうまくいったら間違いなく歴史に名を刻むだろう。それほどなまでの作戦だった。

 

「貴様!我らにこんなことをさせて・・・・・・もし失敗などしたら・・・・・その時は、殺す!」

 

思春は殺気をだらだら流している。・・・・・・正直怖い。

 

シャオはニコニコしていたが明命はまるで石になったかのように緊張している。

 

とりあえず、みんなの意志とは無関係に作戦の許可が下りた。これで必ず天和たちを救ってみせる。

 

俺たちは作戦のシュミレーションを繰り返していた。失敗は許されない。最初はみんなガチガチに動いていたけど、二週間ほどで見違えるほど良くなった。そうしてまた一週間が過ぎた。蓮華たちがここの来て三週間、ついに各諸侯が黄巾党の本拠地に向かいだしたのだ。

俺たちも行動を開始する。各諸侯たちよりも早く着かなければ手遅れになってしまうからだ。・・・・・大丈夫だ。みんな覚悟を決めてくれた。この作戦は成功したも同然だ。

 

そうして俺たちは黄巾党の本拠地へと出発した。

 

 

黄巾党、本拠地

 

「ふえーん!お姉ちゃん、お腹すいたよ~!」

「我慢して姉さん。みんな同じなんだから。」

「もう!どうしてこんなことになったのよ!?」

 

彼女たちは今の生活に不服を持っている。当然といえば当然だ。なにせ、歌を歌っているだけだったのにいつの間にか反乱軍の首領にされ、あまつさえその反乱軍に討伐命令が来たのだから。

 

「姉さんたちが『天下を取りた~い』なんて言ったのが原因みたい。私たちは歌でって意味だったのに彼らが武力でって勘違いしたみたい。」

 

人和は呆れ気味に言った。

 

「なによ!私たちのせいだって言うの!?」

「そうは言っていないわ!」

 

人和もいつもの余裕がなくなっていた。彼女は焦っているのだ。討伐命令はすべての諸侯に行き届いている。各諸侯が本気になればいくら数が多くてもこちらが大敗を喫するのは間違いないだろう。

いや、問題はそこじゃない。もしかしたら『彼』もこの討伐に加わっているのかもしれない。そうしたら『彼』と殺し合いをしなければならなくなってしまうかも・・・・・・私たちに勇気と希望をくれた『彼』と・・・・・・・

 

人和は目に涙を浮かべていた。

 

「うっ・・・・・・・ごめん人和。少し言いすぎたわ。」

「うんうん、大丈夫よ。」

 

人和は気丈に振る舞っていたが、すごく悲しい思いをしていると天和も地和も理解していた。なんせ今まで三人で生きていたにだから。

 

「大丈夫。きっと一刀が助けてくれるよ♪」

 

そんな中、天和が妹たちを元気づけた。彼女たちが好意を抱いている者、人和の言う『彼』とはまさにその一刀なのだ。

 

彼が助けの来てくれるかも・・・・・・そう思うだけで心が安心していく。姉二人も同じ思いなのだろう。

 

「そうね!あいつは地和たちの『まねえじゃあ』になるんだから!」

「うん、そうだよ♪。」

「そうね。」

 

彼女たちは苦笑した。それくらいの余裕を取り戻したのだ。

 

その時、一人の男が彼女たちの部屋に来た。何やらあわただしい様子だ。

 

「張梁さま、張梁さまたちにお会いしたいという輩が来ているのですが・・・・・・」

 

男は報告をした。彼女たちはかなり驚いた。黄巾以外でこの本拠地の場所を知っている者はいないはず・・・・・・・いや、それより驚くべきは、彼らがこんな些細なことの報告に来たということだ。いつもなら不審者を捕らえた、始末した、などの報告のはずだが・・・・

 

彼らの顔見知り・・・・・・・いや違うな。かなりの位を持っていないと彼女たちの部屋に訪れることはできない。報告に来たこの男も番号を持っている身、黄巾の中ではかなりの立場を持っている。

そんな彼が、わざわざ報告に来る・・・・・・・いったい誰だろう?

 

「分かりました。彼らは何と言ってきているのですか?」

「は!なんと奴らは『なんばあ壱』のサインを持っており、自らを天の御遣いと言っているのですが・・・・・・」

 

「「「えっ!!!」」」

 

「一応確認いたしましたが、何分かなり精巧な偽物で・・・・・・万が一と思いこのように報告に参ったのです。」

 

彼女たち驚いた。自分たちが噂をしていた『彼』が来たというのだから・・・・

 

「どうしましょう?」

「その方たちに無礼のないようにしてください。そのサインは本物です。私たちが保証しましょう。」

「は、はっ!皆にそのように報告します!で、では!」

 

男はさっさとその場から退散した。外からはものすごいざわめきが聞こえる。

 

「「「一刀(さん)が来てくれた!」」」

 

 

「おいこら!御遣いだか何だか知らねえが、こんな偽物を使って俺たちを騙そうったってそうはいかねえぜ!」

「だから、偽物じゃないって。ここの字なんて地和の字そのものだろうが。」

「ぐ!・・・・・・し、しかしこれが本物って証拠はねえ!」

「・・・・・・・・はぁ」

 

一刀たちは黄巾党の本拠地である砦にいた。見張りの人間たちに何とか説明しても偽物とつっぱる。一応、天和たちに確認と報告に行っているらしいからそろそろ戻ってくると思うんだけど・・・・・・・・

 

「一刀、本当に大丈夫なのか?」

「貴様、もしも蓮華さまに危険があってみろ!その頸が胴体から離れると思え!」

「もう!一刀はシャオなんだから傷つけちゃダメ!」

「あう~!小蓮さま、思春殿!ここは敵の本拠地なのですからあまり目立つ行為は・・・・・」

 

後ろ小蓮と思春が言い合い、明命がそれをなだめようとしている。はたから見れば、賑やかな集団にしか見えないだろう。

 

「だ~いじょうぶよ。一刀を信じなさい。それよりも自分の心配をしなさい。みんな、手筈は整ったわね?」

 

雪蓮がみんなにハッパをかけたらみんないろんな表情を出した。

 

「お、お姉さま。ほ、本当にやらなくちゃいけないのですか・・・・・?」

「モチ!」

 

顔を赤くしながら訴えてる蓮華。しかし無情にもその訴えを蹴り飛ばす雪蓮。

 

「くっ!不本意だが主の命令とあらば、この思春、どんな恥行にも耐えてみせましょう!」

「期待しているわね、思春。」

「はっ!」

 

まるで背水の陣の心境の思春。そんなに大げさなことじゃないのだが・・・・

 

「雪蓮お姉ちゃん!言っとくけど、シャオは前の方だからね!」

「はいはい。」

 

小蓮はノリノリだ。こういうときは頼りになる。

 

「わ、私も及ばずながら頑張らせていただきます!」

 

明命はかなり緊張している。少しはリラックスしてほしいけど・・・・・

 

「楽しみですね~。」

 

隠はほのぼのと言ってくれる。何を思っているのか謎だ。

 

「の、のう北郷よ。儂もやはり参加せねばならんのか?儂はもういい年故、こういう事は・・・・」

「だめですよ、祭さん!祭さんも立派な戦力なんだから!」

「しかしの~・・・・・」

「だめったらだめです。それに祭さんは自分で言うよりも若いですよ。時々、目のやり場に困るんですから。」

「な/// う、うむ。命令なら仕方あるまい。まかされよ!」

「うん、頼りにしているよ。」

 

祭さんも覚悟を決めてくれたようだ。

 

「・・・・・・・北郷、もしこの作戦がうまくいったら・・・・・・私は軍師をやめるよ・・・・・ははははは・・・・・・・・」

「絶対に成功するから、軍師をやめるなんて言わないでよ、冥琳。」

「はははは、そうだな・・・・・・・・・ははは・・・・・・」

 

・・・・・・・・・・だめだこの人、はやく何とかしないと・・・・・

 

「一刀~。まだなのかえ?」

 

美羽ももう待ちくたびれている様子だ。

 

「まだだよ。確認に行った人が戻ってくるまでだ。」

「う~む・・・・」

 

と、みんなと雑談していたら、確認に行っていた人間が戻ってきた。

 

「そ、その方たちは本物だ!丁重におもてなしをするんだ!」

「えっ!・・・・・・・・も、申し訳ありませんでした!御遣いさま!」

 

180度態度を変え、俺たちに頭を下げる黄巾党の構成員たち。それを見た蓮華たちは驚いてた。

 

「・・・・・信じられない。本当に一刀の言う通りになったなんて・・・」

「だから、勝算のない作戦は立てないって。」

 

(しかし、ここまで態度を変えられるのは思ってもみなかったけど・・・・・すごいな、このサイン。)

 

「では、張角さまたちのところへ案内いたします。こちらへどうぞ。」

 

こうして俺たちは天和たちに接触することができた。

 

 

「久しぶりだね、天和、地和、人和。」

「「「一刀(さん)!」」」

 

久しぶりに見た天和たちはあの時と変わらない笑顔で迎えてくれた。

 

「うえ~ん!かずと~、会いたかったよ~!」

 

そうやって、天和たちは俺に抱きついてきた。・・・・・正直、周りの目が痛い。

 

「ちょ、ちょっと一刀!そいつらは黄巾党の首領なのだぞ!何をイチャイチャしている!?」

「そうよ、一刀はシャオのなんだから手を出しちゃダメ!」

「な、何を言っておるのじゃ、お主たちは!?一刀は妾の部下じゃ!」

 

後ろで騒いでるのはひとまず放って置いて・・・・・・本題に移ろう。

 

「一刀さん、会えたのはうれしいのですが、何を考えているのですか!?こんなところにそんな人数で・・・・・」

 

人和は少し怒っていた。でもその怒りは俺たちのことを心配してのことだ。

 

「君たちを説得に来たんだ。」

「・・・・・・・説得ですか?」

「そうだ。これは君たちの望んだことじゃないって分かっている。だからどうか俺たちに下ってほしい。決して悪いようにはしないよ。」

 

天和たちは少し驚いたが、すごく喜んでくれた。

 

「うん!私たち一刀のところに行く!」

「そうね!あんな盗賊まがいな人たちと一緒にいるのはもう懲り懲りよ!」

 

天和と地和は賛成してくれたが、人和は・・・・・

 

「駄目よ、姉さんたち。・・・・・・・・一刀さん、その話はお断りさせていただきます。」

 

人和は冷静に言った。

 

「どうしてよ人和!せっかく一刀が助けてくれるって言っているのに!」

「・・・・ちぃ姉さん。もし私たちが彼らに下ったら、ファンのみんなは暴動を起こすわ。それに統制が利かなくなって、もっと酷い事を始めるかもしれない。それに一刀さんたちにも迷惑をかけるわ。ちぃ姉さんは一刀さんたちを困らせたいの?」

「そ、それは・・・・・・」

「それに、理由は何であれ私たちの歌でこんなことになったんだから責任は取らなくちゃならないわ。」

 

人和は、歯を食いしばった。ファンが何をしているのか分かっていたのだ。だから彼女の良心が自分たちだけ助かろうなんて許さなかったのだろう。

 

「・・・・・・人和。」

「・・・・・・れんほーちゃん。」

 

二人も何かしらの考えを感じ取ったんだろう。だからこれ以上何も追及しなかった。・・・・・でも、

 

「大丈夫。説得に来たのは何も天和たちだけじゃない。ここにいる黄巾党の奴らもまとめて説得するんだよ。」

 

「なっ!そんな事出来るわけがないわ!」

 

人和は驚愕した。ま、無理もないだろう。

 

「出来るさ。でも、そのためには君たちの力が必要なんだよ。・・・・・・協力してくれないか?」

 

彼女たちは少し考えていた。なんせ、20万の人間を説得するなんて無理に決まっている。そう考えていたからだ。でも、一刀ならきっと・・・・・・・

 

「分かりました、あなたたちに従います。私たちは何をすればいいのでしょうか?」

 

彼女たちは決意した。そして俺は作戦を言い始めた。

 

「俺たちと歌で勝負してほしいんだ!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

・・・・・

 

「「「・・・・・・・・えっ!?」」」

 

 

 

一ヶ月前、建業

 

「それはね、歌だよ!歌で彼らを説得するんだ!」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「「「「・・・・・・・・は!?」」」」

 

あたりは不気味なくらい静まり返った。でも最初に雪蓮がその静寂を壊した。

 

「わあ!それいいね!面白そう!」 

 

雪蓮は喜びながら賛成してしてくれた。

 

「雪蓮!!北郷、真面目に答えんか!」

 

冥琳はものすごい怒号をあげた。

 

「わ、儂もそれはちょっと・・・・・」

 

祭さんは少し悲しそうに言った。

 

「一刀さ~ん、それは大胆すぎです~。」

 

隠はほのぼのと言った。

 

呉の将軍たちは皆いろんな感情を出した。なんて分かりやすい喜怒哀楽なんだろう。

 

「北郷、いい加減にしろ!そんな作戦なんて立てられるわけがない。」

「まあまあ、冥琳も落ち着いて。結構面白そうな作戦だと思うんだけど。」

「雪蓮まで何を言っているのだ!?」

「だって、あの時の祭りみたいなんだもん。」

 

雪蓮はもうお祭り気分だ。

 

「はぁ、北郷。少し現実を見ろ。武力を使わずに黄巾党を制圧できたら我らの風評はかなり向上するだろう。しかし・・・・・歌だぞ!」

「そうだね。でも彼らの行動理由が歌によるものなら、歌で説得することも可能だ。」

 

冥琳はかなり怒っているが、俺の言うことも一理あると思ってくれたらしい。だから最初から否定的にはならなかった。でも問題点をいくつも挙げていった。

 

「北郷、お前の言いたいことは分かった。しかし、肝心の歌い手はどうするのだ?」

「・・・・・・・美羽だけど・・・・・正直、美羽だけじゃ戦力不足だ。だから何人か貸してもらいたいんだけど・・・・・誰かいる?」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「北郷・・・・一番重要なことを考えずに来たのか?そんなのいるわけ「私が出るわ。」・・・・・なっ!雪蓮!お前何を考えている。」

 

雪蓮が手をあげて堂々と言ってきた。もちろん冥琳が怒っているのは言うまでもない。

 

「そうね~・・・・・・・私と美羽ちゃんだけでもまだ足りないわね~・・・・・蓮華たちも呼ばなくちゃ!」

 

雪蓮は冥琳の話を全く無視している。・・・・・・・がんばれ!冥琳!

 

「雪蓮!蓮華さまたちまで付き合わせるのか!?」

「うん♪、あの子も小蓮もきっと戦力になるはわ。」

 

・・・・・・・・・・さっきから知らない名前が飛び交っている。・・・・誰だ?

 

「一刀、蓮華と小蓮というのは私の妹たちの名前。二人ともすごく可愛いんだから。」

 

・・・・・・妹?孫策の姉妹か・・・・・となると孫権と孫尚香だろうな。・・・・・このすべてがあべこべの世界で何で孫尚香だけが変わっていないんだ?

と、思ったが話を進める必要があるから考えるのは後にしよう。

 

「妹たちか・・・・・きっと雪蓮に似て可愛いんだろうな。」

「もちろんよ!特に蓮華のお尻は国宝級のものなんだから!」

 

・・・・・・・・ぜひ会ってみたいな!

 

「うん、戦力は多いにこしたことはないけど・・・・・・」

 

俺は少し困った。下手に軍を増長させてしまったら謀反を起こされるかも・・・・

 

「大丈夫よ、一刀。あなたの思っているような事はしないわ。」

 

雪蓮は全部分かっているようだ。その上で謀反を起こさないって言っているのだから信用できるだろう。

 

 

 

「雪蓮、私は蓮華さまたちを呼ぶのは反対だ!」

 

(良いじゃない、冥琳。軍備の拡張も出来る上、例の作戦を実行に移すいい機会だわ。)

 

雪蓮は冥琳とボソボソと話している。何を話しているだ?

 

「し、しかしだな・・・・・・・」

冥琳はまだ粘っている。しかし。スイッチの入った雪蓮を止められるものはいない。

 

「それにさ、冥琳。一刀の作戦がうまくいかなくても、敵の本拠地に安全に乗り込めるのはかなり有利になるわよ。」

「それはそうだが・・・・・」

 

雪蓮の言う通りだ。たとえ作戦に失敗してもこのサインがあれば無事に戻る事は出来るのだ。それに敵の総数、指揮官、陣形、兵糧の保管場所、等々、敵の内情を知る事が出来る。もし戦闘になってもかなり有利に進められるだろう。

 

「ま、成功したら幸運、失敗したら討伐でいいんじゃない。一刀もそれでいいわよね?」

「ああ、でも必ず成功させてみせる。」

 

冥琳は雪蓮と一刀のこの言葉でようやく折れたようだ。

 

「分かった。こっちも軍備を拡張できるなら願ってもない事だ。その作戦を許可しよう。」

 

冥琳の許可もでたなら、もうこっちのもんだ!さっそく準備をしよう。

 

「じゃあ、俺は歌の方を考えるよ。どうせだったら天の国の歌の方がいいでしょ?」

「うん、じゃあ、私は蓮華たちを呼んでくるわ。」

 

こうして各々行動を開始したのである。冥琳は許可したもののやはりどこか不満なようだったが・・・・・

 

 

現在  

 

俺は、彼女たちに作戦を話した。俺たち以上に黄巾党の性格を知っているために反対などはしなかった。歌で彼女たちを屈することができれば黄巾党の連中も必ず降参するだろうと・・・・・・・でも

 

「一刀さん、その作戦はいいとは思います。でも彼らは並みのファンたちではありません。もし私たちが手加減などしようものならそれこそ怒り狂うでしょう。」

「そうだね・・・・だから俺たちと全力で勝負してほしい。」

「はあ!地和たちに歌で勝てると思っているの!?」

「ああ、そのためにみんなで一生懸命に練習したんだから。」

「あはは♪なんだかあの時のお祭り見たいで楽しそう~」

「ちょっと天姉さん!一刀さん、もし負けたらどうするつもりなんですか!?」

「その時はそのまま帰って、黄巾党の連中の討伐に変更するよ。でも君たちだけは必ず助けるから。」

 

三者三様の感情を出したが彼女たちに拒否権はなかった。何せ自分たちの命が掛っているのだから。

 

「分かりました。その勝負受けて立ちます!」

「ふふ~ん!地和たちの力を見せてやるんだから!」

「お姉ちゃんも頑張っちゃうんだから!」

 

さすが歌手である。歌のことになるとものすごい本気になる。

 

一刻後

 

人和は黄巾党の隊長格を集結させ、本ステージ前にすべての黄巾党の構成員たちを終結させろと命令を出した。

すべての構成員たちがステージ前に集結した。その数は実に二十万人以上。実際に目のあたりにするとかなり怖い。

黄巾党の連中は戸惑っている連中も多かった。なんせすべての構成員たちを集結させたことなんてなかったからだ。

 

「今日はみんなに合わせたい人がいるの~」

「だあああああああああれええええええええええ!!!!????」

「もう噂になっていると思うけど、あの『なんばあ壱』、その人よ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

なんだか歓迎されてるみたいだ。なぜ?

 

「一刀さんは黄巾党の人間にとって『壱』の番号を持つ英雄ですからね。みんなの憧れなんですよ。」

 

・・・・・・・・・なんだか頭痛がしてきた。

 

そうやって俺はステージの上に上がった。ここで、彼らに言いたいことがあるからだ。

 

「おお、あの方が『壱』の数字を持つお方か!」

「ああ、そうらしい!なんでも数か月前、南陽の祭りで天和ちゃんたちと激闘を繰り広げ、勝利したらしい。」

「なに!天和ちゃんたちが負けたのか!」

「ああ、その祭りに俺もみたぞ!」

「俺もみた!」

「それにあの方が『サイン』を考案したらしいぞ。」

「なんだって!じゃあ、俺たちが天和ちゃんたちから贈られる希望の宝はあいつが作ったのか!?」

 

なんだかざわめきが聞こえる。ここで何とか勝負に持ち越さなきゃ話にならない。まずは彼らをその気にさせなくては・・・・

 

「諸君!俺が『壱』なる者だ!これが証拠だ!」

 

俺はステージの上で彼らにサインを見せた。すると

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」

 

と歓声が上がった。

 

「俺はみんなに提案があるんだ!もしかしたら君たちを怒らせるかもしれない。でも黙って聞いてほしい!」

 

そう言うと彼らはシーンと静まり返った。

 

「みんな!どうか俺たちに下ってはくれないだろうか!?」

 

俺の言葉であたりはかなり静まり返った。でもすぐに物凄い怒号が返ってきた。

 

「ふざけんじゃね~!!」

「そうだ、そうだ!!」

「俺たちの君主は天和ちゃんたちだ!誰がお前なんかに従うものか~!」

「まさかてめえ!嫌がる天和ちゃんたちに無理やり・・・・・!」

「なんだって!許せね~!!」

 

今にもステージに上がりこんできて俺を殺しかねないような勢いだった。

 

「みんな~!私たちのために争わないで~!」

「みんなの気持ちはとってもうれしい~!」

「でも、まずこの人の話も聞いてあげて~!」

 

三姉妹は暴れかけた黄巾党の連中を諌めた。・・・・・・効果は抜群だ。

 

ようやく落ち着き始めた黄巾党。しかし、いまだに俺に敵意を剥き出している。

 

「みんなの気持ちはよく分かる!君たちに聞こう!なぜ、このような反乱をおこしたのか!」

 

黄巾党の一人が答えた。

 

「天和ちゃんたちの歌に明日への希望を見たからだ!」

「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」」

「今の朝廷は腐っている!」

「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」」

「俺たちは天和ちゃんたちが治める天下をみたいだけだ!」

「「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」」

 

彼らは理想を大声で語った。・・・・・でも

 

「そうだ!君たちは天和たちの歌に希望を見たんだ。だからこのような反乱をおこした。だが、俺たちなら天和たち以上の希望を見せてやることができる!」

 

俺は彼らの声にも負けないような声で言った。彼らも俺が本気なのだと悟り口を結んだ。

 

「今から俺たちはこの天和たちに歌で勝負を挑む!もし我らが負けたら、君たちの思想を肯定し、この場を去ろう。しかしもし天和たちが負けたのなら、おとなしく俺たちに投降してもらう!審査員は君たちだ!どちらの歌に希望が見えるか判断してほしい!」

 

そうやって俺はステージを降りた。

 

 

辺りはかなり混乱していた。天和たちの歌に希望を見てきた彼らが、万が一、彼らの歌に希望を見てしまったなら、どうしなければならないのかと・・・・その天和たちが黄巾党の連中にいった。

 

「みんな~!大丈夫よ~。私たちは決して負けはしないわ~!」

「みんな~!地和たちを応援してね~!」

「私たちが理想なのだと彼らに教えてあげましょう~!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「「「「・・・・・ほあああ・・・・ほああああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」

 

一刀side

 

なんとか勝負に持ち出すことができた。あとは自分たちの練習を信じてやるしかない。

 

「か~ずと!」

「うわ!な、何だよ。」

 

雪蓮が抱きついてきた。

 

「かっこよかったわよ一刀。『彼女たちの希望以上の希望を見せてやる!』なんて言えたもんじゃないわ。」

「こら!雪蓮。一刀から離れるのじゃ!」

「はいはい。・・・・美羽ちゃん、前は敵だったけど今度は仲間ね。がんばりましょ♪」

「も、もちろんじゃ!」

 

雪蓮と美羽はお互いを讃えあっている。いい傾向だ。・・・・・だけど

 

「か、一刀・・・・・本当にこの人数の中で・・・・その・・・・やるの?」

 

蓮華はかなり緊張していた。

 

「大丈夫だよ!20万の兵と戦をするようなものと考えればいいんだよ。」

「・・・・・・・私はまだ初陣も果たしていないのだが・・・・・」

 

そうだ。蓮華はそっちの方もまだ初めてだったんだ。

 

「ご安心ください蓮華さま。この思春、いかなる危険からもあなたを救いだして見せましょう!」

 

思春さん・・・・・これは戦争じゃないのよ。

 

「さて、みんな!もうすぐ始まる。だからこの衣装に着替えて。」

 

俺は持ってきた荷物から彼女たちの衣装を取り出した。

 

「あは♡可愛いわね、この服。一刀が作ったの?」

「一刀よ。この服は妾には少しでかいぞよ。」

「お前はそれでいいんだよ。」

「一刀よ。・・・・儂はこういう服は・・・・・その・・・」

「だめですよ。祭さんのためにわざわざ作ったんですから。」

「う・・・・しかしの・・・・」

「だめったらだめです。」

 

雪蓮と美羽とは喜びながら着替えたが、他の子たちはかなりはずがしがっていた。さすがに女の子たちの着替えシーンを覗くことは出来ないので、部屋の外に出た。

 

・・・・・・・・・半刻ほど過ぎた。女の子の着替えはなぜか遅い。

 

「か~ずと、おまたせ♪」

 

みんながようやく着替え終わったようだ。

 

「なんでこんなに時間が掛ったんだ。そんなに複雑な服ではないと思うけど・・・」

「いやね、みんなはずがしがって着たがらなかったのよ。特に冥琳と蓮華と思春と明命がしつこくてね・・・・・似合っているのにね~」

 

なるほどな。でも雪蓮の言うとおりとても似合っている。

 

さて、ようやく準備が整った。この勝負、負けは許されない。そうやって俺たちはステージへと向かった。

 

 

「では、みなさん!張三姉妹と天の御遣い御一行の歌合戦を始めたいと思います。司会者は僭越ながらこの私、張勲。審査員の方は『なんばあず』のみなさんたちです。

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」

 

司会者は七乃さん。何でも司会者が出来るような人間がいなく、人和に頼まれたから快く引き受けたらしい。・・・・・・・ていうか、なんでそんなにノリノリなの?

 

「では、先行は張三姉妹です。どうぞ!!」

 

「みんな~、この勝負、絶対に私たちがもらうわよ~!」

「ほああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「みんな~応援してね~!!」

「ほああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「ぜ~ったいに勝つからね~!!」

「ほああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「「「「「ほおあああああああぁぁぁああ、ほうおおおおおおおおおあああああああ、ほあ、ほあああああああああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

彼女たちは歌いだした・・・・・・・・・・すごかった。

 

「なんじゃ、あ奴ら!あの時の祭りより格段に上手くなっているではないか!」

「そうね~、やっぱり私たちだけじゃ足りなかったわね。蓮華たちを呼んでよかったわ。」

 

俺たちはステージの裏方にいた。そこで彼女たちのコンサートを見ていたのだが、確かにパワーアップしていた。もしかしたら負けるんじゃないかと脳裏に過った。

 

彼女たちの歌が終わった。

 

「「「「「「ほおあああああああぁぁぁああ、ほうおおおおおおおおおあああああああ、ほあ、ほあああああああああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

すごかった。本当にすごかった。こちらの陣営も雪蓮と美羽はもちろん。祭さんや明命、シャオまで興奮していた。

 

「すごかったですね~。それでは審査員の方、点数をどうぞ!」

 

十点.十点、十点、十点、十点!

 

「おお!やはりというべきか~!満点、満点です!」

 

しょっぱなから満点をたたき出した天和たち・・・・・・・あいつらマジだ!

 

「こ、これ!一刀。あ奴ら満点を出したぞ!」

「そうだな!」

「そうだなって、もう妾達に勝機は無いではないのか!?」

 

美羽は珍しく常識的なことを言った。・・・・・・でも

 

「美羽、忘れたのか?雪蓮たちとの戦いのとき、俺たちも満点を出したんだぜ。」

「じゃ、じゃが・・・・」

「それにこういう時は、点数なんて関係ないんだ。いかに黄巾党の奴らに俺たちの理想を教え込むか・・・・ってことにかかっているんだから。

 

美羽の言葉にみんな不安がっていたが、俺の言葉でみんないつものみんなに戻ってくれ

た。

 

「さて、行こう。あの時の祭りの続きを始めようじゃないか!」

 

そうやって俺たちはステージへと向かった。

 

 

「さあ、次は天の御遣い御一行たちです。どんな歌を聞かせてくれるのか?そして、張三姉妹に追いつくことは出来るのか!?」

 

辺りはうすら笑いに包まれていた。すでに満点がでてしまったのだ。やるだけ無駄だと馬鹿にしているのだ。

 

しばらく経って、音楽が流れ始めた。聞きなれない音に黄巾党の人たちはかなり戸惑った。そして、爆音と煙ともに雪蓮たちが現れた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

黄巾党の連中は言葉を失った。なんと煙の中から不思議な服を着た美女や美少女達が出てきたのだから。

 

彼女たちは音楽に合わせて踊りだした。もちろんこの聞きなれない音というのは一刀の携帯である。曲は『L●ve♡マシーン』一刀の世界で知らない人間はいないだろう名曲?を流したのだ。

 

次第に彼らは正気に戻って行った。

 

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」

 

 

雪蓮たちside

 

雪蓮たちは前衛と後衛に分かれていた。前衛はボーカルである歌い手、後衛はダンス、踊り手と別れていた。

ボーカルは、雪蓮、蓮華、小蓮、美羽の四人。踊り手は、思春、明命、祭さん、隠の四人。そして、俺と冥琳は音楽担当だ。

 

なんて言うかすごかった。皆、統一性のない服を着て、踊っているのだから。みんな何を着ても似合ったがそれぞれの個性を120パーセント引き出す服を一刀は考案した。

 

雪蓮は結構日本的だったので浴衣を着させた。とても似合っている。

 

蓮華はその国宝級ともいえるお尻を強調するようにブルマ姿。

 

小蓮と美羽はロリキャラなのでサイズの合わないワイシャツ姿である。ただし色違いだが。なんだかものすごく保護欲を刺激される。

 

後ろの四人もそれぞれの個性を生かしつつ、動きやすい服装にしている。

 

思春はスクール水着にネコミミ、ネコパンチを付けている。顔を赤めていてすごく可愛い。

 

明命はいつもの忍者ルックではなくミニスカのメイド服を着込んでいる。

 

祭さんはその家庭的な雰囲気を失わせないようにロング系のメイド服にしてみた。かなり似合っていて目のやり場に困る。

 

隠はその男を狂わせるような山を持っているためそれを強調するように牛がらのビキニを付けてもらった。男たちは大興奮だ。

 

何より忘れてならないのが我らの冥琳。彼女には髪をオールバックにしてもらい、黒スーツで決め込んでもらった。でもそれじゃ、ただのかっこいい人。肝心なのは彼女につけているクロネコミミである。あまりにも似合いすぎている。どこの女教師だよと突っ込みを入れたいくらいに。

 

 

「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」

 

男たちは大興奮だった。歌も一流だがそれを引き立てる後衛のダンシング。そして音楽をさらに幻想的なものにする冥琳の琴。それらが相乗効果で強調され彼らをさらに興奮させるものになった。

 

天和たちも言葉を失っている。・・・・・・・・・・・あまりにもすごすぎて言葉が出ないのだ。

 

もうすぐ歌が終わる。そして雪蓮たちは一斉に

 

「「「「「「L●ve♡マシーン!」」」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・

 

 

・・・・・・・・・・・・完全に決まった。

 

 

「すごかったですね~!では採点をどうぞ!」

 

司会者の七乃さんたちは『なんばあず』のみなさんに採点を急かせた。しかし、彼らは動けなかった。それもそのはず。この勝負は一刀たちの圧勝だったのだ。これは審査員でなくても、すべての構成員たちが理解した。

しかし、自分たちは天和たち命のはず。ここで彼らを満点にしたら彼女たちに対する裏切り行為に他ならない。その葛藤が彼らを悩ませているのだ。

 

その時、天和たちが舞台の上にあがってきた。

 

「みんな~!私たちは大丈夫だよ~!」

「こんなことで地和たちがめげると思っているの~!さっさと自分たちの気持ちに正直になりなさい!」

「みんな~!この勝負私たちの負けよ!」

 

天和たちはステージに上がり、自分たちの負けを黄巾党全軍に伝えた。

 

彼らは負けたのだ。天和たちの歌に希望を見たはずなのに雪蓮たちの歌はそれをも凌駕していた。つまり自分たちが信じている存在が崩れ去ったのだ。これではもう組織としてやっていけないだろう。

 

「私たちこの人たちに下るわ~!」

「でも、地和たちはこんなことじゃ終わらないから~!」

「みんなもこの人たちに従って~!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「「「「「ほおあああああああぁぁぁああ、ほうおおおおおおおおおあああああああ、ほあ、ほあああああああああああああ!!!!!!!!!!」」」」」」」」

 

これが答えだった。彼らは自分たちの負けを認めたのだ。

 

 

こうして黄巾党の首領、張角たちとの死闘は幕を閉じたのである。

 

 

 

黄巾党を武力を持たずに制圧してしまった俺たち。その情報は各諸侯にいきわたってしまった。

 

 

「華林さま!先ほど斥候から信じられない情報が入りました。」

 

「・・・・・・・なに?」

 

「・・・・・その・・・・」

 

「いいわ、話しなさい。」

 

「は、はい。その先ほど黄巾党の本拠地が制圧されました。それも・・・・・武力を持たずして・・・・」

 

「何ですって!いったい誰が・・・・」

 

「・・・それが・・・・天の御遣いらしいのです。」

 

「・・・・・・そう・・・・・・・いったい何者なのかしら?」

 

「分かりませんが・・・・・・おそらくかなりのやり手だと・・・・」

 

「欲しいわね。その男。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・

 

・・・・・

 

「はわわ、桃花さま!愛紗さん!ものすごい事が起きました。」

 

「なに!一体どうしたのだ!?」

 

「あわわ!よく分かりませんが黄巾党が滅んだらしいのでしゅ・・・・です!」

 

「何!いったい誰が・・・・!?」

 

「江東の袁術さんらしいのですが・・・・・信じられないことは、武力を持たないで話し合いで制圧した・・・・・という情報が・・・・」

 

「え~、本当に!?」

 

「・・・・・信じられん!」

 

「・・・・・はい・・・・・何でも天の御使いさまが活躍したそうなんですが・・・・詳しい事は・・・・まだ・・・・」

 

「・・・・・ねえねえ、愛紗ちゃん!その人に会ってみたいな。」

 

「な、危険です!まだ何者か分からないのですから!」

 

「うーん・・・でもさ武力を使わないで、話し合いで解決するなんて私たちの理想じゃない?」

 

「それはそうですが・・・・」

 

「もしかしたら私たちのご主人さまになってもらえるかもしれないし~・・・」

 

「桃花さま!」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・

 

 

「月!先ほど斥候から情報がきたわ。何でも天の御使いが黄巾党の連中を静めたって・・・」

 

「御使いさまが?・・・・・・そう・・・・・ねえ詠ちゃん・・・・」

 

「ん、どうしたの?月。」

 

「私、その人の会ってみたいな・・・・・ダメ?」

 

「な、駄目よ!月。どんな奴かもわからないんだし、それに江東までかなり遠いんだよ!」

 

「だいじょうぶ、護衛に恋さんを付けるから・・・・・・ダメ?」

 

「うっ・・・・・・・分かったわ。でも僕も行くから。月に何かあったら大変だしね。」

 

「うん、ありがとう。詠ちゃん。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

「姫~、さっき黄巾党が負けたらしいよ~。」

 

「へ~、そうなんですの。」

 

「うん、やったのは袁術さまの所にいる『御使いさま』らしいんすよ。」

 

「な、なんですって~!あの頭の悪いガキンチョの所にいる人間が!?」

 

「はい、そうみたいっすね。」

 

「こうしてはいられませんわ!今すぐ準備なさい!顔良さん、文醜さん!」

 

「え、どこに行くんすか~?」

 

「もちろん、私の可愛い美羽ちゃんのところよ。あの子がそんな優秀な部下を持っているなんて許せないわ!この優雅な私にこそ、そのような人間が相応しいわ!」

 

「・・・・でも袁術さまが簡単に手放すとは思いませんけど・・・・・」

 

「あの子のものは私のもの。私のものは私のものですわ!おーっほっほっほっほっほっほっほ!!」

 

「・・・・・・・あきらめよ、文ちゃん」

 

「・・・・・・・そだな。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・

 

各諸侯の暗躍に、このときの一刀は気づかなかった。これから彼をめぐっての壮絶な戦いが繰り広げられようとしている。

 

 

 

あとがき

 

 

こんばんは、ファンネルです。

 

長くなりすぎた・・・・・・・調子に乗りすぎた。

 

 

そしてカオスすぎる。 『歌は世界を救う』ってことでご了承ください。

 

 

こんなに長いのに最後まで見てくれた人たちには感謝感謝です

 

 

ランキング作品に袁術ルートの五話~八話が乗っている。

 

 

すごくうれしいです。まさか袁術ファンがこんなに多いなんて・・・・・

 

 

では次回もゆっくりしていってね。

 


 
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